お姉さんのお家で、今日も明日もほのぼの生活   作:TTKTW

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第四十九話 たまには都合が良くても

 

 キッチンの中で、たぶんお母さんを見つけた私。

きっと、もっと大はしゃぎするようなことなのかな?分かんないけど、一緒にいた時間のほうが短いから、大泣きするほどのことじゃなかった。

 

 けど、嬉しくないわけじゃない。このローブだって、私はお母さんとお父さんが大好きだからずっと着てたわけだし!

 

「……良いんですか?」

 

 お母さんが不安そうに聞くと、お姉さんは両手を軽く自分の腰に当ててから、まるで私に話しかけるときみたいな優しい声で話し始めた。

 

 ……やっぱり、獣族好きなのかな。お姉さん。初めて会った時も、獣族検定合格とか何とか言ってたし……

 

「だって、リーシャンちゃんのお母様なのでしょう?……むしろ、私に謝らせてちょうだい。こんなにも可愛い子を世界に誕生させた人に、私はとんだ無礼を……」

 

 お姉さんがすっごい大袈裟に言ってる……い、いや、実際凄いのかな……?お母さん……。でも確かに、お母さんいないと、私は生まれてこなかったわけだし……。

 

(んー……。あ、あとそれに……私を無条件に好きでいてくれる人なんて、いっぱいいた方が良いよね。たぶん。)

 

お母さんもいるし、お姉さんも。あとアルコさんとか、ヴァロストロさん。お家に戻れば、シーアルさんだってトゥルさんだっている。…………あ、あとフォルスさんも。

 

 お母さんもお父さんもいなくなって、バイトコルの路地裏で毎日お腹を空かせて生活してた頃が、まるで幻だったみたい。

 

 ……なんて言いたいけど、流石に幻には出来ないかも。あの頃は大変だった。そして、今はすっごく幸せ。そういうふうに覚えておこうっと。

 

  あとは……そう、お父さん。お父さんはどこにいるのかな?お母さんと一緒に、変な緑の服着た人に連れてかれちゃったけど……流石に、お母さんと一緒の場所に売られてたなんて、そんな都合のいい話、この大陸じゃそうそうないよね……。

 

あんまり期待したら、違ってた時にショックを受けちゃうから、あんまり期待せずに、お母さんに聞いてみることにした。

 

「お母さん……お父さんは?……いや……さすがに、いないよね……」

  

 

 (私は奴隷商人じゃないから、詳しくわかんないけど……仲の良い奴隷二人を、同じ場所に売ることってあるのかな……?あってほしいけど、私が悪い人だったらぜったいしないと思う。だって、協力して脱走とか、できちゃう気がするし。)

 

 ……悪い人が、おバカさんだと、嬉しいな。

 

 

 お母さんが口を開くのが、とてもゆっくりに感じた。

 

 ……分かってる。どうせ「ここには……」って言葉に詰まったり、私を傷つけないために話を濁したりするんだよね。

 

 

「あはは!そうだね、リーちゃん。それ、もちろん気になるよね!」

 

 ——なんかテンション高くない?

 

 たぶん、なにかがおかしい。私の想定だと、暗い感じで話が始まると思ってたのに、なんというか……明るい。

 

 お母さんは今にも話したそうに耳をピクピク動かし、尻尾は……無いんだった。あとでそれも聞かなきゃ。

 

 

「大丈夫、ちゃんといるよ、お父さんも。リーちゃん。……お父さん、リーちゃんがいなくてちょっと無気力になってるから……会ってあげてほしいな?」

 

 ……いるの!?

  ……ここに!?

 

「どこに!?」

 

 私の声が、デッカイキッチンの中に反響した。『無気力』……とか、なんかよく分かんないけど、両親がちゃんといるなんて、私、すっごい運良くない?

 

「……ふーん……。アタシのお父上、たまにはやるじゃない。あとで味無しアルコール無しのビールでも持っていってあげようかしら」

 

お母さんは、ちょっとだけ重たそうに私をひょいと持ち上げて、「あそこの、さっきからトントン食材を切ってる人だよ」と、柔らかい声で言ってくれた。

 

 グツグツと煮られている鍋、騒がしい中、気を取り直して作業に取り掛かり始めている人達。

 

 ……そして……さっきも一回見たけど、ずっと集中して包丁を下ろしているのが一人。……それが本当に、お父さんなの?

 

 

 

 

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