上位種が存在する世界にて。   作:あさらこ

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第一話

さて、突然だが時は少年が目覚めるより100年前へと巻き戻る。

各国の代表は砂漠、そして森人の国に突如現れた『氷の森』に対して協議すべく、森人の王女が保護されたという皇国、その頂点たる皇帝の住まう城へと集まっていた。

 

重々しい空気が漂う皇国の城、その大会議場。

集まった各国代表の中で最初に口火を切ったのは、皇国の皇帝であった。

 

「…さて、それでは森人の国、その最後の生き残りたる王女殿下。何があったのか、ご説明願えますかな?」

 

呼ばれた王女は「…はい」と返事をし、事の顛末を説明し始めた。

 

「ーーー以上となります」

 

「…自国の滅亡という辛いことをお話させてしまい、申し訳ない。」

 

「いえ、必要なことでしたから…」

 

そう言う王女だが、やはり国が亡ぶ様を思い出すのは負担がかかったのだろう、顔色が蒼くなっている。

そんな王女の姿を見て、皇帝は気の毒に感じたがこの話は進めなければならないとして話を進める。

 

「…さて、そして問題の災厄級『上位種』、アメミットだが…。諸侯も分かっていようが、突如現れた、便宜上『氷の森』と呼ばせてもらうが…アレに巻き込まれたものと考えられる。

油断はできないがアメミットの脅威はあの氷が溶けるまでは当面の間無いと言ってもよいだろう。

しかし、新たな問題としてあの『氷の森』が浮上してきた。…誰か、あの氷に関する情報はないだろうか?」

 

皇帝が諸王に問うと、森人の国の北に位置する王国の国王が発言した。

 

「あの超広範囲の氷の領域…先ほどの皇帝の名称を借りて『氷の森』と呼びますが、アレはあの範囲以上に広がることはありません。ですが…あの氷の中に一度入れば『上位種狩り』であろうと無抵抗で凍り、そしてそのまま動けなくなることが分かりました」

 

ザワッ

 

その言葉に、大会議場にいたすべての人間が驚愕した。

それほどまでに、『上位種狩り』という存在は国の戦力として重要なのだ。

なぜなら『上位種』を狩った者は狩った『上位種』の能力を持った武器…通称『器』を手に入れるからだ。

もちろん代々受け継がれる『器』もあるが、『上位種』を狩ること自体が偉業であり、その上個体によっては国を滅ぼしかねない『上位種』を狩ることができるヒトなど世界最高峰の能力を有しているに他ならない。

その『上位種狩り』がまともな抵抗もできずに凍らされる…?

その事実に動揺が収まらない諸王を前に、いち早く平静を取り戻していた皇帝は口を開いた。

 

静粛に。…これ以上貴重な人材を割くわけにもいかん。王女には申し訳ないが、あの地域一帯を禁域とし、何が起きても良いように基地を建て、監視するということでどうだろうか」

 

「異議なし」「異議なし」「い、異議なし」「「「異議なし」」」

 

「…王女殿下は、いかがですかな?」

 

皇帝からの提案を諸王全員が受け入れた。

そして皇帝は最後の一人ーーー王女に対して是非を問うた。

 

王女は一度目を瞑った後、数秒して目を開けこう言った。

 

「異議、ありません」と。

 

ーーー

そうして時は100年後の現代に戻り、とある竜車の中。

『氷の森』と呼ばれる禁域を作り出した少年は体力が尽きて砂漠近くの草原で倒れていたところをとある只人族の商人に助けられていた。

 

「あむあむ、むぐむぐ…ごくごく…ぷはぁっ!生き返ったー。ありがとうおじさん!」

 

「おう!いいってことよ。…それにしても、なんであんなところにお前さんみたいな()()()の子供一人でうろついてたんだァ?あそこは禁域の近くだからおめえみたいな子供だけで行けるような場所じゃあ無いはずなんだが」

 

食事を分け与えられたことに礼を言う少年に商人は鷹揚に頷く。竜は知能が高く、一度行った道ならほぼ指示なしで動いてくれるため、商人は竜車の中の少年の方を向いていた。そして気になっていた生き倒れていたことに関して聞くとこう返ってきた。

 

「うーん、なんか逃げなきゃって思ったらあそこにいた、みたいな感じ?ぼくにも良くわかってないんだよねぇ…こんな感じでいいの?ほんとに?

 

「ふーん…(洗脳系の『器』で連れてこられてた感じかぁ…?各国にゃあそんな『器』を持った暗部もあるって聞く。そんで実行者は『氷の森』を舐めて掛かって死んだってトコか。)

じゃあお前さん、身寄りがないってことでいいかい?」

 

「え?うん、そうだね。」

 

「それなら、しばらく俺と一緒に来ねえか?降りたくなったら降りてくれたっていいが、お前さん戸籍とかないだろ?それなら俺が保証人になって好きな国で戸籍を作ったっていいしな」

 

「ええ、いいの?おじさん。ぼく、相当怪しいと思うんだけど」

 

少年の言葉に商人は笑って返す。

 

「ハッ、そんときゃ俺の見る目が無かったってだけよ!

それに、ガキほっぽり出すとかご先祖様に申し訳が立たねえしな」

 

「へぇ、おじさんのご先祖様もいい人だったんだね」

 

少年のキラキラした目に機嫌を良くした商人は自慢げに話す。

 

「おうよ!なんせ俺のご先祖様は100年前、滅亡した森人の国の王女様を『上位種』に追いかけられながら皇国まで命がけで運んだ、我が家の誇りだからな!」

 

「えっ!?おじさん、今ご先祖様がお姫様を運んだって言った!?」

 

「お、おう言ったが…。どうした、いきなり興奮して」

 

それまでおとなしかった少年が急に声を荒げたさまを見て、商人は驚いて少年に問い返した。

すると少年は真剣な顔でこう言った。

 

「ねえ、おじさん。お姫様ってどこに行ったか知ってる?」

 

「んん?たしか、皇国に根を下ろしたって話だったが…。なんでそんなに森人の王女様に食いつくんだ?」

 

「…ぼくは、お姫様に会わなくちゃいけないんだ。…なにがあっても」

 

「…それは、お前の捕まってたやつの命令か?」

 

「…ううん、これはもっと前の、故郷にいたころに頼まれたものなんだ」

 

「…」「…」

 

「…そうか!疑って悪かったな!」

 

「ううん、大丈夫」

 

様子の変わった少年を警戒しながら、洗脳が解けていなかったのかと訝しむ。

しかし、その目にある強い意志に、洗脳ではないことを悟った商人は謝りながら警戒を解いた。

少年も、少し落ち着いたのかそのまま静かになる。

 

「ち、ちなみに、頼まれごとってーーーうおわっ!?」

 

ガンッ!

 

沈黙に耐えられなくなった商人が少年に尋ねようとした瞬間、竜車を揺れが襲った。

どうやら何かがぶつかったようで、外を見てみるとーーー木が降り注いできていた。

 

「うおおおおおおおっ!?」

 

それを何とか避けた一行だったが、狙ったように大きなオオカミが群れで飛び出してきた。

 

「くっそ!こいつらいつの間に近づいて来てやがったんだ!?おい、お前さん絶対外に出るなよーーーっておい!」

 

「うーん、この数だと逃げきれないよね…。うん、ならやっぱりやっちゃおうか」

 

幌の外に出た少年を止めようとするが、少年は何かをつぶやきながらその背中に担いでいたものを取り出し、覆っていた布を取った。

それは片刃で鎖が巻かれ、素材はなにかの牙のような剣だった。少年はその剣を重そうに振りかぶり、詠った。

 

「せー、のっ。"月を呑む狼(マナガルム)"!」

 

ゾンッッ

 

と少年が横薙ぎに剣を振るうとオオカミたちが裂けた。

当たらなかったオオカミたちは自分の同胞が凄惨に死んでいったさまを見て、怯えながら逃げて行った。

オオカミがボトボトと上下に裁断されながら地面に落ちていく様を見て、商人は驚きながら叫んだ。

 

「そ、それ『器』じゃねえか!…お前さん、『上位種狩り』だったのか…?」

 

「ううん、違うよ?」

 

「なら、お前さんは一体何者なんだ…?」

 

その何度目かの問いに、少年は明るく返す。

 

「あれ、そう言えば自己紹介してなかったっけ。

ぼくはね……フタバ!

性は無いし、この名前も借りものだけど、どうかフタバって呼んでくれると嬉しいな。

…これからよろしくね?おじさん」

 

商人は、少年改めフタバの姿を見て、もしかしたら自分はとんでもないものを助けたのかもしれないと、そう乾いた笑みを浮かべながら思うのだった。

 

 




用語解説

森人族…いわゆるエルフ。
只人族…人間。
上位種…とある世界の神話に生きた怪物と称されるモノたち。強さも影響力もピンキリ。
上位種狩り…上記の怪物を打倒した人間のバグ。現在は50人くらいいる。
双葉(フタバ)…森人の国、その中で最強の森人族の戦士に与えられる称号。なぜか少年が名乗っている。



あとがき
どうも、ど素人ことあさらこです。
いやあ、オリジナルって書くの難しいですね!
あんまり文章量多くないのにめっちゃ時間かかってしまいました。

それでは今回はここまで、また気が向いたときにでも。

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