私とお姉さん、アルコさんのいる空間に、静かな空気が流れる。
「……つめたいね」
「冷たい?おかしいわね……。寒くはないけれど……リーシャンちゃんが寒いなら……」
アルコさんが口を開きつつあった時、私がポツリと呟いたから、お姉さんに気を使わせちゃった。別に寒くはない。冷たい空気ってこういうことなんだって思ったから、つい言っちゃっただけ。
お姉さんが無言で指を振ると、小さな火のたまが暖炉の薪に向かってすごい速さで飛んでいった。
ボッ!と気持ちのいい音がなって、力強いオレンジ色の炎がゆらゆらと立ちのぼる。
暖炉の薪から出る光が私たちを照らして、夕日に直接当たってるみたいな暖かさだ。
「……実はのう」
「……リーシャンちゃんが待ってるわよ。早く言いなさいな」
アルコさんは一度ため息をついて、意を決したように口を開き始めた。
「グラジアは、昔……ここで護衛として雇っておったんじゃ」
「え?アタシ、一度も見たことないわよ?」
「そりゃそうじゃ。寂しくて雇ったからの。ヴァー坊は一人でどこかに行きがちでおらんし……」
「えぇ……」
アルコさんは手を前に出し「話はここからじゃ」と制した。どうやら、話の主題はここじゃないみたい。……けっこう面白いけど……。
「それでのう?……儂はなにか新しく趣味をつくろうと、料理を始めたんじゃ。するとな?グラジアが『俺は料理も出来る。教えてやろう』なんて言い始めおって。ちと敬語がなっておらんかったのが気になったが、まぁ良かろう」
「……ふーん。それで?」
面白そうだと感じているのか、お姉さんはニヤッと口角を上げながら話の続きを促した。
アルコさん、新しい趣味をって言ってたけど……どんな趣味があったのかな?
「そうして……グラジアが料理を始めようとした時、儂は見てしまったんじゃよ……ヤツのエプロン姿を……フッ……フォフォ……」
笑いを抑えられなかったみたいで、アルコさんは話の最中に笑い始めた。そんなに面白かったのかな?……まぁ、たしかに……あの片目が隠れた冷たいお顔のお兄さんがエプロンしてたら……ちょっと笑うかもしれないけど……。
「……はぁ?それだけ?肝心の貴方が追われてる理由は?」
「……あぁ、そうじゃったそうじゃった……そのあと、グラジアのやつが怒って儂にナイフを振り下ろしてきたんじゃよ!酷いやつよまったく……」
……どっちもどっち……いやグラジアさんが悪い……かな?どうなんだろう。笑われたからナイフを振り下ろしたんだよね?……うーん、何もしてないのにナイフを振り下ろしてくる人もバイトコルにはいるし……えぇ……?