アホみたいなオーラ量に対して、貧弱すぎる出力でどうしろと?   作:村ショウ

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感想、誤字報告ありがとうございます!
水曜日からちょっと体調崩してました…。



11.カルモノ×ト×カラレルモノ

 

 トリックタワーを最速で駆け抜けた俺とカストロは、底の広間でたっぷりと休息をとることができそうだ。

 ただ、入ってきたヒソカを見た時はゾワッと嫌な感じがした……。カストロを差し出したら、なんとかならないだろうか。

 

 とはいえ、カストロは静かな瞑想によって疲労を完全に抜き去り、俺はカストロの陰で無防備になるリスクを気にすることなく『携帯する蓄念池(モバイルオーラバッテリー)』の生成と充電を繰り返し、『貯念口座(オーラバンク)』のストックを増やすことができた。

 

 やがて、長い時間が過ぎ、制限時間ギリギリになって他の受験者たちが次々と降りてきた。

 ゴン、キルア、クラピカ、レオリオの四人も、トンパを交えた多数決のルートを無事に──いや、色々とあったのだろうが、結果的には突破してきたようだ。

 彼らの顔には深い疲労が刻まれていたが、その目には確かな光が宿っている。

 合格者は二十四名。トリックタワーの扉が完全に閉ざされ、俺たちは次なる試験会場である『ゼビル島』へと向かう船に乗船した。

 

「第四次試験は、皆さんにクジを引いていただきます」

 

 案内人からルール説明がなされる。

 箱の中から引いた番号の受験者が自分の『ターゲット』となる。自分の番号プレートとターゲットのプレートは三点。それ以外のプレートは一点。一週間の滞在期間中に、合計六点を集めるサバイバルゲームだ。

 俺とカストロは、到着順に従って一、二番目にクジを引いた。確認した番号は、どちらも原作であまり活躍した記憶のないモブ受験者のものだった。これなら、お互いのターゲットを狩るか、適当な三人を狩って一点ずつ集めるだけで容易にクリアできる。

 

 俺は船の壁際に寄りかかりながら、他の受験者たちがクジを引く様子を静かに観察していた。

 ゴンが箱に手を入れる。

 引いたカードのシールをめくった瞬間、ゴンの表情が微かに引き締まるのが見えた。

 

 四十四番。ヒソカの番号だ。

 俺たちがいて同じ番号とは運命というべきだろうか。そして、少し離れた場所でクジを引いたヒソカもまた、カードを見て不気味な笑みを浮かべていた。原作通りであれば、彼が引いたのはゴンを狙っていたゲレタだったはずだが。

 

 俺が介入してカストロのルートを変え、第二次試験で余計な目立ち方をしたにも関わらず、物語の中核となる因縁はまだしっかりと原作の軌道をなぞっている。

 どこか安心するような、それでいて薄気味悪いような、奇妙な感慨だった。

 

「師匠。我々はどう動きますか?」

 

 船室の隅で、カストロが低い声で尋ねてきた。 

 

「俺達の強みは、上陸順が一番と二番であることだ。真っ先に森の奥へ入り、地形を把握してよい場所に陣取る。必要に応じて狩り、その場所でやり過ごせばいい。この試験の本質は『強者同士の殺し合い』じゃない。いかに事故なく勝点を回収するか、だ」

 

 俺は冷静に分析を口にした。

 

「今の受験者の中で、正面から戦って本当に危険なのはヒソカと、あのピンがたくさん刺さった男……ギタラクルくらいだ。彼ら以外なら、君の実力と俺のサポートで負ける要素はない」

 

 カストロは静かに頷いた。彼もまた、ヒソカとギタラクルが放つ異質なオーラには気づいている。

 

「ただ、油断していいという意味ではない。毒矢、麻酔銃、スナイパーライフル、あるいは自爆覚悟の奇襲。念を持たない人間でも、環境を利用した不意打ちなら念能力者を殺せる可能性はある。俺たちは無駄な戦闘を徹底して避け、確実に勝てる盤面だけでターゲットを狩るぞ。とはいえ、ライフルくらいなら君の敵じゃないだろうが」

 

「承知しました。武闘の場ではなく、狩りの場ということですね」

 

 カストロの目は、すでに武術家からハンターのそれへと切り替わっていた。

 


 

 ゼビル島への上陸。

 一番手である俺は、案内人の合図とともに森の中へダッシュした。二分後、二番手として上陸したカストロと合流し、俺たちはすぐさま島の奥深く、見通しが悪く身を隠しやすい岩場と大樹の密集地帯へと移動した。

 ここで、俺の『空想電脳板(ファンタジータブレット)』が威力を発揮する。

 トリックタワーや飛行船の中で、俺は密かに受験者全員の顔と番号をタブレットのカメラで記録しておいた。これがあれば、わざわざ相手の胸元のプレートを確認するために接近するリスクを負わなくて済む。とはいえ、俺たちより前の番号は変わっていないようだったから原作知識でも十分だったが、トリックタワーでの合格者の変化もあり得たので念のため撮っていた。あと、できる限り指紋も集めていた。

 それでターゲット確認した。俺のターゲットが34番リュウ、カストロのターゲットは362番のケンミか。

 

「ターゲットの一人、34番の男がこの森の南東にいるはずだ。カストロ、索敵を頼む」

 

 俺の『空想電脳板(ファンタジータブレット)』の能力『個人情報頁(プライベートページ)』で指紋や体液を採集した人間の情報が分かる。指紋だけでも名前と大まかな位置情報程度なら分かる。その方向にカストロを向かわせる。

 

「承知!」

 

 俺たちは絶に近い極小の『(テン)』を維持しながら、音もなく森を移動した。

 

 見つけた。

 俺たちの索敵に引っかかったのは、もちろん俺のターゲットである34番のリュウだった。完全な絶にして、オーラを出さずに近づく。

 男は武器を手に周囲を警戒していたが、上や背後の死角に対する意識が甘かった。

 

「それじゃあ、狩りの時間だ」

 

 俺の合図とともに、大樹の枝に潜んでいたカストロが音もなく落下した。

 まるで重力を感じさせない身のこなし。着地と同時に、カストロの腕が霞むほどの速度で閃いた。

 ドスッという短く鈍い音が響く。

 悲鳴を上げる間もなく、男は白目を剥いて地面に崩れ落ちた。カストロの正確無比な手刀が、彼の頸動脈と神経をピンポイントで刈り取ったのだ。目覚めさせる可能性があるのでカストロは念を使用していない。

 純粋な武術の極致。モブ受験者ごときでは、彼の動きを視認することすらできなかっただろう。カストロの動きを見るには俺も念なしなら怪しいレベルだ。

 

「これでターゲットの三点ゲット。カストロ、俺の分なのに悪いな」

 

 俺は茂みから姿を現し、気絶した男たちの胸からプレートをもぎ取った。 

 

 さらに翌日、カストロのターゲットであった362番の拳法家ぽい男のケンミも、カストロの『(エン)』による索敵からの待ち伏せであっさりと沈めた。アニメでハンゾーにプレート奪われたうえで、トンパにも襲われていたチビの人だ。

 

 これで二人とも六点。第四次試験の合格ライン、クリアだ。

 

「随分とあっけない狩りでしたね」

 

 プレートをポケットにしまいながら、カストロが呟いた。

 

「それが最善だ。事故なく、怪我なく、無駄な消耗を避ける。これがプロの世界の定石だ」

 

 俺はタブレットの画面で経過時間と残り日数を確認した。

 まだ五日以上残っている。あとはこのまま安全な洞窟か木の上に隠れ、試験終了の船を待つだけだ。

 

 遠くの森で、微かな鳥の羽ばたきや、時折響く鈍い争いの音が聞こえてくる。ゴンがヒソカのプレートを狙うため、釣り竿の練習に励んでいるころだろうか。クラピカとレオリオの共闘も順調に進んでいるはずだ。

 原作の歯車は、俺たちの手の届かないところで確かに回っている。

 

「残る不確定要素は、ヒソカとギタラクルくらいか……」

 

 俺は少し離れた岩山を見上げながら、静かに息を吐いた。

 今はほとんど最初合流した地点から動いていない。狩るまでの拠点とはしていたが、ここよりも守りやすい場所が良いだろう。

 彼らとさえ遭遇しなければ、この試験は俺たちの完全勝利で終わる。俺たちは気配を殺し、島の外縁部に近い洞窟へと向かおうとした。

 

 その時だった。

 

 ──ゾクッ。

 背筋を、氷の刃で撫でられたような悪寒が走った。

 俺だけではない。前にいたカストロが、弾かれたように足を止め、振り返って森の深部を凝視した。

 彼の顔には、滝のような冷や汗が浮かんでいる。

 

「師匠……これは……!」

 

 血の匂いだ。

 物理的な嗅覚ではない。オーラが放つ、濃密で、ねっとりとした、まだ薄いが狂気に満ちた『血の飢え』。

 森の奥から、周囲を覆い尽くさんばかりの凶悪な殺気が膨れ上がっていた。

 

 知っている。この感覚。

 原作で、ゴンがプレートを奪う直前の、あのヒソカの姿。極度の興奮と殺戮衝動がピークに達し、周囲の生き物すべてを標的(オモチャ)として認識している、あの最も危険な状態だ。まだ、完全に我慢の限界ではないだろうが、原作でクラピカとレオリオが狙われたときよりは狂気を感じる。

 

(マズい……! あいつ、昂ぶってやがる!)

 

 俺は瞬時に判断した。

 

「カストロ、走るぞ! 全力で気配を消して、海岸線の逆方向へ──」

 

『逃げなくてもいいじゃないか♥』

 

 甘く、耳元で囁くような声が響いた。

 俺とカストロが咄嗟に戦闘態勢をとった視線の先。

 十数メートル先の木々の隙間から、派手な髪の奇術師が、ぬらりと姿を現した。

 

「ヒソカ……ッ!」

 

 カストロが低く唸り、純白の道着の下で筋肉を隆起させる。いつでも『神・虎咬拳(しん・ここうけん)』を起動できる状態だ。

 ヒソカは手に持っていた生首──ゴズのものを無造作に放り捨て、トランプを一枚、口元に当てて妖しく微笑んだ。

 

 バタフライエフェクトか。

 ゴズはギタラクルに見逃されて、ほぼ死体でヒソカにたどり着いたために興味を持たれなかった存在。僅かにズレたことでゴズが無傷か軽傷でたどり着いてしまい、彼の実力ではヒソカに中途半端に満足できない高ぶりを与えてしまったのだろう。

 

 彼の目は、ゴンを見つめていた時のそれと同じ、いや、それ以上に昏く濁った歓喜の光を放っている。カストロを見たことで狩り頃と感じたのだろう。青い果実をみる目ではなく、今にも熟れすぎそうな果実を見て我慢できないのかもしれない。

 

「キミ、二次試験の時から気になってはいたんだよねぇ♠」

 

 ヒソカは俺とカストロを舐め回すように見つめた。

 

「ボクが見逃したキミと、一緒にいるあの圧倒的なオーラの持ち主……。こんな森の中で隠れんぼなんて退屈な真似をしないで、もっと僕を楽しませてくれないかな♥」

 

 最悪だ。

 完全に目をつけられた。試験の合否など関係ない、食べ頃で純粋な殺し合いの遊戯の相手として。

 俺は冷え切った頭の中で、『過負荷(オーバークロック)』と『貯念口座(オーラバンク)』の接続を最終確認した。

 避けては通れない事故。

 ここから先は、俺の持つすべての蓄積を賭けた、生存のためのサバイバルだ。

 





主人公がフラグを立てたから来ちゃった♡
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