「ア―――ハッハッハッハッハ! 負けた負けた! アタシの完敗だッ!」
得物を放り投げ、地面に
手も足も出なかった。
負けること自体は予想通りだ。
コナ自身、勝てるとは思っていなかった。しかし攻撃の全てを完封され、挙句に一撃で気絶させられてしまうというのは
手負いで全力を出せない状態だった、なんて言い訳にもならない。魔王とコナの間には、それほどまでに戦闘力の隔たりがあったのだ。
最早、悔しい、などと思う余地もない。それこそ笑うしかなかった。
「さて、これで文句はあるまい?」
「ああ! ―――数々の御無礼、伏してお詫び申し上げる! このアタシに勝ったんだ、今からアンタが
かんらかんらと気持ち良く笑って、堂々と宣言する。
この決定に、他の
「では貴様等、全員を我が眷属へと変えさせて貰おう。話の続きはそれからだ」
魔王が、手袋に包まれた掌を前方に
すると、コナやカトゥーラ等、
モニカやアーズィヴァの時と同様の現象。
この〈洗礼〉と〈祝福〉によって、彼女達は魔王の眷属へと新生する。
やがて、
危なげなく成功。全ての狼と
当然、怪我も癒えている。装備もまた新品同様になっていた。
「へぇ、ホントに治っちまった! しかもアッチじゃあ、手足を失くした奴まで元通りになってるじゃないか! 話には聞いてたが、実際に体験してみると驚きだねぇ。どうなってんだい、こりゃあ?」
ぐるりと肩を回し、調子の好さに目を丸くする。
他の
「へへん、言った通りだろ? 魔王様はすごいんだ! ―――って、母さん! 言葉遣い! 魔王様に失礼だぞ!」
「善い。特に許す」
「ハハハ、そいつぁよかった! 硬っ苦しいのは苦手でね。ここは一つ、魔王様の寛大さに甘えさせて貰おうじゃないか」
コナが「よっこらせ」と立ち上がる。
「さて、話の続きをしておくれよ、魔王様。アタシ達を眷属にして、アンタは一体何をしようってんだい?」
「この世界から〈太陽〉を消す。その障害となる物は全て排除する。貴様等はその為の戦力だ」
「〈太陽〉を消すって……そんなことが可能なの?」
呟いたのはカトゥーラだ。
この〈太陽のない世界〉において、〈太陽〉は人間世界の象徴だ。その存在を忌み嫌わない
造られた太陽を消し、この世界に再び開けない夜を取り戻す。
それこそが全ての
魔王は、それをやると言った。
彼は泰然と構えたまま、堂々と宣言する。
「無論、可能だ。吾輩が貴様等を勝たせてやろう。世界を手に入れる為の戦争だ。人間を、天使を。
だが―――
「―――それが済めば、次は更なる戦争だ。此処ではない、新たな世界を侵略する。それが済めば次へ。それが済めば更に次へ。無限に存在する〈匣庭〉の最果てに至るまで。貴様等は、吾輩の下で永遠に戦い続けるのだ」
あまりにも途方のない話だ。
しかし嗤うことも、呆れることもできない。完全に魔王の気迫に呑まれている。彼の言葉をするりと飲み込んで、当然のものと受け入れていた。
* * *
……なんとか、上手くいった。
「お疲れ様であります。これで現存する
「ああ」
BBの言に頷く。
今この迷宮にいる魔物といえば、
はっきり言って、心許なかった。
しかし今はそこに合計で七十以上の
これで最低限、必要な戦力は手に入ったと言えるだろう。
あとは―――
「敵の動向は?」
「はい。第003号砦、第006号砦、第008号砦に動きがありました。迷宮に最も近い第005号砦に、兵を送る準備をしているようであります」
「……やはり第005号砦に集まるか。であれば、前提条件は達成されたも同然だな。こちらも作戦を実行に移すとしよう」
兵は拙速を尊ぶ。
やや不安要素が残るものの、これ以上は時間を掛けられない。
攻め込まれる前に攻める。敵の出鼻を
故に。
「―――第005号砦を、落とす」