転生者が多すぎる~虐められ引きこもりの俺はゲームの悪役に転生する! 真面目な努力(人脈)こそが真のチートでした!   作:kuroe113

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第8話 鍛錬風景(2)

「おまえさぁ、なに、なろう主人公特有のおとぼけムーブかましてるわけ」

 

「いったい何のこと、オタクじゃないからわかんな~い」

 

 

 言い訳するシャルティの目はめっちゃ泳いでいた。

 

 

「というかさ、簡単に壊れないって、シャーリーは保証してくれたのよ。

 壊れたとしても私悪くなくない!」

 

「もの壊したんだ、おまえが悪いにきまってるだろ」

 

「なら、あんたも魔法を使って強度を確認して見なさいよ」

 

 

 欧亜欧亜、今火災が起きてるのよ。

 消火活動のほうが先じゃねぇのか。

 

 

 

「皆さん、ここにいる次期党首様が、再度壁の強度の検査をしてくれるそうです」

 

 

 もう、彼女の中では俺が魔法を放つのは決定事項らしい。

 ちょっと待てよ。

 

「さあ、どうぞどうぞ」

 

 

 皆が俺を注目している。

 シャルティの勢いよい口上のせいで、いつの間にかやらなければならない雰囲気が生まれている。

 畜生!

 

 

 仕方がない、やるか

 

 

「ファイヤ・ボール」

 

 シャルティのまねをして、詠唱をして魔法を発動。

 

 太陽のように光輝を放つ炎の塊が、真っすぐと進み、壁に当たると、爆散。

 シャルティにも負けるとも劣らない、破壊が巻き散らかされ、壁はところどころ溶解し、マグマのようになっているところがあった。

 

 

 

「また壁を壊してどうしたいんだ」

 

「こら、クロード様相手に何を言うんだ」

 

「ああ、また仕事が増える」

 

「さっきまで、物を壊したことを責めていたというのに、結局自分も壊すのか」

 

 

 聞こえる、聞こえるぞ、周囲からの抗議の声が。

 でもさ、さっきまでどうなるんだろうって期待に満ちた目でこっちを見ていたよねぇ。

 ダメなら、止めろよ!

 

 

 

 

「俺も試したから間違いない。

 この壁は粗悪品だ。

 造ったものの正気を疑うほどのひどい出来だ」

 

 

 避難をごまかすために、俺はシャルティと組んだ。

 

 

 

「でしょ、そもそもの話、魔法一発で壊れる壁の方に問題があるのよ」

 

 

 その流れに、やらかし、見方がいなかったシャルティが乗っかる。

 

 

 当主候補2人が手を組んだのだ。

 立場上俺たちを追い詰めることができる者はいなくなった。

 これは勝ったな。

 ガハハッ!

 

 

 

「そんなはずがないでしょうが」

 

 

 抗議されようとも、権力でごり押す。

 貴族の権力の前では黒を白に塗り替えることなどカンタンカンタン!

 そう思っていたのに、俺でも頭が上がらない人物。

 ヴィルヘルムさんがやって来た。

 昼頃に戻ると言ってたけど、今帰ってくるなんて。

 

 

 

「それで、これは一体どういうことですかな」

 

 

 剃刀のように鋭く、ヴィルヘルムさんは本題に切り込んでくる。

 俺たちは、いかにこの壁がもろかったのかを解説したのだが……。

 

 

 

「まったく、たとえそうであろうとも、物を壊したという事実に変わりはありません。

 あなた方には一週間おやつ抜きの刑です」

 

 

 という絶望的な事実を突きつけてくる。

 お願いですから、それだけはご勘弁を……。

 

 

 

 

「とはいえだ、この壁を俺たちは壊そうとして壊したわけではない。

 そもそもの話、我がセンベルン家の鍛錬環境に問題があるのではないかな」

 

 

 なので、ここはあえて挑発。

 この屋敷の管理人はヴィルヘルムさんだ。

 お前にも今回の事件に関与していると言い張る。

 

 

 

「はぁ……。

 そんなことはあり得ません」

 

「では、その事実を今証明してみせろ」

 

 

 ならば、決闘で決めようと俺は提案。

 でも、こんな脳筋過ぎる提案にのる奴なんて……。

 

 

 

「良いでしょう」

 

 ここにいたよ!

 幸いなことにここは鍛錬上。武器は幾らでもある。

 決闘の作法として、俺たちは一礼したのちに、お互いの剣を突き合わせた。

 

 

 

 ――ダンッ!

 

 

 俺の踏み込みの音が周囲に響く。

 軽い体重を生かした上への跳躍。

 

 

「甘いですぞ、それに、踏ん張りの利かない上空に出るなど、あまりにも不用心」

 

 その奇策に、さすがはヴィルヘルムさん。

 全く動じていない。

 

 

 

 それどころか、俺が出した策の酷評までしてくる始末。

 

 

 

「だからいいんだよ、そこまでダメ出しするような策で大コケするんだからな」

 

 

 

「そんなことはあり得ません」

 

 それに対して、ヴィルヘルムさんは純粋に呆れていた。

 最低限の身のこなしで、僕の剣を避け、わき腹に一線。

 

 

 

 これが試合ならば、これは一本と言ってもいい結果だ。

 しかし、これは半実戦形式の勝負。

 

 どうにか、ダメージを軽減するために手をそえる。

 その防御を貫くために剣が思いっきり叩きつけられた。

 

 

 

「何……?」

 

 しかし、響いたのは甲高い音だった。

 

 

「なるほど、手癖が悪い」

 

「この壁、意外と頑丈じゃないか」

 

 

 

 俺は直前まで、こうぇ明日壁をいじくっていたからね。

 隠して持ち込むくらいは楽勝だ。

 

 

「ならば、壊したのはあなたの責任では」

 

「それはそれ、これはこれだよ」

 

 

 

 俺がやったことは簡単だった。

 壊した壁の破片を手にもっていた。

 そして、その石を盾として使用し、ヴィルヘルムさんの剣を防いだ。

 

 

 

「そんなバカな! たった7日で私に一本をいれるだと!」

 

 

 こうして俺は、最初の目標であるヴィルヘルムさんから一本を取ることに成功した。

 

 

 

 その事実を信じられないのだろう。

 ヴィルヘルムさんの瞳孔は左右に細かくゆれている。

 しかし、結果としては俺の勝ちだ。

 

 

 

「これで、この家の鍛錬環境に……問題がないことが証明されたな」

 

 悔しい。

 でも、壁の石が役に立ったのでそこは認めないとな。

 これが勝負に勝って、試合で負けたってやつか。

 

 

「だが、おやつ抜きの約束は「もう一回!」

 

 うん……?

 

 

 

 勝負の結果から、いったいどうしてそうなったのかを話そうとしたのだが……。

 

 

「もう一回勝負しましょう」

 

 

 あれほど威厳があったヴィルヘルムさんがなんか、威厳も何もない態度で駄々をこねだした。

 

 

 

「いやそれより」

 

「おやつ抜きなんてものはどうでもいい……。それよりもまた勝負をしましょうぞ」

 

 

 元話すべきことがあると流れを変えようとしたのだが、その流れをヴィルヘルムさんが強引に戻してくる。

 

「あの……」

 

「もう一回」

 

「その……」

 

「もう一回」

 

 

 くそう、何度話を切り返してもおんなじことしか言わねぇ。

 

 

 

「あと一回だけだぞ」

 

 その圧に押されるようにして、俺は再戦を許諾した。

 幸い、流れがこっちに来ているのだろう。普通に戦って普通に勝った。

 

 

 

「これで終わりだよな」

 

「もう一回」

 

「はぁ」

 

 

 だからこそ、約束を超過した言葉を聞いて、思わず呆然としてしまった。

 

 

「もう一回勝負をしてくれないと、おやつ抜きのままですぞ」

 

 

 ああ、分かった、この人もまた子供だぁ。

 

 

 いつの間にか、周囲にいた人たちもあんたもまた大人なのだから、約束くらい守ろうと、さっき俺たちを責めていた口で援護をしてくれた。

 

 

「仕方がありませんね」

 

 その圧力に屈したのだろう。

 最終的に、おやつ抜きの約束はなしになった。

 

 

 

 

「よしゃあああぁぁぁっ!」

 

 そしておやつ抜きが撤回された。

 まじで嬉しい。

 

 

 

「うれしそうですな」

 

「そりゃあそうだよ、大量のお菓子が手に入るんだから」

 

「いえ、普段通りなのですが……」

 

「ああ、今回は今からシャルティとの賭けで……」

 

 しまった!

 

 

 

「それはどういうことですかな」

 

 せまりくる顔面の圧力につい、計画を話してしまった。

 

 

 

 いや、あのね。

 ぬくぬくと、家で座学しかやってないシャルティと一週間分のおやつをかけて、勝負をすることになっておりまして。

 今日はシャルティを打ち負かして、お菓子を強奪するつもりだったんだよ。

 

 

 

「つまり、妹様をもかばったのは自分の利益のためだったと……」

 

「いやいや、気が向いたら、そう気が向いたら妹にも分けてあげるつもりでしたとも」

 

 

 お腹がすいてないときとか、用事があるとき限定だけど。

 

 

「一週間おやつ抜き」

 

「ざまぁ!」

 

 その醜態を見てシャル手がこちらを指さしてあざ笑ってくる。

 

 一応言っておくけどさ、おやつ抜きは君もだからね。

 

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