超かぐや姫はノベライズも良いぞ。原作を見た人はノベライズも頑張って探して買って読もう!
2話
「酒寄彩葉ァ!今回の数学のテストは何点だ?俺はもちろん、100点だ!」
「悪いね源、私も100点」
「な、なにぃ!?また引き分け……!?7戦1敗6分……俺の負け越しではないかぁ!?」
「ふふふ、私も簡単には負けてやれないのだよ」
「ぐぬぬぬ……!!」
「2人とも仲良いねぇ」
「私と芦花は50点も取れなかったのにね〜」
4月も終わりに近く、生命の香りが濃くなってきた。
2年になり暫く経ったことで、新たなクラスにもある程度のグループが形成され、固定化されてきたように思う。
かつての俺であれば、群れるものたちへの妬みと軽蔑を胸に勉学や読書に励んでいただろうが……今年からは違う!
酒寄彩葉はもちろん、彼女の友達である
これは素晴らしいことだ。
これまでは遠巻きに見られるか、話しかけられても俺が顔を向ければ硬直し、会話にならなかった……だが!彼女達はそうではない!
俺に気後れしないこともそうだが、それぞれが突出した能力や容姿、技術を持っている上で、目的に対する努力を欠かさない!
人は、持つことに慣れてしまえば努力することを止めてしまう生き物だ。だからこそ、努力できるものは素晴らしい……。
「綾紬芦花、諫山真実、貴様達もまた、素晴らしい人間だ……」
「えっ、どうしたの急に……」
「褒められましたな〜芦花殿〜」
「ですなぁ真実殿」
「うむ、素晴らしいと思ったのなら素直に伝える。100%の感情を伝えるのなら、思った瞬間がベストタイミングというのが、俺の持論だ」
「脈絡ないと言われた側困惑すると思うから、控えた方がいいのでは……?」
「え〜?でも、私たち嬉しかったよ?」
「ね〜?」
「芦花と真実はマイペースの極みたいなもんだから。一般論では測れないの」
「褒められた?」
「褒められたのかな?」
「一般論では測れない。つまり特別ということだ。褒められていると見ていいだろう!」
「「いぇ〜い、褒められた〜」」
「あぁ、うん。それでいいよ」
こういう、その場の勢いだけで会話する感じ……!そうだよ。こういうのがいいんだよ!
俺は今、ずっと憧れていた青春の真っ只中にいる!
「あ、彩葉〜、今日のKASSENなんだけどさ〜。私ちょっと遅れるかも〜」
「え、なんで?」
「帝様の配信〜」
「あぁ、そういうことか。了解」
「真実め〜私達よりも推し優先かぁ?このっこのっ」
「うへ〜後生ですので〜!」
「ふむ、合戦……?帝の配信……?」
「あれぇ?源くん、KASSEN知らない感じ?」
「あぁ、合戦に関しては聞き覚えがあるが、帝とやらに関してはさっぱり分からない」
「KASSEN知らないなら帝様知らなくてもしょうがないか〜」
もしや、合戦だの帝の配信だのは一般常識だったのだろうか?くっ!友達がいなかったことの弊害がこんなところで……!
いや、これは友達がいないことを言い訳に情報収集を怠った俺の責任か……。
「えーと、KASSENっていうのは『ツクヨミ』で出来るゲームで、簡単に言うと陣取りバトルロワイヤルかな。で、帝っていうのは配信者としても有名なプロゲーマー」
「ほう、なるほど。教えてくれたこと感謝するぞ酒寄彩葉!しかし、もしや『ツクヨミ』でやけに賑やかだった場所はそこだったのか?」
「あれ〜?『ツクヨミ』は知ってるんだ?」
「諫山真実、貴様もしや俺のことを舐めているな?あれほど完成度の高い仮想世界と力の入った宣伝があれば、嫌でも目に入るし興味も出る」
「なのに、KASSENには興味なかったんだ?」
「あぁ、一緒にゲームする相手もいなかったからな。それに、あまり人が多すぎるところは苦手意識があって、どうにも好かん」
「まぁ、それだけの顔面があれば色々あっただろうしね……あっ、チャイム」
「お〜じゃあ彩葉、また昼休みにね〜」
「いつものところ集合な」
「くくく、俺の慧眼に感謝して集まるが良い……!」
「OK。源は目立つんだからちゃんと隠れて来てね」
「まるで自分たちは目立たないかのような言い草……客観視は大切だと思うぞ」
「はいはい早よ戻れ」
「やはり俺の扱いが雑では「皆さん、席に着いてください」ぐっ、ぬぅ……」
致し方ない。俺の扱いについては、昼休みにじっくりと問いただしてやるとしよう……!
***
「またせたな貴様達!この俺が来たぞ!」
扉を勢いよく開けば、やや埃っぽい空気が俺のことを迎え入れる。
先に集まっていた3人は4つの机を四角に繋げた状態で、既に食事をはじめていた。
全く、5分以内に間に合わなかった俺が悪いとはいえ薄情な奴らだ。
む?遅刻したのは俺なのだから、寧ろ薄情なのは俺なのか……?
「遅いぞぉ」
「遅刻魔」
「おつかれ〜」
「貴様ら、この空き教室を見つけ、教師に許可までとった俺に対する感謝とか待とうという優しさとかはないのか?」
「「「感謝〜」」」
「うむ!許す!!」
「「「チョロっ……」」」
空席となっていた席に座り、持ってきておいた弁当箱を広げる。
色彩も鮮やかで栄養バランスも完璧に整えられた我ながら素晴らしい弁当だ。
量が8分目に少し足りず満足感が少ないのは難点だが、昼の授業で眠気と戦うよりはマシだろう。
「相変わらず源くんのお弁当は綺麗だね〜」
「それなぁ。自分で作ってるんでしょ?女子力高すぎー」
「くくく、褒めても卵焼きくらいしか出んぞ?ほれ、甘めの味付けだ」
「「いぇーい、チョローい」」
「はっはっは、舐めよってからに!返せ、貴様ら!あっ、言ったそばから食いやがったな!?」
「「ん〜!美味しーい」」
「くっ!嬉しくて許してしまう俺がいる!」
「チョロいね〜」
「チョロもとくんだ」
「えぇいバカにしよってぇ!……む、どうした酒寄彩葉、やけに顔色が悪いが食べないのか?」
「えっ!?あ、いや、なんかお腹すいてないな〜って」
「ふむ、食欲が……」
じっくりと見れば、どうにも顔色が悪い。
化粧で誤魔化しているようだが、頬の赤みが全く無く、目の下は化粧でも隠しきれない薄い隈が浮き出ている。
「そういえば、今日はずっと頭フラフラさせてたよね〜」
「彩葉、辛いなら一緒に保健室行く?」
「う、ううん!大丈夫、このくらい平気平気!」
「……時に酒寄彩葉。貴様昨日は何時間眠った?」
「え?えーと…………2時間、くらい?」
「綾紬芦花、諫山真実、こやつの両腕をひっつかめぇい!」
「「ラジャー!」」
「のあっ!や、止め!離して!?待って源、近い近い近い近い!」
「えぇい動くな!……やはり目の下は相当な厚化粧。それでも浮き出る隈とは、慢性的な寝不足だな?顔色も悪い、栄養不足もか?」
「彩葉は生活費も学費も全部自分で賄ってるから栄養バランスなんて考える余裕ないんだよね〜?」
「私達とも遊ぶし、推しのヤチヨちゃんにも夢中だもんねぇ?」
「えっ、ま、真実?芦花?何、お、怒ってる?」
「ふふふ〜、どう思う?」
「ヒョエッ、ろ、芦花ぁ……」
「……駄目、だよ?彩葉はちゃんと自分を大事にしなきゃ」
「綾紬芦花、今一瞬危うかったろう」
「黙って?」
「うむ!」
普段温和な女性の放つ圧は怖いな!うちの母さんや婆様のことを思い出す……うっ、頭がっ!?
「過労に寝不足に栄養不足……なんだ貴様その杜撰な自己管理は!?いつか倒れて入院する羽目になるぞ!?」
「だ、大丈夫!私、体は丈夫だから!」
「何も大丈夫ではなぁい!諫山真実、綾紬芦花!やっておしまい!」
「「りょ!」」
「えっ、なになになに何!?」
酒寄彩葉の両腕を抱えていた2人の体が、一層密着する。同時に、乳房が柔らかに
「彩葉〜、一緒に休も?一限くらいなら大丈夫だって、体、辛いでしょ〜?」
「私達、彩葉のこと心配なんだよ?いつか倒れるんじゃないかって、不安なの」
「あ、あをわおあわあわ」
服が触れ合い、布の擦れる音が聞こえる。
酒寄彩葉に向けて囁かれた声は、人気の遠い空き教室によく響き、直接向けられた訳ではない俺にもゾクゾクとした感覚を与えてくる。
なんだか、春先にしては教室の湿気が凄い気がするな……?
「ね〜彩葉、ちょっとだけ休も?自分の体も大事にしてあげて?私達と遊ぶよりも、自分を優先してもいいんだよ?」
「そうだよ。なんなら、私余裕あるから彩葉の食事面倒見てあげるよ?昼は勿論、朝や夜だって……」
「おあわわおあわあ」
「「ね、彩葉……」」
……もしや、俺はここにいない方がいいのではないだろうか?
なんか、こう、男女の睦言を盗み聞きしているようないたたまれなさが……いや、全員女性ではあるんだが……。
「だ、大丈夫だから!そ、そこまでしてもらわなくても大丈夫!うん!あっ!お昼休み終わっちゃう!わ、私先に戻るね!!」
いいながら机を元の位置に戻し、扉を吹き飛ばす勢いで廊下に飛び出ていった。
慌てながらも机は戻していく辺り、育ちの良さというか性根の良さが垣間見えるな。
「……逃げたな」
「逃げたね〜」
「逃げられちゃった……」
「……綾紬芦花、貴様、あれら全て全て本心だったな?」
「?当たり前じゃん」
「俺、貴様が一番怖いかもしれん」
息をするように春先の空気を梅雨に変える感情ってなんだ?俺の理解が及ばない超常現象を軽率に起こさないで欲しい。
「で、どうするの〜?また、これまで通り〜?」
「いや、酒寄彩葉には無理やりにでも体を労わってもらう」
「なんか案あるの?」
「睡眠不足はどうしようもないが、食に関してであれば何とかできるだろう。最も、成功したとて昼のみになってしまうだろうがな」
「まぁ、1食ちゃんと食べるだけでも全然違うからね」
「……源くんってさ〜、なんで彩葉の事そんなに気にかけるの〜?」
「真実?」
「ふむ……?」
口調こそ変わらないが、諫山真実は普段のほわほわとした雰囲気を収め、訝しげに俺を見る。
対人経験の浅い俺では、彼女の真意はまるで分からん。
しかし、話題の1つとして問うて来たわけではないということは、よく分かった。
「だってさ、源くんってなんでもできる人気者じゃん。でも、誰かと仲良くしてるの見た事なかったし、放課後とかもすぐ帰ってたらしいじゃん?それが、突然彩葉に絡み出して、なんでかな〜って」
「……一つ一つ答えていくとしよう。確かに俺は人並み以上になんでも出来る。大体のことはな」
「すごぉ、自信もそうだけど事実だから嫌味にならないところも含めてすごぉ」
「くく、それほどでもある。さて、そんな俺ではあるが、友達ところか親しい間柄の相手というのは小学校中学年を過ぎてから1人たりともできたことはないし、それまで友だったものも気が付けば去っていた」
今でも目を閉じ、耳をすませば聞こえてくるようだ。少年たちの暗い嫉妬の声と、少女たちの媚びるような声が。
「………」
「そして俺は悟った」
かつての俺を苛んだ無垢に歪んだ声を握りつぶすように、拳を握る。
「持つものは、持たざる者達に足を握り潰されるものだと。それが嫌ならば、持たざる者に足を掴ませない絶対的な差を見せる必要があると」
シワだらけの参考書も
「源くん……」
「故に、俺に対等な友は……親しい者はいなかった。……去年まではな」
春の日差しが入る窓を開き、舞い込む風を胸に抱える。
これまでの道程に何ら悔いは無い。
しかし、新たな風のない心には、寂しさという名の埃が少しずつ降り積っていた。
「去年の学年末、酒寄彩葉に総合点数で負けた。これまで、高校での全国模試を除いて1度たりとも1位を譲ったことのない俺が、初めて同じ土俵の者に泥をつけられた」
「あっ、最初の一敗って……」
「屈辱だった。悔しかった。……しかし、それ以上に胸が高なった。俺に泥をつけられる。俺と対等に競い合える相手がここにいたのだと。ここに、手の届くところに、俺の対等な友足り得る存在がいてくれたのだと」
「……だから、飽きずに彩葉へ勝負を挑んでたんだ」
「負けっぱなしでは終われんからな!……それに、俺には競う以外でのコミュニケーションなんぞ分からん。そのせいで、最初こそ追いすがろうとしていた奴らも、皆諦めて俺の元から去っていった」
手のひらを見つめても、彼らの手は無く、虚しく空を掴むに終わる。
「だから、俺と競ってくれる酒寄彩葉を大切にしたい。常に万全の状態で、全力で俺と競い合って欲しい。そのためなら、
「ふーん……源くんって、熱い男なんだね〜」
「ふっ、そう褒めるな。デザートのチョコでも食べるか?」
「貰う〜」
「……ホント、熱いね。源くんは」
「さて、諫山真実。俺の返答は満足いくものだったかな?」
チョコを頬張っていた諫山真実は俺に向き直り、普段以上にほわほわと緩んだ表情を浮かべた。
「大満足だよ〜。源くんも彩葉が大好きそうで良かった良かった〜」
「くくくっ!当たり前だ!彼奴は俺の親友、友に好意を向けるのは当然だろう!」
「「はっはっはっはっ!」」
諫山真実、やはりなかなか話が分かるやつではないか!
俺たちの哄笑を持って、この空き教室のみならず学校を揺らしてやろうではないか!
「はいはい2人ともストーップ。……で、2人ともぉ?これからどうやって彩葉の生活……食生活?を改善させるの?」
「む?単純なことだ。それぞれが少し余分に弁当を持ってきて、理由をつけて押し付けてやればいい。量が多いとか苦手なものだとかな。彼奴が遠慮するなら、何か対価でも与えてやればいい。それこそ、貴様らがこれまでしていたようにな?」
「なんか、案外穏便なやり方なんだね」
「綾紬芦花、貴様俺のことを蛮族かなにかだと思っている節がないか?誰が好き好んで無理やり食わせるか。……最も、それが必要になるならば躊躇するつもりはないがな!」
「うーん、これぞ源くんクオリティ」
「睡眠時間はどうするの?」
「そればかりは俺の管轄外だ。酒寄彩葉自身で睡眠時間を確保するしかないだろう。俺達にできるのは昼休みにでも無理やり寝かしつけてやることくらいではないか?」
「まぁこういうのはチリツモだからね〜。気長にやっていこう」
「……うん、そうだね。じゃあ、彩葉の生活習慣改善、頑張るぞ〜!」
「「おー!!」」
コソコソ裏話。
源くんは初期スペックが鬼高い上に経験値効率も鬼高いタイプのハイスペです。こいつに一勝できた酒寄彩葉さんはなんなんだ……?
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