到着と始まり
世の中、表に出ない悪事は存在するものだ。例えば何事にも成功を収める天才が裏で自分がうまく行くように手引きしていたり、信頼を得るために裏で金銭のやり取りがあったり。見えるようで見えない、見させない悪事。正義に偽った悪事。いつになってもそのような悪事は消えないものである。
「先生!準備できました。いつでも行けます!」
「ありがとう。早速始めよう。」
「はい!」
どこなのかもわからないとある施設で、多くの人間が何かの準備をしている。その中心には数えきれないほどの線に繋がれた一人の少女が横になっている。言葉だけ聞けば少女を助けるために動いているかのように聞こえるが、実際は違う。場所も雰囲気も全て薄暗く、正しいとは言えない、それは実験といっても過言ではないのかもしれない。それをそこにいる人たちはわかっているかのように動いているように見える。
中心にいる少女は美しい白髪の成人しているかどうかの見た目で、普通に生活していれば誰もが虜になるような容姿をしている。唯一違和感を覚えるとしたら、少女は周りに大勢の人がいて、多くの線に繋がれているのにも関わらず、何ひとつ気にすることがないように眠っていることである...。いや「息をしていない」というのが正しいのかもしれない。
「まもなく私たちの努力が世界を変える...。もう少しで...。」
「あなた、本当にうまく行くの?」
「当たり前だ!これでうまくいかなければこれ以上できることはない!このためだけに私たちは何年、何十年と時間をかけてきたのではないか!」
「そうね...全てはこの狂った世界を変えるため...。」
「うむ!...さて皆のもの!最後の工程に移ろう!」
「この世界に私たちが作った神を降臨させる時だ!!」
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「...っ!?」
「ちょっと、あなた大丈夫?」
「え?あ、はい。すみません...。」
「長時間の飛行機で酔っちゃったかしら?はいこれ、お水あげるわ。」
「はは、ありがとうございます。」
変な夢を見た。普通見ないような嫌な夢を。おかげで隣に座っていた見知らぬ女性に心配されるどころか、水までもらってしまった。
「あら、あなたレッドシール学園へ行くの?」
「え?あー、はい。一応。」
「すごいじゃない!魔力について学び、魔力を極める。卒業すれば将来が約束されている夢のような学園よね!」
「あ、そ、そうですね...。」
「でも、この時期になんて珍しいわね。何か理由が?」
「えっと...姉が学園に関わりがありまして、急遽呼び出されて。」
「あら!お姉さんすごい人なのね!!じゃああなたも相当優秀なのかしら!」
「えーっと...。」
次から次へと質問攻めにあい、戸惑う少年。確かに少年は魔力を極めるための学園、レッドシール学園の編入生である。そして少年の姉が学園の関係者であることも間違ってはいない。ただ女性の質問に対して、少年は前向きな回答ができなかった、いや、することができなかった。それだけ少年には言葉が出てこない理由がある。ただその話をするわけにはいかなかった。少年自身のために...。
ピンポンパンポーン
「まもなく〜、ラウドネス〜、ラウドネス〜。飛行機が着陸し、魔力放出が収まるまで席に座ったままお待ちください。」
「あら、もう着いたのね。せっかくならもう少し早めに話しかけるべきだったわ。」
「あはは...」
「着陸に備えないと行けないし、お話はここまでね。でもいい話が聞けたわ!」
「それならよかったです。」
ラウドネス。どの国にも属さない離島。そして少年の目的地であるレッドシール学園がある場所。
遥か昔、神はこの世の生きる生物に魔力という不思議なものを授けた。それは世の中の全てを変える力を持ち、魔法という新しい可能性を始め、生活から何から何までをも変えてしまった。それは魔術に優れているものがえらいと言っているのと同義であるように...。
そんな世界を統一するべく、そして不要な争いを避けるべく、世界は魔力に特化した学園を作ることを決め、そしてそこの生徒を兵器として扱うことのないように、離島ラウドネスをどの国にも属さないこととなったそうだ。だが、世の中はそう甘くない。それをよくないと思う者、魔力を忌み嫌う者、利用する者、様々存在する。そして最近では世界そのものを手に入れようとする組織までできたほどである。結局争いは終わらないどころか、悪化してしまっているのである。
そんな中で少年は姉に呼ばれた。学園で誰よりも優秀で優秀な成績を収めた姉に、今まで魔力にろくに関わってこなかった、関わることができなかった少年が...。ただ呼ばれた理由は少年もなんとなく予想はしていた。
「あ、そうだわ!せっかくの縁だもの。あなた、名前はなんていうの?」
「え?俺ですか?」
「あなた以外に誰がいるのよ!私、あなた以外と話した記憶ないんだけど!!」
「あー、すみません。俺は...」
「私はネル!ネル・アスクラウト!」
「あー...エクシア、エクシア・ルートです。」
「エクシアね!なんかまた会いそうな気がするわ!だから覚えといてあげる!じゃあね!!」
「あ、はい...嵐のような人だったな...。」
呆気に取られている間に気づけば飛行機は着陸はおろか、魔力放出も収まっていた。早く降りないと、飛行機も移動できない。
「俺も行くか。姉さんもアイルも待っているだろうし。」
そうしてエクシアも立ち上がり、飛行機の出口に向かっていく。待ち合わせ場所にて待つ人たちと合流するために...