8000年は捏造し放題ですけど、捏造が1番難しくもある……ので、何度も見直しました。みんなも見よう、超かぐや姫!
地球についたと思ったら、船は壊れて応答しない。
何度、日が沈んで、月が昇って、月が巡って、日が昇ったか。分からなくなるくらい時間が経って、誰も助けてくれなくて。
何度も、何度も、擦り切れるくらい彩葉から貰った曲をリプレイして、それでもおかしくなっていく頭にゆっくりと絶望する。
そんな時だった、人の声が聞こえたのは──。
そこからはあっという間だった。
話すウミウシとして村に奉られて、あれやこれやと助言して……この時代にできた最初の友達が居なくなって。
どんどん人は増えて、減って、移って、増えて、また減って。その繰り返しの中でどんどん人は逞しく、大きく、自由に、我慢しながら生きていた。
ウミウシの体で意思疎通して、人と繋がっていく毎に、多くの人が目の前に現れて、多くの人が居なくなった。
人と出会って数百年の間に、何人も見送った。争いや病や老いや、色々……。
好きになった人もいっぱいいた。それで、胸の引っかき傷が全然無くならなくて、辛くて。
少し人と関わるのを避け始めた時に、出会っちゃったの。
かぐやの一番の友達に。
「なんだ、貴様。不思議な容貌だな」
その人は不思議な人だった。
すっっごく綺麗で、他の人に比べてすっっごく大きくて、それですっっっごく見覚えがあった。
「ミナモトっ!??!」
「はぁっ!?話すのか!?妖の類だったか!えぇい、動くなよ!?」
ミナモト?はなんか黒と白だけの地味な着物を着て、竹編みの傘帽子を被って、手に棒をもっていた。
色んな人の中に似たような服を着た人もいたけど、みんな地味〜って感じだった。
なのにミナモト?は凄いキラキラ〜ってしてて、やっぱりミナモトって顔がいいんだなって思っちゃった。
私が懐かしんでいる間にも、ミナモト?は怖い顔して棒の先突きつけて来るし、気づいてくれてないのかな?
「ミナモト!私、かぐやだよ!!」
「えぇい、知らん知らん!私に妖の友なんぞ居らん!というか、ミナモトとは私の事か!?人違いだ!」
ミナモトにしか見えなかったけど、ミナモトよりもどことなくオーラ?みたいなのがあった。
多分、本当に上に立つものみたいな。王様みたいなオーラだった。
それから何とか妖怪じゃなくてかぐやってことを伝えて、アピールし続けたら、ミナモト?はよく知る顔で溜息を着いてから、私の話を聞いてくれた。
「──つまり、貴様は妖ではなく。元は人であった、と?」
「そう!」
「そして、未来から来ていると?」
「多分!」
「元はデンチュウなるものから生まれ、彩葉という娘に育てられ、月夜見の八千代かっぷという催しにて頂点に立ち………いや、分かるかぁ!?」
「合ってたよ!流石、ミナモト!頭いい!」
「えぇい!俺はミナモトではない!故あって名を名乗れんが、とにかくミナモトではない!そうだな……ヒカルとでも呼べ!」
「えぇ!?ヒカルって、ミナモトの名前じゃん!」
「おのれぇ!どこまでも私の邪魔をするな!?ミナモト ヒカルぅ!?」
ヒカルとはかなり長いこと一緒にいた。
旅をしているらしいヒカルは、色んな町や村を回って、色んなものを見て回ってた。
人を助けたり、怖い賊の人達に襲われて返り討ちにしたり、お化けみたいなのから逃げたり、綺麗な女の人から逃げたり、小さな女の子から逃げたり。女の人しかいない村から逃げたり。
楽しくておかしくて、怖いこともあったけど、強くて元気なヒカルと一緒なら何が来たって大丈夫って思えた。
「ねぇ、ヒカル!次はあの山行ってみたい!」
「行かん!あそこは大江山……鬼共の巣食う地獄ぞ?!行けば私達など一口で骨に……いや、骨すら残らんぞ!」
「ヴぇー……ヒカルの力で何とかならないの〜?」
「妖怪退治は私の管轄ではない。源氏の者達に任しておくがいい」
「んむ〜……ねぇ、ヒカルはどこを目指してるの?」
「何度も言っているだろう……どこも目指してはいない。強いていえば、機を待っている」
そう言って前を向いたヒカルは、グラグラの岩の上を簡単に歩いて、私を肩に乗せてスイスイ進んでいた。旅する間ずっと思ってたけど、ヒカルってよく謙遜するけど大概すごいよね。
ミナモトも同じことできるのかなぁ?
遠い記憶のミナモトが「できんわ!?」と叫んだ気がする。
大丈夫!ミナモトなら行けるよ!天才でしょ!
そうやってヒカルの肩に乗って旅をして数年したくらいの時だった。
「かぐや。私はこれから都を目指す」
「えっ、うん」
「……分かっておらんようだから説明してやる。私は高貴な家ので出な、家の騒動が収まるまで旅をしていた」
「そうだったんだ……」
「街の噂で、それが一段落ついたようでな。身を隠す必要も無くなったというわけだ」
「でもさ、それ、ヒカルが出ていったらまた騒動が起きるんじゃないの?」
「……貴様、普段は疎いというのに鋭いな。まぁ、そこは私の妻と協力者達とで何とかするさ。それで、貴様はどうする?」
「どうするって……?」
「都までは連れていく。その後、市井に紛れるか、危険だが私に着いてくるか」
「そんなの」
決まってんじゃん!
「ヒカルについてくっ!」
「──であろうな、では。行くか」
その時のヒカルの顔は、嬉しそうだったのに、なんだか悲しそうな……申し訳なさそうな不思議な顔だった。
***
都についてからは色々波乱だった。
ヒカルのお家がヒカルを残して全員いなくなってヒカルが頭抱えたり、ヒカルが奥さんと産まれてた息子を放置してたことに自分を責めすぎて発狂したり、ボロボロになったお家を立て直したり……。
そんな色々を乗り越えて3回目の寒い冬を迎えた頃。
「ぐっ……ごほっ、がほっ……くはっ、全く、ままならんな」
「ヒカル……」
「泣くな。わかっていたことだ」
「でもっ!……それでも、寂しいよ……」
「……泣き虫な奴よ。
「だったら……!だったら、さっさと起きてよ!いつもみたいに、行かん!って、言い切ってよ……!」
「……悪いな」
そう言って笑ったヒカルの顔は、私のよく知る顔だったのに見た事もないくらい優しくて、見た事ないくらい大人びてた。
どんな道も軽々歩いていた体は、日に日にやつれて、頬もコケて、今や布団で寝たきり。
お医者さんに見てもらっても、不治の病で、今生きているのが不思議なくらいだって言ってた。
お医者さんの言葉に彩子さんと明くんが泣いててても、ヒカルは随分落ち着いてて……ずっとこうなるって分かってたんだろうな。
今日は雪が降っているみたいで、月明かりも入らない部屋には、ヒカルの呼吸音しか聞こえない。
「……貴様と」
「え?」
「旅をした5年間は、とても楽しいものだった……」
「……うん、私も。ヒカルとの旅はすっごく、楽しかった」
きっと、今日で終わりなんだ。
ヒカルと、隣で過ごした楽しかった旅も、ここが終点。
「ごほっ、ゲホッ……かぐや」
「うん、何?ヒカル」
「貴様の、友達として、最期の約束だ」
「……うん」
最期。ヒカルの言った言葉が重く胸にのしかかる。
いつも、私が大事にして私を大事にしてくれた人達は、色んなものを残して消えていってしまう。
それがとても悲しくて、とても辛い。
でも、ヒカルが私に約束を残してくれるなら……全部、忘れないようにしなきゃ。
「貴様が彩葉と出会えるまで、
「……ぇ?」
「ぐっ……!ゴホッ!……何時になるかは分からんが……何度でも、何度でも生まれ変わって、その度に貴様の友になる」
「……ヒカル」
「だから、待っているがいい。俺は絶対に、貴様を独りになどせん」
そう言って笑うヒカルの顔は、やつれてても力強くて、明るくて、旅の中で何度も私を安心させてくれた──
「だから、泣くな。かぐや」
──そんな、かぐやのよく知る優しい笑顔だった。
***
翌朝、息を引き取ったヒカルのお葬式が行われた。
多分、彩子さんに伝えてたんだろうな。自分がもう明日も生きれないってことを。
お葬式には色んな人が来てた。旅の途中で出会ったお坊さん、お家の立て直しを手伝ってくれた商人さん、彩子さんのご両親、いっそう綺麗になった女の人に、一段と可愛くなった小さな女の子。
これまでヒカルの出会った人たちが、箱の中で眠るヒカルに花を添えて、泣きながら、でも笑いながら昔話を一言二言呟いて去っていった。
「かぐやさん、夫に……ヒカルに、花を添えて上げてください」
「……うん」
彩子さんに抱えられながら、咥えた花を顔の横にそっと添える。
眠るヒカルの顔は穏やかだったけど、生きてた頃の力強さみたいなのがなくて、本当にヒカルなのか一瞬疑ってしまった。
それでも、眺める内に、眠っている貴方はやっぱりヒカルで……滲みそうになる視界を無理やり振り払う。
「ヒカル、待ってるからね」
最期に残された約束を果たす為に、ヒカルみたいに笑ってみた。
***
ヒカルのお葬式が終わった翌日、私はヒカルの寝ていた部屋で何をするでもなく外を眺めていた。
全身から力が消えて、波に揺られてるだけのクラゲになったみたいだった。
この先どうしようか。なんて、現実逃避してるところに明くんがやってきた。
もうすぐ12歳になる明くんは、ヒカルと彩子さんに似て、凄く美人。今はちょっと女の子よりかな?
でも、赤く腫れた目から覗く瞳は凛々しく光っていて、これから、どんどんヒカルに似ていくんだろうなぁ〜。
「かぐやさん。これ、父様からかぐやさんへ、と」
「え、ヒカルから……?」
手渡されたのは1つの長い巻物。
明くんに頼んで開いてもらうと、それはとある物語だった。
内容は──
「──まっったく読めないっ!!??」
「父様、いつまでたっても字が下手でしからね……」
「もぉ〜!かぐやのために残すなら、ちゃんと読めるのにしてよね!」
「ですが、題名は分かりますよ」
「え〜、なんて名前なの?」
明くんは、今は居ないヒカルを思い出したのか少し寂しそうに目を細めながら、題名の部分を指でなぞる。
「『竹取物語』」
「えっ……」
それって
「父様曰く、かぐやさんの話を元にして、自分が理解できるように書いたらしいです」
「……だから、あんなに私の話を聞き直してくれたんだ」
昔は「わかるか!」なんて叫んでたくせに、急に何度も聞いてくるから不思議だったんだよ?
「でも、なんでこれを……?」
「……きっと、かぐやさんが寂しくならないようにでしょう」
「かぐやが……?」
「父様は、何度も僕らに、かぐやさんを助けるよう言っていましたから」
『俺が戻るまで、泣き虫な友達を頼む』
「──っ」
泣かなかった。それでも私は、泣かないようにした。
だって、ヒカルなら──
「──かぐやさん、笑って。父様は、不器用なりにずっとそう願っていたんです」
「……うんっ、知ってる!」
今度は、かぐやらしく笑えた気がする。
***
それからまた時が経って、彩子さんも亡くなって、明くんもなくなって、明くんの子供たちもバラバラになって、お家が無くなって。
次の行き先を求めて都の中を進んでる時、ウミウシの私を好きになったなんて言う歌人さんのお家に転がり込んだ。
その家の中で、それを見つけた。
「竹取物語……」
「む、あぁ……何やら市井で盛り上がっていたのでな、気になって買って見たが。なるほど、これは面白い」
「……ちゃんと読める?」
「勿論だとも。さぞ、才のある者が書いたのだろうな……会えなかったことが、残念でならない」
「……そっか!」
ヒカルが作って、明くんが頑張って解読して、都に広めた「竹取物語」は、ちゃんとみんなに届いてたみたい。
友達が残したものが、みんなに評価されて、私の見えるところにあるというのが……とても嬉しい。
「しかし、著者が不明とは……益々惜しい。一体、何方が書いたのだろうな……」
「ふふん、きっと、友達のことが大好きな天才さんだよ!」
「……ふっ、そうかもしれないな」
そんなことを話して、数年経てば歌人の人も亡くなって、私はまた1人になった。
***
人はまた戦争を始めて、技術が進んで、栄えて、争う。その繰り返し。
色々な人が生まれて、出会って、死んでいく。
その度に、胸に付けられた引っかき傷が消えなくなって、上手く笑えなくなっていく。
「……私が、もっと上手く伝えられたら、何か変わったのかな?」
ボロボロになった町で、呟いてみても、応えてくれる誰かはいなかった。
もう、疲れちゃったなぁ……しばらく、休んでもいいよね……?
家だった残骸の隙間に体を入れて、体を丸くする。別れるのがこんなに辛いなら、私は1人でいいや……そうすれば、もう悲しいことも無いと思える。
ねぇ、彩葉。かぐや、頑張ったよ……。
「む、なんだこやつ……見た事もない姿だな」
「っ!」
「妖……いや、木霊の類か?しかし、ここまで実体を持っているとは……生き物か?」
「……ヒカル?」
「むっ!?貴様、喋るのか!?やはり妖の類いだったか!?」
「ヒカル……ヒカル!」
「ぬおぉ!?お、襲われ……む?なんだ、貴様……な、泣いているのか?」
服装は違うし髪型も違うけど、その顔と声と話し方は、ヒカルだった。
「良かった……!また、また会えた……!」
「む、むぅ?俺達は初対面だと思うのだが……?」
「……覚えてないの?約束のことも」
「俺に貴様のような珍妙な存在と出会った記憶などないが……というか!いい加減離れんか!?後、何故俺の名を知っている!?」
「やっぱりヒカルだぁ!うわぁぁん!!!」
「えぇい!?俺の服の上で泣くな!……おい!なんか凄い勢いで湿っておるんだが!?」
それから、離れようとしない私と離そうとするヒカルとで取っ組み合いをして、いつもみたいに溜息を着いて、昔みたいに話を聞いてくれた。
それから、また二人で旅をして、ルローニンだというヒカルは色んな町で仕事の手伝いをしたり、賊の人達を捕まえたりして生活した。
「──グフッ、全く、ままならん……」
「ヒカル!ヒカル!!大丈夫!?ち、血が……お医者さん呼んでくるね!」
「待で……これは、助からん……」
「……やだよ、やだよ!折角会えたのに!また、また逢えたのに!」
「……あぁ、だから、最期に約束だ……」
「約、束……」
お腹から血を流すヒカルと、布団の上てやつれたヒカルの姿が重なる。
「……俺は、またかぐやと出会い、友になる……だから、泣かないでくれ……」
「ぁ……」
なんで、なんで同じことを言うの……?
「……不思議だ、俺は、前にも……この約束を、した気がする……」
「うん……うんっ、かぐや、泣かないよ?いくらでも、何年でも待つから、だから……だから、早く来てね……?」
「……あぁ、いい子だ……お、まぇ……ぁ、わ、らっ……て……」
ねぇ、ヒカル。さっきのかぐや、泣かなかったよ?ちゃんと、笑って見送れたよ?
待つよ。ちゃんと、これからも。ヒカルはかぐやを一人ぼっちにしないって、信じてるからね?
「……おやすみ、ヒカル」
地面にできた小さなシミは、ヒカルの残した真っ赤な約束で隠してもらった。
***
それから、何度も何度もヒカルと……ミナモトと出会った。
ある時は、私を助けてくれた女の人の夫として。その人は詠が得意で、いっぱい教えて貰った。
「貴様のような友を得たのは、俺の誇りだ……。約束だ。死んでも、また、会いに行く……」
その時代には珍しい老衰で、しわくちゃの顔に笑みを浮かべて満足そうに、でも悔しそうに眠った。
最期に私を知り合いだという武士にお願いして、武士さんの主に匿ってもらった。
ある時は、焼けた城から抜け出した私を拾ってくれた商人として。その人は絵が得意で、よくかぐやや彩葉の絵を描いてくれた。
「かぐや、貴様にこの絵を託す……好きにしろ。俺は、助かりそうもない。……泣くな!何年かかろうと、また貴様に会いにゆく!しばしの別れだ友よ!」
商売敵に放火された寝屋の中で、私に一枚の小さな絵と約束を託して満足そうに、でも悔しそうに笑って、私を外へ投げ飛ばした。
それからは荷馬車に紛れて、娼館に辿り着いて、日本一の花魁を目指す女郎と出会った。
そして、吉原の頂点を目指して二人三脚で駆け抜けた。
ある時は、娼館で女を抱かないなんて言う奇妙な音楽家として。その人は作曲が得意で、かぐやの歌を褒めて、かぐやのための曲も作ってくれた。
「かぐや、俺の歌姫……必ず、必ずまた会いに行く。何があっても、死んだとしても!この
やつれた顔に強い意志と優しさを宿して満足そうに、寂しそうに笑ってから、隔離病棟に入っていった。
それからは人の波に乗って、人里離れた町へ辿り着いて、とある文豪と出会った。
そして、彼の家で私の知る未来を語って、自分にできることを探し始めた。
ある時は、戦争を嫌う青年として。その人は勉強が好きで、よく歴史の話をしてくれた。私の話を聞いて、よく驚いてたっけ。
「かぐや、貴様の話した未来の太平。それを実現するため、俺は逝く。次に会うときは、戦争のない平和な世界で……もう一度、友達になろう」
端正な顔に鋼のような決意を漲らせて、涙を堪えて、寂しそうに笑ってから、軍服を着て戦場へ向かった。
それからは、激化する戦争に右往左往する私を拾ってくれた花売りの少女と共に、終戦まで過ごした。
そして、自分の無力さと、人の命へ貼られる価値に絶望して、そんな世界に失望して……。
それでも、これまで重ねた約束と残してもらった想いに報いるために──私は、ヤチヨになるって決めた。
そうして、ウミウシ時代最後の友達に協力して貰って、『もと光る竹』を盗み出し、ツクヨミを生み出した。
そして、ツクヨミの管理人にして電子の歌姫「月見ヤチヨ」として──彩葉、ミナモト、2人のことを待って居たの。
***
コソコソ裏話
一番最初のヒカルの本名は
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