ロドアさんから全速力で逃げて、お姉さんの実家に帰ってきた。
改めて見ると、やっぱりデッカイお屋敷だ。お姉さんのお家が3つは入りそうな……。
「ふぅ……さぁ、ひと仕事終えたし……遊んじゃいましょう!リーシャンちゃん!まずはアタシの両親にご挨拶よ〜!」
「わーい!……でもそれって、最初にやるものじゃ……?」
「……良いのよ、細かいことは気にしないほうが楽なんだから!それに……最初に寝ちゃってたのはリーシャンちゃんでしょう?」
「……たしかに」
そういえば、前に馬車のなかで眠くなってそのまま寝たのは私であった。
お姉さんに抱っこされて、屋敷の中を進んでいくと、お姉さんの広いお部屋や、ヴァロストロさんのお部屋と同じような扉があった。
「ここが、アタシのお父上の部屋よ」
「……例の、こわーい吸血鬼さん?」
「…………前まではね」
お姉さんがちょっとだけ俯いた気がするけど、気のせいかな?
扉をガチャっと開けると、中には……!
銀色の髪を短く切り揃え、丸いメガネをつけたおじちゃん魔族が!
「……その子は?君の娘か?」
「……見れば分かるでしょう?もちろんアタシの娘よ」
「……猫族の耳が生えておるが?」
……迷いなく、『娘』って言ってくれた……!?なんというか、すっごい嬉しい!やったぁー!
……でも、お母さんとお父さんにも言って欲しかったなぁ……。
お姉さんは、ちょっと強い言い方でお姉さんのお父さんと話している。……怒ってるのかな?……でも、なにに?
「……猫耳なんて、そんなものは誤差よ」
「……そうかもしれぬな」
丸メガネおじちゃんも、少し顔を俯けた。こういう癖って、やっぱり親子で似るものなんだね。私にも、両親と同じ癖があったりするのかなぁ?
「ヴァーち。……まだ怒っておるか」
「いつの呼び方してんのよ……」
「ワシには素っ気なかったヴァーちが、妻の旅行には嬉々としてついて行ったあの日。ワシは考え直したんじゃ」
お姉さんは腕を組みながら、扉のそばの壁に寄りかかった。そしてそのまま、お姉さんは右足を私の方に少しだけ寄らせてきた。なんかの意図があるのかは分からないけど、とりあえずぎゅっと抱きついてみる。
「……その呼び方、まだ続けるのね。あと勘違いしてるようだから言っておくけど、アタシが嫌ってたのはアタシへの『態度』じゃなくて、貴方の『酒癖の悪さ』だから」
「そうじゃ。最近は1本も飲んでおらん」
「——アンタが嫌いだったのよ。『バカだから勉強が大事だ』だの『社会経験が足りない。魔条じゃ埋もれるぞ』だの。ちょっと言い返したら『誰に口を利いてるんだ』とかほざいて、急に癇癪を起こしてアタシに殴るフリして……夜になったら毎晩同じようなことをさんざ……って、え?飲んでない?」
お姉さんの目が、まるでありえないものを見るかのように見開かれていた。……て、いやいやそうじゃなくて、お姉さんのお父さんって思ってたよりもクズ……?うーん……でも、バイトコルの治安と比べたらマシなのかなぁ……?