※ナポリの方言
デンジとレゼが杜王町に引っ越してきて初めての土曜日。
土曜日なので学校の授業は午前で終わりであり、週末ということもあって道行く人々も平日より多い。
仗助達に杜王町を一通り案内してもらったとはいえ、まだまだ街には疎いデンジとレゼ。
初めての週末ということで、街を見ながら歩き、どこかで外食をして帰る事にしたのだ。
「腹減った~! レゼ昼メシ何食いてえ?
金なら財団から振り込まれた分があるから何でも食えるぜ!」
「バカ舌のデンジ君はどうせカレーとチャーハンとアイスでしょ~?
う~ん、とりあえず駅前の亀友デパートのレストラン街を見てみよっか」
レゼは昼食の内容について喋りながら、その幸せを噛み締めていた。昼食に何を食べるか自由に選べるなんて、なんて自由で、なんて素晴らしいんだと、そう想いながらデンジと繋ぐ手の感触を確かめる。
二人が亀友デパートの入口を入ろうとした時、建物の中からスケッチブックを持った男が出てきた。
先日レゼに自宅と自身を爆破された岸辺露伴である。今度は本当に偶然だ。
「ゲッ! 露伴の野郎!」
「また私たちに『取材』しようっていうなら……」
二人は敵意剥き出しで露伴を警戒する。先日の出来事を鑑みれば当然だったが。
「オイオイオイオイオイオイ!
そんなに邪険にする事はないんじゃあないか?
今度メシ奢ってやるから、またインタビューって形で取材させてくれよ」
先日の取材での失敗を全く懲りていない露伴は、二人に再び取材の誘いを持ちかけた。
「えっ、マジ!?」
「デンジ君はチョロすぎ!」
露伴の出した条件に即座に食いついたデンジを、レゼがたしなめた。
「なにせこの僕は今まで多種多様なレストランを取材してきたからな。
最高級のフレンチコースだって奢ってやるぜ? もちろんそこの彼女も一緒に。
まぁ、今日は編集の人間とランチミーティングがあるから無理だけどな」
「フレンチコース……聞いたことあるぜ! なんかスゴイやつなんだろ?」
「デンジ君絶対分かってないでしょ……
私が居ない所で知らない人に付いて行っちゃ絶対ダメだからね?」
空腹からか、未だ見ぬフランス料理の姿を夢想するデンジを正気に戻すべく、レゼがデンジの肩を掴んで揺らした。
目の前でカップルがイチャつき始め、面倒になってきた露伴が話題をズラすべく二人に言った。
「そういえば君たち、これから昼食かい?
だったら、オススメのレストランがあるよ。二人で行ってきたらどうだ?」
露伴の突然の提案に、デンジとレゼは疑ってかかる。
「え~? とか言ってそれも罠なんじゃねえの?」
「言っただろ、今まで色んなレストランを取材してきたってな。
誓って言うが、これから紹介する店はその中でも一番中の一番だ。
この前のお詫びもかねて、この僕が親切心で教えてやるんだぜ?」
あまりに自信満々に言う露伴に、二人の興味もその店へ向き始めてきた。
「そこまで言うんなら行ってみようぜ!
レゼも良いか?」
「うーん、危なそうだったらすぐ出れば良いし、行ってみるだけだったら……」
「決まりだな。
駅前のこの先の道を線路沿いに行った先に霊園がある。国見峠霊園行バスに乗ればすぐだ。
バス停から1分ほど歩いた所にある霊園前のイタリア料理の店がそれだ。途中で店の看板があるから、見たら分かるだろうさ」
道筋を説明した所で、露伴を呼ぶ女性の高い声が響き渡った。
「露伴せんせぇ~~!!
やぁ~っと見つけましたよぉ~!
これからミーティングなのにどこ行ってたんですかぁ~!?」
露伴の担当編集者の泉京香だ。
「チッ、まったくうるさい奴だよ。
街中であんな大声だして、目立ってしまってしょうがないじゃあないか。
ま、行くか行かないかは君たち次第だ。じゃあそういう事で、僕はこれで失礼するよ」
そう悪態を付くと、露伴は二人の前から去っていった。
かくして、デンジとレゼは露伴オススメのレストランへ向かうべく、自宅とは反対方向のバスに乗った。
だが、面白そうだからと露伴があえて伝えなかった事があることを、二人はまだ知らない。
────
霊園前のバス停から降りた二人は、霊園の方向へ向かって歩き始めた。
秋の彼岸の直前という時期もあり、墓参りに行く人は少ない。駅前の商店街から離れると、人もまばらである。
「本当にこんな所にレストランなんてあるのかよォ?
露伴のヤロォ、騙しやがったら次こそ許さねえぞ」
「あっ、でもデンジ君見て! 看板があるよ!」
『イタリア料理
トラサルディー
←ここ左折100m先』
レゼが看板を見つけて、店が実在することに一安心するも、周囲の人通りの無さに不安は拭いきれない。
「こんな所に店出して商売になるのかな?
二道よりお客さんが来なそうな所にあるけど……」
かつて自分がアルバイトしていた喫茶店、そこの優しかった主人の顔を思い出した。
「きっと通好みの店なんだろうぜ! まぁ行ってみたら分かんだろ!」
「通好みって……。
キミはバカ舌だから何食べてもどうせ美味しいんだろ~?」
「でもレゼの手料理が一番おいしいよ」
「もう! 調子良いんだからホントに」
二人は霊園へと歩みを進める。
────
『トラットリア・トラサルディー』
静かな霊園のそばに、確かにその店はあった。
調理用のかまどがあるのだろうか、二階建ての一軒家の煙突から煙がゆらゆらと立ち上っていた。
『本日の料理
お客様次第
コーヒー・デザート付き
3500\EN より』
店頭に立てられた看板を見たレゼは訝しんだ。
「お客様次第ってどういうこと?」
「まぁいいから入ってみようぜ。
スイマセェーン! 二人でーす!」
デンジが無遠慮に店のドアを開く。
店内は広々とした空間が広がるも、テーブルは二つしか無かった。
その内片方のテーブルには二人組の女性客がおり、ちょうど食べ終わって会計を済ませる所だった。
入店したデンジとレゼにコック帽を被った店主が気が付き、挨拶をする。
「いらっしゃいマセ。
今こちらのお客様のお会計をいたしマスので、こちらのテーブルにお座りになってお待ちくだサイ」
店主は白人であったが、流暢な日本語で案内した。
テーブルから立ち上がった女性客達とすれ違う。
一人はレゼと同じくらいの背丈の白髪の少女で、美しい顔にはいくつかのほくろがあり、それがまた少女のミステリアスな美しさを際立てていた。耳には長いピアス、そしてその紫の同心円状の瞳からはなんの表情も読み取れなかった。
もう一人はスラっとした長身の美人で、閉じているのか開いているのか分からないほど細い目に、こちらも感情の読めない微笑みを浮かべていた。
盗み聞きをするつもりは無かったが、退店する二人の会話が聞こえてきた。
「どう? 参考になった? 落下。
私はやっぱりナポリ風ピザが美味しかった」
「ええ、ええ。とても素晴らしい料理の数々でした。
同じ料理人として、大変良いインスピレーションを頂きました」
「グラッツェ。またのお越しをお待ちしておりマス」
レゼはその二人のことが少し気になったが、変な呼び名だなという程度しか思わなかった。
そんな事を考えていたら、店主がデンジとレゼに向き直った。
「ようこそいらっしゃいました。
ワタシ、イタリア人のトニオ・トラサルディーといいます。
お客様、大変ラッキーですよ。今日はあと二人分の食材しか残っていないのデス。先程のお客様が沢山おかわりをされまシタから」
そう言われて隣のテーブルを見ると、大量の皿が積み上がっていた。
「マジ!? 危なかった~。
無駄足にならなくて良かったぜェ~!」
「ホントにラッキーだったねデンジ君。
それじゃあメニューを頂けますか?」
しかし、トニオはメニューを持って来ようとはしない。
「メニュー? 献立表(リスタ)のことですか?
そんなもの、ウチにはないよ……」
その返答に少々面を食らってしまったデンジとレゼ。
デンジとレゼが怪訝な顔をしながらトニオに尋ねた。
「えっ、メニューがねーっつーのはどういうこった?」
「一種類のコース料理のみってことですか?」
その二人の反応にも、トニオは心得ているといった表情で答えた。
「ノンノン。ワタシの店では、ワタシがお客様を見て献立を決定するのデース」
「えぇ!? 俺カレー食おうと思ってたのにィ!」
イタリア料理店らしからぬデンジの言葉に苦笑いしながらも、トニオは続けた。
「お客様、チョット手を失礼します。
フゥーむ、アナタ…今は良くなっているようですが、以前心臓が良くありマセんでしたネ。
そのセイで身体のあちこちに少しずつ悪い所がありマス」
「え!? なんでそんなこと分かんだ!?」
デンジはポチタと融合する以前の体質を思い出し、それを見抜かれた事に驚愕した。
「それにアナタ、胃腸の具合も良くないようデス。何か悪いモノでも食べまシタか?」
デンジは悪食であるため、悪くなった食べ物や、そもそも食べ物でない物などを度々口にする。昨日も道に落ちていた飴玉を拾い食いしていたのだった。
「デンジ君、またお花でも食べたの?」
レゼは呆れつつも、あの電話ボックスでデンジから渡された花を思い出していた。あの瞬間が、二人で過ごす今に繋がっているのだ。
そんな事を考えていたら、今度はトニオはレゼの方を向いた。
「シニョリーナ(お嬢さん)の方も失礼。
ここ最近、寝不足が続いていマスね。昨日も5時間くらいしか寝れてませんですネ? それと、肩コリもありマス」
トニオはレゼの手と顔も見ると、その体調に正確な診断を下した。
「あ、当たってる……」
レゼはここ数日間、初めて通い始めた学校の勉強に付いていく為、朝早くに起きて勉強していたのだ。
ちなみにもちろんデンジはそんな事はしていない。
「ワタシは両手を見ればその人の肉体全てがわかりまス。
世界中を旅して、様々な知識や技術を研究しました。そしてワタシの祖国、イタリア料理に取り入れたのデス」
二人がトニオの説明を唖然としながら聞いていると、トニオはハッとして手に持った水差しからグラスに水を注いだ。
「オー! ゴメンナサイ!
説明が長くなってしまいマシたね。
お二人にお出しする料理は決まりました。今、調理して参りまス」
そう言うと、呆気にとられる二人を尻目にトニオはにこやかに厨房へ去って行った。
「何かスゲェー飯が出てきそうじゃねえか!? 楽しみになってきたなァ!」
「デンジ君、やっぱりちょっと怪しいよ。
あの岸辺露伴の紹介だし、きっと何か裏があるのかも……」
「大丈夫だって! 何かあったらスターター引いて起こしてくれよ!」
「まったくもう、はしゃいじゃって……」
そう言ってデンジはグラスの水を飲み干し、喋って乾いた喉を潤した。
喉が乾いていなかったレゼは、この時はまだ水に手を付けなかった。
10分後
トニオが前菜の皿を持ってテーブルに来た。
「アンティパスト(前菜)は、『仔牛のカルパッチョ』でス」
その皿には半生の牛肉が花びらのように盛られていて、そこにルッコラとバジルの葉、そしてスライスしたパルミジャーノチーズが乗せられ、茶色のソースがかかっていた。
「カ、カルッパ?」
聞き慣れない料理名に、デンジがオウムのように聞き返す。
「カルパッチョです。
薄切りした牛肉に、バルサミコ酢やマヨネーズをベースにしたソースと、オリーブオイルをかけた料理のことデス。日本ではタイなどのお魚が使われることが多いデスが、本場イタリアでは牛肉の料理なのです。
さっ! 召し上がってみてクダサイ」
「いただきまァす!」
「頂きます」
空腹だった事もあってか、二人はすぐに料理に手を付けた。
最初にリアクションを取ったのはデンジだった。
「うンめェ~~~!!
なんだこれ! 俺こんなウメェ料理食った事ねェ!
なんかしょっぱくて、ちょっと酸っぱくて、しっとりしてて!」
「食レポ下手クソすぎるでしょデンジ君……。
でも確かに凄く美味しい! やわらかい牛肉の脂肪分にソースの酸味が、そしてチーズの塩気と合わさって、口の中でハーモニーを奏でてるみたい!
例えるなら、喫茶店に対するジャズ音楽、映画に対するポップコーン、私に対するデンジ君みたいにッ!
財団の施設の食事も美味しかったけど、それとは比べ物にならない美味しさだよこれ!」
そう言うとレゼは、塩気のある料理を食べた為、グラスの水を一口飲んだ。
前菜に感動する二人を見て、トニオもニコニコと満足気な表情をしている。
「このお水もとっても美味しい! ミネラルウォーターってこんなに美味しかったんだ……」
出された水の美味しさに感動し、レゼはグラスの水を飲み干した。だが、その後段々と様子がおかしくなってきた。
「あ、あれ? なんだか私、美味しすぎて泣けてきちゃった……」
「おいおいレゼ、確かにウマいけど、そんな泣くほどかぁ?」
デンジがそう言う間にも、レゼの瞳から涙が止めどなく溢れてくる。
「ごめんデンジ君、悲しくないのに、涙がでちゃう。
なんかどんどん泣けて来ちゃうよぉ……」
レゼは自分がソ連の弾薬庫で育ったから泣くほど感動しているのかと思ったが、泣いている内にその涙の量の不自然さに気付き始めた。
「待ってデンジ君、何かがおかしい! 人の身体から一度にこんなに涙が出るはずない!」
「レゼ、大丈夫か!?」
泣き続けるレゼに、まるであらかじめ用意していたかのようにトニオがおしぼりを手渡す。
「良かったらこちらで涙をお拭きクダサイ。
そしてシニョール(お兄さん)の方も、シャツを脱ぐ事をオススメします。
お召し物が汚れてしまわないヨウに……」
そう言われたデンジは、突如として腹痛を感じ始めた。
「ウッ! ハラが痛てえッ! 突然ハラが痛くなってきたァーッ!
でも、うンめェ! ウマすぎて食べるのがやめらんねェよォ!
幸せだ! ポチタ! 俺ァ今幸せだよォ!」
「デンジ君!? もう食べちゃだめ! この料理何かがおかしい!
あなた、デンジ君に一体何をしたの!?」
レゼが大粒の涙を流しながらトニオに詰め寄ろうとした時、食べ続けていたデンジのお腹がその限界を迎えた。
バガァッ!!
デンジの腹部が爆発し、その内臓が飛び出した。
そしてレゼの方も、ダバダバと涙を流し続けた眼球がしぼんでフニャフニャになってしまった。
「あ、ああぁ……
デンジ君……ごめんなさい、私が油断したばっかりに……」
この男は悪魔か刺客か、レゼの滲む視界の中、まんまと罠にハメられ一巻の終わりだと思った。
しかしその時、この惨状の首謀者であるトニオが口を開いた。
「落ち着いテ! ドーカ慌てないでくだサイ。
お二人の身体に起こった事は一時的なものデス。
ワタシは自分の料理に誇りをもってマス。お客様の健康を害するものは決してお出ししマセん」
トニオがそう言うと、レゼの滲んだ視界も段々とクリアになってきた。
周りが見えるようになると、真っ先にデンジの安否を確認する。
「デンジ君大丈夫!?
お腹が凄いことになってたけど、まだ生きてる!?」
「いやァレゼェ!
ハラの具合がスッキリしたよォ~!
調子が治ったせいか、ますますハラが減ってきたぜェ!」
レゼの本気の心配をよそに、五体満足のデンジから返ってきたのは脳天気な答えだった。
「ベネ(良し)。
シニョリーナの方も、寝不足がスッキリしているハズです」
「た、確かに……。
勉強の寝不足と眼精疲労が、まるで10時間寝たみたいにスッキリ治ってる……」
レゼが自分の身体のコンディションを確認すると、首のピンに手をかけ、その『漆黒の意思』を目に宿してトニオを警戒する。
「あなた、一体何の悪魔?
一体何が目的で、私たちにこの料理を食べさせたの?」
レゼが尋問するも、トニオは真剣な表情で返した。
「『ディアブロ(悪魔)』?
ノンノン! ワタシは人間です、シニョリーナ。
最も、世界中を巡る修行の旅の中で出会った『料理の悪魔』から契約を持ちかけられた事もありましたがネ。
ワタシは自分の料理に誇りを持っていマス。悪魔の力など使わずとも、自分の力のみで人を感動させる料理を作る……例え相手が悪魔であったとしても。
料理人にとって、他に何があるって言うのでショウ?
ソレがワタシの生きがい、ワタシの望む全てデス」
「悪魔でも契約者でもない?
それじゃあ、あなたの目的は本当に私たちに良い料理を食べさせたいだけって事?
岸辺露伴といい、どうしてこの街には一つの事に偏執的な人間ばかりいるの……?」
未だに信じられない様子のレゼが無意識に出した名前に、今度は驚いたのはトニオの方だった。
「オーッ!!
アナタたち、露伴先生のお知り合いデスか!? これは失礼致しましタ。
それでは、アナタたちも『スタンド使い』なのですか?」
そう言うと、トニオは自身のスタンド、『パール・ジャム』達を浮かび上がらせた。
「なっ、これはスタンド!?
あなたはスタンド使いなの!?」
「なんか昔戦ったトマトの悪魔に似てるなァ」
前菜を食べてますます空腹になったデンジが、パール・ジャムを見てポチタと過ごした日々をぼんやり思い出した。
レゼに質問を返されたトニオは、自身の出自を明らかにした。
「これはワタシのスタンド『パール・ジャム』。
パール・ジャムは料理に仕込んでおくコトで、食べた人が抱えテいる傷や体調不良をたちどころに治せるのデス。
ワタシの理想とスル料理を求めて世界中を旅していた時に、ハジめて自分のこの能力に気付きました。
しかし故郷では認められず、この杜王町に店を出したのデス」
「私たちはスタンド使いじゃないけれど、事情があってスタンドが見えるんです。
まさかスタンド使いのお店だったとは……」
トニオに害意が無い事を確認したレゼは、警戒を解きピンから手を離した。
店を紹介するに当たって事情を説明しなかった露伴を後でシメると心に決めていたが。
「でも何で俺は水飲んでも平気だったんだ?」
「それは確かに……私も前菜のお肉を食べても何とも無かった」
トニオの能力を明かされた二人は、何故お互いに同じ物を口にしたのに違う事が身体に起こったのか疑問に思った。
「それは、シニョールは昨日バッチリ睡眠を取っているからデス。睡眠不足が治るのは、睡眠不足の人だけ……。
逆にシニョリーナは、お腹の具合は悪くなかったので何も起こりませんでシタ。
中国には、薬食同源という言葉がありマス。
ワタシの料理を召し上がって心身共に健康になって頂き、その上で料理を気に入って下されば、それがワタシにとって至上の喜びなのデス。
お二人共、ドウカごゆっくりお過ごしクダサイ。
それでは次の料理、パスタを調理して参りマス」
そう言うと、唖然とする二人を尻目にトニオは厨房に帰って行った。
「なんだか……凄いお店に来ちゃったね、デンジ君……」
「ああ……俺は今まで料理ってのは食えれば何でもウマイと思ってたけど、奥が深いんだなァ……」
この後二人は、武器人間としての変身や再生では治しきれないような疲労や身体の不調も改善し、トニオのコース料理をデザートに至るまで心ゆくまで楽しんだ。
一品食べるごとに身体の部位が派手に破壊と再生されるのには面を食らったが。
────
かくして、二人は杜王町での新しいお気に入りのレストランを開拓し、予想外の出来事はあったものの楽しくランチデートを終えることが出来た。
その後露伴は、今度は生身のレゼの襲撃を受け、ソ連仕込みのシステマで絞め落とされそうになった所をデンジに止めてもらった。
助けてもらった恩として、今度は二人にトラットリア・トラサルディーのディナーコースを奢る約束をさせられたそうだ。
自宅と家財をほとんど失った露伴には、手痛い出費となった。
TO BE CONTINUED