異世界迷宮に行く筈が~銀河英雄伝説~(中編化) 作:高島智明
直ちに皇帝ラインハルトは、ウルリッヒ・ケスラー憲兵総監へと命令した。
帝都オーディンに存在する地球教団の支部を摘発させたのである。
武装して抵抗された為、帝都防衛司令官として擲弾兵の投入を決意、制圧した。
殉教し損なった者たちに自白剤を使用した結果、惑星地球の教団本部では皇帝ラインハルトの暗殺すら検討されていたことが判明した。
尤(もっと)も実際には、同盟高等弁務官からの暴露を確認しただけだったのだが。
この結果、太陽系第3惑星地球への討伐軍派遣が御前会議にて決定された。
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俺と俺が知識を吹き込んだ少数だけが知っていたことだが、この会議には『原作』には出席していたとある人物が居なかった。
パウル・フォン・オーベルシュタインの皇帝への影響力が低下したこと、ジークフリード・キルヒアイスが生存していたことは、微妙な影響を及ぼしていた。
「元」社会秩序維持局長官ハイドリッヒ・ラングは、ゴールデンバウム王朝への忠誠を罪として罰せられることは無かったが、義眼の参謀への売り込みも空回りの結果に終わり、内国安全保障局とやらは設立され無かった。
更に、周辺に「前」フェザーン自治領主の手先が出没していた形跡を憲兵に見付けられ、引退同然の待遇が続いていた。
この為、何処かの誰かを陥れる陰謀の機会も失っていた。
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地球教団の帝都オーディンに於ける壊滅を、某男爵が彼だけの無念を持って見ているとは、俺たちだけが知っていた。
男爵は従姉に見守られて、静かに生命を燃え尽きらせた。
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皇帝は高等弁務官を呼び出していた。
「卿の情報提供に対して、何を以って報いれば好かろう」
「されば、地球教団討伐軍に依頼したいことが御座います」
討伐軍には、1つの密命が加えられた………。
……。
…教団本部は壊滅した。
自ら起こした爆発に因って、地球最大の山脈そのものの下に埋もれた。
その教団本部から持ち出された物、意外と近代的な資料室を占拠して入手した記録媒体、2枚コピーされたディスクの内の1枚が同盟側へと引き渡された。
「感謝致します。我が自由惑星同盟は民主国家です。法の発動には証拠が必要なのです」
記録媒体を解析した内容は、直ちに超光速通信に乗って、同盟首都ハイネセンへと通達された。
この証拠に基づいて、同盟側でも摘発が実行された。
惑星ハイネセンの教団支部は、武装しての抵抗の結果として警察隊の手に余るとみられるや、軍それも何故かイゼルローン要塞から派遣されていた「薔薇の騎士」が投入され制圧された。
更に、何時の間にか多数が入信していた憂国騎士団なる過激団体も摘発。
憂国騎士団の黒幕との証拠が発見され、更には地球教団から持ち出された記録媒体の解析結果に何度も名が出たことから、遂に「妖怪」ヨブ・トリューニヒトも政治生命を絶たれた。
尤(もっと)も、逮捕前に行方不明と成っていたのは流石に「妖怪」だったか。
それでも、彼の基盤としてきたものは全て失われた。
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ユリアン・ミンツは地球へ旅立つことも無く、イゼルローン要塞周辺の空域で、カーテローゼ・フォン・クロイツェルとの単座戦闘艇2機編隊の空戦訓練を繰り返していた。
見守る「ヤン・ファミリー」の人々の微笑と其の意味を、ユリアンとカリン本人たちは知らない。
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帝国領でも同盟側でも、地球教団に対する捜索と摘発は続いていた。
そして惑星フェザーン。
皇帝ラインハルトが同盟領を征服し「新領土」としてこそ、帝国本土と新領土を結ぶ新帝都としての意義も在ったが、同盟が健在で帝国と和解している以上は、帝都オーディンから大本営を移す意味は無い。
それでも、自治領としての独立は失われ、帝国軍による占領は続いていた。
その惑星フェザーンでも、憲兵隊を始めとする帝国軍に因る捜索と摘発は続いていた。
地球教団本部の資料室から持ち出された資料に因って、フェザーン自治領の「正体」が明らかに成った今、地球教団の表の顔としての策謀の拠点であった、と暴露されていた。
当然ながら、捜索の最重要目標は「前」自治領主である黒狐である。
フェザーン回廊の帝国軍と同盟軍がそれぞれの出口を担当しての封鎖は問題ないと判定されていた。
惑星フェザーンの外に逃亡された可能性は小さい。
だがしかし、黒狐は惑星フェザーンの何処に居るのか?
かつての帝国軍と同盟軍の間で戦われた戦争とは、異なった新たなる戦いが続いていた。
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