俺が8000年に負けるまでの話   作:凪 瀬

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ブルーレイが出たので初投稿です。
特装版モリモリ過ぎないか???これが16800円……イロハ円!?買います。覚悟はできてます。この超モリモリセットを機に、みんなも見よう!超かぐや姫!


29話 I Love Youの訳し方

 

「俺と、付き合ってください」

 

 そう言って光に告白された時、最初に思ったのは「悪くない」だった。

 

 私は光が私の事が好きだったことを7年前から知っていた。ヤチヨの記憶の中には、当然私達と過ごした時間も入っていたわけで……その中に、直接的では無いけどヤチヨに失恋したことを告げる場面もあった。

 正直、光には凄く申し訳なかった。ヤチヨの記憶の中で、光は凄く頑張って、苦しんで、折り合いを付けていこうとしているみたいだったから。

 それを、好かれている私が勝手に知るというのは、誠実で優しい光に対して、酷い行為だと心の底から悔いた。

 それこそ、FUSHに部分的な記憶消去を頼むくらいには悔いていた。まぁ、流石のFUSHIもそれはできないらしいし、できたとしても絶対にしないと、何故か少し怒られてしまった。

 だから、という訳じゃないけど、告白されるかもしれないというのは分かっていた。覚悟もしていた。でも……返答だけは、どうしても分からなかった。

 

 光は、私に光の持ってる全部をくれた。

 進路も未来も、お金も能力も、持ってるもの全部を私とかぐやとヤチヨが一緒に居るために全部捧げてくれた。

 そのことに感謝は尽きないし、一生かけて光に報いようと思う。完全無欠のハッピーエンドへ絶対に連れていくとも決めている。

 じゃあ、光に告白されたら、私は受け入れるのだろうか?

 光のことは好きだ。友達としては勿論、異性としても魅力的だと思う。

 ヤチヨの記憶にあったヒカル達と同じように、友達を大切にして、約束を絶対に守って、真正面から向き合ってくれる。

 こんなに良い人、きっと他にはいないだろうってくらい魅力的で、かっこいい人。

 じゃあ、付き合うのかって聞かれると……少し、困る。

 私はかぐやとヤチヨの体を作って2人とずっと一緒に居たい。待たせてしまったから、待っていてくれたから、私はそれに応えたい。

 でも、それが光の告白を断る理由になるのか?多分、3人とも一緒だとしても問題ないどころか喜びそうまである……少なくとも、かぐやは絶対に喜ぶし、ヤチヨも言葉にこそしなくても喜ぶだろう。

 でも、私の中でモヤモヤする。

 全部ちょうだいなんて言った私に、全部くれた光。等価交換じゃないけど、私もそれに応えるべきじゃないか?

 そう思えば思うほど、私の中で違うと叫ぶ何かがいる。

 何が違うのか、私には分からない。分からないから、答えが出せなかった。

 

 だから、告白された時、「悪くない」と思った私に少し驚いた。

 それは多分、私の素直な気持ちだったからだ。

 なんとも情けない話で、前向きとも後ろ向きとも取れない「悪くない」という思いが、私の正直な気持ちだったわけだ。

 それでも、否定的でないのであれば付き合うのもありだと思った。

 全部をもらってるんだから、私だって全部をあげる覚悟を示さないと不誠実だと思ったから。

 

「──」

 

 でも、光の目を見たらダメだった。

 あれは、妥協を許さない目だった。

 考えて考えて、考え抜いた先で辿り着いた、透徹とした瞳。そして、澄んだ決意の中にどこか破滅的な願いを含んでもいた。

 そんな目で告白してくれた光に対して、使命感と妥協混じりの返答なんて許されるはずもなかった。

 だから、私には──

 

「──ごめんなさい」

 

 光の想いを砕いて、願いを叶えること以外に、選べなかった。

 断られた瞬間の、光の嬉しそうな顔が、頭を離れてくれない。

 

***

 

「──どうすれば良かったのかなぁ〜!!」

 

 居酒屋の喧騒に紛れて、私がジョッキを机に置く音が響いた。思ったより大きな音に少しビックリして周りを見回したが、個室なのを思い出して恥ずかしい……。

 目の前に座る真実はどこか呆れた表情で、お茶を飲んでいる。今日は旦那さんが双子の面倒を見てくれているらしい。

 

「またその話してる〜。1ヶ月くらい前の話でしょ?もう、彩葉の方から告白し直せば〜?」

 

「それは違う。光は納得してるみたいだから、それを踏み荒らしちゃダメだと思う」

 

「うわ急に落ち着く……。じゃあもう、親友ってことで方つけたんでしょ?それでいいじゃん〜」

 

「そうじゃなくて〜!……光に、もっといい返答をできたんじゃないかなって」

 

 あの時、告白を断る為に言ったことは嘘じゃない。寧ろ、全部本音で全部本当。

 でも、それはあの瞬間、選べなかった私が残ったものをかき集めて1つの答えにツギハギしたものと言うのも本当で……そのことに、私は未だ悔いている。

 

「ヤチヨを支えて、かぐやを大切にしてくれて、私に全部くれた(ヒカル)には、私のできる限り最大限の幸福をあげたい……死にそうな時、次に託さずに『死にたくない』つて本心から言わせたい……」

 

「重っ……なら、告白受けるのはダメだったの〜?」

 

「……あの時の光は、多分私にフラれたがってたんだよ。ぜーんぶ終わらせるつもりだったんだと思う。自分の気持ちにも、関係にも」

 

「…………」

 

「それもわかっちゃったからさ、やっぱり受ける選択肢はなかったんだよ……でも、あの答えはよくなかった気がする〜!」

 

「また同じ話に戻ってる……も〜、今思ってること全部源くんに話しちゃったら?こんなことで悩んでて、こういう風に関わりたいんだ!ってさ〜」

 

「……真実」

 

「なんて、流石に冗談──」

 

「──それだよ!」

 

「え?」

 

「私だけじゃわかんないなら、光に聞いちゃえばよかったんだ!光の願いも全部叶えれて、私も光に恩返しができて一石二鳥じゃん!」

 

「ちょっ、い、彩葉〜?」

 

「ありがとう!真実に相談して良かった!お金、ここ置いてくね!お釣りは駄賃だから気にしないで!じゃあ、行ってきます!」

 

「お、おぅ……行ってらっしゃい〜……ごめん、源くん。私、やっちゃったかもしれない」

 

 待ってて光!私の答え、もう1回ちゃんと聞かせてあげる!!

 

***

 

 かぐやのボディが完成し、ヤチヨのボディも完成が間近に迫っていた。

 目下の課題はかぐやとヤチヨのボディを作る過程で提唱した月の技術を完成させることと、擦り寄ってくる各企業、政府、銭ゲバな資産家達との腹の探り合いとなっていた。

 

「……何故、俺が研究ではなくこのような化かし合いをせねばならんのだ……。照兄さんや父さん達のお陰で少ないとは言え、面倒なのは変わりなく……いや、これもハッピーエンドの為!」

 

 夕焼けも地平の彼方へ暮れさり空に星が瞬く中で、何年経とうと変わらぬ美貌に疲労と憂いを乗せながら帰路に着く。

 その最中、奇妙な予感が光の背筋を震わせた。

 それは「結論だけ言うとお前は死ぬ」と光に幻聴を聞かせるほどの強い予感だった。

 

「……一体、何が」

 

「光ぅ!!」

 

「ぬばぉっ!?彩葉!?貴様、何故ここに!?」

 

 研究資料や思わぬ事故かと研究所の方を振り返って思案していた光に向けて、彩葉が突撃する。

 7年の歳月を経て、より成熟した美女の肉体が光の体に叩きつけられる。

 持ち前の体幹と瞬発力で倒れることはしなかったものの、突然の状況に光の思考は四方八方へ飛び散っていた。

 

「と、とにかく離れよ!ここでは人の目が──」

 

「──私!ずっと光に謝りたかったの!」

 

 光の背中に顔を埋めながら、彩葉は叫ぶ。

 

「あの時、断った理由は嘘じゃない!でも、それだけじゃなかったの!」

 

「何を……」

 

「私……あの時光の想いから逃げた。自分の気持ちがわからなかったから、選べなかった。だから、光の願いだからってフッた!」

 

「っ!」

 

「ごめん!ごめんなさい!真剣に向き合ってくれた光から、逃げて、ごめん……!」

 

「……違うさ。それは、貴様なりに俺と向き合い選択した結果だ。謝る必要など、どこにもあるまい」

 

「……でも、あの時私が選べなかったことを悔やんでるのは本当。光に申し訳ないと思ってるのも、本当」

 

「……」

 

 光のシャツを湿らせるその涙は、熱帯夜の最中でも紛れることのない灼熱を宿していた。

 

「答えは変わらない。光も、そんなことは望んでないことはわかってる……ただ、あの時の答え方、それだけは変えてもいい?」

 

「……ふっ、人生で2度もフラれることになろうとはな。あぁ、構わん。来いっ」

 

 腹筋に力を入れ、どのような断り文句が来ようとも受け止められるよう覚悟を決めた光は、彩葉から一歩離れ仁王立つ。

 

「──貴方程魅力的な男性を他に知りません。でも、私は貴方の大切な親友として、唯一無二のライバルとして居たい。だから、ごめんなさい。光とは付き合えません」

 

「──そうか……ありがとう」

 

 頭を下げた彩葉には光の表情は見えなかった。

 しかし、その震え混じりの優しげな声に、どんな感情を含んでいるか分からないほど、2人の関係は浅くなかった。

 こうして、彩葉の悔恨も精算され、2人はようやく1つの関係に、納得した終わりを迎え──

 

「──でも!」

 

 月下に、彩葉の声が響く。

 

「光は、私のために全部を捧げてくれた。ずっと助けて、かぐやと一緒にいる私の夢を叶えてくれた!」

 

「それは、俺の目的とも一致していたというか……」

 

「だとしても!私は、光の夢や願いを叶える手助けをしたい!」

 

 一歩離れた場所に立つ光に向けて、彩葉は大きく一歩踏み込む。

 

「光が笑える未来の為に、私も全力を尽くしたい!今度こそ、みんな一緒にハッピーエンドに行きたい!」

 

 体が密着しかねない距離に、思わず光が一歩後退る。しかし、勢いを増していく彩葉の言葉と連動するように、開けられた一歩分の距離は一歩と半歩分詰められる。

 

「──だから、私の全部を、貰ってくれますか?」

 

 光を見上げるその瞳には、無数の星と一片の欠けもない満月が浮かび、水面の燐光が夜空を覆っていた。

 

「──はは、参ったな……。あぁ、参った」

 

 光は月の明かりを遮るように彩葉の目を手で隠し、言葉を零す。

 

「今日は、随分と月が綺麗だなぁ……」

 

「……今の私に月は見えないよ?」

 

「クククッ、だろうな……。あぁ、貴様の全部、確かに貰い受けたとも」

 

 幾度か、強く服の擦れる音を残してから、光は彩葉の視界を隠していた手を退ける。

 目の前の美男子によってかけられた闇の帳は払われて、代わりに暖かな手が差し出される。

 

「俺は俺の全てを、彩葉は彩葉の全てを互いに差し出した。これで、俺たちは正しく対等だ」

 

「……うん。後悔も悩みも無くなった。これで私は憂いなくちゃんと向き合え、るっ!」

 

 彩葉は差し出されたその手に、勢いよく自分の手を打ち付け、そのまま握りしめた。

 軽快な破裂音が夜空に響いて、ギチリと肉の縮む音が小さく手の中に篭もる。

 

「──これからもよろしく!親友()!」

 

「──これからもよろしく。親友(彩葉)

 

 月明かりが、また一つ近くなった2人の距離を祝福するように、静かに照らしていた。




コソコソ裏話
2人の周りは人がいません。異様なほど、2人以外の人がいません。
なんでやろなぁ……そんなことができるなんて、さぞ影響力のある人らなんだろうな……そういえば、今回出てきてない人達の中に、何人かそんなことができそうな管理人と超新星と共犯者がいるな。……関係ないですけどね?

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