デンジとレゼは砕けない   作:Nキング

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しばらく投稿に間が空いてしまいました。

杜王町での日常で書きたい事はあらかた書いたので刺客編の構想を練っていたのですが、サンタクロースの扱いが難しすぎて困っています。杜王町にはあんまり被害を出したくないので……。

刺客編はもう少しお時間を頂ければと思います。


デンジとレゼの奇妙な日常

 デンジとレゼが杜王町に引っ越してきて一週間と少しが経った。

 

 私立ぶどうヵ丘高校に転入してきた当初こそクラスで浮いていた二人だったが、同じクラスに居る仗助と康一という共通の友人の協力もあって、順調にクラスにも馴染んできていた。

 

 ちなみに二人が彼氏彼女の関係なのは周知の事実となっており、その仲の良さからクラスメイト公認のカップルとなっている。

 

 しかし、レゼは転入当初から美人でミステリアスな転校生と噂で持ち切りだった為、恋人が居るのを知ってか知らずか学年問わず男子に言い寄られたりラブレターを送られたりと苦労していた。

 

 まぁ最もレゼにも全くその気がある訳が無く、その度に慌てたり怒ったりするデンジの反応を楽しみながら、言い寄る相手にはピシャリとお断りするのが定番のイベントとなっていた。

 

 ちなみに、デンジも女子から悪くない印象を抱かれていた。が、デンジへの視線や態度を察知する度にレゼが睨みを効かせていたため、デンジは未だに自分がモテてない男だと思い込んでいた。

 

 そんな二人の評判もある程度定着した頃のある日、デンジとレゼは仗助と億泰と一緒に下校していた。

 

「二人もトニオさんとこ行ったのかぁ~! どうだった? 美ン味かったろォ~?」

 

 先日二人がイタリア料理店でした体験を語ると、トラサルディーのいちファンとして億泰が嬉しそうに言った。

 

「億泰も知ってる店だったのかよォ。

 でもスゲー美味かったぜ! なんか途中で出てきた課長?みたいな名前のスパゲッティーが好きだったなァ~。

 オレァ貧乏で食えるモンなら何でも食ってきたけど、あんなに美味い料理は初めて食ったぜ!」

 

「『カチョ・エ・ペペ』だよデンジ君。

 でも、食べた時に毎回身体が作り直されるのにはビックリしたよ。美味しかったけどね」

 

 悪魔の心臓を持つ二人は変身の際に身体の一部が破壊と再生される為、トニオから一度説明を受けて以降はある程度慣れたものだったのだが、それは仗助と億泰の知る所ではない。

 

 そんな風に四人が談笑しながら歩いていると、向かいから男子高校生が三人の女子をはべらせながら歩いてきた。

 

 側頭部を刈り上げたツーブロックの髪型、口元には自信のある笑み、そして顎には『H☆S』というタトゥーが入っている男だった。

 

 スタンド『ハイウェイ・スター』の持ち主、噴上裕也である。

 

「裕ちゃ~ん! 聞いてよぉ~! この前パチンコ屋でアケミがあたしの台取ったのォ~!」

 

「あれはあたしが元々打ってた台だったのよッ! それよりねぇ裕ちゃん何か食べに行こぉよォ~!」

 

「この間裕ちゃんと食べに行ったレストランすごかったねぇ。また『あーん』してあげるからねぇ~」

 

「オイオイお前ら、仲良くしろよなァ~。 それじゃあ喫茶店でも入るとするかァ!

 ん、この匂いは……よォ! 仗助じゃあねえかァ! オメェも今帰りか?」

 

 三人の女子高生に囲まれた噴上は何かに気付いたように鼻を鳴らすと仗助を発見し、気さくに話しかけてきた。

 

 仗助と噴上は、以前『エニグマ』のスタンド使いである宮本輝之輔を相手に共闘した間柄だ。

 

「よッ、噴上! 康一を探してもらった時以来だなァ!

 相変わらずみてーで安心したぜ」

 

「あぁ。おめえも元気そーだな、仗助。

 今日はこれから俺の大事な女たちの相手してやんなきゃなんねーから、またな!」

 

 噴上はそう言うと、取り巻きの女子達の黄色い声を受けながら去って行った。

 

 噴上が去った後、その方向を呆然と見つめていたのはデンジだ。噴上が去って数秒経って、羨ましそうに腹の底から絞り出した声を上げた。

 

「すげええ……! スゲえモテてるう~……!

 彼女が三人もとか、そんなのアリかよお~……!」

 

 その瞬間、レゼの表情が消失したのを仗助と億泰は気が付いた。

 

「デンジ君はさ、やっぱり彼女沢山欲しい?」

 

「そりゃ前は彼女五人とか十人くらい欲しいと思ったコトあるけどォ……。

 いや、違くてえ! 今オレが超好きなのはレゼだよッ!」

 

 つい条件反射で本音を答えてしまったデンジだったが、シベリアの永久凍土のようなレゼの雰囲気に気付き、焦って好きだと伝えるも時既に遅かった。

 

 デンジに好きだと言われたレゼは嬉しそうに口元を微笑ませたが、その目は据わっていた。

 

「正解! 天才!

 でも今日この後デンジ君にはしっかりと、デンジ君が誰の物なのか、そして私が誰の物なのかを『復習』する必要があるみたいだね」

 

「は、はいィ!」

 

「それじゃあ、仗助君と億泰君はまた学校でね」

 

 レゼはそう挨拶すると、デンジと手を繋ぎ半ば引きずるようにして去って行った。

 

 この後デンジは自宅でたっぷりレゼと『勉強』させられるのだろう。

 

「仗助よォ。由花子の時も相当なプッツン女だけ思ったけど、レゼもありゃ同類だぜェ」

 

「あぁ……。でも人間関係だけは俺のクレイジー・ダイヤモンドでも治せねーからなァ。デンジが自分でケジメ付けるしかねェぜ」

 

 段々とデンジとレゼの関係性を理解してきた二人は、マズいモノを見てしまったという面持ちで帰路についた。

 

 

 

────

 

 

 

 別の日

 

 レゼは日直であった為放課後に雑用をこなす必要があり、普段より下校するのが遅くなっていた。いつも一緒に帰っているデンジは、仗助、億泰、康一の三人と一緒に先に帰ってもらっている。

 

「レゼさん。あなたも今帰る所?」

 

 下駄箱で靴を履き替えて、校舎から出ようとした所で、別の女生徒に声をかけられた。山岸由花子だ。

 

「由花子さん。うん、日直でちょっと雑用があって」

 

「良かったら途中まで一緒に帰らない?

 掃除当番で遅くなっちゃって。今日は康一君には先に帰っててもらったの」

 

「良いよ。デンジ君もちょうど康一君たちとおしゃべりしてるだろうし、駅前まで一緒に行こうか」

 

 レゼと由花子は初めて会った日以来、校内で顔を合わせれば軽い挨拶をしたり、康一とデンジを含めて四人で昼食を囲んだりと良い友人関係を築いていた。

 

 レゼは由花子の誘いを快諾すると、二人で校舎から出て歩き出した。

 

「でね~、その時のデンジ君の慌てっぷりって言ったら……」

 

「デンジ君ってとっても面白いわね。もし康一君もそんな事を言ったら私また『教育』しちゃうかも……」

 

 二人はにこやかな雰囲気で自分の恋人について雑談しながら歩き、校門を出た所で由花子がレゼに質問を投げかけた。

 

「レゼさんは、デンジ君のどんな所を好きになったの?

 彼があなたにゾッコンなのは見てすぐ分かるけれど、レゼさんはどうなのかなって」

 

「ん~……。デンジ君のカワイイ所を挙げたらキリが無いけど、一番の理由はやっぱり……私の全てを受け入れてくれた所かな」

 

「全てを? 何があったのか聞いても良いかしら?」

 

 どう答えた物かとレゼは少し考えて、しかし同じ愛する人を持つ者として由花子を信用し、細部はぼかしつつも事情を話す事にした。

 

「実は私、最初にデンジ君に近づいたのは、デンジ君の大切な物を盗むためだったの。命令されて仕方なくだったんだけど、それでもデンジ君に危害を加えようとしたのは事実。

 最初に出会った時に盗む事もできたんだけど、その時デンジ君は初対面の私にお花をくれたんだ。

 私の一目惚れだったなあ」

 

 それからレゼは、おおまかの経緯を由花子に語った。

 

 自分がバイトしていた喫茶店に毎日通いに来てくれた事、デンジを自分に惚れさせるつもりが自分の方が惚れてしまっていた事、夏祭りでデートした末に一世一代の告白をするも断られてしまった事。

 

「そこから色々あって、私が到底許されないような悪いことを沢山したんだけど、デンジ君は全てを知った上で、私に一緒に行こうって言ってくれたの。

 もちろん、もう悪いことなんてするつもりは無いよ? でも、例え私がどんなに悪人でも一緒に居てくれるって言ってくれた。

 それが、私がデンジ君と一緒に居る理由かな」

 

 レゼの話を聞いた由花子は、自分と康一のことを思い出して共感していた。

 

「デンジ君と付き合うまでにきっと沢山辛い事があったのね……。お話ししてくれてありがとう。

 でもレゼさん、あなたは『赤い糸』で結ばれた素敵な『運命の愛』を見つけられた。あなたのお話とっても良く分かるわ」

 

「ありがとう。

 そういう由花子さんは? 康一君とはどうして恋人になったの?」

 

「最初は私の方から告白したの。康一君って勇気と信念を持った男の顔をしているって、私から好きになったわ。

 一度は拒絶されたりもしたけれど、でも私が辛い時に助けに来てくれて……」

 

 そして由花子の方も、自分を信用して話を聞かせてくれたレゼに応えるべく、康一との馴れ初めを語った。

 

 自分の方から康一に惚れて、しかし自分が暴走し康一に酷い仕打ちをしてしまった事、その後エステサロンで自信を付け初のキスまでした事、でも過ちで自らの顔を失ってしまった事、その時文字通り顔を失った自分を見つけ出して性格が好きになったと言ってくれた事、そして、由花子が見えないのなら失明しても良いとまで言ってくれた事。

 

「康一君は私の運命の人よッ! 康一君以外の人なんて考えられないわッ! もし私たちの仲を引き裂こうとする者が居るならば……!

 ……いえ、ごめんなさい。私ったらちょっと熱くなりやすい性格なのよ、恥ずかしい……」

 

 由花子が一瞬だけその目に『漆黒の意思』を宿すも、すぐ冷静になって頬を赤らめた。

 

「ううん、大丈夫。少し驚いたけど、気持ちは分かるし……。

 でも、良いなあそういうの。私にも由花子さんと康一君との仲、ぜひ応援させて!」

 

「ありがとうレゼさん。私もあなたたち二人のこと、応援してるわ!」

 

 レゼにとっても由花子は『恋』というものを知っている貴重な友人だ。そして康一との馴れ初めを知った今、なおさらこのカップルのファンになってしまった。そしてそれは由花子の方も同様に、デンジとレゼというカップルのファンになった。

 

 そうしてお互いの親交を深め合った二人は、今度はお互いの彼氏について自慢や笑える愚痴を言いながら歩みを進めるのだった。

 

 

 

────

 

 

 

 レゼと由花子が互いの恋バナに花を咲かせている頃、学校帰りの仗助、億泰、康一、デンジはOWSONの横でダベっていた。

 

「三人とも見てくれよォ~! これ、俺がとあるルートから仕入れたエロ本なんだけどよ……。

 なんとッ! 海外モノなのよーッ!」

 

 スケベな笑みを浮かべつつ、興奮しつつも小声で話すのは当然億泰だ。

 

 そして、得意気な億泰に真っ先に反応したのはデンジだった。

 

「マジかよ億泰ッ! み、見てェッ! 早く見せてくれッ!」

 

「おおっと待ったデンジ。俺だってこれを手に入れるのは苦労したんだぜェ?

 回し読み一人一回500円だ」

 

「金取るのかよォ~!」

 

 そう言いつつもすぐに制服の尻ポケットから財布を取り出す。財団から毎月口座に協力報酬が振り込まれるが、口座管理はレゼがキッチリ行っているため、デンジが自由に使えるお金はそれほど多くない。

 

 そして500円という金額は、小遣いの中でギリギリ払っても良いかなという気にさせる上手い金額設定だった。 

 

「オメェらも見てェだろ? ホラホラどうすんだよ?

 早く決めねぇと順番がデンジの後になっちまうぜェ?」

 

 財布とにらめっこして悩むデンジを横目に、億泰は仗助と康一にも話を振る。

 

「お、オレァ後で良いよ。デンジに譲るぜ」

 

「僕は由花子さんにバレたら今度こそ殺されちゃいそうだし、やめとくよ……」

 

「なんだよオメェらァ~。ツレねぇなァ~」

 

 そうこうしている内に、デンジが財布から500円玉を取り出して億泰に差し出した。

 

「オッ、まいど~! このスケベめェ~!」

 

「しょーがねえだろ! エロに腹は変えられねぇ!」

 

 そうしてデンジが受け取ったエロ本を開こうとした時、とても聞き覚えがある声が聞こえてきた。

 

「それを言うなら『背に腹は変えられない』だよ。デンジ君?」

 

「レッ……レゼッ……」

 

 レゼがにこやかな笑みを浮かべながら由花子と一緒にやってきた。

 

 デンジはヘビに睨まれたネズミのように金縛りになり、しかしその顔には滝のような汗をかいていた。そして愛しい恋人の方へ、錆びついた器械のように振り向いた。

 

「デンジく~ん? 随分楽しそうだけど、何見てるのかな?」

 

「いやッ……これはァ……そのォ、勉強って言うか……」

 

 苦しい言い訳である。科目にするなら保健体育だろうか。

 

「俺が本当に好きなのはレゼだけだよォ!

 でもチンチンが! 俺のチンチンが悪さをしててェ!」

 

 もはや半泣きの開き直りである。

 

「プッ……デンジ君の、チッ、チンチンがっ、別の人格を持ってるの……?

 お金まで払って……だ、ダメだ……あははははは! 面白すぎるっ!!」

 

 デンジの必死の言い訳を聞いた瞬間、表情操作の技術はどこへやら、堪えきれず吹き出してしまう。

 

 ワハハハハハハ!!

 

 それにつられて周りのみんなも大笑いした。

 

「ハァ~。まったくスケベなんだから。でもまぁ、デンジ君も男の子だからしょうがないか」

 

 どうやら今回は別の女子に目移りした訳ではないため、許されたようだ。

 

 こんなやり取りの中にも、レゼはかつて夢見ていた『普通』の学生生活が送れている事に、そしてその『普通』の中にデンジが一緒に居る事に、至上の幸せを感じていた。

 

 その後六人でひとしきり談笑した後、それぞれの帰路についた。

 

 

 

────

 

 

 

 公安デビルハンター東京本部 庁舎

 

 マキマのオフィス

 

 湯気の立つコーヒーの入ったマグを持ちながら、この部屋の主人がテレビを見ていた。

 

「敵か味方か! 恐怖デンノコ悪魔!」

 

 そこに映し出されるのは他でもない、チェンソーマンの活躍を報じるニュースだ。一ヶ月前の東京で台風の悪魔が暴れた際、報道カメラに映されてしまっていたのだ。

 

 公安と財団の両方から報道規制をかけていたが、とうとう規制をすり抜け報道する局が出てきてしまったのだ。

 

「不味いことになったね。いや、でもデンジ君を奪還するチャンスとも捉えられるか」

 

 自分しかいないデスクでマキマは独り言をぽつりと呟き、しばらく考え込むと受話器を取った。

 

「これから言う人員に召集をかけて下さい。チェンソーの悪魔奪還作戦を立案します。

 出張先は、M県S市、杜王町」

 

 

 

────

 

 

 

 そして財団側でもこの報道については把握され、対策に追われる事となる。

 

 当然黙って手をこまねいている訳ではない。財団預かりの武器人間であるデンジとレゼの護衛と保護の為、スタンド使いのエージェントを派遣する事が決定された。

 

「誤差0.2秒。まぁまぁってとこだな。」

 

 テレビの時報を見てそう言った男は、腕時計を三つも付けた、カウボーイ風の出で立ちの男だった。

 

「半年前に行ったばっかりだってのによォ……。

 ったく、何かと縁があんなぁ。モリオーチョにはよ」

 

 

 

TO BE CONTINUED

 

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