転生者が多すぎる~虐められ引きこもりの俺はゲームの悪役に転生する! 真面目な努力こそが真のチートでした!   作:kuroe113

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第9話 消火活動

 鍛錬開始から8日目。

 クロードと並行して、シャルティもまた鍛錬に励んでいた。

 

 

 

「そういえばなんだけど、あれほど勉強を嫌がっていたシャルティ様がシャーリーの授業を真面目に受けているそうなんだ」

 

「あの、シャルティ様がか……?」

 

「どうせ、いつもの気まぐれだろう。長く続くはずもない」

 

 

 

 このころになれば、元から最低最悪だったセンベルン兄妹の評価も、ほんの少しではあるが改善が見られた。

 何もかもが、狙い通り。上手く進んでいるというのに、

 

 

 

「まずい、このままだと。どこかに、皆をあっと言わせるような成果はないの」

 

 

 本人はあせりにあせっていた。

 

 

「一体どうしたんだい、シャルティお嬢様」

 

 

 

 自分ところの姫のかわり様を薄気味悪く感じていた使用人たちは、最も関係性が深いシャーリーに調査を依頼していた。

 何かを企んでいるのではと疑ったのだ。

 

 

 実際、シャーリー目線でも様子がおかしなことは明らかである

 

 

 

「実は、お兄様と勝負しているの。どっちがより大きな成果を出すかって」

 

 

 シャーリーは納得した。

 同時に、シャルティもまた胸をなでおろす。

 

 

(今まで、遊んでばかりのやつが急に真面目になっても、周囲からは警戒されるしね。

 クロードのやつとそれらしい理由を考えといてよかった)

 

 

 

「なら、若に負けないようにお勉強を頑張らないとねぇ」

 

「ええ、当然よ!」

 

 

(本当に……、これまでは勉強をするっていっただけで、泣いていやがり、暴れまわっていたのに……)

 

 

 やる気に満ち溢れている弟子の様子を見て、シャーリーは素直に喜んだ。

 

 

(最近、坊ちゃんも真面目に鍛錬しているし。

 これまでは会うたびにお互い罵倒していたのに、やはりなんだかんだで兄妹なんだねぇ)

 

 

 人というのは切っ掛けさえあれば変われるものだということを、しみじみと納得していた。

 

 

「へえ、この魔術理論ってこういう風になってるんだ」

 

 

 

 

「ああ、それであってるね。

 それにしても、本当にさすがだねぇ。

 これまであまり勉強してこなかったのに、もう同年代の平均よりも進んでいるよ」

 

 

「当然よ! でも、まだあいつに勝てるのかどうかわからないのよね……。だからさ……」

 

 

 チラチラと、自分の方を見るシャルティに、シャーリーは何を望んでいるのかすぐにピンときた。

 

 

 

 通常、幼い子供に魔法を教えることはない。

 注意力が散漫な彼らに魔法を扱わせるのは危険だからだ。

 

 

 貴族の家でも大きくなるまで、魔法の理論すら教えないというのが一般的だった。

 

 その点でいえば、シャルティの年齢はちょうど10。

 教えるのかどうかの境界線にあった。

 

 

「これは坊ちゃんへの勝利は確実だねぇ」

 

 

 癇癪を起こさず、落ち着きを見せた今ならば問題ないとシャーリーは判断した。

 

 

 

 

 その許可が下りたのは、クロードが初めてヴィルヘルムに一撃をいれた日の翌日だった。

 

 

 

「本当に魔法使ってもいいの!」

 

「ええ、構いませんとも」

 

 

 

 朝、クロードたちが使用していたのと同じ鍛錬場で、シャルティが初実戦の許可をとっていた。

 

 

 シャルティは喜びの声をあげているのだが、初めて凶器を振り回すのだ。

 喜びの中には本の少しの恐れが混じっていた。

 

 

 

「さあ、思い切りやりなさいな。

 この壁は魔法の鍛錬のために特別頑丈に作られているのですからねぇ」

 

「もちろん!」

 

 

【ファイヤーボール】

 

 

 指を銃のように構え、的に向かって初級魔法を放つ。

 

 

 

 周囲の音が一つに塗りつぶされた。

 轟音が屋敷全体にとどろき、熱波によってシャーリーの髪の先後ほんのわずかに焦げ付いた。

 

 

「ウソでしょ、私が全力で魔法をぶつけてもびくともしない壁がこんなにあっさりと……」

 

 

 

 太陽のような光輝に、シャーローは開いた口が塞がらない。

 こんなことが本当にあり得るのかと、何度も何度も目をこする。

 

 

 だが、何度確認しようとも、防護壁は破壊され、その後ろにあった備品の倉庫もまた崩壊している。

 

 

(なんという魔力量。私とて長く生きているけど、これだけの力を見たのは初めて)

 

 

 

「見てよ! これが私の魔法、すごいでしょ!」

 

 

 シャーリーは恐らくはこれが最後になるだろう弟子の潜在能力に絶句し、恐怖すら感じていた。

 しかし、それをやった本人は爽やかな笑みを浮かべていた。

 

 

 

「いや、お前一体何やってんの。内の敷地そのものを壊すとか、一体何事だよ!」

 

 

 その爆発は屋敷にいる全てのものの目と耳に届いていた。

 当然、クロードにもそれは同様だった。

 

 

「いや、そもそもの話、どうしてあんたがここにいるのよ」

 

「何、鍛錬がひと段落ついてな。

 より本格的な鍛錬をする前段階ということで、数日休みになったんだよ」

 

「だったら、どっかで一人寂しく素振りでもしとけば」

 

「実際にやってたよ。でも、こんな派手な光景を見せられるとね。

 ついでに言えば、数日前に、暇ができたら、そちらの訓練を見に行くって約束していたじゃないか」

 

 

 これは、そのいい機会だとクロードはいう。

 シャルティもまた、最近大きな成果をあげた兄への対抗心があるので、今自分の成果を見られるのは気に食わないものの、しかし事前に約束があったこともあり、何も言わなかった。

 

 

 

 

「話がまとまったというのに、すいません。

 今はまだ火がくすぶっていて、訓練に参加するのはまた今度にしてくれませんかねぇ」

 

 

 

 しかし、監督官であるシャーリーが待ったをかけた。

 今、シャルティの起こした炎で、屋敷そのものがあれているのだ。

 急いで消火をしなければと、もう、皆に合図を出していた。

 

 

 

 

「ああ、そうだったな。ここは訓練場。

 周囲に建物がないから、炎が広がることはないが、でも、こんな状況だ」

 

「訓練はまた今度だねぇ。

 思った以上に炎が広がっているし、速く非難していただけませんかぁ」

 

「いやいやいや、そこはシャーリーもまた避難すべきじゃないか」

 

「私はこれでも、この屋敷での魔法講師のトップ。

 今、この屋敷の中で、最もうまく魔法を使えるのが私だからねぇ。

 魔法の火災の後始末は私がしないといけないんだよ」

 

「なるほどな、これが上に立つ者の責任感というわけか」

 

 

 

 シャーリーの言葉が何かの琴線に触れたのだろう。

 顎に手を置き、しばし考えこむ。

 

 

 

「ならば、なおさら俺もここに残ろう。

 何せ、今この屋敷の中で、もっとも魔法の扱いにたけているのは俺だからな」

 

 宣言と共に、クロードは魔力を練り上げた。

 

 

 

 

「まって、まだ若は魔法について、さわり程度しか知らないのに」

 

「そうよ、魔法については私から聞いた知識くらいしかないじゃない」

 

 

 普段のクロードを知っているからこそ、2人は無茶だ、速く他の誰かに任せようと提案する。

 

 

 

(原作でクロードはたった一目見ただけで魔法を習得したんだ。

 同じ肉体を持つ俺ならばできるはずだ)

 

 周囲は不安に満ちているが、やっている本人だけは絶対ににできるという確信があった。

 

 

 

【ウォーター・ストーム】

 

 

 展開したのは、水属性の中級魔法だった。

 

 

「嘘、一体何なんだい、この規模は」

 

「まさか、もう中級魔法を習得しているの。

 これまで真面目に魔法を頑張ってきた私が形無しなんだけど!」

 

 

 シャーリーは中級魔法でありながら、上級魔法にも引けを取らないその規模に。

 

 シャルティは自分がまだ習得していない魔法を使用したことに驚愕した。

 

 

 

 

「さあ、炎よ、消えろ!」

 

 

(よし、俺が思った通りに魔法が操作できている)

 

 

 初めての魔法。

 できるという確信はあったが、思い通りに動くかどうかは不安だった。

 しかし、その不安が杞憂に過ぎなかったことをクロードは内心喜んだ。

 

 

 水はなめるように炎にぶつかり、鎮火していく。

 

 

「建物が」

 

「いや、どうせこのままだと炎で燃え尽きるんだ、坊ちゃんかまわずやってください」

 

「それもそうだが」

 

 

(あ! そうか。確かに建物の方にも被害がいってるよな)

 

 

 元々、建物がこれ以上壊れないように水をばらまいているというのに、クロードの魔法があまりにも威力が高すぎたせいで、かえって建物が崩壊していく。

 

 

(これだと、建物を直しているのか、壊しているのか分からないな。

 一体どうすれば……?)

 

 

 

「ああ、もういっそのこと雨でも降ってくれれば」

 

 

 守衛の嘆きが妙にクロードの耳に響いた。

 

 

(本当にそうだ、雨が降ってくれれば、このまま何もせずとも炎が消えてくれるのに……。

 まて、試す価値はあるか!)

 

 

 始まりは単なる愚痴だった。

 しかし、今のクロードには値千金のひらめきだった。

 

 

「水よ、回れ」

 

 

 これまで、地面をなめるように駆け巡っていた水が、天高く昇っていく。

 

 

 

 

「坊ちゃん、今は炎を消すのが先決だ」

 

「ああ、俺が余計なことをいっちまったばかりに」

 

 

 周囲が、この訳の分からない行動に困惑する。

 そんな彼らの顔に、水滴が飛び散った。

 

 

「一体、これはなんだ!」

 

「雨、でも、空は晴れ切っているのに」

 

「これは若の魔法だねぇ」

 

 シャーリーが分析を口にすると、皆が空に浮かび上がった、クロードの魔法を見た。

 

 

 

 天を高速で旋回する水の塊から、遠心分離機の要領で周囲に少しずつ、水がばらまかれているのである。

 

 

「まさか、立った一瞬で、建物を壊さないで、火を消す方法を思いついたとでもいうのか!」

 

「というか、なんて緻密な魔法の制御能力なんだ!」

 

「これだけの規模の魔法を完全に制御してやがる」

 

 火が消えていくことに、この場に駆り出された衛兵たちは歓喜し、ついで、魔法の心得のある連中はその精密な魔法の制御能力に驚愕していた。

 

 

 

 

 そして、周囲に燃え広がっていた炎が消え、落ち着いてくると。

 

「これでいいか」

 

 これまで、緻密に制御していた魔法を解除。

 ファイア・ボールの着弾点。

 すなわち、最も炎が燃え広がっていた場所に大量の水が注ぎこまれた。

 

 

 

 

「すげぇ、これから大惨事になると思ったのに」

 

「あっという間に、炎が消えた」

 

「なんて、強大な魔法力だ!」

 

 

 

 この成果に、皆が感謝と称賛の言葉を投げかけた。

 

 

 

「まさか、若にこれほどまでの魔力の差異があるとはねぇ」

 

 周囲が騒ぎに騒いだ後、一応、この場の責任者ということで、シャーリーが皆を代表として前に出た、

 

 

 

「こんなもの、褒められるようなものでもないさ。

 とりあえず、水を飛ばして炎を消したが、魔力の制御が甘くて、炎どころか、建物を壊してしまった」

 

「待て、それってつまり、若は初めから、炎だけを消そうとして」

 

 

 

 シャーリーはあわてて、再度周囲を見た。

 

 そこで、クロードが壊した建物は確かに存在するが、いずれもその損傷は軽微。

 地面に関しては、えぐれた場所が一つとしてなかった。

 

 

「その、本当に、この魔法を使ったのはこれで初めてなんだよねぇ」

 

「ああ、そうだ」

 

(だと言いうのに、この精度。

 もう、身体にがたが来てるっていうのに、まさか、これほどの才能、2人に出会うとは、人生というのは分からないものだ)

 

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