9月初週
杜王町 私立ぶどうヶ丘高校
二学期始業式の日
チャイムの鳴る5分前の1年B組の教室にて、東方仗助は夏休み直後ということもあって冬眠開けのナマズのように気だるそうにしながら、広瀬康一と雑談していた。
「東京への修学旅行、仗助君は億泰君と一緒に見て回ったんだよね?
僕は由花子さんと一緒に観光したけど、そっちは楽しめた?」
「それがよォ~、新手のスタンド使いのプッツン女が現れて大変だったぜ。
なんか女の子が殺されそうになっててよォ。あの後上手く逃げられたなら良いんだが……」
東京の路地裏で起きた出来事を仗助が康一に語ろうとする。
「えぇ!? 承太郎さんには連絡したの?」
「あァ。スタンド使いの女と、襲われてた奴の特徴を電話で伝えたぜ。
見つけたら保護してくれるって言ってたなァ」
そこまで話した所で始業をしらせるチャイムが鳴り、朝のホームルームのために担任の先生が入ってくる。
「おーし全員席に着け~。
二学期からの転校生がいるから紹介するぞ」
担任が教室に入ってきた事によって一瞬だけ静まったクラスが、再度ざわめき出した。
「よーし二人とも入れ」
教壇側の扉がガラリと開き、二人の転校生が入ってくる。
一人は紫がかった黒髪の女子で、美しい容姿に日本人離れしたエメラルドグリーンの目をしている。
もう一人はタンポポのようなトゲトゲした金髪にギザギザの歯をしており、一見すると粗野な印象を抱かせる男子。
「レゼです。よろしくお願いします。
出身はソ連です」
「デンジっていいます。
出身は、え~と良く分かりません!」
『うおおおおおおおお!!』
『レゼちゃんカワイすぎる! 好きな食べ物は!? 彼氏居るの!?』
『デンジ君! スポーツとかやってる!? ウチの部活入らない!?』
二人を見たクラス全員が大騒ぎし、二人を質問攻めにする。
そんな教室中が熱狂する中、驚愕で口を開けて声を出せない生徒が一人だけ居た。
東方仗助である。
「仗助君? どうしたの? あの二人知り合い?」
康一が心配そうに声をかけるも、仗助はやっとの事で返事をする。
「アイツらだ……
東京でプッツン女に襲われてた女子。それと、その子と一緒に逃げたヤロー」
「ええっ、ってコトはあの二人もスタンド使いなの!?」
「分からねえ。
ただハッキリ問い正す必要があるのは確かだぜ。それと転校してきた目的もな」
二人が話している間にも担任は生徒たちを静めて、転校生二人を席に着かせた。
朝のホームルームが終わり、二学期最初の一時限目が始まろうとしている。
────
昼休み開始を告げるチャイムが鳴ると仗助は立ち上がり、再び質問攻めするクラスメイト達をかき分けながらレゼの席に歩いてゆく。
「転校生の、レゼ……とか言ったな。
俺は東方仗助。悪ィけどちょっと屋上までツラかしてくんねースか」
「アンタ、あの時居た人だよな。レゼになンの用だよ」
仗助の言葉を聞いたデンジが素早く反応して立ち上がり、仗助と睨み合った。
「丁度良いからテメーも来な」
「待って仗助君、僕も行くよ!」
かくして、屋上にて仗助と康一、レゼとデンジの二対二での立ち合いになった。
────
先に口を開いたのは、この場にレゼを呼び付けた仗助だ。
「アンタが何で東京で襲われてたのかはどーでも良い。
俺が訊きてェのは、アンタが『スタンド使い』なのかって事だ」
そう言うと同時に、自身のスタンド『クレイジー・ダイヤモンド』を出現させる。
「レゼッ、危ねえ!」
それを見たデンジが学生服のシャツの隙間からスターターを取り出し引こうとするも、レゼが片手で制す。
「あの日助けてもらった事には感謝してる。
そして私とデンジ君はスタンド使いじゃない。」
レゼは、仗助の斜め前方に突如現れた人型のヴィジョンを見て、警戒を強め首のリングに手を掛けながら答えた。
「グレート。やっぱり見えてるみてーだな、俺のクレイジー・ダイヤモンドが。
別に敵対するつもりはねえスよ。だが、スタンドが見えるのにスタンド使いじゃあないってのはどういう事だ……?」
「あの後、もう一度魔女……あの赤毛の女に追い詰められそうになった所を、スピードワゴン財団の空条承太郎って人に助けて貰ったの」
あの日、路地裏からレゼとデンジが逃げ、マキマが去った後、仗助は路地の先の階段を降りた所に見つけた電話ボックスで、以前承太郎から貰った連絡先に電話した。
そこでマキマを新手のスタンド使いとして誤認したまま報告し、その時起こった事を伝えていたのだった。
「その後スピードワゴン財団に保護してもらって、そこでスタンドについての説明も受けた。財団に協力する代わりに住む所と学校生活を用意して貰ったの。
詳しくは言えないんだけど、私とデンジ君は悪魔と関わりがあるの。そのせいでスタンドが見えるんだろうって財団の職員が言ってた」
レゼが承太郎の名前を出し、事情を説明して少し場が落ち着いた為か、それまで黙っていた康一がここで口を開いた。
「悪魔って、あの『悪魔』?
杜王町では滅多に出ないけど、東京の方では結構出るらしいね」
つられてデンジも口を開く。
「そういやアンタは東京であの時居た不良っぽいヤツとは別のヤツだな。教室には居なかったけど」
「不良っぽいヤツって……それは隣のクラスの億泰君のことだね。
僕は広瀬康一。僕もスタンド使いなんだ」
不良と呼ばれ真っ先に思い浮かんだ億泰の姿に笑いそうになりながら、康一も自身の『エコーズACT1』を出現させる。
「へェ~! なんかこっちのはちっこくてカワイイなぁ!
そっちのピンクのヤツとか、承太郎って人のヤツもムキムキでカッコ良かったけど」
「おォよ! なんてったって承太郎さんの『スタープラチナ』は最強だからなァ」
自身と身内のスタンドをデンジに褒められた仗助が少し照れ臭そうにしながら言った。
「事情は大体分かったッス。これからクラスメイトとしてよろしく頼むぜ。
引っ越してきたばっかりッスよね? もし良かったら、放課後に杜王町を案内がてら買い食いにでも行かねえスか?」
仗助が警戒を完全に解き二人にそう言うと、レゼとデンジはその誘いに乗った。
「買い食い! なんか高校生っぽくて良いなァ~!
俺アイス食いたい!」
「出たアイス! 二道でも好きだったもんね~デンジ君」
「グレート! 決まりだな。
億泰と一緒に放課後校門前で待ってるぜ」
「僕は由花子さんと約束があるから、残念だけど仗助君と億泰君に任せるよ
それより、早く行かないと購買売り切れちゃうよ?僕は由花子さんの作ってくれたお弁当があるから良いけど」
康一がそう言うと仗助はハッとして焦りだした。
「ヤベェぜ! 今朝はおふくろが忙しくて弁当無いんだった!」
「レゼ! オレらも行かねェと!」
「うん! でもデンジ君、こういうのも高校生っぽくて良いね」
そうして四人は急ぎ足で購買へ向かった。
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放課後、四人は杜王町を散策した。
デンジは億泰お気に入りのアイスクリーム屋でストロベリー&チョコチップアイスを大喜びで食べ、その後レゼは駅前のカフェ ドゥ マゴでコーヒーを楽しんだ。デンジも強がってコーヒーを注文したが、飲んだ時の顔を見た仗助と億泰に馬鹿にされたりと、憧れの『普通』の高校生らしい楽しい放課後を過ごした。
TO BE CONTINUED