俺が8000年に負けるまでの話   作:凪 瀬

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ようやく予約してた公式ガイドブックが届いたので初投稿です。
これでキャラの解像度が上がるかと聞かれると首を傾げるので、みんなも公式で動いて話すキャラが見れる超かぐや姫!見ような!


10話 KASSEN選手権という名のプライベートマッチ

 

 かぐや&いろPの快進撃は留まるところを知らず、芦花や真美、光の後押しを受けて加速度的に順位を上げていった。

 精力的に活動していれば、当然問題も起きてしまう。

 

:かぐやちゃん結婚して! 5000ふじゅ〜

:結婚してかぐやちゃん 4000ふじゅ〜

:婚姻届を出して、俺の嫁になってよ! 15000ふじゅ〜

 

「ブロック、ブロック!変なやつ増えたな〜っ」

 

 かぐやのソロ雑談やゲーム配信の際、求婚コメントがよく来るようになった。

 それ自体は前からあるにはあったが、数は少なく何人かブロックするだけで止まる程度ではあった。

 しかし、先日の歌枠を経て、彩葉の手がおいつかないほど爆発的に増えてしまっていた。

 

「もー、みんなかぐやと結婚とか言うけど、リアルのかぐやなんて知らないでしょー?かぐやって、我儘で我慢できない悪童なんだよー?」

 

「(自覚あったんかい……)」

 

:悪童かぐやちゃん、いい…… 5000ふじゅ〜

:振り回されたいです。結婚しよう 8000ふじゅ〜

:踏んでください 10000ふじゅ〜

:幸せにするから、結婚してください! 5000ふじゅ〜

:おい今なんかいたぞ 500ふじゅ〜

 

「もー……そだっ!じゃあ、いろPに勝ったら結婚な!題して、かぐや争奪KASSEN選手権!」

 

「は???」

 

 かぐやの鶴の一声によって、すぐさまインターネットは大盛り上がり。

 相談もなく突然巻き込まれた彩葉は、すぐさま配信を閉じ、かぐやへ説教するも「守って〜」というかぐやに断りきれず、かぐやのナイトとしてKASSENに挑むことになった。

 

『ツクヨミに現れ、圧倒的な速度でトップライバーに名を連ねるかぐや姫!配信で語った一言はツクヨミ中をKASSENへ駆り立てた!『いろPに勝ったら結婚な!』リスナー達は、かぐやとの結婚を求め、いろPに挑む!ということで!実況は乙事照琴(おっこてること)がお送りします』

 

『みんなの為に、わんわんおー!今日も元気に職務果たしちゃいまーす!解説の忠犬オタ公でーす!かぐやちゃんがいろP以外と結婚するのは許したくありません。いろP頑張ってー!』

 

『おっふw私情がありすぎる実況wwさぁ!役者が揃ったところで!『かぐや争奪KASSEN選手権』開始です!』

 

 乙事照の宣言とともにラウンド開始のエフェクトが走る。

 早速とばかりにかぐやへ飛びつく挑戦者を、狐の着ぐるみに身を包んだ彩葉が一切の容赦なく殴り倒す。息をつく間もない連撃によって無抵抗に撲殺された挑戦者は花弁となって消えていった。

 

『決まったァ!いろP脅威の68HIT!着ぐるみアバターであんな俊敏に動けるとかwいろP強スンギww』

 

『ですが、まだまだ挑戦者はいます!油断しないで、いろP!!』

 

『オタ公くんはもうちょっと私情を隠してくださいねー!では、どんどん参りましょう!』

 

 その後も突撃してくる挑戦者を殴っては投げ、殴っては投げ、時には武器を使って切ったり吊ったり割いたりして勝利を重ねて行った。

 

『いろP圧倒的だー!!』

 

『5人連続撃破ー!HIT数やばすぎぃ!!』

 

 彩葉の圧倒的な強さに参加志望者が激減する中、新たに挑戦者が現れる。

 それは青の長着を帯で締め、黒の袴を雅に揺らし、豪奢な金の羽織をはためかせ、緑がかった美しい黒髪をかきあげた──ひょっとこ面の男だった。

 

「って、源!?!?」

 

「うっそ!ミナモトもかぐやと結婚したかったんか!?」

 

「クアーハッハッハッ!何、かぐやとの結婚なんぞ全く一切興味がないが、本気も本気のiroiro……いろPと勝負できるというのでな!馳せ参じたぞ!」

 

「なんだとー!」

 

「なにやってんのよアンタ……」

 

『ななな、なんとー!新たな挑戦者はかぐやの配信で幾度となく現れた謎多きイラストレーター『ライト源氏』ぃ!』

 

『配信に出れば不憫な目にしか会わない彼に謎が多いかは置いておいて、この企画の趣旨をフル無視して、いろPと勝負したいがために現れる辺り、凄まじい度胸……いや、執念ですね!』

 

『ていうか、個人でやってクレメンスwww』

 

:何やってんだミナモトォ!

:かぐやちゃんは眼中になしかミナモトォ!

:個人でやってろ!!

:ちくわ大明神

:これ、ミナモトが勝ったらどうなるんだ?

:そりゃ、結婚じゃね?

:今何かいたぞ

 

「ライト源氏、推して参るッ!」

 

「ちょ、マジでやるの?!」

 

「いろはー!頑張れぇー!ミナモトなんてギッタンギッタンにしちゃえー!」

 

『突如現れた景品(かぐや姫)ではなく戦いを求める戦闘狂(バトルジャンキー)と姫を守る騎士(ナイト)の一騎打ち!今ここに、開幕ぅ!』

 

 乙事の声とともにラウンド開始の音が鳴る。

 刹那、光が斧を片手に彩葉へ襲いかかる。豪奢な服装に似合わぬ無骨な片手斧は鈍いながら刃の光を宿し、空を裂きながら彩葉へ迫る。

 手に持ったブーメラン型に連結した双剣を振るって軌道を逸らすも、急停止し下から振り上げられる斧の連撃に彩葉は攻めきれない。

 

「まだまだいくぞぉ!」

 

「くっ……!はっやい!」

 

 手数では片手斧に分があると判断し連結させた剣を双剣に切り替える。

 超近距離のインファイトにおいて、光の使うレンジの短い片手斧の方が連撃性に優れ攻撃、防御ともに隙が少ない。

 対して、彩葉の使う剣は中、遠距離のミドルレンジにおいて最も力を発揮する。ワイヤーや分裂する刃、ブーメランにもなる多様なギミックが相手を絡め取り、反撃を許さない。

 つまるところ、先制攻撃を許した時点で、距離のアドバンテージは光にかなりの分があった。

 

「こんっの、はなれ、ろっ!」

 

「ぬおっ!?その武器、この至近距離でも放てるのかっ!?」

 

『あーっと!ここでいろPの放った銃弾によって距離が離れる!ライト源氏のコンボが途切れたー!』

 

『それ以上に、超近距離特化の片手斧が距離を離されたのは痛いですね。さらに、いろPの武器はミドルレンジで真価を発揮します。ここから再度距離を詰めるのは厳しいでしょう』

 

『さぁ!このまま決まってしまうのか、それともまだ手札があるのか、どうするライト源氏ぃ!』

 

「当然っ!俺がただの片手斧を使うわけがあるまい!」

 

 言うやいなや、斧の持ち手部分を捻り、横薙ぎに一閃。

 瞬間、様々な部品が駆動する特徴的な機械音とともに、柄が伸び、刃の部分が上下に広がり刃幅を広げた両手斧に変形する。

 

『へ、へ、へっ!変形武器だァ!!!』

 

『うおぉぉ!!ロマン武器ですよこれ!』

 

「何それカッコイイ!かぐやもそういうの欲しい!」

 

:うぉぉぉ!

:変形武器が嫌いな男の子はいないぜ!

:広がった刃部分、ちょっと内部の機械構造が見えてるの、いいよね……

:いい……

:片手斧が一瞬で両手斧に……一体どこの狩人さんなんだ……

:嘔吐(えづ)くじゃないか……

:獣は帰ってもろて

:Majestic!

 

「クククッ!皆の者よく分かっているではないか!これぞ、人の夢みるロマンのひとつ!その具現!往くぞ、さ──いろP!」

 

「本気ってわけね……いいじゃん、来なよ!源!」

 

 飛んでくる双剣の一方を弾き、光は再度彩葉に向けて加速する。銃弾やワイヤーといった遠距離手段がある以上、無理矢理にでも斧の間合いに入らなければ有効打は与えられない。

 光も彩葉もそれわかっているからこそ、距離を詰め、距離を離す。

 投げられた双剣に取り付けられたワイヤーを回収し、距離を離そうとする彩葉と、それを妨害するため斧を縦横無尽に振り回しワイヤーの起動を制限する光。

 一進一退の攻防は2人の集中力を持って、より加速していく。

 

『速い速い速い!両者一歩も譲らない中距離戦!移動、遠距離攻撃手段の豊富ないろPが有利に見える!が、しかし!ライト源氏は両手斧の攻撃範囲の広さによって移動を制限しつつ防御も硬い!何より、じわじわと斧の間合いにいろPを誘い込む手腕!これが2人ともプロじゃないとか、自信なくすンゴwww』

 

『SETUNAという比較的フィールドの狭いモードだからこそできる攻防ですね。強制的に中〜近距離を選択させられるからこそ、先に一手詰めた方が勝つとみていいでしょう』

 

「逃げてばかりでは、俺には勝てんぞ!!」

 

「んなこと、わかってるっつうの!」

 

 再度投げられる剣を柄で弾き飛ばし、緩んだワイヤーを長い柄に巻き付ける。そのまま勢い良く引っ張り、ワイヤーの先にいる彩葉へ一撃を叩き込もうとする。

 

「なっ!?」

 

 しかし、引っ張ったワイヤーは想像以上に軽く、もう片方の剣が光の上を飛び越えていくだけだった。

 

「武器を手放すだと……!?つまり、本人はっ!」

 

「おっらぁ!」

 

「ぐぅっ!?」

 

『入ったァ!無手となったいろP渾身のボディブローが無防備なライト源氏の脇腹に直撃ぃ!』

 

『ワイヤーが絡め取られた瞬間、武器から手を離して低い体勢を維持したまま接近。ひょっとこ面と常に上から迫る双剣に意識が割かれていたが故にできた死角を上手く利用しましたね』

 

「まだまだ!」

 

「ぬ、うぉぉぉ!!」

 

 そのままラッシュを叩き込む彩葉に呼応するように、光もまた武器を手放し、無手での殴り合いとなる。

 距離を一瞬でも開けた方が負ける刹那の攻防。互いに距離を詰め、ガードをせずに殴り続ける。

 10秒にも満たない殴り合いは、既に100の応酬を超え、HPは互いに風前の灯。泣いても笑っても、次の一撃が最後となる。

 実況席も観客もリスナーも、かぐやでさえも、コメントを忘れて2人の殴り合いを見守る。

 狐の着ぐるみとひょっとこ面の男が殴り合うという珍妙な光景は、2人の放つ圧力と気迫によって妖怪大戦のような緊迫したものに変わっていた。

 

「源ォオ!!」

 

「彩葉ぁぁ!!」

 

 連撃の最後、一瞬の振りかぶりを伴った一撃を叩き込む。

 光は上から叩き落とすように、彩葉は下から抉るように。

 拳が互いの肉体に接触する直前、ブザーの音と共に2人の姿が強制的に初期地点に戻される。

 そして、彩葉の頭上にはWinの文字がデカデカと表示されていた。

 

「なっ」

 

「は?」

 

『な、なんとぉ!時間制限によって決着ぅ!1ドットレベルの差ではあるが、僅かにいろPのHP残量の方が多く、いろPの勝利ぃ!』

 

『これまでが早期決着ばかりだったせいで、時間制限のことが頭から抜けてましたね。それほどまでに白熱した試合!最後の1ドットは、守るべきものの有る者に勝利の女神が微笑んだ。と言った所でしょうか?』

 

 全員が呆然とする会場で、いち早く復帰した実況席が何を起こったのか説明すると、周囲も理解が追いついきたのか一気に盛り上がる。

 そして、未だ自身の勝利を実感できていない彩葉へ、堪えきれなくなったかぐやが飛びつく。

 

「うわっ!ちょ、かぐや?」

 

「彩葉すっごーい!こうなんか、ビュンっ!ビュンっ!で、最後もグワーって感じでカッコよかった!」

 

「い、いや、運が良かっただけだよ」

 

「運も実力のうち、であろう。隠し札を出し、全力を尽くしてなお届かんとは……クククッ、それでこそ酒──いろPよ!」

 

 敗北したというのに、ともすれば勝者の彩葉以上に嬉しそうな光が体を花に変えながらかぐやと彩葉に近づく。

 

「アンタね……次はこういう場じゃなくて、ちゃんと個人で連絡しなさいよ」

 

「何、こういう機会でもなければ、本気……いや、必死な貴様とは()れんと思ってな」

 

「ミナモトって勝負事好きだよねー。特に彩葉とやるやつ」

 

「クククッ、俺が唯一対等に勝負できる友だからな!む、時間か……ではな、2人とも。後で、いろPといい勝負するやつがいたら俺にも教えてく」

 

 最後の1文字を言い切る直前に、花弁が散るように光は消えていった。

 白熱した戦い、僅差での敗北を期してなお清々しい姿に心を打たれていたリスナー達は、最後の最後に訪れた締まらない最後に、開いた口が塞がらない。

 

「な、なにやってんの源ぉ!」

 

「そういう所だよミナモトォ!」

 

:なにやってんだミナモトォ!

:締まらねぇぞミナモトォ!

:カッコイイお前はどこいったんだミナモトォ!

 

『オチが完璧すぎるww締まらない最後ではありましたが、素晴らしい戦いを見せたライト源氏といろPに拍手をお願いします!』

 

『かぐやちゃんとの結婚とか忘れてしまう程の戦いでしたね!さて、あの2人の戦いの後で、参加を希望するリスナーはいるか〜?』

 

:アッ……

:いやぁ、(あれの後は)キツいでしょ

:負けたよ、いろP 1500ふじゅ〜

:プロレベルに挑む度胸は、ありませんっ!

:かぐやちゃんを守る強強ナイトが勝利の女神にも愛されてるとか最強で草

 

『ふむふむふむ、志願者はゼロ、ということで!『かぐや争奪KASSEN選手権』はいろPによる防衛成功となりました!』

 

『これからかぐやちゃんに求婚する時は、まずいろPを倒せるようになったからにしような!』

 

『いろPを倒せそうになると、強制的にライト源氏とも戦うことになるという地獄の連戦wwでは、主催者のかぐやさん、一言お願いします』

 

「どーよ!うちのいろPは最強なんだから!」

 

『素晴らしい相方愛……かぐいろ尊い……推せるぅ……』

 

『オタ公くんはずっといい空気を吸ってますね。では、防衛成功したいろPさん、一言お願いします!』

 

「えっ?えーっと……変なコメントは控えてくれると助かります」

 

『はい!リスナーへの注意喚起をいただきました!皆さん気をつけていきましょう!』

 

:はーい

:求婚コメも今回ので減るだろうな〜

:かぐやちゃんへの求婚の条件が最低プロゲーマーレベルの上手さという青天井

 

『はいっ!というわけでかぐやちゃん、いろPさん、締めの挨拶お願いします!』

 

「えーっとね、かぐやのこと好きでいてくれるのは嬉しいけど、結婚とかはよく分かんないからあんま言わないでね!後、かぐやと結婚したいなら、ミナモトに勝ってからいろPにも勝ったらね!後々!今度ソロライブやるから絶対見に来てねー!」

 

「なんか増えてない……?かぐやのソロライブ、よろしくお願いします」

 

『宣伝もありがとうございます!そして求婚の条件が厳しくなっててワロタwwというわけで、この配信はここまで。実況の乙事照事と』

 

『絶対にソロライブを見に行きます。解説の忠犬オタ公でした!』

 

『「「バイバーイ!」」』

 

:バイバイー

:お疲れ様でしたー!

:いろPが鬼のように強かった……

:ライト源氏もメチャクチャ強かったな

:2人の勝負だけ世界観違った〜

ライト源氏:いろPに挑むものは俺の前に来るといい!俺は勝負受付中だぞ!

:本人いて草

:いやいやいや……

:滅相もねぇ……

:アンタに勝てるのはもうプロなんよ




コソコソ裏話
光の武器は自分で作ったオーダーメイド品。シンプルに重い、鋭い、伸びる、広がるという性能しかない。それを体の一部と言ったレベルで使いこなすので変に特殊な武器よりも厄介になっている。
光が斧を選んだ理由は、あらゆるものを一撃の元に叩き伏せ、道を切り開くため。脳筋とも言える。

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