異世界迷宮に行く筈が~銀河英雄伝説~(中編化)   作:高島智明

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第8話 神々の黄昏

同盟軍と国防委員長が機密の下(もと)に勧めていたプロジェクトが公に成った時、同盟市民のみならず、帝国側でも驚愕した。

 

何と、帝国領と同盟領を連絡する回廊を長年支配してきたと言って好いイゼルローン要塞が、その回廊から移動させられたのである。

先年、帝国軍はガイエスブルク要塞を移動要塞に改造し、回廊に移動させてイゼルローン要塞に対抗させようとして「奇蹟の魔術師」にしてやられていた。

その際に置いて戻らざるを得なかったガイエスブルクを徹底的に研究し、恐らくはエンジンの実物を失敬したりして、イゼルローンを移動要塞に改造していたのだ。

 

そして、イゼルローン要塞と其処に駐在する「ヤン艦隊」そして其れを指揮する「奇蹟の魔術師」が、同盟首都ハイネセンとフェザーン回廊の中間に在るガンダルヴァ恒星系へと移動した。

この星系には、開拓途上の可住惑星ウルヴァルシーが存在しており、もしもフェザーン回廊から侵攻する敵があった場合、有力な拠点と成る可能性を有していた。

 

だがしかし、既に惑星ウルヴァルシーの衛星軌道上にイゼルローン要塞が存在し、この要地は先手を打って同盟軍が抑えたのである。

更には、隣り合うランテマリオ星系にはアレクサンドル・ビュコック司令長官が陣頭に立つ宇宙艦隊が集結し始めた。

同時に、同盟市民には発表された。

先にフェザーン自治領主からの策謀が帝国のラインハルト・フォン・ローエングラムに持ち掛けられた時、フェザーン回廊の通行権が要求された、と。

 

この発表に対して、パニックは起らなかった。

帝国領侵攻や内乱が無く、それだけ損耗の無かった同盟軍がフェザーン回廊からの侵攻に先手を打って備えていた。

片や、イゼルローン要塞が移動した今は”イゼルローン回廊”から改名されるであろう今1つの回廊も、放棄された訳では無かった。

ガイエスブルクが残され、勇将ウランフの率いる艦隊が守っていた。

帝国側ではラインハルトが「神々の黄昏」と名付ける筈だった作戦が、先手を打たれたことを知った。

 

「キルヒアイス。

最初の予定では、お前にイゼルローンに陽動作戦を仕掛けてもらって、その間にフェザーンを占領する筈だった。

その予定が狂ったな。

けれども、2つの回廊からの同時作戦は放棄しない。

3個艦隊程もガイエスブルクへ向けよう。

お前は、俺と1緒にフェザーン回廊から進撃する。

俺たちで、宇宙を手に入れるんだ」

 

尚も、ラインハルトは何かに突き動かされ、生き急いでいた………。

 

……。

 

…遂に「神々の黄昏」作戦は発動された。

 

フェザーン回廊への第1陣と第2陣と成るウォルフガング・ミッターマイヤーとオスカー・フォン・ロイエンタールの「帝国軍の双璧」の艦隊そして、もう1つの回廊へ向かう3個艦隊、陽動作戦の必要が無く成った今は、堂々の同時進発だった。

 

続いて、帝国軍最高司令官であるローエングラム元帥直率の第3陣と其の後衛でもあるジークフリード・キルヒアイスの第4陣そして他の艦隊も続いて飛び立っていった。

これに対してフェザーン自治領では…

 

神速を誇る「疾風」と其の相棒の侵攻は電撃的だった。

そうで無くとも、商業国家であり帝国に比べれば小国のフェザーン自治領に抵抗出来る武力など在る筈は無い。

ラインハルトとキルヒアイスの第3、4陣が到着した時、惑星フェザーンの地表は「帝国軍の双璧」に制圧されていた。

 

だがしかし、完全な奇襲で無かった為に逃亡の余裕はあった様だった。

重要な捕獲目標の筈だった自治領主は、息子や嫁を含めた側近たちと共に姿を消していた。

 

また同盟弁務官の1行は、赴任したての若い駐在武官の采配で、同盟領に逃げ込んでいた………。

 

……。

 

…惑星フェザーンの地表に降り立ったラインハルトは「我が友」とともに航路局でのひと時を過ごした。

コンピューターの画面に同盟領が映し出される。

「そうだ。これが欲しかったのだ」

そして「我が友」を振り返る。

「行こうか、キルヒアイス。俺とお前の宇宙を手に入れる為に」

フェザーン交易商人から「同盟側の灯台」と命名された星系が存在する。

その名から想像される通り、フェザーン回廊の同盟側出入り口に位置している。

当然「帝国側の灯台」星系も存在する。

 

その「同盟側の灯台」星系に、イゼルローン要塞がガンダルヴァ星系に移動させらるのと前後して配置されていた無人監視衛星が沈黙した。

その意味は1つしか無い。

同盟の全軍が警戒態勢に入った。

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