転生者が多すぎる~虐められ引きこもりの俺はゲームの悪役に転生する! 真面目な努力こそが真のチートでした!   作:kuroe113

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第2話 女神降臨

「君は……女神様か」

 

「ええ、わたくしはアルテ。月の女神です」

 

 

 熱病に犯されたかのように、葛彦は呆然としていた。

 

 

 

 その美しさは魂に焼き付くようだった。

 整いすぎて、かえって恐ろしさすら感じる顔立ち。

 黄金に輝く瞳。

 それと対比するかのような白銀の髪をもつ。

 一目で、この世のものではないと納得させるほどの存在感。

 

 自分が死んだという自覚があるからこそ、すんなりと目の前にいるのが神だと納得できた。

 

 

 

「俺は地震で死んだんですか……」

 

「ええ」

 

「その、良子はどうなりましたか……?」

 

「その……」

 

 その形の良い眉をよせただけで、葛彦はおおよその事態を理解した。

 

 

「そう……ですか」

 

「意外ですね。もっと取り乱すと思ったのですが……」

 

「地震なら、自然災害で死ぬならしょうがないじゃないですか。

 そりゃあ、もっとやりたいことはいろいろとありました。

 これまでは単なる引きこもり。

 両親には迷惑をかけてばかり。

 それでも、最後のあの瞬間だけは悪くなかった。

 少なくとも、こんなどうしようもない俺でもよくやったと言えるだけの成果を出しましたしねぇ」

 

 悟ったような態度をとりながらも、その手は固く握りしめられ、両目からは大粒の涙があふれていた。 

 

 

 

「そんなあなたに、チャンスがあります」

 

 

 そんな葛彦を見かねたのだろう。

 女神は提案する。

 

 

「それって、もしかして、最近話題になっている」

 

「そう、異世界転生です!」

 

「よっしゃあああぁぁぁっ!

 テンプレ展開来たあああぁぁぁっ!」

 

 

 ――うひょうぅ!

 さっきまで落ち込んでいたのが嘘のように飛び跳ね、全身で喜びを表現する。

 

 

「あ、ちなみに何ですが……」

 

「良子さんはもう転生していますよ」

 

「ありがとう! 女神様」

 

 

 ――やっほうぅ!

 気がかりなことを思い出して、沈み込んだテンションがここで再度爆発する。

 喜びの舞は女神が待たされすぎて、不機嫌になるまで続いた。

 

 

 

 

「転生先はエレメンタル・サーガで。

 ほしい能力は……、制限のない成長能力、魔力量は無限、全属性の魔法適正、実家はできる限り太いところがいいな。後、顔もイケメンで」

 

 

 スラスラと、欲しいものが口から出るたびにアルテの顔が曇っていく。

 

 

 

 エレメンタル・サーガはいわゆる、剣と魔法の世界である。

 異世界からやって来た勇者が邪悪な魔王に抗い世界に平和を取り戻すという王道ストーリーだ。

 それはつまり、弱肉強食。

 強いものは栄え、弱いものは全てを失う可能性があることを意味する。

 向こうの世界で成功するためには力があればあるほどいいのである。

 

 

 

「念のために言っておきますが、星そのものを破壊できるだけの力はダメですよ」

 

「い、いやあ。さすがにそこまでは願っていませんよ」

 

 

(やっぱり、無限の魔力はダメだよな。

 使い方によっては永久機関。下手すれば文明そのものを生み出したり、破壊するだけの力だしな)

 

 頬に流れた汗をそっとぬぐう。

 

 

 

「その……、人類最高峰のスペックを持った肉体と、全属性の魔法適正。

 あと、強い武器さえ手に入ればそれで構いません」

 

 欲張りすぎはよくないと、反省した。

 

 

 

 

「……そうですね」

 

(どうなる、もしかしてこれでもまだ欲張りすぎだと言われるんじゃねぇか?)

 

 一瞬の間。

 心臓が激しくのたうち回った。

 たっぷりと間が開いて、

 

 

「その程度であれば構いません。

 あなたには神具を授け、転生させましょう」

 

「ありがとうございます、女神様」

 

 

 許可を得たことで、心臓が奏でるメロディーがゆったりとしたものに変わる。

 

 

 

 

「あなたの旅に、とびっきりの幸運を」

 

 

 アルテの祝福と共に、葛彦の周囲に黄金の光が漂う。

 それはまさに、眼前にいる女神そのもののような光だ。

 暖かく華憐で、触るものすべてを包み込むような。

 

 

 葛彦はそのぬくもりに身をまかせると、導きのままに新たな世界へと旅立つ決意を決めたのだが……。

 

 

 

 

「なに、細部をごまかしていい話風にしてるんですかぁ!」

 

 

 

 騒がしい声が、無限に広がっているのではないかと錯覚すらしてしまう果てのない空間に反響した。

 

 

 

 やって来たのは黒髪に白い着物をまとった女だった。

 髪の上には金でできた幾何学的な法則を無視したかのような複雑な髪飾り。

 身に着けている羽衣は重力を無視してふわふわと空を飛んでいる。

 なのに、CGのような、非実在感はない。

 確かにそこにいる、目を背けられないほど圧倒的な存在感を放つ女だった。

 

 

 

「な、何をするのよ! アマテラス!」

 

 

 聞こえて来たビッグネームに、葛彦は驚愕した。

 

 

「この度は、誠に申し訳ありませんでしたぁ」

 

 

 アルテの頭をつかみ強引に頭を下げさせる姿を見て、その驚愕はさらに大きくなった。

 

 

 

 

「じ、じつは……、あなたが死んだのはこの娘のせいだったのよ」

 

「はあああぁぁっ!」

 

 

 再び、果てのない世界に声が反響した。

 

 

 

「何でここまで優遇してくれるんだと思ってたけど、そういうからくりかよ!」

 

「うっさいわねぇ! あんたはどうせ先のない人生だったのに、ものすっごいチャンスが訪れるのよ!

 だからね、何の問題もないじゃない!」

 

「大ありだわ!

 というか、いったいどうしてこんなことになってんだ!」

 

「その、怒らない……」

 

「ちゃんとした理由があるなら、許してやる」

 

「……のよ」

 

「あぁ、なんだって」

 

「だ・か・ら!

 人間の寿命が書かれている手帳に飲み物こぼしちゃったのよお!」

 

「ふざけるんじゃねぇ!」

 

 

 葛彦は女神に掴みかかる。

 アルテは抵抗しようとするが、アマテラスに拘束されていて動けなかった。

 

 

「俺だってテンプレ展開は好きだよ。でも、そんな不都合なところまでなぞる必要はないじゃねぇか!」

 

 

 神のミスで死ぬなんて、まさにテンプレだ。

 なので、不敬であるのを承知で神に無礼を働くというテンプレをなぞった。

 

 

 

 

「とりあえず俺は元いた場所に……返さなくてもいいな、もっと転生特典をよこしやがれ!」

 

「もう、渡せるだけ渡しているじゃない!」

 

 

 いい争いは激化していく。

 向こうの失敗を知り、遠慮が抜け落ちた葛彦と、世界の運営上、大きな動きをしたくないアルテの間での対立が発生していた。

 

 

 

 

「なるほど……。では、アルテ。

 この男と共に地上に降り立ち、新たに創造された世界を安定させるのはどうですか」

 

 

 両者の意見を耳にしたアマテラスが仲裁案を出した。

 

 

 

 

「ちょっと待て、どうしてそんなことを!」

 

「葛彦さんは新しい転生特典が欲しいのでしょう。

 ここにいるアルテさんは強いし役に立ちますよ」

 

「だからって、神である私を送ることないじゃない!」

 

「そもそもの話、これはあなたの失態でしょう」

 

「それはそうだけど」

 

「葛彦さんは新しい転生特典を手に入れられて幸せ。

 アルテも世界の創造に伴うリスクは把握しているでしょう」

 

 

 スケールが大きすぎて理解できないが、それでも重要だと分る会話に、葛彦はどういうことだと疑問を挟んだ。

 

 

 

「そうですね、あなたはこれより物語の世界に転生する。

 しかし、物語と同質の世界が本当に存在するとあなたは思いますか……」

 

「まさか」

 

 

 葛彦は察した。

 これから行く世界はもとからあったものではなく、今まさに創り出されたのだと。

 

 

 

「転生する世界は創世記の途中なのです。

 故に多くの矛盾をはらみ、破綻が生まれれば崩壊してしまう。

 あなた方には、世界がつつがなく運営できるように、道しるべとなってほしいのです」

 

 

 

 

「いや、こいつに仕事を頼みうのはまだわかるわよ! でもどうして私まで行かないといけないのよ!」

 

 

(こいつ最低だ)

 

 葛彦はそう思った。

 人を殺しているのに、その責任を取らないと言っているからだ。

 

 

「ええ、分かりました。

 わたくしめはここにいるアルテと共に異世界を安定させるために粉骨砕身してきます」

 

「ちょっと、どうして勝手に決めてるのよ!」

 

「うるせぇ! お前のせいでこんなことになったんだろ。

 なら、責任とれや」

 

「そ、それでもいやぁ……」

 

 

 押し合いへし合い、いっこうにらちが明かない状況に、アマテラスが動いた。

 

 

「では、良い旅を!」

 

 

 強制転移を発動。

 彼らの身体は黄金色の光に包まれた。

 

 

「まって、働きたくない、働きたくないでござる」

 

「はっはっはっ、一緒に幸せになろうよ」

 

 

 最後にそう言い残して、2人は新しい世界に旅立った。

 

 

 

 

「あれ……、ここは」

 

 

 こうして、葛彦は異世界に転生した。

 そこは全くの未知の世界であるはずなのに、どうしてか見覚えがあった。

 

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