転生者が多すぎる~虐められ引きこもりの俺はゲームの悪役に転生する! 真面目な努力こそが真のチートでした!   作:kuroe113

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第11話 秘密基地

 鍛錬開始から1ヶ月。

 

 

「ヴィルヘルムがどこにいるのか分かるか」

 

「すいません」

 

 

 クロードの問いかけに、メイドは落ち着いて対応していた。

 

 

 以前のように、顔を見ただけで怯える様子がない。

 火事と、その炎を身を挺して鎮火したことで、使用人たちの視線に大きな変化が生まれた。

 

 

 けれども、光あるときに影もある。全てがいい方向に進んでいるわけではなかった。

 

 

 

 

「シャーリーがどこにいるのか答えなさいよ」

 

「すいません」

 

「あんたさぁ、私のおつきなんだから、それくらいの子と知っときなさいよ」

 

 

 シャルティの問いかけに、一回りくらい年上の少年が勢い良く頭を下げた。

 

 

 その少年はいつの間にか、シャルティ専属のような立場になっているのだが、どうにも相性が悪く、よく りつけていた。

 

 

 

 そんな調子だからか、シャルティとクロードの使用人たちからの好感度には大きな差が生まれていた。

 

 

「最近クロード様は落ち着いてこられた」

 

「剣術の腕もめきめき上達されているそうだ」

 

「それにしてもシャルティ様の癇癪はどうしたものか」

 

「いつもあのような態度だと、もうどう接すればいいのか」

 

 

 これが、本人たちがいない場での使用人たちの世間話である。

 

 

 

 

「ああ、もう、むかつくぅ~」

 

 

 2人だけの秘密基地で、普段でも押さえきれていない癇癪を、隠しもせずにシャルティはサンドバックへ発散していた。

 

 

 

 彼らがこの場に持ち込んだ小物の一つだった。

 いずれ、この家から逃走するかもしれないのだ。

 最低限の物資なり資金を逃走時運び出すために、つかえそうなものはなんでもここに運んでいた。

 

 

 

「さあ、行くわよ」

 

 

 

 そして、ここでは彼らのもう一つの秘密が隠すことなく行使されていた。

 本当なら、転生特典を家の中にも使いたいが、地雷原が散在しているのだ。

 なので、使う場所はここだけ、かつ、2人っきりでと決めていた。

 

 

 

 シャルティが声をかけると、家で使わないからと捨てられた机の4つの脚が手足のように変形していく。

 もはやその外見は単なる机ではなく、ロボットのようだった。

 

 

 

 これこそが、シャルティの特殊能力、自宅警備員だ。

 

 

 この力を、この世界風に定義するのであれば、付与魔法、あるいはゴーレムに分類される力だ。

 能力によって自宅にある物を、好き勝手に改造できる。

 

 

 それにたいじするクロードには派手な動きはない。

 ただ、刀を構え、目の前の光景をじっと眺めるのみだ。

 

 

 そして、シャルティが布陣を整えるとともに、前に出た。

 

 

 圧倒的な加速力を以て、机に迫り一振り。

 

 

 それだけで、意志を持ったかのように動いていた机はただの物言わぬ家具に逆戻り。

 

 

 これこそが、彼の転生特典、聖剣エクスカリバーだ。

 

 

 その正体は、神と、その力を持った存在を否定する、対神格武装。

 

 

 

「あぁぁっ!」

 

 

 自信作を潰されたからか、シャルティの口から悲鳴が漏れた。

 

 

 

「相も変わらず、本体ががら空きだ。

 壁役を倒すとあっさりと崩れるのは直したほうがいいんじゃないか」

 

「これまではそうだった。だけど、今日からは違うのよ」

 

 

 宣言と共に、シャルティが手ずから運んできた、お気に入りのデコレーションされたカバンがひとりでに開いた。

 

 

「人形とは、これまたファンシーな」

 

 

 そこからは、多数の可愛らしい人形が飛び出してきた。

 

 

 

「なるほどな。

 でか物では俺によって一瞬で処理される。

 ならば、手数で勝負しようって腹積もりか」

 

 

 可愛らしい人形の手には小さく可愛らしいナイフが握られている。

 

 そのナイフが宙に舞う葉っぱを一振り。

 すると、奇麗に真っ二つ。

 

 

(訂正! まったくこのナイフ可愛くない)

 

 

 その姿はB級映画に出てくる呪われた人形のようだった。

 

 

 

(囲まれていると、周囲を観察しないといけないので気が散るな……)

 

 

 

 単純な手ではあるが、いざ周囲を囲まれると、クロードは確かにやりにくさを感じていた。

 

 

 

「さあ、行きなさい、私のかわいい人形たち」

 

 

 シャルティがタクトをふるう。

 それだけで、人形たちは宙を踊るかのように舞、美しく、それでいて苛烈に距離を詰めていく。

 

 

 

「これさぁ、ある程度戦闘が開始してから行うべきじゃないか」

 

 

 対して、クロードはドンと地面に足を叩きつけた。

 

 

 そこには、泥にまみれ、身体を汚しながら、ゆっくりと音を立てずに接近していた最後の人形があった。

 

 

 

「え! 何でばれたのよ」

 

「簡単だよ。そっちに机と人形を別々に展開する理由がない。

 人形を後から出したのは、あらかじめ設置していたものから気を逸らすためくらいしか理由がないからね」

 

 

 呆れながら、クロードは説明した。

 

 

 シャルティはすぐさまリカバリーを測ろうと、動きのパターンを変化させるが、もう遅すぎた。

 

 

 

「これで終わりだ!」

 

「消えた!」

 

 

 少なくとも、シャルティの目にはそうとしか見えなかった。

 

 

 進行上。

 シャルティとクロードの対角線上に存在していた人形たちが、本当にいつの間にかその機能を停止させた。

 

 

 そして、シャルティの首筋には聖剣が添えられていた。

 

 

 

「続けるかい」

 

 シャルティは静かに首を横に振った。

 

 

 

「あぁ、また負けたぁ。強すぎよ。あんたさぁ、兄貴なら妹相手に手加減の一つでもしなさいよ」

 

「そんたくは本人の為にならないから、しないようにしてるんだよ」

 

 

 悔しさのあまり、シャルティは地面に寝そべりじたばたと暴れていた。

 

 

 

 

「はい、勝ったんだしこれもっていきなさい」

 

 

 怒りが収まるとシャルティは戦闘時使用した人形の中で、唯一無事なものを兄に手渡した。

 

 

 

「えっ、男相手に人形」

 

 

 プレゼントということで受け取ったが、その顔には隠し切れない不満があった。

 

 

 

「見た目よりも、実用性を重視した結果よ。

 自律人形は便利でしょ、そっちの能力的にもね」

 

 

 せめてほかのデザインはないのかと頼み込みたかったが、あいにくとそうしたものはなかった。

 

 

 

 さて、そろそろ屋敷に戻るかというところで、シャルティは疲れたということで、しばらくこの秘密基地で休憩することとした。

 

 

 なので、クロードは一人で帰路につく。

 その道中で、物音を聞いたので、すぐさま木陰に隠れた。

 

 

(秘密基地の存在がバレて行くのを禁止されると面白くないな)

 

 

 という思いがあり、よほどのことがない限り姿を現すつもりはなかった。

 

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