実力の限界が数値で明確に記載されていると思われている遊戯王世界の話   作:SOD

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最愛って言葉の響きを名前にする発想が好きで、是非とも自分も最愛と言う名前のヒロインを生み出してみたいとずっと思っていました。
結果出力されたのは、幼馴染でポニーテールの凛々しい顔つきの恋愛脳スイーツ少女でした。
服装はなんか可愛い系(あまり似合ってはいない)か、自分以外の人間が選んだギリギリまでかっこいい要素を含んだ可愛い系の服(ちゃんと似合っている)。とかが良いなと思いました。


天帝(あまつみかど) 最愛(さいあい)D値1/7

 

 

 デュエルタワーの根本には、慰霊碑が祭られている。デュエルタワーの頂上を目指し、しかし破れ去った挑戦者たちの名を刻む場所。

 

 「………………」

 

 ”黒杖有史郎D値1/1643”

 

 ”黒杖歩D値1/2345”

 

 四年前。黒杖遊臥がまだ12歳だった頃。少年の両親は突然姿を消した。

 いつものように、誹謗中傷をしてくるクラスメイトをデュエルで一方的にぶちのめして帰宅した家。『おかえり』を言ってくれるたった二人だけの家族が、いない。

 何日経過しても帰って来ない。両親の寝室で帰りを待った。だが、扉を開いたのはいつも、二人の幼馴染の少女だけだった。

 食事を作って持ってきてくれる最愛(さいあい)に、キングス中を駆け回り両親を探して『明日こそ見つけてやるからな』と励ます大河。

 この二人が居なければ、遊臥はとっくにこの世界の住人ではなくなっていただろう。

 

 だが、それでも。遊臥は昔のような明るく正義感の強い少年とは別人になってしまった。

 

 ある日、セキュリティーが黒杖家に来てしまった。最愛と大河よりも先に。そして、D値1/99999(おちこぼれ)の子供に、血も涙もないことを言い放った。

 

 『おい、死にぞこないのガキ。お前の両親はデュエルタワーに身の程知らずにも挑んで、おっ死んだ。

 ガキじゃアパートの家賃も払えねえよなぁ? とっととここから出て行きな!』

 

 遊臥は家を追い出された。両親が死んだと言う事実だけを突き付けられて。

 

 ”デュエルタワーに、挑んだ!?”

 

 この世界のデュエリストの目的にして通過点であるデュエルタワーに挑戦すること。それは命がけの一発勝負。待ったなしのデッドオアアライブだ。

 

 勝者はタワーの頂上に。敗者は…………タワーからその身を投げ捨てられて、原型を留めない屍を晒して生涯を終えるのだ。

 失敗者は、誰が設置したのかも分からないタワーを囲う大岩に、何者かも分からない『何か』によって名前が刻まれる。

 

 家を追い出された遊臥は、タワーの慰霊碑に走った。父の持つDホイールを勝手に乗って。子供の脚で辿り着けるはずの無い距離だ。使うしかない。オートパイロットに標準に搭載されているタワーまでの最短ルートを指定して走った。

 

 ”お父さんとお母さんがタワーに挑んだ!? どうしてそんなことを!? 僕は何も聞いていないのに!!”

 

 長い時間を走った末、少年は慰霊碑に辿り着き、絶望に崩れ落ちる。間違いようの無い、父と母の名前が、慰霊碑の一番最新の位置に刻まれていた。

 

 

 ”う、うわあアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーー!?!?!?!?!?!?!?!?!?”

 

 

 その後、事態を知った最愛と大河が家のクルマで到着するまで泣き叫んでいた遊臥は、最終的に血の涙を流しており、あわや失血死の手前まで行っていたのだと言う。

 

 

 

 「………………アレから四年。

 拝啓両親サマ、ご機嫌いかがか。出来損ないの息子が一人墓参りに来ました。どうせタワーに死にに行く位なら。手に掛ける慈悲ぐらい、何故与えて下さらなかったのでしょうか…………」

 

 アジサイの花を慰霊碑に添えて、胸ポケットから煙草を取り出して火を着ける。なんとも品の無い線香だ。

 

 それから、デュエルタワーの頂上を見上げる。と言っても、視認など出来ない。そこはあまりにも高すぎる。

 

 「俺もさっさと行きたいもんだ。デュエルタワーへの挑戦に」

 

 デュエルタワーは、頂上を目指す一方通行の試練場。参加資格さえ満たせていれば誰でも入れる。来る者は拒まず、逃がしはしない。

 だと言うのに。

 

 「…………」

 

 遊臥がタワーの外側に掘られているレリーフにデッキを翳す。挑戦する意志と参加デッキを示すこと。それさえすれば、タワーは挑戦者を自身の内部に『召喚』する…………筈だった。

 

 だと言うのに、黒杖遊臥はただ一人。タワーに拒まれている。

 

 「ハァ……まるでタワーに笑われている気分だ。

 どうせなら、俺をハエのように叩き落として鼻で笑ってくれればいいものを……」

 

 「ゆう~がっ♡」

 

  だきっ。誰かが背後から遊臥に飛びついた。

 

 「…………プロとのデュエルをしに行くんじゃ無かったのか。最愛(さいあい)

 

 心底うんざりした顔で後ろ見ると、予想通りの顔が鼻先が触れるスレスレの位置で置かれている。

 

 「しに行ったぞ。時間にして5分。ターン数にして三ターン。圧勝だ。

 

 さあ、将来を約束したフィアンセにご褒美のちゅーをくださいなっ♡」

 

 「ハアアアアア……」

 

 大きな大きなため息のあと、首に巻き付いた腕を解いて力ずくで降ろす遊臥。

 

 「なぁっ!? 何故剝がすんだ遊臥ぁ!? せっかくの一か月ぶりの恋人の温もりだぞ!? おかしい!!」

 

 「デュエルが終わったのなら家に帰ったらどうだ。

 将来のためにするべきことは沢山あるだろう。そのための時間は幾らあっても足りない筈だ。違うか?」

 

 「将来のために足りない時間……いやん、もう遊臥ったらぁ♡ そんなに大家族のビッグダディになりたかったのか?

 良いよ……今日から毎日、赤ちゃん作ろうね♡」

 

 「…………」

 

 突然だが、D値とは1に近い程才能があるというのが一般認識であり、デュエルタワーの頂上に辿り着いたとされる歴代のほんの僅かな到達者たちは皆、一桁台の者だ。そんな一桁のデュエリストですら、この慰霊碑には数多くの名前が刻まれている。更に、一桁台など、同世代に一人いるかどうかと言う確率である。そのため、この少女--天帝(あまつみかど) 最愛(さいあい)D値1/7は、世界の期待を背負う希少かつ重要なデュエリスト……なのだが。

 

 「子供の名前はどうしようか~? 遊臥と最愛で、遊愛(ゆあ)とか、最臥(さいが)とか~あ、でも毎年作るんなら、30人分くらい考えておいたほうが良いよね。そうなると、私たちの名前で子供の名前考えてたらすぐに限界来ちゃうね。どうしよう遊臥~~♡」

 

 この女、脳の大多数が恋愛脳に支配されているのである。

 

 どうしてこうなったのか?

 

 

 

 

 

 

 二人がまだ五歳だった頃。

 

 世界の歴史の中でデュエルタワーへの到達者を出した家は『名家』と呼ばれ、国から血筋を継続させるための支援と大きな権限が与えられる。言わば上級国民の家系となるのだ。

 そんな中、【天帝(あまつみかど)】家は歴史上3人の到達者を出した由緒ある『名家』であり、同じ名家と呼ばれる中でも別格の力と権利を有している。

 その血筋をどうにか自分たちの家名に取り入れようと、誘拐を企てた『名家』があった。

 まだ幼稚園に通っているガチペドの女児の段階から誘拐し、躾けて、カードの創造や多くの子供を産ませて家の力を高めるべく。元プロで落ちぶれてはいても、その辺のセキュリティーでは手も足も出ないような実力のある者を選び、金を掴ませて、天帝最愛を誘拐させた。

 

 足が付かないように念入りに、自分たちに辿り着けないように仲介人を何重にも用意して。指示を出し、無事に誘拐までは成功。後は身柄を引き受けるだけ。実行犯はどうせ捕まるので殺すつもりだったと後に供述もしていた。

 

 

 「これで、オレも大金持ちだ! これが正しい姿なんだよ! 1/53のオレが、あんな落ちぶれているなんて間違ってるのさ!!」

  

 「うぇぇ……ママぁ……パパぁ……」

 

 「うるせえなあ、静かにしてろやガキがぁ!!」

 

 「ぴぃ!?」

 

 「どうせもう二度とパパにもママにも会えねえよ! お前はオレのために商品になって売られるのさ!! ゲハハハハ!!」

 

 「いやだあああ……だれがだずけてええーー」

 

 

 

 誘拐されて泣きじゃくるだけの最愛。ボディーガードも先生もセキュリティーもこの男に倒された。

 そんな絶体絶命の時。

 

 

 「わざわざ子供を誘拐しておいて、隠れるのが近所の公園? こんな計画性の無い大人にはなりたくねえなあ!」

 

 

 公園の遊具の中で隠れていた誘拐犯と最愛を見つけ出したのは、同じきょうしつの黒杖遊臥だった。

 

 「ああ? 何だこのクソガキは!!」

 

 

 「拝啓クソ未満のゴミ大人。ご機嫌いかがか?

 

 シャバ最後のデュエルと行こうじゃないか。俺が解釈を務めてやるよ!!」

 

 

 「わあぁ……!!」

 

 

 言っていることはなんにも分からなかった最愛だが、これだけは分かった。

 

 

 

 

 

 「行くぞ悪党!!」

 

 

 「このクソガキがぁ!!」

 

 

 

 「「ーーデュエル!!!!」」

 

 

 

 

 「あいちゃんに、王子様が助けに来てくれたんだぁ……♡」

 

 

 この子が自分にとっての、白馬の王子様だと言うことだ。

 





 この日のデュエルで、少年は今後追い回されることになる最強のカードを創造した。

 なお、最も追い回して来るのは助けた少女本人。
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