最高速度でぶち抜いたれッ!!! 作:とうしゃじゅほう
「こちら、お返しいたしますわ」
昼休み、ジェンティルドンナから差し出された本、目を丸くして受け取る。
「は?もう読み終わったんかいな...」
これを貸したのは3日前、しかも読みにくいトレーナー向けの専門書である。
実はこいつ投射呪法使ってるんちゃうの?
「難しく書いている割に、内容は薄かったわ。海外の最新理論を取り入れるのには役立ったけれどね」
「で、出典元の本は?貴方の事だからいくつか取り寄せているでしょ?」
「そこの本棚に入っとる、訳書、原書。どっちも揃っとる、好きなもん取ってけや」
「あら素敵。原書、お借りしますわ」
カフェテリアにて俺は先輩トレーナーと話している。
「いや〜...最近は勉強するようになったね。もうトレーナーやってきて長年経つけど、担当の子が今までとは違う適正でさ。その距離をやったことがないから勉強してるんだ」
「俺もっすよ、アイツに合わせたメニュー作んのは気が遠くなりますわ」
そんな話をしていると
「ごきげんよう、お時間宜しいかしら?」
「あ?ジェンティルドンナやないか、どしたんや」
手にはこの前貸した本を持っている、十中八九この本についてだろう。
「この本に貴方が付けたマーカーの部分。今の私の課題を克服するのにかなり有効な理論だと思わないかしら?」
「けれど、貴方は採用していない。勿論説明いただけますわね?」
「はぁ、この部分はこの前話した論文のとこや、つまりーーーーー
「い、いやいや...頭が切れるとも聞いたけどあそこまで?それに合わせれる禪院トレーナーも凄いよ...」
「俺も負けないように必死になってますわ、ホンマに面倒くさい」
トレーナーを凌ぐほど理知的であるジェンティルドンナ、彼女との日々は概ね順調、と言った所だったのだが
ちょいと問題が発生した。
「はぁ...人の心とかないんか?」
「貴方、スマホは?」
「ないわ、生憎トレーナー室」
倉庫に閉じ込められる事態になった。
「取り敢えず待とうや、どうせ19時頃には開くはずやろ」
「1時間半...ね、懸命な判断ですけれど
そんなに待ってられませんわ。
ドゴォン!!!!!!!!
地が揺れる、とんでもない勢いで閉まっていたはずの扉が開かれた。
「????????」
「ふ...トレーニング終わりにはすぐにシャワーを浴びたいのよね」
実は鍵かかってなかった?おかしいやろ...オイオイオイ。
きれーに割れた鍵を見る、壊した事に関しては後で説明するとして。
「圧倒的パワー...俺は君が怖くなってきたわ」
「...ひとつ、教えましょう」
「手札の数が多ければ多いほど有利。しかし、時に理論や常識をも覆す、最強」
「それが『力』如何なる手札にも勝てる最強のジョーカー」
「joker...」
俺にはない、速さはあっても、ジェンティルドンナ並のパワーなど。
ふと彼女の足元に置かれた鉄球に視線を向け、持ち上げる。
「おっも...!」
自分でもギリギリ持ち上がるかどうかくらいや、それを軽々しく上げられる力が、彼女にはある。
「俺もパワー付けたるわ、担当の隣に立ってこそ、トレーナーやろ」
「...ほほほ、殊勝な心がけですわね」
「いっその事、私が鍛えて差し上げますわ」
...え?
「ぐぬぬぬ...!!!!!」
只今ジム室、シバかれとる。
「ウォーミングアップくらい軽くこなしてこそ私のトレーナーですわ」
「ぐぎぎぎぎ...!!!」
きっついわ、自分でもイカれたメニュー組んどる...!
「ペースが落ちてますわ、もっと速く」
「最高速度でぶち抜いたる!!!!」