俺が8000年に負けるまでの話   作:凪 瀬

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不定期更新のはずなのにここまで毎日投稿できているので初投稿です(?)
友人にも着実に布教が成功していて嬉しい今日この頃、みんなも見よう!超かぐや姫!


11話 分かりきっていたこと

 

 かぐやのソロライブは大盛況のうちに幕を閉じた。

 かぐや本人の歌唱力はもちろん、酒寄彩葉の特別なアレンジを効かせた伴奏や、かぐやのキャラクター性を補完する振り付けとカメラワーク。様々な仕事人達が仕組んだ演出は見る者を虜にしたことだろう。

 それは、数日経った今も尚、各SNSで肯定的な反響が飛び、2人のチャンネルが飛躍的に順位を伸ばしたことからも伺える。

 

「しかし、久しぶりのようにも感じるな……依頼の無い時間というのも……」

 

 最近はかぐやからの依頼が多く、それらを全て捌くために時間を費やしていたからな……。

 勿論、有難いことではあるし、依頼料もしっかりと貰っている。何より、かぐやであれば創作意欲の湧く相手が故に、擬音だけでも雰囲気さえ分かれば後は勝手に筆が動くんだが……。

 

「如何せん、数が多い……」

 

 頼りにしてくれるのは嬉しいが、もう少し早めに連絡をだな……後、複数の依頼を同時並行でお願いするんじゃない。俺は便利屋ではないんだぞ……天才ゆえ、完遂できてしまうんだがな!

 だが、俺の才覚と酒寄彩葉のプロデュースがあって尚、どうしようもないことというモノも、確かに存在する。

 

「このままの速度であれば、いい所までは行けるだろうが……しかし、1位には届くまい」

 

 もう1つ、大きな爆発が欲しいところだが……ここまで来ると、俺達だけではどうしようも無さそうだな。

 35位、1ヶ月弱でこれほどの順位を勝ち取ったことは偉業と言って差し支えない。しかし、1位を取るというのなら避けては通れない鬼がいる。

 かぐやと酒寄彩葉にとって、ここから正念場となるだろうな。

 ぼんやりと考えながらスクワットをしていれば、時間はあっという間に溶け──っと、電話か。

 

「かぐやか。一体何用だ?今は特に依頼はないと思うが──」

 

「ミナモト!彩葉が、彩葉がアツアツで、動かなくて!どうしたらいい!?」

 

「っ」

 

 あぁ、クソ、畜生。最悪だ。分かっていた、分かっていたが!違う違う、違う!今はそうじゃない!

 

「落ち着け。先ずはタクシーを拾って家まで行け。その後、布団に寝かせて、エアコンなどで室内の温度を適正温度に整えろ。できるな?」

 

「う、うん!分かった!帰って、寝かせて、エアコン付ければいいんだね!?」

 

「そうだ。それから、酒寄彩葉は今日バイトか?」

 

「えっ、えっと……うん!あるって言ってた!」

 

「では、酒寄彩葉のバイト先に病欠の連絡を入れろ。妹として姉の体調が悪いので休ませてもらう。とでも言っておけ」

 

「バイトにお休みの連絡、かぐやは妹……分かった!」

 

「よし、では俺も看病用の諸々を持ってそちらに向かう何か必要なものはあるか?」

 

「えっと、かぐやそういうのわかんなくてっ……!必要なもの教えて貰ってもいい!?」

 

「いや、そういうことなら俺の判断で持っていこう。使い方や買える場所も教える」

 

「ミ、ミナモト……ありがとう!かぐや、彩葉の為に頑張るからね!」

 

「あぁ。……かぐや、慌てているだろうに、よく俺に連絡した。人を頼る判断ができたこと、誇るがいい」

 

「……うんっ!」

 

「では、切るぞ」

 

 さて、必要なものはなんだ?

 風邪か、熱中症か、過労か……あるいは全てか。

 とにかく水分。冷却シート。市販の解熱。栄養価もありつつ飲みやすいゼリー。後は、かぐやを落ち着かせるためにもアイスも買っていくか。

 さぁ急げ。だが焦るな。必要なのは、冷静な思考と迅速な行動だ。逸るな、逸るな!

 自分の鼓動が、嫌に大きく聞こえた。

 

***

 

 夕暮れに染まる街を光は全力でかける。

 手に持った袋を揺らさないよう注意をはらいながら、閑静としたした住宅街に点々と汗の道を残していく。

 入り組んだ道を潜り抜け、顔を撫でる風の温さすら涼しく感じる程熱くなった体で、やや寂れ気味のアパートの前に辿り着いた。

 かぐやと彩葉の生活する部屋の前で上がった息を整えて、額の汗を簡単に拭ってからインターホンを押す。

 

「かぐや。来たぞ。酒寄彩葉は?」

 

「ミナモト!えっと、言われたこと全部やって、今は寝かせてるところ。後、おじやが良いってネットに書いてあったから、今おじや作ってる!」

 

 扉を開けたかぐやは慌てた様子でこそあれ、光の指示の甲斐もあってか普段通りの元気さや溌剌さがあった。

 

「素晴らしい手際だ。簡単なものではあるが看病用に色々持ってきた。今、使い方を教え──」

 

「──やばい……バイト……!」

 

「彩葉ぁ!起きたのっ?!」

 

「起床して一言目にバイトとは……筋金入りよな……」

 

 開けっ放しになった扉から部屋に入れば、雑多なもので溢れた部屋が光を迎える。

 その一角、彩葉が眠っていたであろう布団の周りだけは柔らかなぬいぐるみや抱き枕が敷き詰められ、ふかふかな城を作り上げていた。

 

「バイト休む連絡入れたから……彩葉、休んで〜!」

 

「えっ……あ、ありがと」

 

「あ、あと!ミナモトが色々持ってきてくれたよ!これ付けてゆっくり休んでー!」

 

「そうなんだ……えっ?!源来てるの!?」

 

「ふむ、俺に気づくのがこれほど遅れるとは……随分弱っていると見えるな、酒寄彩葉」

 

「あっ!ごめんミナモト、立ちっぱなしにさせちゃって」

 

「気にするな。病人の手前、長居するつもりもない」

 

「あ、ありがとう源、なんか、迷惑かけたみたいで……」

 

「気にするな……と言いたいところだが、やはり体を壊しよったな、たわけ。無理するな、しっかり休め、疲れたら疲れたと言えと、あれほど言ったというのに」

 

「うぐっうぐっっうぐぅっ!」

 

 光が指摘すると同時に彩葉の額を軽くつついていく。身に覚えのありすぎる言葉達と、光のじっとりと睨めつける目に、彩葉は苦悶の声を上げて耐える他ない。

 

「かぐやに感謝しておくがいい。俺にすぐ連絡し、できることを最大限していたのだからな」

 

「……その、バイトのこともだけど、ありがとうかぐや。お陰で、助かった」

 

「彩葉……!いいの、かぐや、すっごい我儘言ってさ、彩葉に無理させちゃったから、体アツアツだった時、彩葉死んじゃないかって思って。人間って、映画とかだとすぐ死ぬじゃん?でも、光なら彩葉生き返らせれるんじゃないかって思って、それだけで……彩葉、死なないよね?」

 

「この程度じゃ死なんよ。……心配かけて、ごめんね?」

 

「どこからツッコめば良いものか……まぁ、いい機会だ。しばらく休養して、これまでの疲れを癒すといい。必要なら、病院まで連れていくが?」

 

「源も、ありがとう。病院は……いい、かな。お金ないし……」

 

「そんなもん、かぐやに任しときー!病院代くらい!」

 

「そうでなくとも、俺が立て替えてやる。言い出しっぺの何とやらだ」

 

「でも、ギリギリで予定組んでるから……休んだら……」

 

 チラリと熱によってやや潤んだ瞳で光を見上げる。

 

「……かぐや、必要なものは届けたし使い方は酒寄彩葉から聞くといい。酒寄彩葉、貴様はしっかり休め。体調を崩してまで得るものなんぞ、何も無いぞ!」

 

「え!?ミナモトかえっちゃうの?!」

 

「酒寄彩葉も目を覚ましたようだし、後はかぐやだけでも大丈夫だろう?……これを機にしっかりと語らうがいい。何のために、何をしているのか」

 

「源……」

 

「また何かあれば連絡してくるといい。この俺が!すぐさま駆けつけてやろう!」

 

「ありがとうミナモト!」

 

「本当、ありがとうね。色々と」

 

「クククッ、気にするな。ではな!」

 

「じゃあね」

 

「ばいばーい!」

 

 光を見送り階段を下りる音が聞こえなくなってから、彩葉はかぐやと向き合う。キラキラ輝く星のような瞳は真剣に細められ、鋼を思わせる光沢を放っていた。

 

「彩葉、教えて?なんで彩葉は、一人で頑張ろうとしてるの?」

 

 かぐやもまた、光の言葉を受けて、彩葉の語る全てを受け止める覚悟を持った。驚きに目を見開く彩葉から、目を逸らさずに言葉を待つ。

 

「……どこから話そうかな」

 

「そんなん勿論──最初から!」

 

 真剣に固められていた表情を一気に崩して、普段通り元気なかぐやからの要求に、彩葉は思わず破顔してしまう。

 どこか緊張して力の入っていた肩がスっと軽くなり、手元にあったぬいぐるみを手繰り寄せる。抱き締めれば、ふわふわと柔らかな感触が彩葉の体を覆い、ゆっくりと口を開く。

 

「そうだね、先ずはお父さんが死んじゃった時から──」

 

 夕暮れの照らすアパートの一室は、滔々と語る彩葉の声とかぐやの賑やかな反応で満ちていた。

 

***

 

「──はぁ〜……」

 

 ズルズルと自室の壁に背を預ければ、冷房に冷やされた心地よい冷たさが、夏の日差しと走ったことで火照る体に心地よく染み渡る。

 赤くなった顔や発熱から考えると、疲労から来る風邪と見ていいだろう。本来なら病院にも連れていきたかったが、必要ならかぐやが引き摺ってでも連れていくだろう。あれで、彼奴も人をよく見ているからな。

 何はともあれ、無事で良かった。

 

「人騒がせめ……全く……心配させよって……」

 

 焦った。本当に焦った。

 倒れると脅しておきながら、誰よりもそんな事はありえないと思い込んで、酒寄彩葉ならば大丈夫だろうと目を背けていたのは……他でもない俺だったのだろう。

 何たる愚行、何たる蒙昧。

 かぐやが居たから手遅れにこそならなかったが、もしかぐやのいない所だったら?かぐやが気づかなかったら?人がいない場所だったら?

 休ませると、万全の状態のためサポートするといいながら、この有様とは何事だ。

 看病の用品など、近くにいるかぐやに買いに行かせればよかった。俺が走って行くよりも余程早く、しっかりと看病できるはずだろうに……酒寄彩葉が無事なことを確認したいがために、非効率なことをした。

 このような時でも、自分の感情を優先してしまった己に反吐が出る。可能なら、この胸郭を引き裂いて無様に鼓動を重ねる心臓を食いちぎってやりたい……!

 しかし、それはやはり、己の過剰な自己嫌悪に過ぎず、不要なタラレバに支配された無意味なネガティブに起因する。

 であれば──それを昇華し、発散する。

 

「となれば、やはり描くしかあるまい」

 

 何回も、何年も、そうやって折り合いを付けて、カタをつけてきたのだ。ならば、今回も同じことだろう?

 

***

 

 タブレットの上を撫でるペンは、光の渦巻き荒ぶる感情を写したように、乱雑で適当で、自由に線と色を重ねる。

 黒、赤、紫、青、白と様々な色が重なったキャンパスに元の白はなく。光の整理できていない感情を色分けし、元の色と境界が曖昧になるほど混ぜ合わせていく。

 塗りたくられた色の上から、細ペンを使い線を描く、人を象ったそれは光の想像と感情に任せて様々なポーズに変わり、人数が増え、減り、また増え、1つの構図で止まる。

 余分な線を消していき、必要な線を整え、細部を描いていくうちに、煩雑に見えた色すら計算された彩に見えてくる。

 なぞり、引き、消して、加えて、ぼかして、滲ませて、歪めて、整える。

 呼吸も、瞬きさえも忘れて、一筆毎に整えられるキャンパスと一振ごとに整理される感情に光の宿らない目を向ける。

 そうして、暮れた夕日は既に遠く、遠く輝いた星々が幾つか巡り、姿を隠した頃に、その1枚は完成した。

 

「──『家族として』とでも付けておくか」

 

 暗い茜色に染められた部屋の中で、座りながら淑やかに笑う黒髪の少女と、立ちながら溌剌に笑う金髪の少女が向き合って、手を繋いでいる。

 窓からさす夕焼けの残り日が照らす黒髪は艶やかに彩られている。そして、夜の訪れと共に黒く染まり始める部屋の中で、燦然と輝く金糸がよく映えていた。

 タブレットの放つブルーライトだけが唯一の光源となった部屋に、光の吐く息の音が溶けていく。

 

「結局、俺のやることもやるべき事も変わらん。酒寄彩葉と万全の状態で勝負するため、無理と無茶を止め休ませる。今回のことを戒めに、今一度認識を改めろ。彼奴も、身を崩す人の子に過ぎんということを」

 

 口に出すと共に一度瞬くことで、瞳に力強い光が宿る。

 それは、これまでよりもいっそう強く、それでいて澄んだ光だった。

 

***

 

「酒寄彩葉の件、報告してなくて悪かったな」

 

「かぐやちゃんから聞いてたし、気にしなくていいよ。寧ろ、ありがとね。すぐ彩葉のところ行ってくれて」

 

「私達じゃすぐに動けなかったからさ〜」

 

「適材適所というやつだ。あの時、偶々すぐ動ける俺にかぐやから連絡が来たと言うだけだろう。気に病むことはあるまい」

 

 ツクヨミ内に作られた真美の家では、光、芦花、真美の3人がゆったりとソファに座りながら雑談していた。

 本来なら現実の真美の家で5人集まり遊ぶ予定ではあったが、先日彩葉が体調を崩したばかりであることも加味し、急遽ツクヨミに変更することになったのだ。

 

「やっほー!みんな、何やってたの?」

 

「かぐや、いらっしゃい〜」

 

「こんばんは〜」

 

「よく来たな。先日、酒寄彩葉が体調を崩したことについて話していてな。彼奴の体調はどうだ?」

 

「もう全然大丈夫そう!なんなら、昨日はずっと勉強してたし……もっと休んでってかぐや言ったのに!」

 

「彩葉〜……」

 

「彩葉はさぁー……」

 

「彼奴も強情よな……」

 

 一度体調を崩そうとも、完璧であることを求めて精力的に活動する彩葉に対して、4人は心配の溜息をつく。

 一度倒れた程度では、本人に深く根付いた行動原理は変わらなかったらしい。

 

「まぁ、彼奴が回復したようで何よりだ」

 

「そうだね〜。一安心って感じ〜」

 

「またすぐ倒れないかは心配だけどね……」

 

「だいじょーぶ!かぐやが倒れないようにしっかり見張っておくから!」

 

「………………頼んだぞ」

 

「その間は何さ!ミナモトぉ!」

 

 普段通りギャイギャイと騒ぎ始める光とかぐやに苦笑いを浮かべて、芦花と真美は巨大な釣り堀に面したベランダに出る。

 真美は海に竿を振り、ゆったりと釣りをはじめ、芦花はベランダに設置された二人用のソファを広々と使い、ネットサーフィンをする。

 

「えぇい!いい加減引っ付くのをやめんか!ほれ、そろそろ忠犬オタ公のニュースがあるのだろう?!」

 

「ぐぬぬぅ!かぐやだってやればできるんだからね!」

 

「わかっている!」

 

「本当だからね!!!」

 

「耳元で叫ぶな!?わかっていると言っておろうが!?」

 

 背中にかぐやを引っつけた光もベランダに出る。

 釣りをする真美の邪魔にならないように、自分用の人をダメにするクッションを設置し、その上にかぐやを振り落とす。

 

「ぐぇっ!?」

 

「全く、もう少し落ち着きを持て……」

 

「ぶぅ〜……おぉ?何このクッションすげー!沈む〜!」

 

「クククッ、俺のオリジナルだ。気に入ったのならくれてやる」

 

「いいの!?」

 

「構わん。元々、貴様ら全員にくれてやるつもりだったものだ」

 

「えっ、私達も?」

 

「あぁ、仲良くしてもらっている礼だ。気にせず受け取るがいい」

 

「わ〜い!ありがとう、源くん」

 

「嬉しー、私も部屋に置こうかな」

 

「クククッ!俺デザイン、俺作成のクッション、存分に使い潰すがいい!」

 

 光の機嫌良さげな笑い声とかぐやの流す『NEWS TUKUYOMI!!』の音声をBGMにまたゆったりとした時間が流れる。

 

『──そして下馬評通り独走状態だ!堂々第一位ブラック・オニキス!もはやこの3人で決定か?ちな、圏外だけどランキング爆アゲ中のチームがいるんだよね。みんな知ってるか?──』

 

「むー、どうしたらいいのだー!!」

 

「流石は黒鬼、ファンを魅了する点において、素晴らしい手腕だな」

 

「当然、帝様だもん〜」

 

「真美とミナモトはどっちの味方なの!?」

 

「かぐやの味方のつもりではあるが、認めるべきところは認め、褒めるべきところは褒めるべきだろう?」

 

「私もかぐやと二推しなので〜」

 

「いやー!かぐやを褒めて!かぐやだけ推してー!」

 

 3人が騒いでいると、芦花の目の前に彩葉が現れる。

 芦花がポンポンと隣を叩けば、素直にソファへ座りその身を深く沈みこませていた。

 

「彩葉、体調はどう?」

 

「もう大丈夫。……3人は何騒いでるの?」

 

「んー……このままだと、かぐやちゃんが1位になるのは難しいからどうしよっかって話かな」

 

「あ〜……やっぱり黒鬼強いよね」

 

「くっそ〜!帝、出てこい!勝負しろー!!」

 

「かぐやvs帝でゲーム対決ってのは?世紀の竹取KASSEN!」

 

「それだっ!」

 

「マジでなし!向こうはトッププロゲーマーだよ?格が違うって」

 

「かぐやも十分に伸びているし、知名度もある。しかし、ファン数が1000万を超えるとなると難しくはあるだろう」

 

「んぇ〜!?なんでー!?対決ぅー!」

 

「ダメダメダメダメ、ダメっ!」

 

 クッションの上から飛び上がり、腕を組んでそっぽを向く彩葉の前へ仁王立ちして我儘を通そうとする。それに対するように、彩葉も眉を寄らせながら立ち上がって、明確にNOとつきつけるのであった。

 

「彩葉も一緒に……あっ、いやいやいや!彩葉が倒れちゃったらやだし……!でも、もしや、ゲームなら、息抜きになったり……?」

 

「……ふんっ!」

 

 往生際の悪いかぐやに対して、彩葉は再度そっぽを向き、室内のソファに飛び込んでゴロゴロと伸びをし始めた。

 

「このままヤチヨカップ終わっちゃうよ?迎えが来るかもしれないし!」

 

「アンタ、そう言って一向に来ないじゃんー」

 

「そ、そんな……わかんないじゃん!来るかもしれないじゃん!」

 

「来るなら早く来てくれ〜連れて帰ってくれ〜」

 

「あー!彩葉が意地悪言ってるー!」

 

「ふむ、かぐやはいつか迎えが来るのか?」

 

「それって築地から?家族が迎えに来るとか?」

 

「もしかして、かぐやって家出少女なの〜?」

 

 かぐやの正体が月から来た宇宙人であることを知らない3人の前で不用意に話してしまい、あらぬ勘違いが発生しそうになる。

 誤魔化すために色々と言い訳を考えていると、かぐやの目の前に巻物のアイコンが現れる。

 

「おぉ、ビビったー。誰から……ぉー……おー?……おぁはー!」

 

 メールの内容を確認するかぐやの目が徐々に輝きを増していく。それは、子供が欲しかった玩具を買ってもらったような、オタクが推しのライブチケットが当たったような……あるいは餌に巨大な魚がかかった時のような高揚を如実に表していた。

 そんなかぐやの姿に嫌な予感を覚えた彩葉と、好奇心から覗き込む光。

 同じ文面を読み終えた2人の反応は酷く対照的だった。

 

「う、嘘でしょ……はぁぅ……」

 

 許容範囲を超えた情報量に作画を崩壊させながら、膝から崩れ落ちる彩葉。

 

「ほう、これは面白いことになってきたではないか!」

 

 ひょっとこ面で顔こそ見えないが、恐らくとても楽しそうに好戦的な笑みを浮かべているであろう光。

 

『Black onyx 帝アキラ さんからのメッセージ

 初めましてかぐやちゃん!

 俺はブラックオニキスの帝アキラ。ファン数 百万人おめでとう!

 ここからは提案なんだけど、

 KASSENで「帝vsかぐやの竹取合戦」

 ってのはどう?

 かぐやちゃんが負けたら……やっぱ俺と結婚、かな?

 こっちが負けたら、なんでもお願い聞くよ

 俺らでツクヨミ盛り上げようぜ!』

 

 波乱の合戦は、すぐそこまで迫っていた。




コソコソ裏話
光くんが感情を整理する時は絵を描きますが、これを小学校から繰り返していたためメチャクチャ絵が上手くなっていきました。そして、人に見せられない感情の具現が1000枚以上、タブレットには保管されています。
小学校時代から大人よりも大人な感情整理の仕方するな、こやつ……怖。

感想、評価、ここ好き、誤字脱字報告お待ちしております!
マジでお待ちしております!!!
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