俺が8000年に負けるまでの話   作:凪 瀬

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執筆は進んでもストーリーは遅々として進まないので初投稿です。

超かぐや姫!の公式は神運営なのだが、神運営すぎるため財布が空になる。お金が無いのよ…貧乏なのよ……何よ、神運営じゃないの……
みんなも見よう、超かぐや姫!


3話 踏み込むということ

 

 最近、みんなの様子がおかしい。

 

「彩葉〜、今日の唐揚げめっちゃ美味しい。はい、あーん」

 

「えっ!?いいって!そんなに美味しいなら、真実が食べなよ!」

 

「え〜?彩葉と美味しいの共有したい〜!」

 

「む、悲しいことに、諫山真実は俺達とは共有したくないらしいぞ綾紬芦花……」

 

「悲しいね源くん……じゃあ、私も彩葉にだけポテトサラダあげよー」

 

「えっ?!」

 

「なら俺はこのだし巻き玉子をやろう。今日は普段よりも良い卵を使っているぞ!」

 

「えぇっ?!!」

 

 動揺する私を無視して次々と私の前に美味しそうな食べ物が置かれていく。

 それは親の作ってくれたり手作りだったり様々だけど、バイトの賄い以外で見る久々に美味しそうなもの達ばかりだった。

 

「……ねぇ、なんで最近そんなに私に食べさせたがるの?」

 

「え〜、なんの事〜?」

 

「私たちは美味しいもの共有してるだけだしねぇ?あ、私にも卵焼きちょうだい」

 

「そうだぞ!そして、綾紬芦花よ、この俺が最後の卵焼きを易々と渡すわけが……あれぇ!?無い!!」

 

「ん〜おいしぃ」

 

「無視するなこらぁ!誰でもいいから、説明して!」

 

「「「……」」」

 

「明らさまに目を逸らすなぁ!!」

 

 1度お昼を食べる手を止めて3人を床に正座させる。

 

「はい、今回の主犯は誰ですか?」

 

「「源くんです」」

 

「全い……あれぇ!?」

 

「はい。では主犯の源くん、私が納得する理由を述べてください」

 

「……些か癪に障る所はあるが、いいだろう。今回の犯行……犯行?これは罪なのか?」

 

「ひたすら私を困惑させたので罪です。はい、キリキリ吐く」

 

「酒寄彩葉、さては少し楽しんでいるな?……そもそもの始まりは貴様の顔色が悪かったあの日だ」

 

「私の……?あっ、あの日か」

 

「過労、寝不足、栄養不足。それらを俺達でどうにかできないかと3人で少し話してな。それで貴様に栄養のある、美味しいものを食べさせようという話になった。しかし、なんの理由もなしに渡しても貴様は遠慮するだろう。というわけで、一芝居打っていたと言うわけだ」

 

「私たちは特に芝居とかしてないけどね」

 

「ただ、食べてほしいな〜ってものを、食べて〜って言ってただけだしね」

 

「えぇい、言葉の綾というやつだ!」

 

「……それで今回の犯行に及んだわけね」

 

「犯行扱いは継続なのか……?」

 

「………」

 

「無視?無視なのか酒寄彩葉?!」

 

 勿論、3人の気持ちは嬉しい。

 でも、私の為に無理したり気を使ったりして欲しくない。

 って言っても、3人とも無理どころか負担とも思って無さそうだもんな……いやいや!このまま甘えるのじゃダメでしょ!

 友達って、多分そういうのじゃない!

 

「も「申し訳ないと思うなら、続けた方が良いだろう」えっ?」

 

 佇まいを直した源の目が私を射抜く。

 いやに真剣で、空気が引き締まり、肌がピンッと張る感覚。

 圧……とは少し違う、奇妙な雰囲気が私達の時間を引き伸ばしていく。

 

「綾紬芦花も諫山真実も、貴様の強さを信用している。だが、心配しているのだ」

 

「そうだよ〜」

 

「頑張ってるの、知ってるからね」

 

「俺達子供にできることは限られている。貴様の生活を完璧に改善することなどはできない。それでも、できる限りで貴様のことを支えたいと思っている」

 

「そんなっ、今でも十分支えられて」

 

「それでも、私達は支えたいの」

 

 思ってもみなかった方向から、言葉を遮られた。

 

「芦花……」

 

「彩葉が強いのも、私達のことを大事にしてくれてるのも分かってる。でも、私達だって彩葉をもっと大切にしたい……」

 

 顔を上げた芦花の微かに潤んだ瞳と目が合う。

 虹彩に纏った透明な羽衣に光が巡って、場違いにも凄く綺麗だと思ってしまった。

 

「でも、そんな、急に言われたって……」

 

 どうしたらいいか、分かんないよ……

 

「難しく考える必要はあるまい」

 

「え、源……?」

 

「俺達は俺達がやりたいから酒寄彩葉を支える。酒寄彩葉も俺達に対してやりたいようにやればいい」

 

 立ち上がってお弁当の開かれた席に座り直せば、何事も無かったかのように箸を持って食事を再開させる。

 真実と芦花も、それに習うように席に戻って……私の方を見つめてくる。

 

「これは受け取り方の話なのだ。感謝とともに受け取るも親愛の元に拒絶するのも自由だ。……最も、拒絶したとて、こやつらが止まるとは思えんがな」

 

「止まる気はないよね」

 

「彩葉を健康にするまで止められませんな〜」

 

「みんな……」

 

 私も、自分の席に戻る。

 最初は米と焼いただけの肉が入っていた質素な弁当。

 でも、今は唐揚げやポテトサラダ、卵焼きの入った綺麗な、この世に1つしかないお弁当に変わった。

 

「好きにするといい。いや、寧ろ諦めるといい。俺達は満足するまで止まらんのだ。諦めて受け入れてしまえば、悩む必要もなくなるというものだ」

 

「彩葉は考えすぎなんだよ〜。もっと私達のこと頼ってもいいんだからね〜?」

 

「もっと、私達に甘えてよ?」

 

「…………うん、そうだね」

 

 皆の気持ちを無下にするのは止めよう。

 元を辿れば心配をかけた私のせいなんだし、素直に、感謝と一緒に、受け取ろう。

 

「でも、ただでは受け取らない」

 

「む?」

 

「おっ?」

 

「え?」

 

 弁当の中にあるおかずを一つ一つ味わって、残ったお米をかきこんでいく。

 少しもったいない気もしたけど、今はいいや。

 

「芦花、再来週の週末、ショッピング行くよ。見たい美容品とネイルがあったんでしょ?」

 

「え、あ、うん」

 

「それと真実。前にKASSENで挑戦したいステージあるって言ってたよね。私、予定空けるからいつでも言って」

 

「えっ、えっ、えっ?」

 

「そして源!」

 

 腕を組み、じっと待つ源を指さして、きっと待ち望んでた言葉を告げてやる。

 

「来週から始まる中間テスト、私と勝負だ!」

 

「……」

 

 ど、どうだ?ま、間違えてないよね?

 や、ヤバい今更不安になってきた。芦花と真実も不思議そうな顔してるし……やっ、やっぱり突然すぎたかな?それとも、実は間違えてた?

 早くなんか反応してくれ源ぉ……!

 

「……ククっ」

 

「ん?」

 

「ククッ、クククッ、クックッククッ!」

 

「お〜?」

 

「クアーハッハッハッ!!それでこそ、それでこそ我が友、我が好敵手!酒寄彩葉だァ!!」

 

「うるっさ?!突然叫ばないでくれる?!」

 

「これが叫ばず、笑わずにいられようか!?あぁ、実に愉快だ、相当に愉快だ!!貴様は本当に俺の事をよく理解しているなァ酒寄彩葉!!」

 

 椅子から転げ落ちそうな勢いで背中を反り、上を通り越して背後を見ながら源は笑い続ける。

 その声の大きさと言ったら、部屋の窓ガラスが震えてピシピシと嫌な音が鳴るほどで……うるさいな!?耳痛いんだけどっ!

 

「うむ、うむうむ!では、改めて」

 

 満足気に何度か頷いてから、背筋を正して私に向き直った。

 その雰囲気は、先程の肌が張る感覚を蘇えらせる。

 

源家(みなもとけ)次男(じなん)源 光(みなもと ひかる)酒寄 彩葉(さかより いろは)からの勝負、神妙に(うけたまわ)る」

 

「っ!」

 

 源の目を見て、この不思議な雰囲気の名前を思い出せた。

 これは、覇気というやつだ。

 

「以前よりも万全な貴様との真剣勝負だ。楽しみにしているぞ?」

 

「……望むところ。そっちこそ、私のサポートに現を抜かして3位とかにならないようにね」

 

「クククっ、抜かせ。貴様こそ慢心して体調を崩したりせぬよう気をつけるがいい」

 

 売り言葉に買い言葉。でも、それは嫌な感情を抱かせるものではなくて、私たちの顔に笑みを浮かべさせる熱い想いが湧き出てくる。

 今まで私が勝負を受ける側だったけど、今日からは互いに挑戦者(チャレンジャー)だ。

 

「自信満々のその綺麗な顔面を歪ませてあげるから、覚悟しなよ?」

 

「今のうちにバスタオルを用意しておくといい。貴様の涙を拭うためのなァ!」

 

「ふふふふふっ……!」

「クッハハハッ……!」

 

「……ねえ、2人とも私たちのこと忘れてるよね〜?」

 

「…………まぁ、あの二人だしね」

 

「でも、芦花も寂しいよね〜?……そうだ!ね〜2人とも!」

 

「ん?」

 

「どうした?」

 

「次の彩葉のバイトが休みの日、勉強会しよう!」

 

「勉」

「強」

「会ぃ?」

 

「そう!みんなでどっか集まって、勉強するの!誰かに教えるのも勉強になるらしいし、私と芦花の成績も上がるしでWin-Winじゃん〜」

 

「うーん……」

 

「まぁ、一理はある、か?」

 

「私としても有難いけど……」

 

「3人さえ良ければだけど、どうかな〜?」

 

「……今週末は、確かバイトが休みだったはず」

 

「その日であれば俺は問題ない」

 

「私も大丈夫だよぉ」

 

「お〜!それじゃあ、今週末、お昼すぎに駅前のファミレスに集合だ〜!」

 

「あ、あそこのファミレスなんだ」

 

「さては真実、前から狙ってたな?」

 

「流れるように場所まで決めていたぞ。一時の思いつきで形成できる流れの速さではなかった。諫山真実、貴様できるな?」

 

「さてぇ?なんの事やら〜。というわけで!全員予定を空けておくように!……おっ、予鈴なっちゃった〜!早く食べないと」

 

「む!しまった俺も食べねば!!」

 

「彩葉が正座させたせいだからなぁ?」

 

「わ、私のせい!?」

 

「そうだそうだ〜」

 

「無駄口を叩く暇があるならっ、んぐ、食いたまえ!予鈴がなったということは授業まですぐだぞ!?」

 

「あ、私食べ終わってるから先いくね?」

 

「な、なにぃ!?」

 

「あ、彩葉待ってぇ。私も今食べ終わった」

 

「嘘〜!?」

 

「「じゃ、2人ともお先に」」

 

「「裏切り者〜!!」」

 

 結局、私と芦花、それと全速力で走ってきた源はギリギリ間に合ったが、真実は授業に遅刻して注意されていた。

 俯く真実から送られる恨みの視線に背中をつつかれながら、午後の授業が始まった。

 

***

 

 放課後、酒寄彩葉はバイトへ。諫山真実は彼氏とのデートへ向かうため早々に教室を出て行った。

 僅かに茜色の入った光が教室に入り、談笑する生徒達を照らす。

 

「綾紬芦花、少し話さないか?」

 

「お、いいよ?……その感じだと、何か真面目な話?」

 

「まぁ、デリケートな話と言って相違ないだろう」

 

 綾紬芦花の前に座り、その顔を見据える。

 俺達の雰囲気を慮ってか、他の生徒達は静かに教室を離れていってくれた。

 

「それで、源くんは何を話したいの?」

 

「ふむ、単刀直入に言おうか。貴様は酒寄彩葉の生活を変えることに否定的なのではないか?」

 

「……なんでそう思うの?」

 

 変わらぬ微笑みのはずなのに、その笑みと言葉には明確な拒絶が渦巻いているように思う。

 正直、母さんや婆様を思い出して白目を向きそうな程怖い。が、ここは我慢して耐えなければならない。

 

「正直に言えば、何か確証があった訳ではない。強いて言えば、俺の勘だ」

 

「えぇ……そういうのって、もっと違和感とか証拠とか集めてから聞くもんじゃないの?」

 

「確かにな。だが、酒寄彩葉に対してヤケに線引きをしようとする……踏み込まないようにしているように感じてな」

 

「っ……」

 

「案外と素直な反応だな。まぁ、理由はなんであれ、貴様が踏み込まないようにしているのは事実」

 

「……それで?」

 

「ふむ?それで、とは?」

 

「いや、それを聞いてきたんだから、何か言うことがあって話しかけてきたんじゃないの……?」

 

「いや、別に」

 

「え?」

 

「踏み込まないようにしている貴様に、今日は少し踏み込ませてしまったからな。それに対する心配と謝罪の為に話しかけたのだ」

 

「えっと……?」

 

「今日は綾紬芦花にとって不本意なことをさせたと思ってな。酒寄彩葉の手前、謝る訳にもいかなかった。改めて、申し訳なかった」

 

「えっ!い、いいよいいよ。私も、別に不本意だった訳じゃないし……寧ろ、普段思ってることが言えたから良かったみたいな」

 

「ふむ、貴様がそういうのなら、納得しよう」

 

「……源くんって、やっぱり変だね」

 

「む、失礼な。俺ほど常識を弁えた人間はそういないぞ!」

 

「悪い意味じゃないんだよ?ただ、自分の気持ちに素直で、真っ直ぐ人に踏み込むのは、普通の人には難しいから……」

 

「……それが、貴様の反対する理由か?」

 

 綾紬芦花は、ソッと俺から目を逸らし茜色の濃くなった外を見る。

 これまで崩れなかった微笑みは、苦い色を含んで、それがやけに印象に残る。

 

「…………別に、反対してるわけじゃないんだ」

 

 しばらく黙った後、再び俺の目を見据えて話し始める。

 ある意味、ここが正念場。

 綾紬芦花の見せずらい場所を暴く以上、俺には誠意を持って向き合う責任がある。

 

「彩葉の事はずっと心配だったし、私にできることはなら何でもしてあげたいと思ってる」

 

「……」

 

「でも、自分の力だけで立つ彩葉にこれ以上の負担はかけたくない。彩葉を支えたいのに、その気持ちがあの子の重りになったらダメじゃん?」

 

「だから、負担にならない範囲で線引きして踏み込まないようにする、か」

 

「でも、源くんと関わってから滅茶苦茶だよ〜」

 

「む、俺か?」

 

「そうだよ。言うつもり無かった事も勢いで言っちゃうし、せっかく程よい場所にいたのに、ちょっとずつ彩葉に近づいちゃうし」

 

 天井を見上げ、嬉しいような苦しいような不思議な微笑みを浮かべる綾紬芦花は、濃くなった茜に照らされて随分と大人びて見えた。

 

「……余計なお世話だったか?」

 

「うんん、ただ私も早くそうしてれば良かったかなって、ちょっと思っただけ」

 

「それは違うだろう」

 

「え?」

 

「綾紬芦花や諫山真実が友人として、酒寄彩葉の負担にならない所から支えていたから、俺が無遠慮に進んでも彼奴は耐えられた」

 

「源くん……」

 

「誇れ、綾紬芦花。お前達の友情は最善だったと、俺が保証する」

 

 …………む?何か間違えたか?

 伝えたかったことがちゃんと伝わらなかったか?いや、誤解の起こらないように簡潔に伝えていたはず……しかし、綾紬芦花はポカーンとした表情でずっと黙っている。

 うーむ、こういう時どうするのが正解なんだ?

 

「……ふっ」

 

「む?」

 

「ふふっ、私達の友情は最善、か………友情、ね」

 

「う、む?」

 

 なんか、なんだろう。言い表し難いが、ちょっと怖い?な……。

 

「ありがとうね源くん。お陰で、なんかスッキリした」

 

「そ、そうか。何らかの助けになれたなら良かった」

 

「うん。……じゃあ、私はそろそろ帰るよ。明日からもお互い頑張ろう。じゃね〜」

 

「あぁ、さらばだ綾紬芦花!」

 

 恐らく普段通りの微笑みに戻った綾紬芦花はサッサと教室から出ていった。

 しかし、最後の方、少し違和感というか何か怪しい感覚があったな。

 例えるなら、母さんとの会話中に何気なく言った一言で母さんの声が一段低くなった時のような恐ろしさというか……。

 

「……あ、送っていくべきだったか」

 

 暗い茜色が覆う教室には、俺の声がよく響くものだな。




コソコソ裏話
源光は幼少期から軽率に無茶するタイプの子供なので、母と祖母からはしこたま怒られている。なので、2人に対しては苦手意識というかトラウマがあります。普段朗らかなのに真顔で理論詰めしてくる母とひたすら無表情に見つめてくる祖母とか怖いでしょ?私は怖い……
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