魔改造バルキリーで銀河を駆け抜けたい   作:萩月輝夜

1 / 5
異界-アナザースカイ-

西暦一九九九年。

南アタリアの一島へ墜落した巨大な建造物…後の”マクロス”と呼ばれる異星人が作り出したオーバーテクノロジーを巡り人類同士で争った”統合戦争”が終結した数年後…西暦二〇〇九。

修繕が完了した”マクロス”が仕掛けられたブービートラップにより異星人の戦艦を撃墜、そこから戦争に発展した。

戦争の終結は”歌”による敵異星人のカルチャーショックにより終結した。

 

しかし”地球”と言う母なる大地を失った再統合された人類。”新統合政府”による銀河系各地に人類移民を決定し居住可能な大地と資源確保のために残った地球人類と味方したゼントラーディは一つに交わり生き残るために銀河の各所に散っていった…。

 

様々な船団が居住可能な惑星を見つけ移住、または未知の存在によって滅ぼされたり暗躍し意思ある生物(バジュラ)を用いて銀河を掌握しようとしたり…と様々な戦いから既に五十年と少しが過ぎていた。

 

◆ ◆ ◆

 

別世界。C.E71年9月某日。

L5プラント群付近”ジェネシス”内部

 

「…………(お姉ちゃんは脱出、出来たかな…)」

 

施設内部が大きく鳴動している。そのなかで瓦礫の下に埋もれ一人の少女が事切れている。

意識は殆ど無い。痛みも。感覚も。

姉への心配が出来ているのは死んで”あの世”へ向かうまでの”余命期間”と言えるだろうか?

瓦礫に埋もれる少女は普通の人間ではない。

とある少女の…というよりも彼女の肉体は姉のクローニングされた肉体を持ち記憶を転写されていた。

そんな彼女の耳に”歌声”のようなものが届いた。

 

「……?(………歌?でも、少し心地良い…)………」

 

まるで眠りに誘うかのようなこの場所には似つかわしい優しい音色…迎えに来たかと力が抜け無造作に伸ばされた手がピクリ、と動き其っきりだった。

死後硬直か意味があって手を伸ばしたか…それは分からないのはその直後に付近にあった機体が大爆発を引き起こし少女の肉体事閃光に消えて飲み込まれた。

 

(今度、もし生まれ変われるのなら…自由に…生きてみたい、かな…)

 

閃光に飲み込まれる。

最後に感じたのは痛みでも衝撃でもない”暖かい”や”優しい”と言った感覚だった。

 

◆ ◆ ◆

 

「…うぅ…ん」

 

鈍痛がして目が覚める。

目は覚めた視線の先にはコックピットではなく地面…一体私は…。

そして直ぐにハッとする。なぜ()()()()()()()()()

”ヤキン・ドゥーエ”での戦いで瓦礫に下半身を潰されほぼ即死だった筈だ。

 

起き上がって周囲を見渡すと先ほどまで着ていた筈のパイロットスーツ…は普通の服に変わっている。ガーリーなブレザーにミニスカートにオーバーニソックスにパンプスと言う出で立ち。

とても戦う出で立ちではなかった。それよりも驚くことがあった。

 

「身長が…高い?…足が…ある」

 

トントン、と足を地面に付けジャンプをしてみる。爪先を叩く感触が身体に伝わるのにビックリした。

自分が生きている、と言うことだ。

それに身長が頭一つ分伸びていた事に驚く。

 

「成長している?何故、私は生きているんだ…?それに一体ここは…」

 

周囲を見渡すと何処かの裏路地らしい。通りの向こう側からは喧騒が聞こえるので人が住んでいるんだろう、と判断できるが時折聞こえてくる言葉が聞いたの事の無い言語のようでエアリス…もとい、エミリアは判断した。

 

「死後の世界に飛ばされた?…いや、でもこんなに暖かい世界じゃない筈」

 

死後の世界、と言うのは冷たくて退屈な場所だと言うのを誰が言ったのか覚えていないがこんなに暖かい(物理)喧騒が向こうから広がっているのは聞いたことがない。

 

一先ず迷っていても仕方ない、とその場から動き出そうとしたその時だった。

 

「警報…?!」

 

警報が鳴り響き裏路地のビルとビルの間を通り抜ける一瞬の影を確認し表に出る。

ソコは阿鼻叫喚の地獄となっており夢でも見ているのか、と錯覚するほどの光景が広がっていた。

人々は逃げ惑い”巨人”が暴れ銃を発砲するとビルが倒壊し巻き込まれた人が潰され銃撃によって体が吹き飛ばされ見た事の無いロボットが暴れているのだ。

 

「なんだあれは……!戦闘機…?モビルアーマー?」

 

その光景を見て疑問が口を突くが飛来したエンジン音を確認し上を見上げる。

飛来した戦闘機が巨人を攻撃し始めた。

 

「変形した!?手足だけが展開して…あんなデザインは見たことがない…どこの組織だ…?」

 

次の瞬間に機首はそのままに手足が展開した戦闘機は暴れている巨人に向かい機体下部に装着された射撃兵装…それを発砲し強靭な肉体に風穴を空け赤い液体が飛び散る…血液だろうそれは貯水タンクを破るような勢いであり思わずこの緊張状態であったエアリスの口角を少し引き突かせた。しかし、一体あれはどこの所属だろうか?と考えていると警鐘をならした。

 

「ッ!危ないっ」

 

次の瞬間に飛行していた戦闘機は狙ったのか暴れて偶々放った銃機の弾丸が直撃しバランスを崩し瓦礫となったビル郡に突っ込む。思わずエアリスは腕をクロスして戦闘機が吹き起こした突風から体を守る。

風が止んで粉塵が舞い上がっているが直ぐ様墜落した戦闘機へ駆け寄り上がって機首周りの装置を触りキャノピーの強制解放ボタンを押してオープンさせた。

 

「よかった…死んでないな」

 

コックピットで項垂れる兵士の首元に手を当てて脈があることを確認し安堵する。

 

「……少し借りる」

 

気絶している兵士を無事な建物の影に横たわらせヘルメットを脱がし借り受け再び墜落している戦闘機へ駆け上がりコックピットへ滑り込んだ。

 

ダメコン、装備状況、機体各所の異常箇所を確認しスタンバイ状態だった機体を立ち上げていく。

さっきの衝撃でミサイルユニットが使えなくなっていたが問題ない、が機体が生体承認システムを使用してたが素早く機体システムを書き換えて使用できるようにしていた。

 

「(見たこと無い操縦系統だけど…大体で理解できる…)来るかっ!」

 

機体を立ち上げが終わる、その時に気が付いた巨人が此方へ銃を向けているのを確認し急いで操縦桿を持ち上げフットペダルを押し込む。

放たれた銃弾が先ほどまでいた空間を切り裂きビルを破壊するが離脱した戦闘機は大空へ飛翔し落ちていた機銃を拾

い上げた。

 

「…やるしかない」

 

眼下に広がるは逃げ惑う人々に暴れる巨人…この世の終わりか、と思えるその光景を見て操縦桿を握りしめ迫った。

 

「やめろっ!」

 

手にした武装…”ガンポット”と呼ばれる装填式ガトリングガンの引き金を引いて巨人を撃ち抜く。

 

「~~~~~ッ!」

 

暴れていた巨人が崩れ落ち小人…いや正確には”人間”が害されることはなくなる。

安心したのも束の間、新しい敵…それは自分が今は登場している戦闘機が今度は民間人を襲い始めたのだ。

 

「くっ…!いきなりどうしたって言うんだ…!」

 

襲ってきた戦闘機にガンポットを放ち主翼を撃ち抜き無力化する、が続々と似た形の機体が民間人や施設を襲っているではないか。

 

<早く逃げろ!>

 

眼下にいる人々が足を止める。耳が尖っていたり肌が緑色だったりと向こうの世界(コズミックイラ)では間違いなく異端扱いされるもの達がいることを確認しここが異世界であることを自覚した。

だが…。

 

「だからって何の罪もない人々が理由無く害されるのを見過ごせるか…!」

 

エアリスは機体を飛翔しレバーを倒し機体下部から突き出していた足と両腕が折りたたまれデルタ翼の戦闘機へ変形する。

スロットルレバーとフットペダルを踏み込みベクタードノズルから吹き出す推力を操り大空へ飛翔した。

暴れる同じサンドグレーの戦闘機の主翼を撃ち抜き放たれるミサイルをバレルロール、頭部の機銃で打ち落としすれ違いざまに再び変形した。

 

「武装は…拳だけ、だと?ちぃっ!」

 

変形し拳にバリアエネルギー?を集約し振り抜き腕と脚部をもぎ取っていく。

巨人と戦闘機を流れ作業のように無力化していくその姿はまるで演舞のようだった。

 

◆ ◆ ◆

 

戦場に似つかわしい歌声が響き渡る。

それは希望の福音か、それとも死者への鎮魂歌か。どちらかと言えば前者だろうそれは四機の戦闘機…VF(ヴァリアブルファイター)と呼ばれる全領域戦闘機に守られながら煌び艶やかな衣装を纏った少女達が戦場へ躍り出る。

彼女達はこの混乱を納めるために出動した戦術音楽ユニット<ワルキューレ>と呼ばれる歌姫達だった。

 

曲のイントロが流れ戦場に歌が木霊する。先程まで暴れていた巨人やバルキリー達が沈静化していく。

その最中た。<ワルキューレ>に所属するマキナ・中島が自分の歌パートの最中声を上げた。

 

「ん!?あの171ちゃんから…フォールドレセプターの反応ありだよ!」

 

<なんだって?…ってあれは…>

 

その報告をワクチンライブを守りながら行っていたバルキリーデルタ小隊隊長のアラド・メルダース少佐がその反応がある先を確認すると想像を絶する挙動をしていたのだ。

 

「あ、あんな動きしたら中の人間がシェイクされちゃう!でも、機体の動かしはすごい繊細…!」

 

「針の穴を縫うように…スゴスゴ…でもテキパキ」

 

その戦闘にマキナが驚くがレイナ・プラウナーが感心したような言葉をのべた。

 

「アラド隊長…あれは…」

 

その光景に副長であるメッサー・イーレフェルトが目撃し呟く。

 

「ああ。並みのパイロットじゃない…一体どこの所属だ…?」

 

ガウォーク(中間形態)状態で迫り来る同型(VF-171)を迷い無く主翼を撃ち抜き無力化し空中で体に掛かる負荷を無視するように即時停止、急加速を行い背後を取り人形形態(バトロイド)になりピンポイントバリアパンチで頭部、又は手足を破壊し行動不能にしていた。

こんな辺境惑星の新統合軍兵士があんな技巧的な動きが出来る筈がない、と度肝を抜かれていた。

何処かに所属しているPMCかはたまた特務機関のパイロットか。

ともかくとして狙われた瞬間に振り向き様にガンポッドの一射がバルキリーの武装を奪い無力化する…まるで予知しているかのようなその動きに視線を奪われつつ暴徒と化した兵士を無力化していた。

 

一方その熱視線を受けていたエミリアは機体を自在に手足の如く動かす。

 

「機体レスポンスが良い…!でも少し火力が足りないな!」

 

そう言いながら一撃でガンポットで主翼を撃ち抜き破壊する。

 

「せめてサーベルは欲しいところではあるがっ!」

 

機体を空気に乗って翻し変形、そして再びバトロイド状態になりバリアエネルギーを拳に集約し振り抜き頭部を破壊し素早くエネルギーを脚部に集中し蹴り飛ばす。

放たれるガンポットの弾幕を脚部のベクタードノズルを巧みに操り回避し手にしたガンポッドでカメラを潰し攻撃手段である武装を頭部レーザー機銃で潰していく。奇妙な機体は足を引っ掻け転倒させ攻撃を誘導し撃破する。

放たれるミサイルを機体を動かし致命傷を迎撃し掛かるGも涼しい顔で無視し突っ込んでいく。

 

「まるで獣のような威圧感…丸出しだぞ?」

 

攻撃が当たらないのは()()()()()()()()()()を感じ取っているからだ。

既にこの時点でエアリスは暴走するVF-171とリガード等を数分足らずで数十機ほど撃墜していた。

ふと、耳に入ってくる戦闘の音とは違うもの…”歌”が入ってきていることに気が付いて周囲を見渡すと生身の少女と別のバルキリーが戦場を支配していることに気が付いた。

 

「歌…?」

 

その歌声はワームホールに飲み込まれる前に聞こえた声色に酷く酷似していた。

 

「終わったか…」

 

暫くして戦闘が終了し戦場に響き渡るのは四人の歌声のみ…暴れていた戦闘機達も基地へ帰還するのだろうそれを見届けた後に地上へバトロイド形態で着陸すると自分が搭乗…と言うか勝手に借り受けたVF-171の周りを別系統の鋭角した戦闘機…がバトロイドに変形し取り囲んでいた。

 

「…軍の機体を無断拝借で戦闘…軍事裁判ものだな」

 

友好的である、と証明して保護してもらうかと考えた。どうにも悪人たちではないと、直感が告げていた。

機体の機首を地面へガウォーク形態下げキャノピーを解放し座席から立ち上がり両手を広げ無害だ、とアピールすると同時に渋いカラーリングの可変戦闘機から一人の男性が降りて近づいてきた。あれが隊長だろう。

コックピットから出てきたエミリアの姿に驚く。

切れ目に長い睫にすらりとした肢体に纏うガーリーな衣装…まだ若く、学生と言っても差し支えなかった。

 

「あんなマニューバしてるのがどんな奴なのか、と思ってみたら…まさかこんなに若い少女だったとはな」

 

「ご期待に添えなく悪かったな」

 

その風貌と口調、そして愛らしい声色とは一致しておらずアラドは困惑するがそう言う見た目にそぐわない人物も世の中にいると言うことを加味しつつ言葉をかけた。

 

「それでお前さん一体何者なんだ?」

 

そう問いかけられエミリアは少し思案して正直に答えた。

 

「…異世界から来た、と言えば満足か?」

 

「はい?」

 

◆ ◆ ◆

 

「………」

 

借りた戦闘機…VFと呼ばれた機体を置いてシャトルに乗せられ宇宙へ上がり母艦なのだろう軌道上に待機していた戦艦の一室にエミリアはいた。

周囲を見渡し窓の外を見ると惑星…といっても地球、とは程遠い砂漠が占めた地表がみえた。

 

「地球は何時から砂の惑星になった?」  

 

地球ではない、と判断できたのは先程のことを思い出すからだ。それに今いる設備が見たこともないものであり自分がいた時代より進んでいるのは明らかだろう。

 

「随分と宇宙進出が進んでいる世界、らしいな」

 

事情を説明し最初こそ困惑されたが思い当たる節があったのか武装集団…彼らは民間軍事会社の一員らしく名を”ケイオス”と言う。

戦場に似つかわしい歌を歌いフリフリなアイドル衣装を着用していた女性達の乗っていたシャトルに乗せられ軌道衛星上にある戦艦の一室に案内されて部屋で待機してた。

手錠を付けられずにそのままにされているのはある意味で温情だろうか?身元を明かすようなものは何もない。いや、ロケットペンダントぐらいだ。あれには姉の写真が飾られている為手放したくはない。

 

軍やそれに準じる組織ではないため無理矢理、と言うわけではないだろうそれは心配してはいないが…其よりも問題があった。

 

「…エアリス(お姉ちゃん)の姿じゃない…私自身、なのか…?」

 

その身体はクローニングされた姉の身体、ではなく自分自身”エミリア”が成長した姿であり身長は遺伝なのか…でも成長しているのか170ほどに成長し髪色も亜麻色ではなく赤みが掛かったブロンドを腰まで靡かせている。

顔も今手にしているロケットの写真とは少し違っていた。ペンダントの反対側に貼り付けられた赤ん坊の写真…髪色はそちらままだった。成長すればこうなるのだろう。

 

「艦長が以前話していたな…クルーの一人のギークな奴が言っていた…異世界転生、と言う奴だったか……?それにこっちに転移したときに身体が正しいものに置き換わった、と言うべきか…」

 

顎に手を当て考えるが超常的すぎて答えがでない。何となくに頬をつねってみるが痛い。現実だな、と言うことを理解し思考を放棄して待機室の外を見ると青く輝く宇宙が視界に入る…どの時空でも宇宙は美しいようだ。

窓の縁に腰かけていると機密扉がスライドし来客を知らせた。

 

「すまないな。突然こんなところに押し込んじまって」

 

「いいや。気にするな。拘束されないだけましだ」

 

研究所、と言う名の監禁場所に比べれば天と地ほどの差があるだろう。

そう心の中に秘めつつ表面上そう告げエミリアは自由な手をプラプラ、とさせているその光景と可憐な少女の見た目と愛らしい声で男性的な言葉遣いにカナメが目を白黒させる。

 

「…そうか。改めて自己紹介と行こう。俺はアラド・メルダーズ。民間軍事会社”ケイオス”ラグナ支部のデルタ小隊隊長を務めている。で、こちらが…」

 

自己紹介をバトンタッチし一緒に入ってきたアイドル衣装からケイオスの制服に着替えたカナメが自己紹介する。

 

「ありがとうございます隊長。改めて、私はカナメ・バッカニア。戦術音楽ユニット”ワルキューレ”のリーダーを務めています」

 

「…戦術音楽ユニット?なんだそれは?特殊部隊か何かか?」

 

聞きなれない部隊名に首を傾げるエアリスを見てカナメがクスり、と笑う。

一方でアラドはその反応に目を鋭くしていた。

 

「”ワルキューレ”といえば今は知らないものは居ない筈なんだがな…お嬢ちゃん本当に異世界から来たってのか?民間人にしてはさっきの”バルキリー”の操縦技巧…あの天才に勝るとも劣らないぞ?本当にはじめて乗ったのか?」

 

疑われても仕方ないのはこの見た目と”異世界から来た”と言う言葉だろう。

二人の前でエミリアは”連合式”の敬礼を取る。ビシッ、と音がするかのような折り目正しい真っ直ぐな姿勢は二人の視線を奪うには十分すぎた。纏う雰囲気が何も知らない、無垢な子供ではなく戦場を知る歴戦の戦士だと言うことを告げていた。そしてその肩書きも。

 

「…改めて。私は地球連合軍【ネクロシス】所属モビルスーツ隊長、エミリア・A・レインズブーケ特務少佐だ」

 

その肩書きを聞いてアラドは驚いていたのは無理もない。今の見た目はほぼ子供だと言うのに軍属で少佐と言う。

 

「地球連合軍?【ネクロシス】?…ってやっぱり軍属だったか。だがお前さん成人年齢に達して無い筈だろ?」

 

「ああ。まだ…」

 

鋳造されて一年とちょっとだ、と告げようとしたが相手が混乱するだろうと口をつぐみ見た目相応の年齢で「…十六だ」と告げるとカナメが目を見開く。

 

「戦時徴用、と言う奴でな。仕方なくだ。」

 

「そ、そうか…それにしても”モビルスーツ”と言うのは?」

 

「む、この世界にはモビルスーツは存在しないのか。そうだな…」

 

聞きなれない言葉に困惑する二人にエアリスは説明をし始めた。

モビルスーツと言う此方で言うバルキリーに準ずる機体と世界の状態について…。

 

「なるほど…そちらでは”地球”が残っていると…”ナチュラル”と”コーディネイター”…二つの種族が争いながらお互いに妥協点を探しながら共存している…まるでマイクロンとゼントランだな。で、お前さんはその戦闘の最中に”アル・シャハル”にいたと…」

 

「驚いたのはこっちだ。異星人との戦争…人類が銀河にその手を伸ばしているとは…向こうじゃ未だ火星圏にも手を伸ばしているかどうか、と言う開拓速度だったんだがな」

 

「で、お前さん此方に来る前なにをしてたんだ?」

 

そう問いかけられ少し間を置いた後答えた。包み隠さず。

 

「…戦闘中だった。もとよりこの身体は姉のクローニングされた身体でな。自分の存在を確立するために実の姉と殺し合いを演じていた…だが結果は敗北。おね…姉に「身体は私でも心は貴女(エミリア)だ」と論破されてな…機体(アヴァロン)を破壊され投げ出され崩壊しつつある施設の瓦礫に身体の半分が潰され身動きが取れなくなって最後は”ジェネシス”…ああ、その大量殺戮兵器の破壊、と姉を逃がすために自爆を選択した…だが気が付いたらあの惑星にいた。生きているのが不思議な位だ」

 

「お姉さんと…?どうして…」

 

「……」

 

あっけらかんにそう告げ肩を竦めるエアリス。ここで保護されるまでの激動を聞いてカナメが哀しそうな表情を浮かべアラドが苦々しい表情になる。

 

「しかし、死ぬ間際に”歌”が聞こえた」

 

「歌?」

 

「ああ。気が付いたらあの裏路地にいたな」

 

「アラド隊長…」

 

「ああ。丁度デフォールド反応と一致する」

 

何やら二人でヒソヒソと内緒話をしているようで会話を聞き取れなかったが無視する。

 

「?しかし、お前達の”歌”と言うものは凄いな。戦わずして相手の戦意を下げる…少しキテレツな方法だが無血で争いを静められると言うのは良い手だ」

 

戦術的な側面で評価するエミリアは”歌”について称賛する。

弱点で言うのならば歌い手が戦場でその身をさらけ出さなくてはならず致命的なダメージを受ける可能性が高くなるのはネックかも知れない。

確かに戦わず”歌”で戦意を下げられる、と言うのなら此程までに効果的なものはないだろう。

文化的な戦い方だ。

 

「どうしてそれを?」

 

「敵の殺気と悪意が削がれていた…いや落ち着いたと言うべきかもな。言葉にしづらいんだが私には分かるんだよ」

 

その洞察力に舌を巻く。

 

「なる程な…それであればお前さんの操縦技術の高さも納得だ」

 

背面からの攻撃をノールックで回避しあまつさえ背面撃ちしているのは異常だ。

 

「まぁ…それよりも良い歌だった。味方の戦意高揚も兼ねているのか?」

 

「え、ええ…ありがとう。そうね。その意味合いもあるけど…。でも今度は戦闘じゃない楽しいライブでの私たちの音楽聞かせてあげるわ」

 

「楽しみにしている。ん?なぜ私の手を取る…?」

 

そういってエアリスは違う意味での尊敬の眼差しでカナメを見ると向けられたカナメは少し困った感じに感謝の言葉を述べる。

その後カナメはエミリアに近づき手を取る。

 

「…と言うかなぜ私は拘束されずにここにいる?本来なら軍の装備を無断拝借し戦闘に荷担した、と言うことで犯罪行為…軍か警察に引き渡される筈だが?」

 

「流石、軍属だけあるな…だがまぁあの状況で民間人を助けてくれたんだ。いきなり手錠を嵌めて、牢屋行きは無いだろ?」

 

「…仮にそうだとしても。どこの組織かもわからない放浪者を民間軍事会社である”ケイオス”が軍にも突き出さずに本拠地へ向かおうとしている…其こそ突き出して異世界からの訪問者…解剖実験するなんて訳ないだろ」

 

鋭い質疑にアラドは「参ったなこりゃ…」と手にしていたスルメ?のゲソを袋から取りだし齧り始めた。

手を取っていたカナメが言葉を引き継ぐ。

 

「実は理由があるんです。貴方からは通常時でも”フォールドレセプター”が検知されたわ。戦闘しているときはアクティブになっているの」

 

「”フォールドレセプター”?」

 

聞きなれない単語だった。カナメが説明をしてくれた。

近年、【ヴァールシンドローム】と呼ばれる奇病が発生…其はこの銀河にすむ人々の体細胞に悪性のウイルスがフォールドし感染した人の理性を奪い本能のまま暴走すると言う。

其が先ほどの巨人…ゼントランとバルキリー隊の暴走でありカナメ達”ワルキューレ”が戦場で歌を歌う意味…”ワクチンライブ”であったことを。

 

「…通常レセプターを持つ我々が歌わなければ”ヴァールシンドローム”を沈静化させることは出来ません。ですが貴方は歌わず通常時であってもその場のフォールド因子を落ち着かせるレセプターを貴方は持っている」

 

「こう言っちゃなんだがな…お嬢ちゃんの持つ”フォールドレセプター”の高さは今の俺たちからしてみれば喉から手が出るほど欲しいのさ。あんたがいれば”ケイオス”の母艦内部で”ヴァール化”の発生は限りなくゼロに近くなる。病原菌を駆除できる滅茶苦茶に高価な空気清浄機なんだよ。俺たちが戦って離れていても問題ないレベルには」

 

歯に衣着せぬ言い方にカナメは苦笑するが其が事実であった。アラドが肩を竦めるがエミリアは顎に手を当て考え出した。

 

「なるほどな…だが私は歌なぞ歌ったことはないぞ?その点では役立たずだろう」

 

「ん?ああ、いやそう言うことじゃなくてな…」

 

少し抜けているところがあるエミリアを見てカナメが笑みを浮かべるが当の本人が首を傾げていた。

 

「でもまぁお前さんも見てくれならカナメリーダーに負けずとも劣らないと思うが?勿論声もだ」

 

「歌は専門外だ。敵を殺すことなら得意だがな」

 

さも当たり前のように告げるエミリアを見てカナメが哀しそうな表情を浮かべていた。

助け船、ではないがアラドが提案して見せた。

 

「お前さんに提案だ。”ケイオス”に所属してみないか?」

 

「私が”ケイオス”にか?ふむ…」

 

そう言って考え始めるエミリア。

暫くして顔をあげた。

 

「なんにも持っていない世界に放り出されて行動資金もないのでこっちの方が渡りに船だ。…それに一度は死んだ身だ。沢山の人間を殺してきた…少しは世のため人のために生きるのも良いだろう」

 

(エアリス)を越える、と言う理由で戦い続けたが最後は分かり会えた。きっと姉が今の立場なら躊躇うことなく協力するだろうなと考えた結果だ。

 

そう告げ手を差し出す。

 

「よろしく頼む。隊長」

 

「ああ。こっちの方こそ宜しく。お嬢ちゃん」

 

「お嬢ちゃんは止せ。エミリアだ」

 

差し出された手をアラドが握り返す。

 

「了解したエミリア。っと到着したぞ?」

 

「到着?…おお…」

 

いつの間にか母艦がフォールド空間に突入し抜けていたようで見慣れた暗黒の空間に浮かぶ太陽に照らされた美しい惑星がガラス越しに見える。

 

「あれが”ケイオス”ラグナ支部がある惑星”ラグナ”だ」

 

青き惑星は”地球”に帰ってきたと錯覚させるほどに美しいものだった。

”エミリア・A・レインズブーケ”の旅がここから始まる。




好評だと続きます。感想高評価よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。