俺が8000年に負けるまでの話   作:凪 瀬

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戦闘描写が訳分からないので初投稿です。
小説を書くためにNetflixで超かぐや姫!を見返し、見続けて、ふと我に返って書きたい場面まで巻き戻すのを繰り返している……描き続けるのが難しい理由。みんなも、見よう、超かぐや姫!


19話 徹底抗戦

 

 9月12日。かぐやの卒業ライブ。同時に、月の住人がかぐやを奪いに来る日。

 これまでの一週間と少しでできる限りの準備をしてきた。後は、思いのままに戦いきるのみだ。

 

「光、僕に手伝えるのはここまでだ。この先の選択は、全て君に委ねられている」

 

「あぁ、助かったよ照兄さん。お陰で、欲しいものは全部揃った」

 

「光の友達の助けになれるんだろう?だったら、断る理由はないさ」

 

 詳しい事情も聞かず、手を貸して欲しいと言った俺に二つ返事で応えてくれた照兄さんには感謝しかないな……この人には敵わないと、ここ数週間で何度も思わされる。

 

「……いい顔をするようになったね」

 

「そうか?」

 

「うん。昔よりも見るべきものをちゃんと見てる顔だ。これも、恋の力かな?」

 

「……かもしれんな」

 

「あれ、茶化すな!とか言われると思ったのに」

 

「いいや、俺とて俺が変わったのは恋したことが大きいというのは分かっている。それを否定するつもりはない」

 

 恋をして、恋破れたあの時から、世界の見方が変わったのは確かだ。自分をもう一度見つめ直した時間がなければ、俺はきっと何処かで根本から崩れ落ちていただろう。

 

「だが、恋だけが俺を変えたのではない。それまでの、友情と信頼も俺を変えたのだ」

 

「……本当に、大きくなったね」

 

 もう後10分でライブが始まる。装備もアイテムも最終確認を終えた。全員への配布も完了している。

 

「頑張っておいで、光。終わったら、今度こそ君の恋バナと素敵な友人達の話を聞かせてよ」

 

「あぁ、期待して待っているがいい!一晩では足りんかもしれんがな!」

 

「上等っ!行ってらっしゃい!」

 

 去り際に俺の背を叩き、衝撃という激励を残して照兄さんは青の燐光に変わった。

 触覚のないツクヨミでは衝撃しか来なかったものの、叩かれた背中に確かな熱が伝わった。

 あれで、こういう熱い展開が大好きだからな、照兄さんは……。俺も、もちろん大好きだ。

 

「──行ってきます!」

 

 ライブ(決戦)の始まりを告げるブザーが響く。

 

***

 

 思えば、僅か一ヶ月程度の付き合いでしかない。

 

「みんな、ありがとー!」

 

 だと言うのに、その張り上げられた声に寂しさや切なさや、それ以上の決意を感じられるようになっている。

 

「今日でお別れみたいなんだけど、悲しくはしたくないんだ!」

 

 知っている。貴様はいつも賑やかで、明るく、希望に満ちた歌を歌っていたのだから。

 貴様の優しさが、どこかの誰かを救えるほど身勝手で大きなものだと言うのを、俺はよく知っている。

 

「みんなでお見送りして、ハッピーに卒業させて!」

 

 そんな貴様()の願いはできる限り叶えてやりたいがな……見送ってハッピーに卒業?それは無理な相談だ!

 何せ、他ならぬ貴様らが、まるでハッピーに思えんのでな!

 

***

 

 かぐやの頭上を過ぎり、天守閣の目の前に6つ(・・)の桃が着弾する。

 盛大な土埃の先に、6人の人影が現れる。

 前線に最も近い位置に立つのは、最強のゲーマー集団、ブラックオニキスのリーダー。帝アキラ。

 その一歩後ろには、既に臨戦態勢となった武器を握る雷と乃依が控える。

 それぞれ普段の装いの中に、黒鬼を模した鬼面を携え、不敵な笑みとともに戦場を見つめる。

 最前線の帝と並び立つのは、生まれた瞬間からかぐやを見守り、育て、慈しみ、支えられ、救われた少女。彩葉。

 美しい顔の横では、括り付けられた青鬼を模した面が揺れる。

 彩葉の背を支えるように、あるいは守るように立つのは、かぐやの魔法に彩葉を救って貰えた並々ならぬ美貌を持つ少女ROKA。

 彼女の拘り抜かれた装飾に紛れて、赤鬼を模した鬼面が添えられる。

 そして、最後尾にして、最もかぐやと近い場所に堂々と仁王立つのは、揺るぎのない意志を持ってハッピーエンドを目指す青年ライト源氏。

 夜闇を切り裂く金の羽織に並ぶように、被られた金色の鬼面が前を見据える。

 そして、戦場ではなく、観客席に紛れて、一人の心優しき少女が白色の鬼面を胸に抱えていた。

 七者七葉、それぞれ趣はバラバラなれど、身につけた鬼面と背後で瞳を瞬かせる姫を持って意志をひとつとする。

 

「ライブの余興!かぐや、私達は私達で、精一杯やるから。万が一勝っちゃったら、ドンキで買い出しして、パンケーキつくろ!」

 

「万が一じゃねぇ、だろ?」

 

 彩葉と帝の言葉に、各々が首肯する。

 ステージの上からその姿を見下ろすかぐやの瞳に、薄い膜がかかる。

 

「かぐや、貴様が目指したハッピーエンドはこの程度で満足できるものだったのか?」

 

「ミナモト……」

 

「俺は……俺達は、この程度ではまるで満足できんぞ!故に!徹底的に抗い、全員で、完全無欠のハッピーエンドに行くぞ!」

 

 振り上げられた両手斧の石づきが木製の櫓を叩き、甲高い木の音が響く。

 それに呼応するように、各々が、各々の武器を持って地面を鳴らす。

 

「そっか……そっか〜……!」

 

 目の前に広がる友達と大切な人の背中に、かけられた言葉に、観客席でも響く地面を叩き鳴り響く一体の音に、かぐやは弾ける笑顔と涙を流した。

 

「みんなっ、自由だ!」

 

 かぐやの喜びに満ちた声と共に、ツクヨミの夜空に光が集い、本物の月が現れる。

 それは徐々に形を変え、歪み、空を穿つ扉へと変わり、地球に有り得ざる月の住人達を迎え入れた。

 

「さぁ、盛り上げてこうぜ!」

 

 帝の声が響き、生み出された6柱の月人と戦意滾らせる6人の鬼が相対する。

 音楽とともに、かぐやの歌(彩葉達の戦い)が始まった。

 

***

 

 画面の先では、ステージで歌うかぐやちゃんと、迫り来る月人を迎え撃つ彩葉達の姿が映っている。

 誰もが真剣な表情で、誰もが強い意志を持っていて、誰もがどこか楽しそう。

 そこに立てたらなって、今更ながら思うけど、それ以上にこれで良かったんだって安堵の気持ちが大きい。

 だって、みんな大事で譲れないものがあるんだもん。私よりも、ずっとずっと強いものが。

 帝様達は夢を魅せる最強のブラックオニキスとして、彩葉は大事な大事なかぐやちゃんのため、芦花と源くんは大好きな彩葉と大切なかぐやちゃんのため。

 私も、友達としてかぐやちゃんを大切に思ってる。それは嘘じゃないし、帰ってなんて欲しくない。

 でも、私はあそこ(戦場)に立てるほど強い力もなければ、想いも無かった。誰よりも、私自身がわかっていた。

 外から見るみんなは強くて、眩しくて、私は目を細めてしまう。

 

「頑張れ」

 

 届くか分からないけど、届いていると信じて口に出す。

 源くんから託された鬼のお面をギュッと抱いて、かぐやの良く口にしていたハッピーエンドをお祈りする。

 

『諫山真美、貴様にこの鬼面を託す。俺達の切り札……その要であるこの面を貴様が持っている限り、俺達は負けん』

 

 6人しか行けないから、自分からその席を降りた私に、哀れみでも同情でも罪悪感でもなく、ただただ熱い信頼の眼差しで託してくれた鬼のお面。

 『切り札を使うための鍵』だと言うのなら、みんなを絶対に勝たせて欲しい。

 

「頑張れっ!」

 

 神様でも仏様でもいいから、来年も、みんなで一緒に居させてください。

 

***

 

 敵わないなぁ……

 零れそうになった言葉を無理やり飲み込んで、迫り来る灯篭頭を吹き飛ばす。

 無限に湧き上がってくる灯篭の一体一体は弱いけど、常に増え続けてキリがない。

 かぐやちゃんの歌や他のみんなが強いから何とか戦えてるけど、正直私には辛いものがある。

 プロゲーマーにプロ並みに上手い彩葉と源くん……ここで一番弱いのは、私だ。

 分かってたことだし、覚悟もしてたけど、やっぱり辛いなぁ……。

 

「あっ」

 

 ヤバい、ミスった。

 余計なこと考えてて、後ろに回ってた月人に気づかなかった。

 まさか1分も経たずに残基を減らしちゃうか〜……弱くてごめん、かぐやちゃん。足引っ張ってごめん、彩葉。

 

「きええぇぇい!」

 

「えっ?」

 

 私を囲んだシンバルが閉じられる直前、特徴的な叫び声と一緒に月人が吹き飛んでいった。

 

「無事か!ROKA!」

 

「源くん……」

 

 目に痛い金色の羽織とギラギラ輝く鬼面を被って、前よりも大きくなった両手斧を構えて見下ろしてくる。

 その姿に、場違いにも凄く安心してしまった。

 

「……ごめん、油断した」

 

「気にするな。彼奴らめ、戦いが数であることを心底心得ているらしい。難敵だ」

 

「……なんか源くん、楽しそうだね?」

 

 かぐやちゃんの事で一番何とかしたいって思ってるのは彩葉だけど、一番怒ってるのは源くんだと思ってたから正直意外だ。

 

「ふんっ!月人共に癪なことではあるが、こうして友達と肩を並べて、譲れぬものを守るというのは良いものだ。心が踊る。何よりも、生きている感じがする」

 

「生きている……」

 

「好き勝手に、自由に、無茶苦茶に、この一瞬のためにあらゆるものを費やすのは、人にしかできぬ事だ」

 

 そう語る源くんの目は、面に隠れていてもわかるほど輝いていて、その輝きが一身に向けられた。

 

「貴様も、もっと我儘になれ。譲れぬものがあったから、ここに立っているのだろう?」

 

「譲れないもの……」

 

 そんなの、決まってる。

 彩葉と出会って、友達になって、かぐやちゃんと会って、話して、変わって、でも全く変わらなかったものがずっとある。

 ねぇ彩葉、貴女が笑っていられるなら、私はなんだってしてあげられる!

 

「いい目をするではないか!さぁ、反撃といくぞ!」

 

「うん、やろう!」

 

 辛いのも苦しいのも、劣等感も、全部ほっぽり出して、目の前の月人に攻撃を叩きつける。

 今の私は最強だってところ、魅せてあげる!

 

***

 

 一曲目が終わる。

 それぞれの奮闘と連携によって、全ての月人の残機は残り1。

 しかし、圧倒的な物量の前に、彩葉達も無傷とは行かず、芦花の残機は0、乃依と雷も残り1まで減らされ、残機こそ減っていないものの帝、彩葉、光の3名も疲労と焦りが顔に浮かぶ。

 月人も想定より抗う彩葉達に焦れたのか、本気を出し始める。

 巨体を揺らす月人は周囲に無数の光玉を生み出し、その一つ一つが致命傷となるレーザーへ変わる。

 狛犬は口から禍々しい悪鬼の姿を晒し、他の月人も武器がより大きく、肉体がより強靭に、動きがより俊敏に変わった。

 動きの変化に追いつけなかった雷とレーザーを避けきれなかった乃依が落ちる。そして、無限の灯篭と光に紛れたレーザーによって光も落ちた。

 拮抗していた戦線は、一瞬にして彩葉達の劣勢に変わる。

 戦う彩葉達の姿に、かぐやは一瞬不安そうな顔を浮かべるも、一呼吸の間に覚悟を宿した凛々しくも明るい笑みを浮かべる。

 そして、天守閣の頂上を使った、ラストソングか始まった。

 

***

 

「全部ライト源氏先生の想定通りって訳か……」

 

「え?」

 

「いいや、何でも。乃依、雷!使うぞ!」

 

「御意」

「はーい」

 

 腰に垂らしていた鬼面を引っ掴んで、顔に被せる。

 面によって視界が狭まるかと危惧していたんだが……備え付けられたカメラによってか、寧ろ広がってかぐやちゃんの姿もよく見える。

 だけど、それよりも恐れるべきは、チートモードがチート扱いにならずに使える(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 鬼面の中にチートコードをねじ込んで擬似的に能力をあげるとか何とか言ってたが……そんなもん、世に出していい代物じゃないと思うんだよな。

 

『黒鬼がチート使って問題になるなんぞ完全無欠のハッピーエンドにおいてはノイズ極まりない!といワケで、貴様らにはこれを使ってもらう!条件は多いが、何とかした!安心して使うがいい!』

 

 俺らのやろうとしたことまで先読みして、こんな頭のおかしいもんを持ってくるあたり、ライト源氏もかぐやちゃんと同じくらい滅茶苦茶だ。

 だが、俺達への気遣いの先にあるのがかぐやちゃんと……彩葉だっていうのが、憎めないどころか嬉しいんだよな。

 目の前に降りたった元狛犬の錫杖を受け止めて、返す刀で巨体を切り裂く。

 こちとら擬似的なチート使ってまで能力あげてんのに抵抗感があるとか相当硬いな……だが、その程度でこの帝様が止まると思ったか!?

 

「まだまだいくぜぇ!」

 

 鬱陶しくレーザーを放ってくる奴を棍棒の一振で吹き飛ばす。落とせなかっただろうが、今はいい。

 

「ここはいい!走れ、彩葉!」

 

 今俺がやるべきなのは、彩葉がかぐやちゃんの下まで行く時間稼ぎだ。

 無限に湧き出る灯篭だろうが、人型のバケモンだろうが上等だ。こちとら最強のゲーマーで、黒鬼やってんだぞ。

 それにな、

 

お兄ちゃん()がこんな所で負けるわけにはいかねぇだろ!」

 

***

 

 帝が月人を抑え、かぐやまでの道を進む彩葉の前に、壁となった灯篭共が現れる。

 想定よりも圧倒的に数が多く、実力のある彩葉であっても突破は困難な物量。

 しかし、それは普段であればのこと。

 

「光、借りるよ!」

 

 彩葉は顔の横で揺れていた鬼面を被る。

 起動した擬似的なチートモードによって加速し、青緑色の光を纏った剣で壁となった灯篭を蹂躙する。

 

「悪いけど、かぐやの所まで足を止めてられないの!」

 

 煙となって消えていく灯篭にそう言い残し、更なる加速をもってかぐやの下まで彩葉は戦場を駆け抜けていく。

 

***

 

 老人のような月人との戦いで、芦花は劣勢に立たされていた。

 強化された月人に対して、プロではない芦花の技術では力不足。圧倒的な戦力差を前に防戦一方となっていた。

 

「でも、私だって、こんな所で終わってられない!借りるよ、源くん!」

 

 攻撃を弾いた一瞬の隙に、腰の鬼面を被る。

 鬼面の宿した力が芦花の体を突き動かし、月人との戦いを均衡した、熾烈なものへと変える。

 

***

 

「あわわ〜、お面が〜!?」

 

 客席に座る真美の胸に抱かれた鬼面が様々な色に光る。

 時に黒く、時に赤く、時に金色に、そして時に青く。

 戦場を駆け抜ける戦士達の想いと共鳴するように、その光は強く、その色は濃くなる。

 

「……みんな戦ってるんだ。なら、私だって、すぅ〜……!頑張れ〜!!!みんな〜!!!」

 

 幾重にも彩られた鬼面が、白く瞬いた。

 

***

 

「全員が鬼面を使ったか……ライブも終盤。俺も、出し惜しみはしておられんな」

 

 曲は2番に入り、月人の攻撃も苛烈になっている。

 かぐやへ絶対に当てない為か、その辺を心配しなくていいのは楽ではあるが、無限に迫る灯篭共は鬱陶しく、厄介だ。

 他の者たちへのフォローと乱入する灯篭共を掃討するために鬼面に取り付けたチートモードは既に使い切り、二度と使うことはできん。故に、これはもう1つの切り札だ。

 散弾銃を変形、狙撃型に変える。そして、両手斧を変形させ分解。

 ガラスの砕けるような音と共に大小のパーツに変わった斧を最速で銃に組み込み、銃身を長く、太くさせる。

 変換機構によって生まれた穴に、エネルギーの核を埋め込むことで、この絡繰は完成する。

 一世一代!丹精込めた絡繰2つが、この一撃で吹き飛ぶ大盤振る舞いだ!駄賃代わりに持っていくがいい!

 

「彩葉!後ろは気にせずそのまま走れ!貴様を追う無粋な者共は、この一撃を持って滅ぼす!」

 

「ライト!?」

 

「俺を信じろ!行け!!」

 

「うんっ!!」

 

 随分素直になったものだ。ここ数日で何度も驚かされる。

 その事が嬉しくて、少しかぐやが羨ましくて、銃を握る手に力が入る。

 銃全体から甲高い駆動音が鳴り響き、血管のように銃身に巡る回路が赤く輝く。

 銃口には赤黒い光が渦を巻いて、目の前に映る簒奪者たちを喰らい尽くすことを待ちわびていた。

 

「とくと見るがいい月の者共!これが、人の持つ、刹那の輝きというものだ!」

 

 勢いよく引き金を引けば、視界が赤褐色に染まる。

 低音のノイズにも聞こえる咆哮と共に放たれたレーザーは直線上のあらゆる存在を消し飛ばす。

 無数の灯篭共、芦花に迫るシンバルの月人、槌の月人、老人のような月人、帝を追う元狛犬。そして、最も大きな仏のような月人。

 その肉体の一切を飲み込み、ツクヨミの夜を赤く照らした暴の流星は、銃の砕け散る音によって終わった。

 そして同時に、かぐやの曲も終わり……かぐやのいる天守閣を囲むように現れた無数の月人と、彩葉を囲む灯篭共の姿に、俺達が負けたことを悟る。

 金色の鬼面が、割れて消えた。

 

***

 

「最高の卒業ライブでした!いっぱいお土産貰っちゃった……みんな、ありがとー!」

 

 空に浮かんだ虹の円盤から、かぐやはファンに向けて言葉を投げかける。

 普段通り、明るく元気な声だと言うのに、今にも泣き出してしまいそうな震えを宿した声に、ファンは気づけない。それほどまでに、かぐやは完璧だった。

 かぐやの卒業を惜しむファンの叫びが響く。一つ一つは小さく、届きずらいものだとしても、100万を超える多くのファンの声が1つとなって、かぐやの鼓膜を揺らす。

 

「えへへ……名残惜しいけど、これでおしまい。それから…………………(彩葉、大好き)

 

 最後の言葉は、ステージの近くにいた光達にも届かず、最も近くにいた少女にのみ伝えられた、涙混じりの告白。

 

「バイバーイ!!」

 

 最後まで明るく、元気で、優しい月のお姫様は、鬼達とファンの人達に惜しまれながら、月へ帰っていきました。

 最後に虹色の燐光を雪のように降らせながら。

 

***

 

 かぐやが虹色の燐光となって消えゆくのを、俺達は見ることしか出来なかった。

 空を舞う虹に未練がましく、恨み言を呟こうにも、呆然と立つ彩葉を前にしては、それもできん。

 

「みんな、お疲れ様でした。本当に、ありがとう」

 

 頭を上げろ、俺達は、何もしてやれなかった……してやれなかったのだ……。

 

「……先、帰るね。ごめん」

 

「彩葉っ!」

 

 手を伸ばすも、俺は青の燐光を掻き切ることしかできず、悲痛な顔の彩葉へ一言かけてやることさえできなかった。

 そうして、俺達とかぐやの日々は、幕を閉じた事を実感した。




コソコソ裏話
チートモードを5分間使用可能にする鬼面。正式名称は『超越鬼面』。
それぞれ色や模したものが違う鬼面だが、元は白色の鬼面がベースとなっており、白色が壊れると他の鬼面も強制的に壊れる。また、白色以外の鬼面が1度でもチートモードを使うと白色の鬼面が発光し、6色の光を灯すと自動的に破壊される。更に、鬼面は複数の装備ができない。
つまり、真美がいなければ使い物にならないマジモンの切り札。光の予定では自分が白色鬼面を持って客席からサポートする予定だった。

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