異世界迷宮に行く筈が~銀河英雄伝説~(中編化)   作:高島智明

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第3話 最高評議会

自由惑星同盟の行政に於ける最高の意思決定機関は、11人の評議員で構成される最高評議会である。

 

その日の評議会では、財政委員長ジョアン・レベロと人的資源委員長ホアン・ルイに因る、とある報告が行われた………。

 

……。

 

…宇宙艦隊司令部に所属する作戦参謀アンドリュー・フォーク准将は、統合作戦本部長シドニー・シトレ元帥に呼び出された。

意気揚々と出頭して行った本部長の執務室には、何故か2人の政治家が同席していた。

 

シトレが旧知のホアンに声を掛け、そのホアンが政見をしばしば共有するレベロを連れて来たのだ、とは察しただろうか。

むしろ、最高評議会の評議員を2人も前にして愈々(いよいよ)意気揚々としたフォークは、意気揚々と用件を尋ねた。

 

「貴官は、私的ルートで、1部の政治家に未承認の作戦を売り込んでいるそうだが」

「そうです。今こそ我が自由惑星同盟の栄光の作戦を実施する好機なのです」

「ふむ」

 

意気揚々と帝国領侵攻の作戦を喧伝するフォークだったが、シトレは冷徹とすら言える態度と口調で反論した。

「貴官は重要な要素を見落としている」

「はっ?」

「帝国は専制国家だ。

無辜の民衆を我々に対する武器とすることを躊躇(ためら)わん。

帝国領深く侵入して、焦土作戦を取られた時の対策を立ててあるのかね」

「何をおっしゃるのです。我らは解放軍です。帝国の平民は我らを歓呼の声で迎えるでしょう」

「貴官は何も分かっとらん!」

 

その後も本部長は、まるで学生に対する「校長」の様に、フォークの作戦案を否定し続けた。

もはや上官に対する態度ですらかなぐり捨てて反論していたフォークが突然、奇声を上げて崩れ落ちた。

「転換性ヒステリー症…聞かされていた通りだったな」

本部長は副官のラップ中佐に命令して、ヒステリーを起こした参謀を運び出させる手配をさせた………。

 

……。

 

…財政委員長と人的資源委員長から顛末を聞かされて、評議会メンバーはそれぞれの反応をした。

特に、サンフォード議長の態度と表情は複雑そうだった。

「こんな馬鹿げた軍人の馬鹿げた、それも非合法に提出された案で3000万を死地に送るのかね。

馬鹿げている」

ホアンとレベロは、そう報告を締めくくった。

 

それでも議長は、何処かの世論調査の結果を持ち出して、帝国への攻勢を提案しようとしたが、意外な反論をされた。

「その調査をした会社とやらは、フェザーン系列だろう。

あの強欲どもは同盟と帝国の間に戦乱が続くことを望んでいる。

彼らの儲けの為に、同盟の市民である兵士を死なせるのかね」

 

これに対し情報交通委員長が、同盟の崇高な義務とやらを高らかに主張しようとした。

だがしかし、ホアン・ルイは言い放った。

「貴女が此の席に居られるのも、帝国軍次第だ。

アスターテの様な事にもう1度成れば、貴女は委員長どころか政治生命の終わりだ」

 

彼女は、軍事の専門家に救いを求めるかの様に、出席者の1人に視線を向けた。

その相手、ヨブ・トリューニヒト国防委員長に人的資源委員長は言葉を投げつけた。

「貴方が沈黙しているのは、失敗を見込んでいるからだろう。

そして、評決の時には反対票を投じる積もりだ。

出兵して失敗すれば、サンフォード政権は終(しま)いだ。

そう成れば、反対した貴方の声望が上がり議長の席が転がり込む、その辺りを目論んでいるのでは無いかのね」

「貴方は、政治家よりも探偵に成った方が適職だったかも知れないな」

否定はしなかった。

 

ホワンは話題を変える。

「選挙のことを気にするなら、侵攻よりも捕虜交換をしてみたらどうかね。

ヤン・ウェンリー提督がイゼルローン要塞を落とした御蔭で、要塞守備軍だけでは無く、イゼルローンからこちら側の帝国軍拠点が軒並み孤立し降伏した。

交換する捕虜には困らんよ。

そして捕虜には選挙権は無いが、交換で帰ってくる我が方の帰還兵や其の家族,友人は有権者だ」

 

評議会の空気は、微妙に変わり始めた。

評決の結果、帝国領侵攻は僅差で否決され、捕虜交換が申し込まれることに成った。

俺は、統合作戦本部長の手配で同盟の市民権を得て、職も見つけた。

シビリアンコントロールの同盟軍では、国防委員会傘下の各部署にも軍人や軍属だけでは無く文官も働いている。

俺も本部長付の事務官に潜り込んだ。

そのポジションは『原作』知識を使って、あれこれと吹き込むにも都合が好かった。

無論、本部長の方でも其れを期待しただろう………。

 

……。

 

…そして『原作』通りに重要な情報がもたらされた。

皇帝が死んだ。




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