魔条にきてから数日。今の私は、お姉さんとアルコさん、私はどっちの味方なのかっていう性格の悪い質問を投げつけられていた。
「どっちじゃ!?リーシャンや!」
アルコさんが、お姉さんがやりがちな愉しげな瞳で私を見る。
「……まったく、勝ち目のない勝負は辞めなさいよ。みっともないわよ、お父上?」
お姉さんが腕を組みながら、片目を開けて勝ち誇った顔でアルコさんの方を見ていて、アルコさんはお姉さんじゃなくて私の方をじっと見ている。
……どうしようか迷っていたけど、私は気づいた。
——これ、今は私が立場は上ってことだよね!?
だってだって、私の気分次第でどっちが勝つか決めれるんだもん!私、ヴァロストロさんが王様になりたがってた理由が分かったよぉ?こんな感覚、楽しくて仕方ないもんね!
「……ふふん」
「……リーシャンちゃん?楽しそうなのは結構なことだけれど……なにか企んでないかしら?」
「おだまりなさい!」
「……へ!?リーシャンちゃん!?アタシなにかしたかしら……?」
私がヴァロストロさんの真似をしてみると、アルコさんは白い髭を自分で触りながら、これまた嬉しそうに口角を上げている。
「ほれほれ、リーシャンやに嫌われておるのではないか?ヴァーちよ!」
「アルコさんもだまりなさい!」
私は胸を張り、人差し指をピンと立ててアルコさんを静かにさせた。私の尻尾は誇らしげにピーンとのびている。
「な、なんじゃと……!?」
うーん、えっと、どうしようかな。両方に黙りなさいって言っちゃったし……なんかないかなぁ……。
このまま、2人とも嫌いにする?
いやいや。そんなことないから出来ない。
じゃあ、どっちの方が好きかを答える?
いや、これも良くないのかなぁ……。
……あ、そうだ!
おねだりしちゃえるんじゃない!?
別にわざわざ質問に答えなくても、この状況なら、私のお願いが何でも通るかも……!
「ねぇ、お姉さん!」
「……なぁに?」
私がニヤつきながらお姉さんに話しかけると、お姉さんは……嬉しそうな……いや、警戒してそうな?……まぁ、そんな表情で微笑んで首を傾げた。
「美味しいモノ食べたい!」
「……ふふっ……あら〜!そんなこと?良いわよもちろん!なんてったって、リーシャンちゃんはアタシの大切な娘だもの!」
お姉さんは笑顔で私を抱きしめると、「さ、早くキッチンに向かいましょう?」と言って私を連れて部屋を出ようとした。
「待てぇい!」
お姉さんが扉のドアノブに手をかけたと同時に、アルコさんが私たちを引き止めた。……このまま行けそうだったのに……。
「キッチンは使用禁止じゃ!リーシャンと抜け駆けなど儂が許さん!」
アルコさんが俊敏な動きでビュンと風を切りながら、お姉さんと私の前に立ち塞がった。
「フォッ、フォッ、フォッ。ここは……通しはせん!ヴァーち!」
「……あらあら、自分でリーシャンちゃんの邪魔をしちゃうの?……嫌われちゃうわよ?」
お姉さんが左手で口を隠し、すこしだけ口角を上げながらアルコさんのことを指さしている。
「な……!いや、儂は退かん!退かんぞ!まだどっちが好きかの勝負が終わっておらん!ここを通りたければ、儂を倒してからいけぇい!」
アルコさんは両手を大きく広げてとうせんぼしている。……どうしようかな。通してほしいんだけど……というか、別にアルコさんもついてくればいいし、あとさっきしてたのは『どっちの味方なのか』であって、どっちが好きとかじゃないし……そんなの両方好きだし……。
「勝敗なんて決まってるじゃない。リーシャンちゃんはアタシと一緒にキッチンに行こうとしてるのよ?」
お姉さんが勝ち誇ったような顔で話している。そんな、勝敗とかつけるつもりないんだけどな……。
お姉さんが「だから、つまり……リーシャンちゃんが好きなのは……」と言いかけた時だった。
「——もちろん!!このオレであるな!!!ハッハハッハ!!!」
テンダーネス家の王様が、どこからともなく、いきなり現れた。
そして私は、師匠の登場でキラキラと目を輝かせた。