上位種が存在する世界にて。   作:あさらこ

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ぼくは、お姫様に会わなくちゃいけないんだ。


プロローグ

この世界には、ヒトよりも上の存在ーーー『上位種』がいる。それは強さも、存在の格も、種類も、形も、全てがバラバラだ。

でも一つだけ、わかっていることがある。

…それは、あの化け物たちの前で人はあまりにも無力だということだ。

 

「早く!急いで!アレがこちらに到達するまで残りわずかです!」

 

「おい、アンタ!あまり外に出るな!アレの影響をもろに受けるぞ、死にてえのか!?」

 

ーーーその日、森人の国は突如現れた災害級の『上位種』に一夜と保たず滅ぼされた。

森人の国は、はるか昔に封印されたその『上位種』の封印を監視し、封印を保つ役目を持った"守り人"の役目を負っていたが、突如、何の前触れもなく封印が解けた。

…アレはヒトの魂を好み、そして大食漢のバケモノだった。瞬く間に国にいた森人の魂を食らい尽くした。

 

しかし。森人は未だ滅びてはいない。なぜなら、王女が一人逃げ延びていたから。

王女は命からがら国の外の砂漠に出た。森人の国は、はるか昔にあの『上位種』が暴れた影響で国の外が砂漠に囲まれているという特殊な土地になってしまっている。そんな過酷な環境の中、砂漠に出た王女は運よく近くにいた只人族の商人の駆る竜車に乗ることができた。そうして『上位種』を滅ぼすことのできる『上位種狩り』が多く所属する"皇国"に現状を伝えるため、商人に事情を話し、一路皇国に向かっていた。

 

…だが、まだ絶望は終わっていなかった。

あの『上位種』は随分と森人の魂がお気に召したのだろう。森人の魂を食らい尽くした後、森人の国にいた最後の一人である王女が逃げたことを感知しそのまま追いかけてきたのだ。久方ぶりの食事、その最後の一口を食するために。

 

「…くっ!あれだけ離れていたのにもうこんなに近くまで…!(このままでは乗せてくれた只人の方にまで被害が及んでしまう…!かくなる上は、この身をアレに捧げるしか…!)」

 

「だから、竜車の中に入ってろっつってんだろ!!!!」

 

「は、はいっ!?」

 

密かに覚悟を決めようとしていた王女を、商人が怒鳴りつけた。

次いで、焦っているのかそのまま荒々しい口調で驚きながら返事をした王女に話す。

 

「アンタ今自分を犠牲に俺を逃がそう、とか思っただろ!いいか、俺はなあ!

ーーー手前ェの命惜しさに誰かのことを犠牲にするなんてダセえ真似はゴメンなんだよ!!!

分かったらふざけたこと考えてねぇで竜車の中に入れ!竜に集中できねえだろうが!」

 

「…!はい!すみません!」

 

王女は男の言葉に何か感じ入るものがあったのか、頷いて竜車の中に入る。

男は王女が竜車の中に入ったことを確認すると、手綱を巧みに操作して竜に指示をする。すると竜は一気に速度を上げる。どうやら本当に邪魔していたらしいと悟った王女は自分の行動を恥じていた。

ぐんぐんと速度を上げる竜車が、『上位種』を引き離していく。

 

「(これなら皇国まで逃げられる…!)」

 

そう王女が希望を抱きかけたが、彼女は最も基本的なことを忘れていた。

ーーーそう、『上位種』はヒトの想像なぞ軽く超えることを。

 

ドッッッガン!!!

 

「な、ん!?」

 

突如、『上位種』が速度を変えないままこちらに向かって不可視の力の塊を口から放ってきた。

それは大きな岩ほどの大きさがあるようで、周囲の空間が揺らいでいた。そして地面に着弾した後は爆発するようで、そこまで近くに着弾していないはずにもかかわらず、衝撃にあおられて竜が揺らぐほどだった。

 

「おいおいおい、なんだそりゃ!あんなもん当たったら全部木っ端みじんになるぞ!」

 

「ええ、ですがあれならまだーーーえ?」

 

まだ逃げられる、そう言おうとした王女の視界にはあの不可視の塊の正体が映っていた。

たすけて、いやだ、なんでこんな目に。

あれは、魂だ。アレに食われた同胞の、今も苦しんでいる、魂なのだ。

そんな魂たちが、こちらに手を伸ばし、助けを求めてくる。

 

「………っ!!!!!!」

 

ギリィ!!!と歯を噛みしめる。どれだけ冒涜すれば気が済むのだ、アレは。

体が怒りで熱くなるのを感じる。唇も知らずのうちに噛んでいたのか血が出てしまっている。

だが、アレにはどうあがいても敵わないことは、身をもって知っていた。

 

「ごめんなさい、みんな…!!!」

 

王女は、ただ魂が『上位種』に悪用されるのを見ていることしかできなかった。

そして、魂を体の外に出して軽くなってしまったのか、アレが速度を上げ、近づいてくる。

そして、あれだけ砂漠の砂嵐によって隠れていた体の全貌が見えてきた。

 

其は、(ワニ)の頭を持ち、上半身はライオン、下半身はカバの怪物。

此処とは違う世界では、エジプト神話において死者を食らう幻獣として描かれたもの。

その名をーーー

 

「魂を食らうものーーーアメミット…」

 

『上位種』ーーーアメミットはついに視界に王女を捉えた。

そのまま口を大きく開け、竜車ごと食らおうとしている。

 

「ここまで、なのですか…!?」

 

そう言って王女が身をこわばらせたその刹那。

 

ゴッッッッ!!!

 

アメミットと竜車の間に大きな結晶が横切った。

 

アメミットは驚いたのか急停止し、反対に竜車はここぞとばかりに速度をさらに上げた。

 

「あれは…!?」

 

「さあな!だがこれはチャンスだ、さっさとヤツが来る前に距離を離すぞ!どこかにしっかり掴まっとけよ!」

 

「は、はい!……!?」

 

速度を上げる竜車の中、王女は結晶が来た方向を見た。

するとそこには、見間違えかもしれないがーーー人影のようなものが見えた気がした。

だが、その姿は瞬く間に砂嵐に消え、幻のように消えてしまった。

王女も「(見間違え、かしら…?)」と思いながら意識を前へ…皇国へと向ける。

全てはアメミットの再来を伝えるために。王女たちは一路、皇国へと急ぐのだった。

 

ーーー

「ありゃ、お姫様こっちを見た気がしたんだけど、ぼくだって気が付かなかったのかなぁ?

…はいはい、わかってるってば。先にこいつをどうにかしなきゃいけないんだよね」

 

大きな結晶に遮られたアメミットの前に、ある人物が立つ。

その人物は、まだ小さな少年に見えた。

アメミットは、こんな矮小な存在が自分を止めたのかと憤る。

そして、怒りのままその存在を食らおうと大きな口を開けて噛みつこうとした。

 

ガキィィィン!!!

 

また大きな結晶に阻まれたが、これは結晶ではない。

これはーーー氷だ。

しかし妙だ。これほどまでに熱い砂漠の中で、なぜ氷がこの大きさで瞬時に生み出せる…?

アメミットはハッと気が付いた。この矮小な存在が首から下げている飾りのようなもの、

あれはーーー『上位種』の核だ。それも、こんな溶けることのない氷を砂漠で生み出すほどに強い、自分よりも上位の。

 

アメミットは分が悪いと判断し、踵を返して逃げようとした。

だが、遅かった。

進行方向に氷を出現され、逃げ道が塞がれてしまった。

 

「逃げちゃだめだよ~。君はこれから、ぼくと一緒に氷漬けになってもらうんだから」

 

そう言った少年は、照れたように付け加える。

 

「ぼくはこの子にまだ慣れてなくてね、君を倒すにはぼくごと氷漬けにして、死ぬまで待つしかないんだ。…え?怖くないのかって?大丈夫、お姫様のためなら何でもやるさ」

 

ぞっ

 

その言葉に得も言われぬ恐怖を感じたアメミットはガンガンと氷に頭をぶつけて壊そうとする。

が、まるで壊れる様子が無い。でも壊そうとすることを止められない。まるでこの後自身に何が起こるかわかっているように。

 

「さて。そろそろ幕引きにしよう。ーーーいくよ、■■」

 

そして少年は、祝詞を捧げるかのように詠う。

 

「"再現:氷と霧に覆われた女王の國(ニヴルヘイム)"」

 

ーーーその瞬間、森人の国を含めた、砂漠地帯が全て氷漬けにされた。

皇国を含めた各国は、この異常な現象に対してすぐに調査を始めたが、結果は決して壊れず、溶けない氷だということ、そしてひとたび中に入れば瞬く間に凍り付いてしまうことが分かっただけだった。

 

そうしてこの氷に覆われた地域一帯は禁域となり、いつしか『氷の森』と呼ばれるようになった。

 

ーーーそうして、100年ほどが過ぎたある日。

氷の中から、とある少年がするりと出てきた。

 

「…ん~~~!!!出れた!いやあ、あれから何年たったんだろうね?

…え、わからない?アハハ、そりゃそうか。ぼくと一緒に氷漬けになってたもんねぇ」

 

禁域と言われる『氷の森』を作り出した少年は、ぐっと背伸びをした後、太陽を見て目を細める。

 

「さて、それじゃああの『上位種』も死んだことだし、お姫様を探しに行きますか。

なんせーーーぼくがここに来た目的は、お姫様に会うためだったんだから」

 

そう言って少年は当てもなく歩き出す。「お姫様」と呼ぶ人物と会うことを目指して。

その結末がどうなるかは、まだ誰にもわからない。




どうも、ど素人ことあさらこです。
まだ他の二次創作を書いているにもかかわらず、オリジナルに手を出してしまいました。
あほなのかな?

駄文ですが、よろしければ見てくだされば幸いです。

それでは今回はここまで、また気が向いたときにでも。
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