「一先ず、だな…」
”マクロス・エリシオン”の格納庫にて。
視線の先にはファイター形態の”エクスカリバー”…だったものが駐機しておりそのシールド部分を改造し開口出来るようにしたスペースに円筒状の筒を格納するそれはエミリアには見慣れた装備だったがこの世界の住人は見たこともない…
そして射撃武装を基本装備である炸薬式のガンポットと”VF-31”のレールマシンガン一丁と元いた世界でビームライフルと同じ使い勝手のアンチマテリアルスナイパーライフル一丁を機体のメインウェポンとしガンポッドとレールマシンガンを機体左右翼のミサイルユニットへ増設し火力不足を補うのを始めに既存のエネルギー転換装甲の強度をアップするためにエンジン出力も通常の二割増。
従来の操縦系統も少し弄り従来の
そして機体背面のバトロイド形態でコックピットに覆い被さる装甲部分に描かれた『割れた棺桶と聖女』のエンブレム…まさかの”ネクロシス”の部隊章がマーキングされている。
「技術ツリーの発展が違うお陰か形にするのは大分苦労した…まさか
格納庫にはキャリアーに乗せられた試作品が数多くあり機体の都合上”エクスカリバー”には搭載できないモノもあるため一旦は保留となっている。何処かでVF-31”ジークフリード”を借り受けテストする必要があるが…此に関しては近々専用機体の”ジークフリード”が来る手筈となっていたが…納入でが遅れているらしく本来であれば明日のデビューステージでエアショーに参加する予定だったが間に合わず”エクスカリバー”に”ジークフリード”に似せたガワのエネルギー転換装甲を装備して出撃することになった。通称着ぐるみと言うらしい…。
「一先ず。フレイアのデビューステージだからな…不確定要素があれば、だが…」
初お披露目、となるのは恐らくフレイアのデビューステージで戦闘が起こることは早々ないだろうとたかを括っているものの以前にアラドより知らされた”ヴァールシンドローム”の際に出現するアンノウン…それだけが気掛かりだったが今は気にしても仕方がない意識を切り替えると同時に端末がなった。
おもむろに手に取り発信者を確認すると【カナメ・バッカニア】の文字が出現し何事か、と思いながらおもむろに端末を取る。
「…どうした?」
『…あ、やっと出た!どうした?じゃ無いわ。今日はエミリアちゃんとフレイアの加入歓迎会を十九時からやる、って言っていたでしょう?』
「あ」
カナメに言われて今気がついたエミリアは今日が歓迎会の日時であることに気がついた。
そして時刻は十八時五十分…裸喰娘娘にはここからでは最短でも十五分程度掛かる。
『完全に忘れていたのね…今どこにいるの?迎えに行くから…』
「”アイテール”の格納庫だ」
『えっ?格納庫…ってまたそんなところに…』
「今行くから安心しろ。必ず間に合わせる。以上だ」
『あ、ちょっとエミリアちゃん…!』
言葉を続けようとするカナメの通話を切断し端末を懐にしまい周囲を見渡す。
この十分…性格には残り九分十秒で目的地に到着しなくてはならないミッションが発生してしまったが慌てる様子はなく直ぐ様目的のモノを発見し素早く近づく。
「さて…怪我の巧妙、だな。急がなくては」
ニヤリ、と笑みを浮かべ素早く装着しエミリアは格納庫から
◆ ◆ ◆
「まったくもう…」
「エミリアの奴はどこにいるって言ってました?」
「格納庫、だそうです…もう、今日はお祝いするよ、って言っていたのに…」
バレッタシティ郊外”裸喰娘娘”にて。
今日は”ワルキューレ”とデルタ小隊新規加入メンバーの歓迎会を行うために貸し切られた店舗には”ケイオス”の面々が勢揃いしていた。そのなかにはフレイアとハヤテが含まれていたがもう一人…両方に属する主要人物の席が空席のままであり開始予定時間まで後八分、と言ったところだ。
会場となる裸喰娘娘には”ケイオス”の主要メンバーと整備士他がわいわいと賑やかにしておりこの場にいないのはエミリアぐらいだった。
「格納庫からこっちに来るまで十五分は掛かるぞ?」
バレッタスルメを酒の肴にしているアラドは齧りながらそんなことを言う。直通のロープウェイがあるとはいえ格納庫からは最低十五分かかる。遅刻は免れなかった。
「博士は何か聞いてませんでしたか?」
「恐らくですけど…中尉は近接装備の開発が山場だ、って言ってたので其で研究所に籠っていたのかも…」
問いかけられ返答するアイシャは苦笑し自分が引っ張ってくれば良かったかな、と思いながら一方で彼女が作る成果物を見てインスピレーションが働くのも事実であったため強く言えなかった。
「化粧っ気がないと言う色気より研究一筋と言うか…若いんだからもっと遊んでくれてもいいんだがなぁ…」
ボリボリ、と頭を掻く。それを見てアイシャは再び苦笑するが隣にいるカナメは不満そうにしていた。
「折角お洋服を買いに言ったのにこの間も制服でいたし…もっと連れ出さなくちゃダメね。…ん?」
キーン…シュゴォオオオオオオッ!
「なんだ?」
「ジェット音…?って!?」
「な、なんねなんね!?」
カナメが少しだけ決意していると店の外から”バレッタシティ”の夜の喧騒に似つかわしい空を切り裂くジェット音が聞こえるのを店の中にいるメンバーも気がついたようで窓の外へ視線を向けるとそれは舞い降りた。
シュゴォオオオオオッ…ドォーン!
屋外席のある場所にEXギアを装着し
「…ふぅ、間に合ったな」
「エミリアちゃん!?」
「「「「中尉!?」」」」
「どっひゃ~ド派手やね…」
驚くメンバーを尻目に装着していたEXギアを装着したままカナメの前に移動する。
「十九時前…時間前だな。待たせたなカナメ」
「え、エミリアちゃんそれは…?じゃなくって…!」
「?ん、研究所にあった私用のEXギアを持ち出した。安心しろ、確りと使用の記入用紙を書いて兵器備品室へ提出してきたから手続きは問題ないぞ?」
(((なんでそんなに手続き準備がいいんだよ…!?)))
メンバーが心の中でシンクロしていたが当然エミリアに聞こえる筈もなく艦長であるアーネストは突拍子もない行動をして見せた事に大笑いしておりカナメは行き場のなくなった右手を風とバイザーでめちゃくちゃになったエミリアのお髪に触れていた。
「もう…今度からは予定がある日は研究所に入り浸るのはダメよ?」
「え、それじゃ研究が…」
「ダメです!いい?」
「………ああ」
エミリアもエミリアでカナメから言われれば強く反論せず受け入れる関係性になっているので周りもほど強く言わないし任せていた。
そこから装着していたEXギアを解除し片付けアーネストが音頭を取ってエミリア、フレイア、ハヤテの歓迎会が開かれた。(アーネストの話が長くなりそうだったので他のメンバーがマイクを奪って進行した)
美味しい料理が並び旨い酒が卓上に乗せられ騒がしい、いや賑やかで楽しげな雰囲気が広がっていた。
エミリア十六歳(二歳)はこの世界でも未成年であったため酒は飲んでおらずソフトドリンクのジョッキとマスタング一家が作る料理に舌鼓を打ち頬を膨らませていた。
「もきゅもきゅ…」
「あ、ほっぺにソースが…取ってあげるんよ」
「んぐ…んぐ…ありがひょう…ひゅれイア」
「(こうしてみるとエミリアさんちっちゃい子みたいで可愛い…)」食べながら喋っちゃいかんよ~」
「もぐもぐ…んぐ」
その細い体の何処に入っているのかと聞きたくなるほどの料理(近くには積み重ねられた大皿)が消費されソフトドリンクで流し込まれておりその姿を近くにいるフレイアがおしぼりで拭ってあげており嗜める一方では…。
「はい、エミリア。あーん…」
「…あーん」
「美味しい?」
こくり、と頷くと美雲は楽しそうな表情を浮かべていた。
そしてまさかの美雲が懇親会に参加すると言う超貴重な光景にケイオススタッフが驚き手ずから”餌付け”している光景に驚いていたのは歌にしか興味のない美雲が人に関心を向けており更に人の前で食事を取っている事だった。
「それじゃ…」
「え?」
突如として美雲が正面を向いてエサを待つ雛鳥のようなポーズを取ってエミリアを困惑させ呆けた声を出す。
その反応に少しだけ不満だったのかいじけたような感情を出して催促して見せた。
「美味しそうに食べているんだもの。興味が出てきたわ。私にもしなさい」
「いきなりだな…まぁいいか。はい」
手にしていた箸…ではなく新しく取り出した箸に持ち変え口を付けようとしていた料理を掴み美雲に食べさせた。
「はわわ…!」
「わお…」
「クモクモがおねだり…!」
その光景をそれぞれ食事を取っていたフレイア達は顔を真っ赤にして手にしていた生クラゲを皿に落とし手にしていたグラスを取り落とそうとしていた。
「あーん…」
「……美味しいか?」
「ええ。とても美味しいわ。刺激的な味ね」
「麻婆豆腐だからな…そうか。では今度から自分で食べろ」
「いいじゃないの。減るものじゃあるまいし」
「…面倒だ」
ニコニコと笑う美雲に少し面倒くさそうにしているエミリアは自分の食事を楽しみたいからだろうが普段の、と言うかアイドル”ワルキューレ”を知っているケイオススタッフは驚天動地しメンバーもミステリアスな面の美雲しか知らない、もといフレイアに至ってはとんでもないものを見ている錯覚を覚えていた。
それをカウンター席で見ていたアラドとカナメとアイシャがいた。
「これ、ファンが見たら血涙流しそうな場面ですね…というかエミリア中尉凄いわね…」
「美雲はすっかり心を掴まれてしまったようですけどね(エミリアちゃんに今度”あーん”してみようかしら…)美雲の表情を見たら納得できますが」
「…普段は鬼教官なのに食事時になると子供に戻る…いやあれが本来の姿、か…」
「あれが素なんだと思いますよ。…彼女は戦うことに馴れすぎていますから」
ラグナクラゲの燻製を七味マヨを付け咀嚼しバナナ焼酎で呷りながらアラドがそう呟くとカナメが同意した。
確かに、と彼女が異世界にて幼き頃から戦っている事に抵抗を覚えていないのはあの見た目からは想像も付かないのは当然だった。
カラン、とグラスの氷が溶けて音を鳴らしたのは話題が切り替わるインサートだった。
「…其でそちらの状況は?」
「フレイアの能力は安定していません。ですがレディ・Mからは時間がないと。そちらは?」
「荒療治、ですか…此方はエミリアのお陰で何とか実戦に耐えうるレベルまで持っていけました。他小隊の教官もやってくれているから休んでいて欲しいが人手が足らんのですよ」
「此方もエミリアとエアリスちゃんが明日デビューステージですからね。心配はしていませんが…不安です」
「仕方がないですよ…」
「此方も”ワルキューレ・ワークス”へ中尉用の”ジークフリード”を要請していましたが間に合いませんでした。その…本当にごめんなさい」
突如として謝罪するアイシャをみて二人は驚いた。なぜ謝罪する必要があったのだろうと?そもそもVF-31は予備機体も含め使用する材料が特別のため1ヶ月程度では間に合わない、カナメはともかくアラドは周知していたのだがその謝罪は別の意味でだった。
「…実は中尉が搭乗した”エクスカリバー”の数値データがどうやら手違いでスーリア・エアロスペース経由で新星インダストリーの第一研究室と第三設計室に流れたみたいなんです…それでその数値と機動データをみて”ジークフリード”を越える機体を作る…と息巻いてしまったようで私もその…彼女の技量なら私が作った”クロノス”をベースに更なるVFを作れると…ああ、本当にごめんなさい…」
第四設計室には希代の名機”エクスカリバー”を製作したヤン・ノイマン。
第一設計室には最新精鋭機”ジークフリード”を製作したライアン・バートル。
そして画期的な武装・可変システムを搭載した”クロノス”を製作したアイシャ・ブランシェット。
ある意味で人間をやめているエミリアの技量と才能を目の当たりにして技術者魂に火が着いてしまったようだった。
謝罪しながらアイシャは注がれたバナナ焼酎をロックでちびちびと口付けるその姿を大人二人は苦笑してみていた。
一方でカウンター席で明日のステージに関する相談をしていたアラド達を尻目にテーブル席に座るエミリアに美雲が絡んでいた。
「ねえエミリア。やっぱりステージに歌手として立たない?」
「だから私はバックバンドだと言っただろう…歌は得意じゃないんだ。それに可変戦闘機を操縦して例のアンノウンからお前達を守らなくてはならないんだからな」
「あら。それはデルタ小隊とそこの新人隊員に任せておけばいいのではなくて?」
「…お前。そこのヒヨッ子に自分の命を預けられるのか?」
同じ席に座るフレイアの隣にいたハヤテに指差しすると「ヒヨッ子」と呼ばれ苛立ちを見せるが「その通りだろう」と視線を向けると黙ってしまう。美雲は涼しげな表情であっけらかんと告げた。
「貴方が育てた新米でしょう?…それほど心配ならそれにエミリアが守ってくれるわよね?」
距離を縮めてくる美雲に身動ぎもせず一瞥しため息を吐く。妙なところで信頼されているのでやりづらいな、と思いつつ返答する。
「当然だ。そいつは新兵だがそこいらの統合軍兵士よりはやれる。それにそこいらの雑兵に私が遅れを取ると思うか?演奏も操縦も十全にこなして見せるさ」
自信満々な返答に美雲はプロフェッショナルの真髄を満足したのか笑みを浮かべ頷いた。
「そう。いいわ。貴方は私に歌以外の興味を示してくれそう…貴方は私に新しい価値観を教えてくれるためにこの世界に来てくれたのかもね」
「?なにか言ったか」
「ふふふ…何でもないわ。明日のステージが楽しみね」
「変な奴だなお前…」
再び微笑む美雲に怪訝な表情を浮かべ明日のデビューステージに意識を向けた。
◆ ◆ ◆
「”アイテール”分離を確認」
「重力制御システム異常無し、フォールドエネルギーコンデサより順次解放」
「恒星間航行モード始動。”アイテール”トランスフォーメーション開始」
「艦内重力制御システム異常無し、ヒートパイルクラスター接続。各部異常無し…」
翌朝。”マクロス・エリシオン”から分離した強襲揚陸艦”アイテール”とトランスフォームし上空へ飛び上がり惑星外へ移動すると直ぐ様目的地である”ランドール”へ向けフォールドを開始した。
「現在フォールド航行中…目的地へフォールドアウトまで三十分を予定…」
”アイテール”の格納庫に置かれた降下用のシャトル内部の控え室にて着替えを終えたエミリアは今回パイロットスーツを着用しホログラムを使用し”ワルキューレ”のライブステージへ変更させる予定であった。
続々と”アイテール”からデルタ小隊の”ジークフリード”とエミリアの偽装装甲を装着した”エクスカリバー”が発進する。
「さぁ行くわよ…!みんな、準備はいい?」
カナメの言葉を皮切りに全員が頷く。フレイアは今回が初ステージなので緊張している。
その直前に美雲に「満足させられなきゃクビね?」と脅されていたのもあっただろうが。
続々とシャトルから降下する”ワルキューレ”達に続くようにエミリアはホログラムを起動しシャトルのハッチから飛び降りた。
「EXギアを兵装モード”ワルキューレ”へ変更…アンプ・ドラムユニットシステム異常無し…”エクスカリバー”の操縦システムを自動操縦に切り替え…」
コマンドを選択し”ワルキューレ”が降り立ったのを確認する。
「歌は”愛”!」
「歌は”希望”!」
「歌は”命”!」
「歌は”神秘”!」
メンバー四人は決め台詞を宣言し着地しフレイアは1拍遅れてあらかじめ決めていた台詞を宣言する。
「歌は”元気”!」
「私が最後か…行くか!」
発進していた”エクスカリバー”のキャノピーが開き飛び出す。
大気を切り裂き”ランドール”の地へ降り立つ最中ホログラムが起動、赤と黒を基調としたステージ衣装へ変化した。
「あっ!新メンバーだ!」
「新しいバルキリーもいるぞ!」
「バルキリーから飛び降りたぁ!!」
飛び降りた”エクスカリバー”からEXギアのスラスターを吹かして着地した。
「(私も言うのか…)歌は…”願い”!」
観客の一人が告げると上空から降り立つ二人へ観客達の視線が集まった。
「聞かせてあげる。女神の歌を!」
全員が決めポーズを取りお馴染みの名乗りを上げた。
「「「「「「超時空ヴィーナス”ワルキューレ”!!!!!」」」」」」
ライブ会場へ降り立ち新メンバーの紹介をカナメがアナウンスしフレイアが自己紹介しエミリアの番が回ってきた。
「そして新メンバーはバックバンドとして”ワルキューレ”に加入したエミリア・レインズブーケッ」
「(私もプロだ。手を抜くわけには行かんな)聴衆の皆さん始めまして。バックバンドを担当するエミリア・A・レインズブーケです。趣味は可変戦闘機操縦だ。よろしく」
ギターを片手に狙撃するポーズを取ってウインクして見せると会場が沸き立った。
直ぐ様ライブが開始される。
カモフラージュし装着した特注のEXギアが展開しドラムとキーボード、シンセサイザー、ベースそして手持ちのギターが展開し一人バックバンドの体勢を取り『不確定性☆CosmicMovement』が始まった。
曲が進みフレイアの歌唱力と美雲の圧倒的なエースの存在感が観客のボルテージを上昇させていく。
が、一方で演奏を淡々とこなし盛り上げるエミリアに視線が集中するのは複数の楽器を自動演奏機材を操作しながらギターをかき鳴らしていたからだ。
「あの新メンバーすげぇ…一人でバックバンドこなしてる…!」
「あのフレイアって言う子も凄いぞ!」
「バルキリーが踊ってるぞ!」
観客達は新メンバーの加入を歓迎し”ワルキューレ”のパフォーマンスを見て聞いて喜んでいたのを見ながらレイナが測定していた。途中でハヤテ機が調子が乗ってきたのかエアショーから離脱し編隊が崩れるがアラド達が臨機応変にフォーメーションを組み直し飛行していた。
一方でエミリアが自動操縦に切り替えている”エクスカリバー”と入れ替わりエアショーを継続するその光景をみたメッサーとアラドが感嘆の声を上げていた。
「”バルキリー”が自動操縦出来るOSを組んで楽器演奏か…」
「やっぱりアイツに出来ないことはないんじゃないか…?」
演奏しながら自動操縦に任せていたのはエミリアが組み込んだシステムの恩恵が大きい。
事前に学習させたデータとエミリア自身の戦闘データを用いて反復学習させ実戦レベルで扱うために製造されたものだ。しかしまだ搭載したばかりで未だエアショーにしか耐えうる能力はないが。経験を積めば何れは…。
歌唱中のイントロの最中、周辺状況を報告する。
「”フォールドレセプター”エミリアアクティブ…ヴァール抑制率大幅に上昇…並びに危険率は大幅に低下」
「凄い…凄いよエミエミ!大幅に抑制率が上がってる」
「(フレイアはノーアクティブ…ダメね…やはりあのときの状況じゃないと)」
歌唱中の合間に現在状況を報告し合うそんな中美雲はお構い無し、とステージを楽しんでいた。
「~~~♪(良いわ…エミリアの演奏が魂なら私はそれを満たす器……とても快調よ!)」
一曲目が終わりを迎えようとし演奏をするその最中に異変を察知したエミリアは空を見ると直後に殺気が到来するのを感じ取った。空の向こうから正体不明の可変戦闘機群が空を切り裂きやって来た。
◆ ◆ ◆
「(この憎まんばかりの殺気と敵意は…!)ッ」
『デルタ6!アンノウンが来るぞ!』
「了解…!」
エアショーを行っていた愛機を演奏システムを解除し”スレイブシステム”で呼び出しキャノピーを解放、飛び込んで搭乗する。
「何処の誰かは分からないが…無粋な!」
折角の生演奏を妨害しに来た事にエミリアは静かに怒っていた。
不躾者達へこの怒りをぶつけんと深紅の”エクスカリバー”を変形させ装備した狙撃ライフルを展開し射撃する。
敵のジャミングシステムで”ワルキューレ”の歌が届かなくなってしまう為早急に”アンノウン”を排除しなくてはならない。
「ミサイル…!」
”ランドール”上空にデフォールドしてきたアンノウンから降り注ぐミサイルが地上にいる市民と”ワルキューレ”に降り注ぐのを各機体のレールマシンガンが火を吹き迎撃する。バトロイドへ変形した”エクスカリバー”はアンチマテリアルライフルを構え一撃で撃墜して見せる。
それらを防ぐと後方より機影を確認するとボルドール新統合駐留軍の”VF-171”が飛来し助太刀か、と思った矢先に声色が耳に入ってくる。
「なんだ…これは…歌…?」
”アンノウン”を狙撃しながらエミリアの耳に少女…いや少年の歌声が響く。それはひどく美しいが同時に悲しい音色でもあった。
同時に駐留軍の動きが変化した。
突如としてアラド達、そして市民達へ攻撃を仕掛けてきたのだ。
『此方に攻撃してきた…!』
『何だってんだよ一体…!』
『味方じゃなかったのかよ!?』
『デルタ3!解析を!』
『ウーラ・サー…ってセーズ指数93%…!?』
『操られてるのか…!』
『しかしヴァールが編隊を組んで襲ってくるなんてあり得ない!』
『だとしてもだ!くっ…やむを得ない…全機戦闘開始!エミリア!可能ならコックピットは外し無力化してくれ!』
チャックの返答に全員が驚く。飛来するアンノウンと時を同じくして発生した”ヴァールシンドローム”…誰の目から見てもそれは関係していることは明らかだった。突如として新統合軍の”VF-171”は編隊を組んで此方へ襲いかかってくる。それを見たアラドは素早くやむを得ないと戦闘開始を指示するがエミリアは指示を待たずに可変し攻撃を仕掛けてきたVF-171の翼と武装を破壊し無力化する。
「了解した。(味方に攻撃されるとは…面倒なのが向こうにいるらしい…!)」
直ぐ様ファイター形態へ変形したスロットルを回し突っ込むと”エクスカリバー”は向かってくる新統合軍の機体へ翼下に懸架したレールマシンガンと胴体下へ装備されたガンポットが火を吹き三機のエンジンユニットを撃ち抜き戦線を離脱させた。誘爆させないのはエミリアの狙いの精密さが現れていた。
物陰に隠れ手にしたアンチマテリアル・スナイパーライフルを構え続々とターゲットに納め撃墜していく
「(コックピットを狙えば一撃だが…)悪いが無益な殺生をするわけには行かない…しかし動きが単調だな…」
向かってくる新統合軍機をエミリアは射的ゲームの的のように致命傷を避け的確に一撃で撃墜し無力化させていた。
洗脳されているせいなのか動きが鈍い為エミリアからしてみれば欠伸が出てしまうほどだった。
しかし、多勢に無勢。自らの範囲であれば問題ないが味方はそうは行かない。
『デルタ4!チェックシックス!後ろに付かれてるぞ!』
『くっ…!?』
交戦中にメッサーの声が入る。それはミラージュが背後を取られていることを知らせるものだった。
加速していた機体にエアブレーキでクッションを掛けてガウォークに変形し反転直ぐ様ファイターへ変形し恐らく味方を撃つのを躊躇い翼の付け根を狙うためロックオンに時間がかかっている為か後ろの警戒が疎かになっているのを援護するため機体を飛ばし有視界に敵機を納めると”アンノウン”と呼称された敵機の姿だった。
『デルタ4!』
「躊躇うな!迷えば死ぬぞ!」
ミラージュの”ジークフリード”に狙いを定めていたアンノウンへ向け大口径狙撃弾を放つ。
しかし、狙われていたことに気がつき弾丸は狙いはコックピットを外れ右翼のユニットの”ゴースト”と翼を破壊され機体が大きく揺れるがパイロットが優秀なのか直ぐ様体勢を整え左翼の同ユニットを分離し此方に気がついたのかこちらへ攻撃を仕掛けてきた。
「一撃で仕留められなかったか…来るか!」
放たれたミサイルを回避するために飛び上がりファイターへ変形し迎撃する。
向かってきたゴーストはミサイルを放つが機体を翻し回避しレーザー機銃で打ち落とされエミリアは相手の死角になる反応が遅くなるであろう場所を予測し弾丸を数発放つと高初速化された電磁弾丸がゴーストの装甲を貫き爆発させ煌々と照らし出す爆発がエミリアの”エクスカリバー”の深紅の装甲を照らし出す。
「動きは良いが…まだその操縦に驕りがあるな…」
攻撃を仕掛けてきた”アンノウン”から怒りと憎しみ…敵対する者への侮蔑の感情は驕り高ぶらせ目を曇らせているのを感じとる。
それが隙である、とエミリアは体に掛かる不可を無視し背後を取る。
機体越しに驚く様を感じ取ったがエンジン部分に狙いを定めセンサーリンクがロックオンをしたことを知らせトリガーを引こうとしたそのとき背後から敵意を感じとり機体をロールさせると先程までいた空間にビームが通り過ぎる。
翻した機体の中で肩越しにその存在を確認すると目の前を飛んでいた可変戦闘機だろうその姿は細部が変更されていた。
「指揮官機…お前がこの部隊の頭目か!」
指揮官機だろうその機体は背後を取り機首のレーザー機銃…ビーム砲で機体を狙うその射線を回避しスラスターを吹かして距離を取る。
「…やるな!」
ガンポットの弾幕を回避しフットペダルを押し込みスロットルレバーを引いて体へ強烈なGが掛かるが無視し機体をガウォークに可変し射線を切った。
機体から感じる圧倒的な強者の感覚…先ほどの機体から感じるパイロットの感覚とは異なるそれは”エース”と呼ぶに相応しいものだった。
”エクスカリバー”目掛け攻撃をしようとしていた指揮官機へレールマシンガンを当て機体装甲を撃ち抜くことに成功したが一撃で撃墜することはできなかった。
左右翼の”ゴースト”が追撃を仕掛けるのを確認し機体をロールさせ射線をきって応対する。
ミサイルとレーザーが飛び交い反撃の手筈を整え迎撃を行おうとした突如として先頭を飛行する機体が撤退…いや後退していったのだ。
「一体何があった…?」
”ワルキューレ”の支援によって優位であった筈の戦況だったが鬼気迫るアーネストの通信が入り惑星”ヴォルドール”の首都が敵によって陥落した、との通信が入り驚くデルタ小隊。
この敵は一体誰なのか…と言う問いに答えるように先程襲いかかってきたアンノウン達が大空に集まり偽装を解除すると深い緑の機体色へ変化し先程まで戦闘を繰り広げていた指揮官機は漆黒の機体色へ差し変わりバトロイドへ変形し空へ紋章を投影し出した。
写し出した紋章から端正な顔立ちの青年が声明を発表する…正体不明機達はウィンダミア王国と空中騎士団と呼ばれる精鋭達が新統合軍に対し宣戦を布告し始めたのだ。
「戦場で何を悠長なことを…演劇でもやっているのか?」
しかしその最中エミリアは機体を再び地上へ下ろし変形、物陰に移動し装備していたアンチマテリアル・ライフルを構え指揮官機へ向け攻撃する。
「なっ…!」
「このタイミングで攻撃を…!?」
「卑怯ものがぁ…!」
「各機迎撃を…」
しかし、狙いが逸れてしまい隣にいた機体へ着弾しバトロイドの左腕を破壊され大きく体勢を崩した機体の存在を皮切りに演説が途切れた。
空中騎士団は迎撃をしようとするが”ワルキューレ”の活躍もあり洗脳が解除された新統合軍の部隊が体勢を建て直し上空にいた空中騎士団は宣戦布告と言う目的を果たしたのか撤退を選択した。
空中騎士団の一人が機体内で吐き捨てるように呟いたのは自分に屈辱を二度も与えたエンブレムを持つ深紅の可変戦闘機に対してだ。
「くっ…!許さんぞ地球人に”ワルキューレ”…それに”紅蓮の悪魔”め…!」
襲撃者が去った”ランドール”には戦場独特の空気が漂う。
エミリアは機体をバトロイドのままライフルを下ろしコックピットから空を見上げ呟いた。
「しかし…”ウィンダミア”か。フレイアの故郷が新統合軍に反旗…面倒なことになりそうだな。」
フレイアの境遇を思いつつ敵が明確になったことを喜ぶべきなのかエミリアは判断に迷った。
人間対異星人…即ち戦争であることが明確となったのだ、と…。