お薬ふにゃふにゃ事件の翌日、私は、まだすやすやと眠るお姉さんの部屋に来ていた。
右手には……フォルスさんと一緒に作った紙の剣。
フォルスさんは「すみません、リーシャン様……私も…後処理には協力はしますが……っ……実行に移すのは……勇気が……!」と言っていたため、私だけで実行する事になった。あとでたらふくお菓子を貰わないといけない。
標的は……毛布にくるまってぐっすり寝ているお姉さんだ。
「ぎゅ~っ……と抱きしめて……私を抱き潰した……お返しだよっ!」
紙の聖剣を思いっきり振り抜き、風を切る音が私の耳に入る。
パァァァァン!!……と、気持ちの良い音が部屋に鳴り響くと共に、お姉さんの体がビクッと跳ねる。
はやく逃げて……剣はフォルスさんに燃やしてもらう!……証拠を消せば、きっとバレない!
そう思い、足早に部屋の扉まで駆け出そうとしたのだが……私の足にかかった何かにより、それは叶わなかった。
「……リィィィシャ〜ンちゃぁぁぁん〜?」
それはもう、ゴコゴゴゴッ……と空気が重くなった様に感じるほどに、とてつもない圧だった。いつのまにか、お姉さんに足を掴まれていたのだ。
「あ……っ……!」と言う間もなく、私はお姉さんのベッドの中に引きずり込まれて、寝ていたお姉さんの体温で温められた毛布の中の空気が、私の肺いっぱいに侵入してくる。
「……ねぇ、リーシャンちゃん?……こんな悪い事をしちゃう悪い猫さんには……どうするべきか…………分かるかしら?」
お姉さんが毛布の中を覗き込み、私の顔を楽しげな顔で見つめる。
「……ど、どうするべき……か……?」
「そう、どうするべきか……よ」
お姉さんは私の猫耳を慈しむようにひと撫でした後、ガッチリと肩を掴み私をベッドのシーツの上に固定し始めた。
「……正解はね?……こうよ!」
そう言い、お姉さんは私の身体を抱き寄せ、猫耳の付け根をゆっくりと揉みながら、毛布を整えてまた眠る姿勢になり始めた。
「……え、えっと……?」
「……ふぁ……お休みなさい……リーシャンちゃん……」
「すぅ……すぅ……」と、背後のお姉さんのほんのり温かい寝息の音が聞こえ始める。……さらに、トクン……トクン……と、お姉さんのゆったりとした、優しくも力強い心音が、私の身体に直接振動として響いてくる。まるでお姉さんと一体化してしまうような、そんな感覚になり始める。……完全にお姉さんの抱き枕にされてしまった。毛布の中は、お姉さんに続いて私も入った影響でさらに熱を持ち始めて、少し汗が出てきそうだ。
逃げ出そうにも、耳の付け根を触られているせいで、心地良さで上手く力が入れられない。そもそも、魔族のお姉さんの腕に捕まった時点で、逃げられないかもしれないけど…。
「……リーシャン様……!いったいどうし……あぁ……ご武運を」
いつのまにか開いていた扉が、無慈悲にもバタンと閉められる。フォルスさんの声がしたが、毛布の中にいるため顔は見えない。シーアルさんといい……フォルスさんといい……。このお家には、私を最優先でお姉さんから助けてくれる人がいないみたいだ。
猫耳を撫でる手が完全に止まり、お姉さんの意識が完全に深くまで沈んだのが分かった。……相変わらず、私が逃げれないよう、ぎゅ~っ……と抱き締められたままだけど。
(……まぁ……いいか……あったかいし……)
私もそっとまぶたを閉じ、お姉さんと一緒に、深く深く……二度寝をし始めた。