転生者が多すぎる~虐められ引きこもりの俺はゲームの悪役に転生する! 真面目な努力こそが真のチートでした! 作:kuroe113
「どうしてこんな簡単なことができないのよ!」
改善した授業態度と、その圧倒的な魔力からシャルティの株は一挙に高騰した。
しかし、光あるところには影も存在する。
転生したことによって、シャルティは多くのものを得た。
だが、失ったものもあった。それが、謙虚さだ。
マナー講義の最中に、シャルティはおつきをしている執事見習に罵声を浴びせていた。
「おい、皆と仲良くするって話だったよな」
その様子を見たクロードは講義の練習中だというのに、シャルティを引っ張り出し、注意した。
「仲良くするのと、甘やかすのは違うじゃん!
失敗したならば、それを指摘するのが優しさってものよね」
「それはそうかもしれないが……」
「いい、私たちは悪役とはいえ貴族なの。
無理に好感度を稼がなくても、成果を出していったら、ほっといても評価されるものなの」
今に、この屋敷のすべての人間を自分に膝まつかせてやると、断言する。
「それにさ、あいつ気持ち悪いのよ」
続いて、自分に付き従い、いつもにこにこと笑っている執事無習いに苦言を呈した。
「どこがだ?」
「私を見てる目が気持ち悪いのよ」
「はぁ……、自分を見ている人が全部ストーカーだとかロリコンだとでも思ってるのか」
飛び出してきたあいまいな返答に呆れが天元突破した。
「考えてみろよ!
俺たちは転生した。いわば、強くてニューゲームだ。
今は全てがうまく行ってるけどさ、それは肉体のスペックが高いだけなんじゃないか?」
ここでクロードはあえて転生のおかげと言わなかった。
そういえば、アルテが調子に乗ることが分かるからだ。
「ああ、もう分かったわよ。できるだけ怒らないようにしてみるから」
最終的にシャルティは納得してくれた。
これなら大丈夫だろうと、両者は再びマナーレッスンの場に戻った。
クロードとの約束が効いたのだろう。
講義に戻ったシャルティはニッコリ笑顔で、そつなく対応していた。
(そうだ、それでいい。
好感度を稼ごうって提案してきたのはそちらだ。
愛想を振りまく重要性は俺よりもお前が理解しているはずだ)
――ガッシャーンッ!
自分は真面目な生徒、自分は真面目な生徒。
そう自分に言い聞かせ、2人は現代日本人からしたら、本当に意味があるのかどうかすらもわからない授業を無心で受けていく。
間もなく、授業が終わりというタイミングで、今度はメイドがやらかした。
テーブルクロスを踏んづけて、手の中にあったカップが宙に舞う。
そのお茶はきれいにシャルティのドレスに吸い込まれる。
本人は熱さで悶絶した。
「ちょっとあんたねぇ!」
当然、シャルティは激おこである。
これをされたら、温厚な人でも切れるので無理なからぬことであるが。
(まずい、このままだと、またシャルティが問題起こす。わがまま姫だという称号が不動のものになってしまう)
好感度アップ作戦に遅延がでるのはまずいと、クロードの脳が高速で演算を開始する。
「わ、悪い。このテーブルクロス、俺が手をついたせいで少し下に行ってたよ」
この時、怯えている見習いメイドにウインクするのも忘れない。
クロードが出した作戦がこれだった。
さすがの癇癪姫も、自分には強く当たれないと考えたからだ。
「次からは気を付けてよね」
狙い通りに、シャルティは矛を収めた。
それが兄に対する遠慮からくるのか、先ほど、喧嘩をしないという約束によるものか。
それは本人にもあずかり知らぬことだ。
「さっきの、大変だったわよね」
「そうそう、クロードさまも、厄介なトラップを仕掛けてくるし」
授業が終わり、主人たちがいなくなると、メイドたちが先ほどの授業に対する愚痴を口にする。
当然、その対象にあるのはあの兄妹たちだ。
「それがなのですが……」
話がヒートアップしていく中。
話題の中心、つまり被害にあった本人がその流れに水を差した。
「どうにも、テーブルについては、私を助けるために、クロードさまがとっさに言いだした嘘のようで」
「嘘、あのぼんくら息子が」
「それはないって」
「でも、最近あのぼんくら息子の折檻は少なくなったよね」
「ああ、確かに」
「もしかして、妹の面倒を見ることで、兄としての自覚が出て来たとか」
「まぁ、それならそれで面倒ごとが減っていいことだしね」
こうして、まだまだ、小さな芽ではあるものの、メイドたち、下のものから、好感度という小さな植物の目が芽吹き始めたのだった。