デンジとレゼは砕けない   作:Nキング

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刺客編その①です。

指を向けて笑う元ネタは、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのブラッド・ピットです。


刺客編 ①

 チェンソーマンの勇姿がテレビ放映された二日後

 

「パ・パ・パ・パワー!!

 ここがデンジが逃げ込んだという街かァ~!? ショボくれた街じゃのおォ~?」

 

「うるさいぞパワー、あまり目立つな。

 もう各国から刺客が来てるかもしれないんだ。それに、デンジとの接触は禁じられている事を忘れるな」

 

「ねぇ人間君。僕もう既に帰りたいんだけれど、帰っても良い?」

 

 杜王駅に降り立ったのは、公安から遣わされた早川アキ、血の魔人パワー、天使の悪魔の三人だ。

 

 公安上層部とスピードワゴン財団の間での政治的取り決めによって、デンジ及びレゼとの接触は禁じられていたが、刺客の来襲が予想されるとの名目で三人は杜王町に派遣された。

 

 見知らぬ土地に来てテンションを上げるパワー、移動疲れで既に気だるげな天使の悪魔、任務の内容が内容だけに緊張しているアキと、三者三様の面持ちだ。

 

「てゆーか、各国から刺客が来たとしても僕たちだけで対処出来る訳無くない?」

 

 天使の悪魔がアキに対して当然の疑問を投げかける。

 

「俺達は先遣隊だって言ったろ。招集されたのは俺達だけじゃない。後から公安の本隊が合流する予定だ。

 とりあえず先に現地入りしているっていう民間デビルハンターの協力者と合流しないと……」

 

 そう答えて待ち合わせしている人物を見回すも、見当たらない。

 

「オーッ!! ジャパニーズサムラーイ!!

 スミマセーン、道を聞きたいんだが」

 

 背中に刀を背負い髷のような髪型をしたアキを見て言ったのだろうか、妙な外国人が話しかけてきた。その人物は、幅広の帽子を被ったカウボーイ風の出で立ちをした外国人の男だった。

 

 アキの脳裏にこの男こそがデンジを狙う刺客かという考えがよぎり、若干身構える。

 

「我々は日本の公安です。

 すみませんが我々もこの街に到着したばかりでして、周りには詳しくないんです」

 

「そうか、こりゃ失礼。他を当たってみるか」

 

 しかしカウボーイ風の男はあっさり引き下がり、ブーツをカツカツと鳴らしながら去っていった。

 

「どうにも抜けてるねえ、日本の公安さんよ」

 

 距離が離れた後、その男が小声で言った言葉は、アキ達の耳には届かなかった。

 

「なんだかトンチキな格好をした毛唐じゃったのお」

 

「おいパワー! 滅多な言葉を使うもんじゃない!」

 

 アキがパワーの言葉使いを注意していると、騒ぐ声を聞きつけたのか待ち人が現れた。一見高校生くらいの年齢で、耳にいくつかピアスを開けた優男だ。

 

「公安特異四課の早川さん達ですね。オレは民間の吉田ヒロフミ。よろしく」

 

「早川アキだ、よろしく。

 それじゃあ予定通りデンジの監視に付くぞ。今は学校で授業中のはずだ」

 

 身分証を見せ合い軽く挨拶を済ますと、吉田を加えた四人はデンジを監視するべくぶどうヵ丘高校方面へ向かった。

 

 

 

────

 

 

 

 数時間後、デンジとレゼは仗助と共に下校の途に就いていた。

 

 デンジは歩きながら、仗助にここ数日間の出来事を語った。

 

「つー訳でよォ、俺の東京での勇姿がテレビ放映されちまってもうここ数日大騒ぎだったぜ。

 財団から緊急連絡が来て、テレビのせいで俺が日本に居るのがバレたから世界中が俺を狙いに来るって言うんだぜ?

 ホントかよっての~」

 

「マジかよォ……。

 デンジ、オメーそんな狙われてんのに、学校なんか来て大丈夫だったのか?」

 

「大丈夫大丈夫! 俺にはレゼも居るしよ! 全員ぶっ殺しゃあ解決すんだろ!

 それに財団が助っ人を送ってくれるって話だぜ?」

 

 仗助が事の重大さを鑑みて心配すると、デンジは能天気にあっけらかんと返す。

 

「全く能天気すぎて心配してるこっちが馬鹿らしくなってきちゃうよ。でもせっかく送れるようになった学校生活だもんね。

 ところで今日は財団の人と待ち合わせの約束があるの、ちゃんと覚えてる?」

 

 レゼはデンジに明るく振る舞うも、周囲を警戒するその目つきは鋭かった。

 

「覚えてるっての。なんか電話や電報だと盗聴の危険があるってんで、直接会って話そうってんだろ?

 わざわざ伝書鳩で手紙なんて送ってくるんだぜ? オレァびっくりしちまったよ!」

 

「正解! よく覚えてました!

 財団が掴んだ刺客の特徴とか財団のエージェントの詳しい情報を教えてくれるんだって。そこで、財団は仗助君にも来て欲しいらしいんだ。巻き込むような形になっちゃって申し訳無いけど……」

 

 レゼが仗助にすまなそうにするも、仗助の目には『黄金の精神』が宿っており、むしろ威勢を増したように拳を握りしめ返答した。

 

「いや、危険な奴らがこの『杜王町』に来るってんなら、俺だって他人事じゃあいられねーッスよ。

 むしろ、アンタら二人だってもうこの街の一員なんだ。胸張って迎え撃ってやろーじゃあないッスかッ!」

 

「ありがとう、仗助君。

 それと、財団の送ってくれるエージェントは仗助君も知ってるスタンド使いらしいよ?」

 

「へェー、俺の知ってるスタンド使いねェ。まさかジジイじゃねえだろうな……」

 

 レッド・ホット・チリ・ペッパーの一件で、スタンドの本体を探すためという名目で送られてきた自身の実の父親の事を思い出した。しかし、今回の事件の危険性と年齢から考えて流石に有りえないと思い直し、首を振って思考を払った。

 

 そうして三人は、待ち合わせ場所である海岸沿いの人気のない公園まで歩みを進めた。

 

 

 

────

 

 

 

 杜王海岸沿いの広い公園には、整備されつつも木々が生い茂っており、駅から遠いという事もあって人通りもまばらであった。

 

 九月半ばとはいえまだまだ暑い中、海沿いという事もあって時折涼しい風が通り抜ける。

 

「手紙に書いてあった待ち合わせ場所ここらへんのはずだけど……」

 

 レゼが手に持った地図は、伝書鳩が運んできた手紙に同封されていたものだ。

 

 三人は指定された地点にたどり着くと、周囲の人通りに注意を払いながら財団職員を待つ。

 

 3分ほど待つと、黒いスーツにハットを被った三人組が近づいてくるのが見えた。その男達はレゼ達から5メートルほどの地点で立ち止まると、リーダー格の男が身分証を取り出して見せてきた。

 

「スピードワゴン財団の者です。

 デンジさん、レゼさん、それに東方さんですね。伝言をお届けに参りました」

 

 財団の職員を名乗る男は身分証を内ポケットに仕舞うと、その後取り出した手には別の物が握られていた。

 

パァン! パァンパァン! パァンパァンパァンパァン!!

 

 突如スーツの三人組が、デンジ達に対して拳銃を連射した。

 

「伝言は鉛玉だよォ!! 俺達兄弟は不死身だァーッ!!」

 

「ギャア!」「ぐっ、ううっ、デンジ君!」「クッソッ!」

 

 デンジは身体と頭部に数発被弾、レゼは何とか回避行動を取るも右腕に被弾した。仗助はクレイジー・ダイヤモンドでガードし直撃は免れるも弾丸の衝撃でダメージを負い、相手が射程距離外だという事もあって咄嗟には反撃できずにいた。

 

 デンジは絶命してもスターターを引けば生き返る。レゼはそう思い首のピンを引こうとするも、被弾した右手が思うように動かない。それに左手でボムへの変身に成功しても隣に居る仗助は無事では済まない。変身するために距離を取らなければ。そう逡巡して行動が遅れたその一瞬が命取りだった。

 

 刺客の三兄弟がマガジンを交換し、生き残ったレゼと仗助に止めを刺そうとしたその時。

 

「お困りのようだな」

 

 レゼ達と相対する三兄弟の、更に背後5mほどから男の声が放たれた。

 

 その男の見た目は異様であった。ベージュの服装に鍔広の帽子を被り、口元には咥え煙草、左手に三つも腕時計を付けている。そしてなにより、徒手であった。

 

「なんだァ~? テメェはァ~!?」

 

 だが何をトチ狂ったのか、その男は薄ら笑いを浮かべて指を拳銃に見立て、三兄弟に人差し指の銃口を向ける。

 

「ヒヒヒッ」

 

「テメェ~! 俺達兄弟をナメてんのかァ!? テメーも死ねや!!」

 

 真ん中に立っていた三兄弟の長男が激昂し、カウボーイの男に銃口を向けようと振りかぶる。

 

 

『皇帝ッ!(エンペラーッ!)』

 

 

メギャン!!

 

 

 だが、徒手だった筈のカウボーイの手にはいつの間にか拳銃が握られていた。もっとも、三兄弟には見えていなかったが。

 

ドドドンッ!!

 

 不可視の拳銃から不可視の銃弾が3発放たれ、三兄弟の脳天にそれぞれ一つずつ風穴が空いた。

 

「俺と拳銃(ハジキ)で早打ち勝負をしようなんざ、100年早ェよ」

 

 そうホル・ホースが決め台詞を吐くと、三兄弟が絶命し、ドサリと倒れた。

 

「デンジッ! 死ぬなッ! デンジィーッ!!」

 

 だが、西部劇さながらの撃ち合いの裏で、突如として仗助の悲痛な叫びがこだまする。

 

 仗助がレゼとデンジの身体を一瞬で治療するも、頭部に直撃弾を受けたデンジの意識が戻らない。うろたえる仗助をよそに、レゼがデンジのシャツのボタンを外す。

 

「落ち着いて仗助君、大丈夫。後で説明するから」

 

 そう言うと、デンジの胸から伸びるスターターロープを引いた。変身こそしなかったものの、ヴオオンというエンジン音の後にデンジの心臓の鼓動と呼吸が戻った。仗助に治療を受ける前、レゼが被弾した傷口からデンジに血を少量飲ませていたのだ。

 

「なッ! こいつは……グレートだぜ、呼吸が戻った……」

 

 様々な人を治してきた仗助にも初めて見る事例に、状況が飲み込めていない。その後ろから、レゼ達三人の危機を救った立役者が話しかけてきた。

 

「おー仗助!

 久しぶりじゃあねえか。元気してたか?」

 

「兄貴ッ! ホル・ホースの兄貴ィッ!

 グレート! 財団の助っ人って兄貴の事だったんスね。ボインゴのヤツも一緒ッスか?」

 

「いや、今回の相棒は別だぜ。到着がちいとばかし遅れるらしくってな」

 

 今から約半年前の3月、ホル・ホースは盗まれたオウム『ペット・サウンズ』を奪還するべく、財団からの指示で杜王町に訪れていたのだ。その時に仗助とは共闘し、兄貴と呼ばれる程の仲になった。

 

「仗助君、その人は? 知り合いみたいだけれど……」

 

 旧交を温める二人をよそに、デンジの無事を確認したレゼが警戒しつつも質問する。

 

「あぁ、紹介するぜ。この人は……」

 

 紹介しようとする仗助をよそに、しかしホル・ホースは素通りしながら咥えていた煙草を投げ捨てると、さながらプリンセスに対するナイトのようにレゼの前に跪いて手を取った。流石に手の甲にキスまではしなかったが。

 

「美しいお嬢さん(レディ)、撃たれちまってたようだが大丈夫かい? 仗助が治してくれたと思うが。

 助けに入るのが遅くなっちまって悪かったな。俺の名はホル・ホース。スピードワゴン財団から派遣されたスタンド使いでさァ」

 

「テメェ! レゼに触ンじゃねえよ!」

 

 意識を取り戻したデンジが、レゼに近づくホル・ホースを怒鳴りつけ、咄嗟にレゼを抱き寄せた。

 

「おぉ怖ェ!

 悪かったな兄ちゃん。なにもお前さんの彼女を取ろうって気はねえよ。ただ、女性なら誰でも優しくするってえのがこのホル・ホースの信条なんでな」

 

 ホル・ホースは立ち上がりながらそう言うと、帽子の鍔を持ち上げニヒルに笑ってみせた。その見た目はナイトではなく、西部劇で若い娘を人質に取る悪役そのものだった。

 

「ところで、お前さんがデンジだな? そんでこっちの嬢ちゃんはレゼって訳だ。

 お前さんたちを襲ったコイツらの顔見てみろ。さっきと顔がちげえだろ? 死体から身なりを奪える『皮の悪魔』と契約してるっていうアメリカの三人兄弟の殺し屋だ。おそらく本物の財団職員を殺して顔と身分証を奪ったんだろうさ」

 

 そう説明されて銃撃してきた刺客の顔を見ると、確かに先ほどの財団職員の顔ではなかった。

 

 日本政府との秘密裏の政治的取り決めによってデンジとレゼを保護しているスピードワゴン財団の本拠地は、アメリカ合衆国ダラスにある。財団にはホワイトハウスとの繋がりもあるが、財団とアメリカ政府はあくまで別物である。日本政府に対して圧力たらしめているのは、ひとえにその世界規模の巨大な経済力と、それに加えてのアメリカ政府の後ろ盾だ。しかし、財団がアメリカ本国に対して圧力を掛ける場合、他国に対して使えるアメリカ合衆国という後ろ盾の威光が無い分、対外国に比べて影響が弱まる部分はあるだろう。財団もできる限り手を伸ばしてはいるが、アメリカ政府とて一枚岩ではない。恐らく今回はCIA辺りが使い捨ての外注として三兄弟に依頼を投げたのだ。

 

 デンジとレゼは悪魔と融合しているため、死亡するほどの負傷をしてもそれぞれの身体のスイッチさえ入れれば傷は修復される。しかし完全に死亡して意識を失ってしまうと、第三者の手によってスイッチを入れてもらう必要がある。

 

 今回、デンジは油断していたし、レゼは負傷と変身時の爆発の巻き添えを懸念して間に合わなかった。仗助は運良くガードできたものの、自身の身体は治せない。今回の刺客はやり手ではなかったが、完全な不意打ちだったので正直危険だった。

 

「危ない所をありがとうございました。まさか、顔と身分証まで偽って近付いて来るとは……」

 

「そういや、さっきデンジが生き返ったのはどういう訳ッスか?」

 

「ま、こっちも色々と積もる話がある。死んじまった財団職員が伝える筈だった伝言の内容やら、残りの刺客の情報とかな。どっかで飯でも食いながら話そうや」

 

「残りの刺客ゥ!? まだ来るのかよォ~!

 そもそも、なんで俺ん心臓みんな欲しいんだろ……」

 

 世界各国から刺客が狙いに来ると言われてもイマイチ現実感の無かったデンジも、実際に第一の刺客に襲撃された事で緊張感が高まった。

 

 ホル・ホースが財団に連絡し死体の処理を任せると、一行は辺りの惨状を発見される前に落ち着ける場所を探して移動を始めた。

 

 

 

────

 

 

 

 デンジを監視していたアキ達もまた、アメリカからの刺客による一連の襲撃を目撃していた。

 

「デンジィ~!

 あやつ、ワシのバディの癖して何をあの女とベタベタくっついとるんじゃあ! それにあっけなく死におって!」

 

「静かにしろパワー!

 駅前で会ったあの男、変な格好だとは思ったが、財団側のエージェントだったのか……!」

 

「へえ、あれが財団のエージェント。手には何も持っていなかったようだけど……」

 

 騒ぐパワーになだめるアキ、そして吉田はホル・ホースを観察し能力を考察していた。ちなみに天使の悪魔は公園の売店で買ったアイスを食べながらぼんやりと三人のやり取りを見ていた。

 

 そんな時、公安から支給されたアキの携帯電話が鳴った。

 

「はい……はい……分かりました。

 三人とも、状況が変わった。別チームによってサンタクロースが発見されたらしい。直後、発見した公安職員が人形にされた。ギリギリで退避が間に合って一般人には被害は出なかったが、招集された公安及び警察官のかなりの数が人形にされたそうだ。

 デンジの監視は中止。今からサンタクロース討伐の増援に向かう」

 

 公安と刺客達による杜王町の地獄の一日は、まだ始まったばかり。

 

 

 

TO BE CONTINUED

 

 

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