お姉さんに手を引かれながら……いや、お姉さんの脇に抱えられながら、私はキッチンへと向かっていく。お姉さんの力が強いから、抱えられてるだけでも、なんだかとっても強い鎧を着込んだみたいな安心感がある。
そう、キッチン。前に私が料理をつまみ食いしようとしたら、お姉さんにバレてしまったあのキッチンだ。
お姉さんと一緒にキッチンに向かって歩いていくにつれて、野菜のスープかなにかの匂いが強くなっていくのを感じる。
なに食べよっかなぁ〜?お肉?お野菜?……て、前にもこんなことあったよね。……たしかあの時はぁ……カワガエリのソテーと、なんか、サラダと、あとはニュウトンの実のパイを食べた気がする。
あとは……何があるかな?あんまり料理の知識がないから、何が良いのか他には分かんない……。
「……あらリーシャンちゃん、お鼻ヒクヒクさせちゃって、そんなに楽しみ?……まぁ、それはそうよね〜!」
気づけば、もうキッチンのデッカイ扉の前に着いていた。……なんか、着くの早くない……?私だけで歩いてた時はもっと遠い気がしたのに……歩幅が違うんだ……。
お姉さんが片手で軽々と大きな木の扉を開けると、広いキッチンの光景が目に入ってくる。お姉さんに抱えられてるから、目線が高くて新鮮だ。
「さぁ!!リーシャンちゃん!!食べたいお料理はあるかしら!?」
お姉さんが大きな声で、キッチン中に響き渡る声で聞いてきた。周りを見ると、料理してる人達が私達の方を一斉に見ている。お姉さん、声がデカすぎるよ……っ!
抱えられてるところを皆に見られててちょっと恥ずかしいけど、料理は食べたい。お肉?やっぱりお肉が良いかな……?
「あぁ〜もう、獣族ってやっぱ最高ね〜!リーシャンちゃん、最高!」
気づけば、私の尻尾が匂いに反応してぶんぶん振られてたみたい。ぜんぜん気づかなかった……。
お肉の匂い釣られるのはその……仕方ないことだし。路地裏にいたときからこうだし……。
「……じゃあ……お肉が良い」
「えぇ、もちろん!最高のお肉を用意するわ!」
キッチンの床に降ろされると、目線が明らかに下がってちょっとビックリした。いつもの高さなはずなのに、さっきまで高かったからちょっと違和感。
「……リーシャン?」
突然、私の名前を呼ぶ柔らかくて高い声が聞こえた。
お姉さんの声だと思ったけど、違う。なんかこう、聞いたことある気がするんだけど……どこで聞いたのか思い出せない。
視線を上に上げると、白色の清潔そうな服を着た、獣耳が生えた茶髪の獣族の女性がいた。
耳を見るに……猫族の人だった。