実力の限界が数値で明確に記載されていると思われている遊戯王世界の話   作:SOD

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この世界の住民のフルネームは、家名+自名+D値となります。
正式なデータは全てこの書式となります。


黒杖(こくじょう)遊臥(ゆうが)D値1/99999

 

 

 世界には、中心となるデュエルタワーを囲む七つの国家がある。

 

 ここはその一つ『キングス』に設立されたデュエルアカデミア。

 

 中等部までの厳しいカリキュラムを乗り越え、デュエリストの最終目標であるタワー頂点への到達を目指す未来のデュエル・キングを育成するための機関。その名も、キングスアカデミアだ。

 

 生まれた瞬間からD値の低い者は間引かれるこの世界では、当然才能あるデュエリストしか残らない。

 その中で更に生き馬の目を抜き、しのぎを削りあって来た高等部のアカデミア生ならば、その実力は既に才能の天井に手が届いていると言っても過言では無い。

 逆に言ってしまえば、ここで蹴落とされてしまえば全ての努力は水泡に帰す。低い数値を出して未来を諦められた者たちと同じ末路を辿るのだ。

 

 

 ゆえに、欲しい。チカラが。カードが、欲しい。

 

 

 雑多なカードは、デュエルタワーが生み出す物がある。それらはタワーによって突然『招喚』されて、7つの国家に分配される。分配されたカードは、各々の(まつりごと)によって管理、販売される。

 だが、強力なカードは滅多に市場には出回らない。

 そう言った物は、殆どが『名家』か『上級国民』に優先して高値で販売される。欲する権力者が居なくなるほど供給が追い付かない限り『無名』の家やD値の低いデュエリストには強力なカードは購入出来ないのだ。

 ゆえに、この世界でカードを手に入れる主な方法は3つ。

 

 一つ、金で買うこと。

 

 二つ、家族や親戚の持つカードを継承すること。

 

 そして三つ………………。

 

 

 

 

 

 

 「ようやく見つけたぞ、黒杖遊臥D値1/99999!!

 

 オレとアンティールールでデュエルだ!!」

 

 

 アンティールールでデュエルをして奪うことだ。

 

 

  

 「………………」

 

 

 フルフェイスのヘルメットを被り、今まさに跨ったDホイールを発進しようとしていた黒い革ジャンの男。黒杖遊臥D値1/99999。

 彼は家の外に出れば大抵、どこの誰とも知らないデュエリストからアンティールールを挑まれる。

 

 

 「D値1/99999。歴史上最低数値を記録した落ちこぼれ如きに、『あのカード』を持つ資格は無い。

 

 だからオレが救済してやる! このロイド・マケルノーダD値1/103がな!!

 

 さあ、さっさとデュエルディスク構えろ、史上最底辺の落ちこぼれ!!」

 

 

 こうも一方的な都合でアンティールールを挑まれれば、文句の一つくらい言ってやりたくなるのが普通だが、黒杖遊臥は無言のままメットを脱いでDホイールに掛けると、デュエルディスクを左腕に『召喚』した。

 

 

 

 「………………」

 

 

 

 「先攻はオレだ! 行くぞ!!」

 

 

 

 決闘の宣言すら無しに、勝手に先攻をプレイするロイド。やはり遊臥は静かな瞳で眺めるだけ。不気味な沈黙だ。

 

 

 「自分の場にモンスターがいない場合、オレは手札から『暁天使カムビン』を特殊召喚出来る!」

 

 暁天使カムビン DEF1800

 

 「更に、手札から『ヘルウェイ・パトロール』を召喚」

 

 

 ヘルウェイ・パトロール ATK1600

 

 

 

 (天使族デッキ用の効果を持つ天使族モンスターと、悪魔族デッキ用の効果を持つ悪魔族モンスター。

 

 相手のデッキは悪魔族と天使族の混成、あるいは闇光のデッキか)

 

 

 「これでオレは手札から、我が一族の切り札を喚び出せる。

 

 暁天使カムビンとヘルウェイ・パトロールをリリース。

 

 出でよ、レベル10『闇の神ーダークゴッド』!!!!」

 

 

 

 

 

 闇の神ーダークゴッド  ☆10 闇属性 悪魔族 ATK3000 DEF1000

 

 

 ①このカードは自分フィールドの悪魔族・天使族モンスター2体をリリースして手札から特殊召喚できる。

 

 ②このカードは戦闘では破壊されない。

 

 ③1ターンに1度、発動できる。

 自分フィールドに「ダークゴッド・トークン」(悪魔族 闇 ☆10  攻3000 守1000)を可能な限り特殊召喚する。

 このトークンは、直接攻撃できず、戦闘で破壊されず、このカードが破壊される時に破壊される。

 このターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。

 

 ④モンスターが戦闘で破壊された場合に発動する。

相手に700ダメージを与える。

 

 

 

 「フハハハハハハ!! どうだ、これが我がマケルノーダの家名が代々受け継いできた切り札『闇の神ーダークゴッド』だ!!」

 

 

 

 闇の神ーダークゴッド ATK3000

 

 

 「ダークゴッドの効果発動!

 

 自分のフィールドの空いたフィールド全てにダークゴッド・トークンを特殊召喚!」

 

 

 ダークゴッド・トークン ATK3000

 

 

 「アハハハハハハ!!!! どうだ、総攻撃力15000の絶望的な布陣だ!!

 

 カードを一枚伏せて、ターンエンドだ。

 さあ、痛い目にあいたくなければ、大人しくあのレアカードを渡して逃げ帰るんだな!

 

 アーッハッハッハッハッハーーー!!!!」

 

 

 

 

 「………………今、俺を笑ったか?」

 

 

 「ーーはぁ?」

 

 

 「良いよなぁ、お前は…………そんな雑魚カード並べるだけでも、D値が高いから認めて貰えて。

 

 どうせ俺なんか、D値1/99999だよ。ハァ………………」

 

 

 気怠げにため息を吐く遊臥。

 

 それまでの沈黙が嘘のように、よく喋った。

 

 

 「俺のターンドロー…………」

 

 

 やさぐれたような様子でカードを引き、天を見上げて恨めしそうに睨んだ。 

 

 

 「メインフェイズ。

 

 『真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)』を発動……」

 

 

 「『真紅眼融合(レッドアイズ・フュージョン)』だと!?

 

 ま、まさかキサマあのカードを……!!」

 

 

 

 「デッキから『真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)』と『ブラック・マジシャン』を融合。

 

 

 黒衣纏いし魔杖の主よ、紅き瞳の黒竜と一つとなりて、天下(てんが)を滅せよ。

 

 融合召喚。レベル8『超魔導竜騎士ードラグーン・オブ・レッドアイズ』」

 

 

 

 超魔導竜騎士ードラグーン・オブ・レッドアイズ ATK3000

 

 

 

 

 「ば、バカな……速すぎる……っっ!!!! こんな早くに召喚されるなんて聞いてない!!」

 

 

 「ドラグーン・オブ・レッドアイズの効果発動。

 

 闇の神ーダークゴッドを破壊して、その攻撃力分のダメージを相手に与える」

 

 

 

 「くっ……そうはいかないぞ!! リバースカードオープン、永続罠カード『安全地帯』!

 

 このカードにより『闇の神ーダークゴッド』を効果破壊から守る!」

 

 

 

 

 「……………………。

 ………………ハァ……どうせ俺なんか、コイツが居るから相手にされてるだけなんだ……」

 

 

 

 『安全地帯』の発動宣言のあと、長い沈黙のあとに発動を通す遊臥。

 

 

 

 「フッ、いくらそのドラグーン・オブ・レッドアイズと言えども、その攻撃力は3000! 

 効果破壊さえされなければ、ダークゴッドの攻撃力と破壊耐性で一方的に攻撃出来る!!

 

 オレの勝ちだ!! 貰うぞ、そのレアカードを!!」

 

 

 「ドラグーンの効果は対象を取らない。だから闇の神がダメならそのトークンを焼くだけだ」

 

 

 「ホンギャアアアアアアアーーーー!?!?!?」

 

 

 ロイド・マケルノーダ LP5000

 

 

 直火焼き効果で丸焦げになるマケルノーダ。

 しかし、そんな無様な姿に無情の追撃が飛ぶ。

 

 

 「ドラグーン・オブ・レッドアイズの効果発動。

 

 ダークゴッド・トークンを破壊して、その攻撃力分のダメージを相手に与える」

 

 

 「はぁ? 何言ってるんだよ、その効果はもうこのターン発動したじゃないか!」

 

 

 「ドラグーンは、この効果を融合素材にした通常モンスターの数まで発動出来る。

 俺がドラグーンを融合する為に使った融合素材の通常モンスターは、『真紅眼の黒竜』と『ブラック・マジシャン』の二体。

 

 よって、この破壊効果をドラグーンは一ターンに二度発動出来る」

 

 

 

 「そ、そんな強力過ぎる効果なんて…………っ、ギヤアアアアアアアーーーー!!!!!!」

 

 

 

 ロイド・マケルノーダ LP2000

 

 

 

 ドラグーンの効果が成立し、効果ダメージが激痛となってロイドを襲う。コレが、この世界のデュエル。世界の日常。

 

 

 「ハァ、ハァ……だ、だけどオレにはダークゴッドがいる! どれだけ強力な効果だろうと、次のオレのターンでの勝利は揺るがない!!」

 

 

 

 「良いよなぁ……お前は『幸せ』で」

 

 

 

 「ハッ!! 当然だ!! オレはロイド・マケルノーダD値1/103!!

 

 お前のような最底辺の落ちこぼれとは違うんだよ! アハハハハハハ!!!!」

 

 

 「………………また、俺を笑ったなァ」

 

 

 「笑ったら何だってんだよ? 羨ましいならお前も笑えよ!! 笑う門には福来たるって言うぜぇ!?

 

 

 「……どうせ俺なんか。

 

 カードを伏せてターンエンド」

 

 

 「(ニチャァ)………!! 

 

 オレのターン、ドロー。

 

 これで終わりだ!! バトルフェイズ、ダークゴッド・トークンで超魔導竜騎士ードラグーン・オブ・レッドアイズを攻撃!!」

 

 

 

 

 

 ダークゴッド・トークン ATK3000 VS 超魔導竜騎士ードラグーン・オブ・レッドアイズ ATK3000

 

 

 同じ攻撃力同士のモンスターが力をぶつけ合い爆散する。

 

 

 

 「勝った……勝ったぞ!! そのレアカードが無い貴様は、額面通りD値1/99999!! 史上最底辺の落ちこぼれ!! 雑魚オオオオオオオーーーー!!

 

 さあアンティールールだ!! カードを貰うぞオオオオオオオーー!!」

 

 

 

 「リバースカードオープン。『レッドアイズ・バーン』」

 

 

 

 「………………は????」

 

 

 

 「レッドアイズモンスターが破壊された場合、ソレを対象に発動。

 お互いのプレイヤーは、対象の元々の攻撃力分のダメージを受ける」

 

 

 「え? は?? え??

 

 じゃ、じゃあこのデュエルは…………?」

 

 

 黒杖遊臥 LP5000

 

 

 「お前は良いよな。

 傷付いても、負けても、慰めてくれるママがいるんだもんな。

 

 笑えよ。角に福が、来るんだろう?

 

 

 笑エ……」

 

 

 

 

 

 「ーーワラエネエエエエエエエエーーーーー!!!!!」 

 

 

 

 

 ロイド・マケルノーダ LP0

 

 

 

 

 レッドアイズ・バーンのエネルギー派に吹き飛ばされたロイド・マケルノーダD値1/103。

 

 

 ソレを見送ったデュエルの勝者、黒杖遊臥が得たものは、レッドアイズ・バーンによる自傷ダメージの火傷キズだけだった。

 

 

 

 

 「………………………………『世界』よ…………これでも俺が、歴史上最弱か。

 

 

 そうだと言うなら……俺を笑えよ……」

 

 

 

 ジャケットのスス汚れだけを簡単に払った遊臥は、自身のDホイールに再び跨り、キュルルンと小気味良いモーター音を鳴らして、そのまま何処かに走り去るのだった………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 黒杖遊臥D値1/99999。

 使用デッキ【レッドアイズ+???】
 エースカード【超魔導竜騎士ードラグーン・オブ・レッドアイズ】


 5歳の頃、ドラグーンを創造した遊臥は誘拐犯を討ち倒し、名家の愛娘を助けた。





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