俺が8000年に負けるまでの話   作:凪 瀬

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彩葉の誕生日だったので初投稿です。
運営がサプライズ誕生日報告してくるので創作者は喜びとともに苦悶に喘ぐことになります。そんな運営の遊び心が凄い作品。みんなも見よう!超かぐや姫


番外・蛇足編
28話 オタクとはやや厄介


 

 ようやく、彩葉とかぐやを巡る夏の騒動に一段落ついた。

 これから彩葉はヤチヨとかぐやに体を作るため、東大理IIを目指すらしい。

 俺も、彩葉に協力するため同じ進路を目指して勉強を再開した。とはいえ、これまでも勉強は続けてはいた上、過去問を解いてみた感じ、現時点でもかなり手応えがある。

 この調子で行けば、充分に合格できるだろう。

 

「最も、俺達が目指すのは完全無欠のハッピーエンド。合格程度で満足はできん」

 

 ……と言いつつも、今の俺達にできることは合格のために勉学に励むことと、先行研究を流し読みするくらいだ。あとは、ヤチヨに協力してもらって月のデータ解析か?

 急いては事を仕損じるというか、急いても仕方の無いといったところだな。

 彩葉のやつが焦っておかしな事をしなければいいが……まぁ、もしもの時はヤチヨが止めるだろう。俺達も当然止めるしな。

 

ピポーンッ

 

「すいません、ヒノモト運輸です!」

 

「なにか頼んでいたか……?今開けます!」

 

 届いたのはダンボールが2箱。これほどの量のものを頼んだ覚えは無いが……むっ、このタイミングで電話とは……俺の天才的なカンが告げている。これは作為的なものであると。

 

「もしもし。何か用か──帝アキラ」

 

「よぉ、ライト源氏先生。いや、そろそろ頼まれてたのがそっちに届いた頃かと思ってな」

 

「……あぁ、それか!ちょうど届いたところだ」

 

「お、無事届いてたみたいだな。しかし、ライト源氏先生も無茶言ってくれるな。それ揃えるの割と大変なんだぜ?」

 

「何、天下の黒鬼ともなればその程度、気苦労にもならんだろうと思ったまでよ」

 

「言ってくれるねぇ……」

 

「それに、夢を魅せるのが仕事ならば、こういう所でも見せてもらわねばな」

 

「……はいはい、降参降参。ったく、年下とは思えない肝の座りようだな」

 

「貴様らはこの程度で不快には思わんだろう?しかし、感謝する。これ程早いとは思っていなかった」

 

「まぁ、多少はな。珍しく雷のやつが張り切ってたんで、早めに届けられた」

 

「そうか……雷にも感謝を伝えておいてくれ」

 

「おう。んじゃ、またゲームしようぜ」

 

「ふっ、プロゲーマーに誘われるとは光栄だな。受けて立とう」

 

「なんでそっちが上なんだか。じゃあな」

 

 プツリと切れた通話口から耳を離し、改めて目の前のダンボール箱に目を向ける。

 ……これ全部売れば、恐らく学生としては身に余るほどの金が手に入るのであろうな。するつもりは全くないが。

 クククッ、これを受け取った真美の反応が楽しみだ。

 

***

 

 また1週間が始まった。夏休みが終わり既に3週間近くが経過した学校では既に中間テストが近づいている。

 久々に彩葉と一騎打ちできるのだ。俺としては腕が鳴るところだな。

 放課後の喧騒を尻目に、一人帰り支度をしている真美の所へ向かう。彩葉は早めのバイト、芦花はインフルエンサーとしての仕事と、随分と多忙のようだ。

 

「真美、今大丈夫か?」

 

「んえ?大丈夫だけど、どうしたの〜?」

 

「いや何、貴様にプレゼントがあってな。帰ってから貴様の家に行っても大丈夫か?」

 

「プレゼント〜?いいけど……郵送とかじゃダメなの?」

 

「それでも構わんが……いや、俺の手から直接渡したいのでな」

 

 あまり心配していないが郵送で何か問題があっては悔やむに悔やみきれんしな。

 それに、内容を知った真美めの反応も気にならんといえば、嘘になる。

 

「ふーん……りょ〜かい。じゃあ、家で待ってるね〜」

 

「あぁ、期待して待っているといい」

 

 不思議そうに歩いていく真美の背中に思わずほくそ笑んでしまう。あの呑気な顔が、どれほど驚愕に歪められるのか、楽しみで仕方ない。

 

***

 

「来たぞ、真美」

 

「早かったね〜。……え、プレゼントって、それ?」

 

「あぁ、このダンボール2箱だ」

 

「……業者?」

 

「今回に関してはあながち否定できんな……」

 

 友人へのプレゼントでダンボール2箱は何らかの業者か、あるいはプレゼントと銘打った別のなにかな気もする……。

 

「とはいえ、貴様が喜ぶものであるのは確かだ。安心するがいい」

 

「まぁ、源くんのことだから信用はするけどさ……開けていいの?」

 

「あぁ、構わんぞ。と言っても、玄関で開けては何かと不便だろう」

 

「あ〜確かに〜。上がってく〜?」

 

「ふむ……いや、止めておこう。上がってしまっては貴様の彼氏に申し訳が立たんだろう」

 

「別に気にしないと思うけどな〜」

 

「些細なことから、案外仲は拗れていくものだ。そのような芽は少ない方がいい。まして、自らが芽になるなど勘弁願いたいからな」

 

「む〜……そこまで言うならいいけどさ〜」

 

「すまんな。では、プレゼントを楽しむといい」

 

「ありがとうね〜……楽しむ?」

 

 クククッ!予定とは少し違ったが、明日か今日の夜、ツクヨミ出会うのが楽しみだ……!

 

***

 

【仲良し】(5)

《まみ:みなもとくん、ツクヨミ、はやく》

《ROKA:え、どうしたの真美。源くんがなんかしたの?》

《源:いやなに、日頃の礼に少しプレゼントをな?》既読2

《まみ:はよ、こい》

《源:あっはい》既読2

 

 というわけでツクヨミに来た訳だが……なぜ目の前で真美が土下座しているのか。これが分からない。いや、分かってはいるのだが、もう少し情緒みたいなのが欲しい。

 

「真美、貴様の気持ちもわかるが、一旦は立ち上がって──」

 

「──え、源くん……何、してるの?」

 

 マズイ、最悪のタイミングで芦花が入ってきてしまった……!?

 俺には今、2つの選択肢がある。

 1つは、俺自身が弁明する選択。

 自身の現状を説明し、何をしようとしたかまで自分の言葉で説明できるため、比較的自分の意思がしっかりと相手に伝わる。

 しかし、これは言い訳や誤魔化しに聞こえてしまう危険性も孕んでいるため、逆に誤解が深まってしまう事もある。

 もう1つは、真美に誤解を解いてもらう選択。

 土下座されている側よりもしている側の説明の方が、している理由が言い訳に聞こえずらく、誤魔化しとも思えないため誤解が深まることはない。

 しかし、これは土下座している側が俺の意図をしっかりと汲み取り、俺が強制させているわけでもないことや、土下座していたのは口に出せる理由であることが前提である。

 今回は恐らくプレゼントの件!

 であれば、十二分に真美の口から説明できるはず!となれば──

 

「──いや、俺も何が何だか分からなくてな。真美、なぜ土下座しているか教えてくれないか」

 

「源様に最大限の敬意を示すためです」

 

 おい、この状況で源様とかいうな。敬意とか使うな。

 

「源くん……」

 

「止めろ芦花、その度し難いものを見る目をするな!?違うよな、真美?俺達は友達だ。様なんて敬称不要だろう?な?」

 

「源様は源様ですので」

 

「様付けするくらい敬意を払っているのならもう少し俺の言葉に耳を貸してはくれないか??」

 

「源くん……その、人の趣味にとやかく言わないけど……その、そういうこと、あんまり外でやらない方がいいと思うな……」

 

「理解を示そうとするなっ!おい、真美!貴様の奇行によって芦花が若干泣きそうになっているだろう!?いい加減にしておけ!」

 

「も〜しょうがないな〜源くんは。はい、これでいい?」

 

「なんで貴様この状況でそんな図々してくできるんだ???」

 

 俺の尊厳が今一瞬危なかったんだが?

 

「いやぁ、でも土下座もしたくなるよ。あんなプレゼントされちゃったらさ〜」

 

「そういえば、プレゼントを送ったって言ってたね。何あげたの?」

 

「む?黒鬼のサイン入りグッズ全種」

 

「「黒鬼のサイン入りグッズ全種っ!?」」

 

「何故既に内容を見た真美まで驚いておるのだ!?」

 

「いや、改めて聞くとやばいもの貰ったなと思ってさ……」

 

「どうやってそんな凄い物を……」

 

「黒鬼とのKASSENで……と言うよりも、ヤチヨカップにかぐやらが勝ったであろう?その時の願いを叶えてもらったまでだ」

 

「あっ、あの賭けの……」

 

「だとしても、なんで私にプレゼントしてくれたの〜?サイン入りなんて……言いたくないけど売れば一儲けだよ?」

 

 まぁ、その辺のことも考えなかったわけではない。金なんぞいくらあっても足りぬし、これからかぐやの肉体を作るのであればいっそう入用となるだろう。

 だが、それ以上に大事なものがあったと言うだけの話だ。

 

「真美には、何かと迷惑をかけているからな。かぐやの卒業ライブの時も、もどかしい思いをさせてしまった……。俺なりの、償いのようなものだ」

 

「源くん……」

 

 わかっている。これはあくまで、俺の自己満足だ。

 どこまで行こうと、真美のことを心の底から思っての行動ではない。打算のようなものがあるのは、俺が最も自覚している。

 だが、それでも、真美に感謝したいと、喜んで欲しいと思っているのは本当だ。

 

「……気にしなくていいって言っても、源くんは気にすんだろうな〜」

 

「そうだな。こればかりは性分だ」

 

「……うん、わかった。じゃあ、改めて、プレゼントありがとうね」

 

「あぁ、喜んでもらえたのなら、俺も嬉しい」

 

「そういうことなら、私もなんか真美にしてあげればよかったなー……今度一緒にどっか食べに行く?」

 

「え〜!行くいく〜!どこ行く?私美味しそうなクレープ屋さん見つけたんだ〜」

 

「お、いいねー。じゃあ今週の土曜日とかどう?」

 

「もちろんOK〜!」

 

 にわかに騒がしくなる2人に口角が上がる。

 こうして、何があっても普通に、当たり前に過ごそうとしてくれる2人がいてくれるから、俺や彩葉は好きなようにできるのだろう。

 

「貴様らが変わらずのようで俺は嬉しいよ。……そうだ。伝え忘れていたが、グッズの中に非売品もあるから扱いには気をつけろよ」

 

 騒がしかった真美の動きが一瞬で止まり、俺をして刹那としか認識できない速度で再度土下座をしていた。

 

「源様、本当にありがとうございます!このご恩は、一生をかけて〜〜!!」

 

「いらんいらん!それほどのことではない!感謝するなら、俺ではなく帝アキラにでもしておれ!」

 

「ありがとうございますっ!帝様〜!!」

 

「ホント、ブレないねー」

 

「あぁ、オタクという生き物の生態を舐めておったわ……」

 

「──え、なんで真美が土下座してるの……?」

 

「おいおい、俺もしや呪われておるか?お祓いとか行っておいたほうがいいか?」

 

 この後滅茶苦茶誤解を解いた。




コソコソ裏話
帝の送ったグッズを然るべき場所で全て売ると、余裕で数千万超えたりする。

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