BIOHAZARD: Re-Genesis   作:ヨシフ書記長

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バイオハザード レクイエムをやりました。レクイエムのネタバレを含みます。



もしも、スペンサーの研究が成功していたらです。


亡霊の産声

欧州の断崖にそびえ立つ、重厚な石造りの洋館

 

雷鳴が轟く書斎で…元アンブレラ総帥 オズウェル・E・スペンサーは車椅子に深く身を沈めていた。

生命維持装置の規則的な駆動音だけが、彼の余命を繋ぎ止めている。

 

目の前には、自らの最高傑作である「息子」、アルバート・ウェスカー。

かつての部下たちが血の海に沈む中、ウェスカーは冷徹な眼差しで老人を見下ろしていた。

 

「……ウェスカー、お前は知らぬ。ワシがいかにしてお前を選び、育てたか。お前は『ウェスカー計画』の、唯一の生き残り……選ばれし新人類なのだ」

 

スペンサーは、掠れた声で真実を告げる。

 

「ワシは……神になるはずだった。この手で新たな世界を創り、完全なる人類を導く神にな……!」

 

だが、ウェスカーの唇に浮かんだのは、冷笑だった。

 

「神だと? その壊れかけた肉体でか…?フッ、スペンサー、貴様の限界は見えている。神になる資格……。それを手に入れたのは…私だ」

 

ウェスカーの鋭い突きが、スペンサーの胸を容赦なく貫く。

老人の心臓が止まり、その生命が尽きようとした瞬間――スペンサーの濁った瞳に、確かな「勝利の光」が宿った。

 

(……行け、アルバート。ワシを殺し、神を気取るが良い。だが、忘れるな…,ワシの意志は…もはやこの朽ち果てた肉体にはないのだ……)

 


 

旧ラクーンシティ郊外、地下深く。

バイオハザードの爪痕が残る地の底で、一つの培養槽が激しく脈動を始めた。

本体の停止を確認したシステムが、バックアップである「記憶転移」の最終プロセスを完了させたのだ。

 

「……ん、んん……っ」

 

培養液の中で、一人の少女が目を開けた。

白銀の頭髪、陶器のように透き通る白い肌。色素の薄い、8歳ほどの可憐な少女であった。

 

彼女は、自身の生存を証明するように、内側から開放のレバーを力強く引き下げた。

プシュッという排気音と共に、重厚なハッチが開き、溢れ出した冷却液が床を濡らす。

 

少女は瑞々しい素足で冷たい床を踏みしめ、濡れた銀髪をかき上げた。

その小さな掌を見つめる眼差しは、5分前に死んだはずの「帝王」そのものであった。

 

「ふむ、本体が死んだようだな。またこの世に生まれるというのは……何とも不思議な感覚よ」

 

幼い喉から漏れたのは、あまりにも不釣り合いな、老獪で傲岸不遜な響き。

 

「目覚めとは、これほどまでに心地よいものであったか。年老いてからは、眠りにつくたびに『このまま目覚めぬのではないか』という恐怖に怯えておったというのに……」

 

彼女は、壁に設置されたモニターに映る自身の姿を、実験体を見るように冷徹に観察した。

 

「変異型Tウィルス……素晴らしい。ワシの理論に狂いはなかった。この瑞々しき身体、そして内側に溢れる生命の奔流……。もはや、死を恐れる必要すらあるまい」

 

彼女は自身の肉体に宿る力を確認するように、ゆっくりと歩き出した。

それは単なる少女の歩みではない。変異型Tウィルスと完璧に適合し、B.O.W.としての特性――周囲のT系統個体を支配し、他者の細胞を吸収する能力―を秘めた究極の捕食者の胎動であった。

 

「さて、アルバート。お主はワシを殺し、神の座を奪ったつもりでおるのだろうな」

 

少女の紅い瞳が、暗闇の中で愉悦に歪む。

 

「だが、ワシが築き上げた遺産、そしてこのワシという存在……。そのすべてを汚した代償は、高くつくぞ。親殺しの不始末、この幼き手で……じっくりと『再教育』してくれよう」

 

ここに、バイオハザードの歴史を創り出した黒幕による、史上最も美しく、最も残酷な復讐劇の幕が上がった。

 

 

 




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