魔法少女(???)マジカル葉子 作:404 Not Found Error
それではゆっくり楽しんでいってね!!
米国による支配
中国による戦争
それに連なる飢饉と疫病……
WW3の終戦後、世界は死に包まれている。
移民に塗れた日本は空中分解し、
北九州には犯罪国家が成立した。
その名は
新福岡
暴力が寡占されたこの街では雇われたならずものが、日々代理戦争を繰り返していた。
――――――――――――――――――――
「まずいわね、遅れるわ。」
私の名前は枕木葉子、私立烝刻学園に通うごく普通の高校生、今日は銃撃戦のせいで乗っていたSUVがグリッドロックされて、学校に遅刻しかかっているの、
「篠崎!キャリバー.50で、《精肉》してやりなさい!」
邪魔する者には容赦するな古事記にもジッサイそう書いている……
「お嬢様、RWSは調整が完了していませんので、運転席からはM2は撃てません。」
なッなんですてェーー!?
「私に撃てということかしら?」
「お手数をおかけします。」
仕方ないと思いながら天井を開けて、M2の槓桿を引き、セーフティを解除すると、通りで宜しくやってるギャングにスタローンよろしく、50口径を叩き込む。
「朝の硝煙は格別ですね、」
メイドが何か言った気がしたがブローニングの銃声がうるさ過ぎて聞こえない。ベルトが流れ、弾が一発当たるだけでギャングはプルドポークみたいにバラバラと砕けていく、
キャリバー50は癖が強い。本体も付属品も槓桿も重くて、分結の時はバネが固くて、親指が痛くなる。だけどそれを補って余りある精度と破壊力一家に一台M2が必要だと私は断言したい。
やがてギャングが出来たての生ゴミになると車はそれを更に轢き潰して、道路状況は悪化し、交通状況は改善したのだった。
「本当に街路上での撃ち合いはやめていただきたいですね、車の清掃が大変です。」
「そうよね、この前なんて血塗れの救急車見かけたし。保険会社に自動車清掃の金額を請求できれば良いのだけど、」
「そういえば保険会社は血痕をどう損害額に換算するかで毎日修羅場だとか」
「あと、保険の請求費用をケチる言い訳を考えるので忙しいものね。」
―――――――――――――――
そうこうしてる内に学校近くの駐車場に停車すると、降りてから校門をくぐり急ぎ1限目に間に合う為に私は、教室に滑り込んだが、
「止まれ、気を付け、葉子2分の遅刻だぞ何があった?」
葉子の担任だ。元自である。
「乱射事件です。」
葉子は即答した。
「NFPDの証明書は」
新福岡では銃撃戦で公共交通機関に遅れが出るなんて日常茶飯事だ。なので法執行機関のNFPDは乱射事件に巻き込まれた市民の為に遅延証明を発行しているのだ。
「ありません」
証明書を取れば15分取らなければ2分、葉子は後者を選んだのだ。
「何故?」
彼は低く唸るような声を出す。
「モガディシュよろしく弾雨の中を突っ切り最短で来ようとしたからですよ。」
威圧感が薄れる。
「まあいい。その度胸と根性に免じて許してやる。席に着け」
「はい」
葉子が席に着くとホームルームが始まった。
「おはよう。さて、通達事項だが、、、」
―――――――――――――――
2042年-/-新福岡港
灯りは皆無、僅かな光は壁に立てかけられた工事用ランタンの陰湿な橙光だけだ。蛍光灯の白は、ここの腥い空気には馴染まない。
港湾の倉庫、その錆びれた鉄扉がゆっくりと軋んで開くと、赤潮に冒された不潔な夜風が湿気と金属の臭いを引き連れてじっとりと流れ込む。
「遅かったじゃあないか?」
しゃがれた声をかけたのは、油染みたベージュ色の作業服を着た中年――オリバー・ドルムフッド。元アメリカ海軍大尉、今は“組織”の物流顧問だ。古びて、傷付いた黒いスペードが刻印されたZIPPO、それの小気味良い金属音が鳴ると一本のセブンスターから煙が立った。
入ってきたのは、若い軍人崩れの二人組、うち一人の兵卒が興奮した面持ちで言った。
「聞きましたよ。中身……マジで“ジャブロー”のブツらしいじゃないですか!?」
オリバーは返事をしなかった。ただ紫煙を吐き出す。一連の動きは「詮索するな」という無言の警告だ。
暗黒街の住人の最大の鉄則、⦅沈黙は金⦆これに尽きる。
中央に置かれたジュラルミンの保管ケース。黒色のパーカーライズ塗装が施され側面には白色で「特殊資材A-07」「熱遮断保持:120時間」とだけある。だが、規格は西から東まで採用されていない六角形の独自形状。運搬法の正規マニュアルすら付属しない厄介な代物だ。
「この箱は3日後、デルタ便でアラスカ経由、最終目的地はチベットの“Falken Schanzen⦅鷹の巣⦆”にある前哨基地、地図に載ってねぇ。勿論、衛星写真もノイズだ。」
「“アーネンエルベ”ですか……」
「黙れ。」
オリバーが睨む。若者は口を噤むと、もう一人が保管ケースの下部を引き抜いて、簡易冷媒タンクを交換する。作業は重い沈黙の中で進み、それによって空気が重く歪曲している。
その圧の中、レンガの壁際で静かに監視をしている影がある。
時代観などあったモノではない或いは、異物のような黒い軍服、黒い革靴、スキンフェードの男。だが、ただのボディガードではあり得ないだろう。この男の眼線だけが冷酷で、獣の様に険しい。
「あそこに居る……黒服の名前は?」
「奴か? “ヴァルドラク・マイヤー”だよ。アイヒステルフの傘下じゃねえ、もっと……深いとこに属してる。」
"一流の士は口を閉ざす"ヴァルドラクはその手本だ。誰が手を抜き、虚偽を曰うか?観るだけで即座に暴く、そういう類の人間だ。ここにいる全員、彼の視線を恐れていた。
ランタンの明かりが揺れる。照らされたタンクの接合部に、うっすらと忌み字が浮かんだ。
黒地に銀の重ね稲妻**武装親衛隊(Waffen-SS)** の刻印だった。
その時、誰かが小さく息を呑む。
オリバーは煙草を踏み消すと、ぽつりと呟いた。
「こんなモンで世界征服とはなあ」
その言葉には、誇張でも増して、皮肉でもない。走馬燈に似たある種の確信、恐怖――そして諦めの匂いが混じっていた。
―――――――――――――――
2042年6月30日私立烝刻学園
昼下がりの教室、管理者不在の教室は黒黴の生えた培地に似ている。所々にコロニーがあり無秩序でいて汚れている。
葉子は教室の後端の窓際の席で孤独に杉わっぱの弁当箱を開き、輝くステンレスの食器を使って孤独な昼食を摂る。
彼女の周囲には机と椅子しかなく、敢えて声を掛ける人は誰も居らず。沈黙が領域を支配していた。葉子のスマホに通知が来る。
差出人は――ミュラー、非合法ビジネスに溢れた新福岡、彼はその中でも取り分け"荒事"専門として名高いの派遣業者だ。
依頼の内容は物品の"回収"及び、"受け渡し"
―――
2042年7月1日
深夜、水銀灯で照らされた自動車道を黒塗りのセダンが走っている。
ラジオから流れるは1920年代のブルース、軍人崩れの2人が貨物を輸送していた。港湾でケースを受け取った彼等は新福岡空港まで物資を運ぶ予定だ。軽率な一兵卒が運転席の相方に話しかける。
「先輩、いざって時の武装が必要なのは分かりますよ。でも、なんでAR-10系列なんですか?.308なんて場違いだ。」
「税関の問題らしい。コッチは狩猟用として通り易いんだと、こちとら後ろのブツに使う分の"茶封筒"しかないんだぜ?」
助手席の男は目も合わせずにラッキーストライクを吹かせながら答えた。
「ホントにおかしな街っすね。サービスライフルは職質に合うのに、バトルライフルはフルオートでも狩猟用で携帯可能と来た。その内害獣駆除にマシンガンまで持ち出しますよ。」
「ハッ、害獣駆除にマシンガン?精肉機の間違いだろ?.308を使える程度の地主なんざ、この島に居るわけないだろうさ」
「ホームディフェンスで持つ奴は居ますかねえ?治安が悪そうですし、需要は高いでしょう?」
「ホームディフェンスねぇ…そりゃあホームオフェンシブだろ。.308を使った解体工事だ。」
「ホーム"オフェンシブ"ですか、、、言えてる。煉瓦の裏からでも敵は粉微じ……」
粉微塵と言いかけた須臾も須臾、毎分1200発の.308徹甲曳光弾が雨霰と降り注いだ。
セダンのループとフロントガラス、ボンネット、鉄製の部品は農場のビニールシート宜しく穴だらけだ。
運転席では血脂で汚れた胸の悪くなる布切れが、杜撰に挽かれた淀んだ肉を収納していた。
線路が敷かれた15m上の高架橋から黒い影が落下する。ベルトリンクと薬莢をばら撒きながら、スホーイの失速機動のように空中で回転し、イラン製のMG3を車目掛けて掃射する。
白煙を上げる穴だらけの、歪んだ鋼板に降り立つ黒い影――新福岡最強格の傭兵
――枕木 葉子だ。
「やっぱり、コスパがいいわよね。イラン製は」
銃弾で崩れかけたフロントガラスを銃床で砕いて入り、ジュラルミンケースと共に中にあったAR-10を強奪する。徹甲弾に嬲られたスクラップ同然のエンジンが黒煙を吐き始めと、間も無く彼女は後部のドアを開けた。
AR-10を踏み台にして黒い突起の筵、その上を滑走する。
時速80キロで自動車道を逆走するAR-10、その鉄屑が赤い軌跡となって夜闇を切り裂くのだ。
刹那、バイクと相対する。葉子はライダーメットにジュラルミンケースを叩き、ライダーを飛ばすとオートバイを略奪して、ハイウェイの暗闇に消えていった。
「ミュラー、パッケージは奪取した。目的地に向かう。」
「OK仕事が早くて助かる。68号沿いの沖嶋駅に迎え、」
―――――――――――――――
2042年7月1日新福岡沖嶋駅、
元は60年代からあるショッピングモールだった。大戦中、北九州に人民解放軍が上陸すると、巡航ミサイルで吹き飛んだ上層の残骸その地下駐車場は司令部になった。
2年にも及ぶ陰鬱な鼠の戦争を制した施設科の鬼工兵、沖嶋2佐にちなみ一帯は"沖嶋"と呼ばれてる。忌地として知られ、工事は遅々として進まず。やがて幽霊駅となったのだ。
日本の七月は焼き付く程熱く、湿気ていて耐えられないので、社畜でさえ水を求める。
ただ幽霊駅は違う。壊れた時計が常に時刻を欺瞞する様に冷涼で、木の葉の上で蠢く蟲に似た気色の悪い湿気だけが周囲を満たしている。
オレンジ色の仄暗い照明で照らされた構内、蛞蝓が這う薄汚いコンクリートは、カラーギャングのタギングに覆われていた。
「1人か?」
「ええ、もう少しマシな受け渡し場所にしてくれても良かったのだけど?」
「御託は良い。ブツを渡せ。」
男の名は佐久間 秀雄 顔の火傷跡は、彼が只者ではない事を克明に物語っている。
「それと、今回の案件は緘口を徹底しなければならないんだ。」
そこら中の影という影の中から殺気が立ち込める。
「それならオタクらで勝手にやれば良いのに、そこまでしてスケープゴートが欲しかったワケ?」
葉子がMG3のスリングを動かす。
「人事資料は読んだ。お前みたいな殺人鬼は勝手に暴れてくれそうで都合が良いからな。」
男が拳を宙に上げて握ると何丁もの銃から一斉に弾が葉子目掛けて打ち出される。
「裏切った挙句無様に"負ける"なんて、醜態を晒すのが趣味なのかしら?」
葉子はジュラルミンケースを盾にし、照星の動きが間に合わない程の速さで遮蔽に転身すると構内の柱の影から即座に襲撃者に向けてMG3を点射する。
「一つ、二つ……二十六か、鴨撃ちだわ。」
新福岡の資産家やプレッパーは山に別荘を建てる。厳畯な山岳地帯に邸を構える枕木家はその典型だ。獣に近い五感を持つ葉子は、特に夜間の狩猟を嗜む優れた狩人でもある。
彼女はこの構内に於いても、常軌を逸したスペックの視床と感覚野を遺憾無く駆使した。
銃口炎で彼我の位置関係を掴み、曳光弾の軌道を読んで校正する。野戦、取り分け機銃手の定石だ。
彼女が掩蔽越しに展開する応射は無情で、残忍なまでに精密だった。
――"圧倒的な射速による制圧"――
MG3もとい42は毎秒20発の射速によって、機銃よりも寧ろ散弾銃に近づいた。MG3の.308winは2Km飛んでも人を殺せる。増して閉所で熟練者が徹甲弾を用いれば……小隊如き鎧袖一触に崩れ去る。
だが、1分後に状況は変化した。銃身は煉獄の様相を呈し、機関銃の精度が致命的に悪化し始めたのだった。
「まずいわね、、、」
機銃は往々にして、分隊ないし小隊火力の中核であり、歩兵を支援する為に連射を前提とした運用をする。
しかし銃身も鋼材、冷却をしなければ歪み、やがて精度に大きな影を落とす。故に凡ゆる機銃は銃身の交換が不可欠なのだ。
特に射速《RPM》の速いMG42は北フランスから東ヨーロッパまでのヴェアマハトの将兵達を悩ませた。火力の断絶は敵の転身を意味する…即ち、近接戦の始まりだ。
「前進!」
スーツを着た3名の要員達が柱に近づき、影にいる葉子を射殺しようと迫る。が、彼らは酷い見当違いをしていた。
彼らは狩人ではない。狩場に飛び込んだ鹿なのだから、
葉子は重心を前にして倒れ込むように彼我の距離を詰めた。古流の歩法、"縮地"である。
「無用心ね」
CQBではあり得ない距離にまで、一気に肉薄すると一番近い相手の脳漿をAPXで吹き飛ばして射殺した。
その左で、引き金を引こうとした要員の20式4型*1のサプレッサに、スリングを付けた冷却ケースを叩きつける。
※1 2029年特戦群、特別警備隊、SAT向けに開発された.300AAC仕様の20式、インテグラルサプレッサを装備している。
銃口の軌道を逸れると、最右翼の3人目の横っ腹を.300AACが破いて抉った。
葉子はすかさず20式を持った要員の両脚を撃ち抜き、胸に2発、額に1発の9mm弾を叩き込んだ。
葉子は素早く伏せて、死人に無用となった20式の槓杆を引き、薬室を確認する。
その要員の遺体からマグブルの弾倉を抜くと、鹵獲した20式の弾倉を交換した。一連の動作は神速であり、彼女は隙を最小限にして逆襲の準備を整える。
人間は充分な訓練を受ければ、機械以上に洗練された動きができる。その点葉子の挙動は被造物たる機械、ひいては熟達の強者を質と速さにおいて、怪奇的なまでに凌駕していた。
骸を遮蔽にしてローニーニングをしながら、コスタ撃ちを始める。
艶消しされた黒い被筒をCクライピングし片端から目に付く戦闘員を殺戮して、敵を視界から駆逐し尽くした。
―――――――――――――――
残敵の数は知れずそれ故に、弾薬が何発必要か分からない。彼女は次の戦闘の為にマシな死体を漁っていた。
「あっ、そうだ!」
血塗れの屍を漁ってる内に葉子はハッと気が付いた。自分が最強のカードを背負ってる事に――
弾痕と血飛沫によって紛争地帯の壁のようになったジュラルミンケースを開けると中に入っていたのは…………
―――――――――――――――
スーツを着た6人が死のワルツから振り落とされた。死神の鎌を避けるように先頭を走る佐久間は、呼吸を荒くして汗だくになりながら地図を読む。不意打ちに適した地点まで慄いて撤退していた。
10メーター先のT字路を、左に曲がれば最適な地点がある。取るに足らない距離、だが彼の眼前の邪悪な影がそれを永遠に思える程に引き伸ばした。
「素直に死ねばまだマシだったのに、お仲間は無能な上司を憎むでしょうね。"俺達は犬死にだ"って」
「銃を下せ!」
「言うに事欠いてそれかしら?……良い趣味してるわよね。こんな玩具で遊ぶ為に、いい大人が私に弓引くなんて不愉快で腑がネジ切れそう。」
佐久間の眼前5メートルに立っていたのは、
ファンシーな色のステッキに、マッドブラックの20式を突きつけている葉子だ。
「武装解除して失せなさい。この件はミュラーに報告するから、」
「武装解除だ。急げ」
佐久間は青筋を立てながら渋々、要員に命令した。全員が銃を床に置くと、瞬間くぐもった銃声と共に2人の要員の頭が粉々に吹き飛ぶ。
古今東西往々の護身術、それら前提即ち、脅威は須く非紳士なのだ。此方がない丸腰でも、手を出さない理由になり得ない。
だが、佐久間も黙って鏖殺される類いの人間ではなかった。紙一重で後ろに飛ぶと、SIG P230を抜き、アイソレスタンスで数発発砲する。
何発かのくぐもった銃声と.320ACPの甲高い銃声の波が交錯して響き渡った。ガタリと重いものが落ちる音がする。葉子は被弾し致命傷を負ったのだ。
「こういうことも……あ…」
脇腹を撃ち抜かれた葉子の微かな遺言を数十発の弾薬が圧殺した。
―――――――――――――――
暗転した視界が明るくなる。私の視界の全てが曳光緑でうっすらと輝いている。
そよ風が吹く湖畔に似ていて、観てるだけで何処か癒される静寂を体現したような場所だった。此処が死後の世界ならみんな死ねば良いと思う。
「いえ、違いますよ。私の生成した空間ですので、安心して下さいまし。」
気付いたら歳上のお姉さんが私の目の前に居た。服は矢鱈とフリルの付いたロリータで髪色はアイボリー、頭にショッキングピンクのリボンを付けている。
ポケットティッシュみたいな言葉で言うと、とても頭の悪い格好だ。まともに見てるとシナプスまでフリルになりそう。
「ちょっと!その物言いは失礼ではありませんか?」
「まだ一言も喋ってないわよ。で、要件は?」
「まあ素晴らしい順応力!私の寄生先もとい、ご主人様に相応しいですね。」
「あなたって、絶対性悪よね。まあ私を殺した対価を剥ぎ取れるのなら、悪魔にだって手を借りるケド、」
「では交渉成立ですね。」
私は知っている。こういう契約をしたら、後戻りはできない。…………だけど、一線なんて何回も越えてきた。今更躊躇することはない。
「待ちなさい。ワタシ、まだ"交渉が成立はした"とは一言も言ってないわ。あくまで"手を借りる"と言っただけ、交渉は奴らに地獄を見せたあと、それで良ければ。」
「おやおや、まあまあ、随分と殊勝なご主人様ですねぇ…良いでしょう!アナタを甦らせます。思う存分復讐しちゃって下さいまし!」
「言われなくても」
―――――――――――――――――――――
佐久間達が目にしたのは異様な光景だった。ピンク色のステッキが赤黒く染まり、葉子の遺体から流れる死血に溶け出したのだ。その滅裂な光景と最早目標物の回収はできないという現実で彼の頭はパンク寸前だった。
「損害報告」
そういう時には何かしらのルーティンを無理矢理実行する事で、心の平静を保つ事もできる。何も便利なライフハックだろうか?
「総員26損害24です。」
余りにも異様な現象に、空気が圧殺しに掛かかってくる。そんな錯覚を思わせる重い沈黙が3人を締め上げる。
「報告内容を練る。少し……1人にしてくれ」
佐久間は頭を抱えて来た道を少し戻り、現実に堪え切れず、胃を縊られて嘔吐した。処分しようとした傭兵が逆に部下の大半を殺害し、自身は碌に物品も回収できなかったのだから面目丸潰れだ。
…………ふと後ろからサプレッサの銃声と共に……悲鳴が聞こえた気がした。その後…ずしゃりと幻肢痛を覚えるような鈍い音が聴こえてくる……。
カツ____カツ______カツ_____背筋の凍る革靴の足音が自分をじっとりと寄ってきて聴き覚えのある声が薄暗い通路に響く。
「さっきはどうも、クライアントさん」
佐久間は新福岡の傭兵を舐めていたし、そのハズレ値を甘く見過ぎていた。斃れてなお立ち上がり、地獄から出た猟犬の如く、執念深く復讐をしようとするのだから…
「うあ、う、やめろ、来るな!」
彼の目に映るそれは、冒涜的で忌々しい風貌をしている。水銀が紙の上を蠢き集まるように、コンクリートの通路を血潮が這っている。それは弾丸で抉られた、見るに堪えない彼女の臓腑に混じって絶えず蠕いていて、目眩を催すほどの鉄臭さが鼻腔を刺す。
「うあー、来るな!化け物ぉぉー!」
腰を抜かした彼は涙を流して失禁し、ナイフを抜くが、右手を踏みつけられて腕が粉々に折れた。余りの痛みにナイフが床に落ちて落ちて無機質な音が響く
葉子はそれを拾うと、切先で佐久間の鼻筋を頬と唇撫でて、顔を傷付ける。
「楽に死ねると思わないことね。」
その目は宛ら、磨き抜かれた2枚の硬貨だ。唯一の違いは反射せず、一人でに暗闇の中でも煌々と青白く輝く事だけだった。
―――――――――――――――
止血帯を四肢に巻いた上で、左手と左右の踝を踏みつけて挫滅させると、脹脛の筋繊維に沿ってナイフを滑らせる。
「私は優しいから、尋問次第で処遇を考えてもいいわ。貴方の所属と階級は?」
「連合政府………内務省、中央保安…委員会《CSC》*3所属、佐久間一尉だ。」
*3大戦後、戦国時代になった日本において、旧第三師団が京都を名目上の首都として本州を制圧、独立した諸邦を内包した連合政府を建国した。内務省 中央保安委員会は公安委員会の流れを汲む秘密警察である。略してCSC
「CSCが何であんな玩具を?上層部に女装癖がある訳ではないでしょうに、」
「詳しいことは…知らない。…だが……コレは戦術…核兵器並みの危険物だと…聞いている。」
「まあ、及第点かしら、契約違反として貴方をミュラーに回収させるわ。」
「おい!待て、嘘だ!辞めろ…。」
「楽に死ねるとは思わない事ね。」
葉子は佐久間を気絶させた。
傭兵稼業は信頼を重要とする点で、貨幣経済と等しい。依頼人が仲介業者に報酬を払い。傭兵はそれを遂行する。⦅裏切り者には罰を⦆
それは普遍の鉄則なのだ。
―――――――――――――――
構内の外は夜明け前で非常に暗い。だが、東側から青い光が差しつつあった。
葉子は佐久間を錆びれたゴミ捨て場に降しまい、この任務を仲介したミュラーに電話で事の顛末と佐久間の位置を説明した。
「とんだ依頼人だ。まあいい、回収地点については確認した。CSCには借りができたし、お前には近々埋め合わせをしてやる。」
「そうしてちょうだい。ホント最悪な気分よ。」
「ああ、災難だったな。じゃあ次の機会に、」
私の任務は終了した。撃たれ損の草臥れ儲けという形で、後は次の契約と埋め合わせ次第、
「終わったわよ。契約の確認をしようじゃない。ステッキの妖精さん?」
真横に飛んでいるステッキに話しかける。
「意外と理性的なんですねぇ。分かりました。話は長くなりますよ!」
「精々眠らないように頑張るわ。」
2042年04:18 世が明けて、街にオレンジ色の光が差す。新たな1日が始まった。
次回に続く。
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次回予告⭐︎
「ご主人様、、、色々謎が多くて、ツッコミ所が分からないのですが、、、この列島《日本》どうなってるんですか?新福岡とか連合政府とか、」
「ユダ、良い質問ね!!話は、台湾有事に端を発する第二次大東亜戦争こと、第三次世界大戦に遡るわ。」
「ああ、2022年の、、、環太平洋の都市群に対するNBC兵器の使用とか、チベットがどさくさに紛れて独立したとか、ソ連軍が新疆内蒙古満州北部に進駐したとか、色々ありましたね!!」
「そそ、んでマラッカ海峡が海上封鎖された事で物流が停止して世界的な飢饉が発生した。日本版カブラの冬が起こったわけ。」
「ユダちゃん知ってます!!飢餓→革命ですよね!?」
「イグザクトリー!日本政府は食糧の調達が出来ない中で戦時国債の完済を優先して、戦後に日本人を10万人単位で発生させた。
東京の連中に嫌気が差した関西勢《第三師団》は天皇家を後ろ盾として、蜂起!!」
「戦国時代が始まったと、」
「今は関西勢中心の独裁国家本州連合政府、
特別軍事作戦《クーデター》以降旧北部方面隊が実効支配する沢渡軍政区、
難民の奴隷労働と、新自由主義によって経済発展を遂げて、今や環太平洋最大の貿易ハブと化した我らが新福岡州、
鹵獲した艦隊による圧倒的な海軍力で旧鹿児島県、沖縄諸島、台湾、東シナ海を手中に納めた海賊国家、西部方面作戦地域……略して薩摩」
「碌でもないですね!!因みに何処が一番つよいんですか?」
「核戦力は新福岡、空軍力は沢渡、
海軍力は薩摩、人口は本州ね」
「わりとバランスが整ってる感じですか!!」
「さて、お前らは何処の軍に入りたい?」
「ユダちゃんは自殺します♡」
次回
爆誕!!
皆さんのコメント次第で次回予告の内容が変わるかも、、、