ハリエット・ポッターの不思議な冒険 作:新参なめ子
「ねえ、本当なの。それじゃあ、本当にイオラがハリエット・ポッターなの」
マクゴナガルの先導で小広間を出ると、ロニーはそっとハティの後ろから囁いてきた。その口調はハティを少し責めているようだった。
ハティは大きく頷き「本当よ」と囁いた。
「どうして嘘なんかついたの」
「ハリエット・ポッターの名前で友達を作りたくなかったの。生き残った女の子じゃなくて、普通の女の子として友達が作りたかった。わたしが有名だからって近づくような人って、本当に友達って言えるのかしら? 結果として、嘘をついたからわたしも誠実じゃなかったんだけどね。でも、全部嘘をついたわけじゃないのよ。イオラはわたしの名前の一つだし、ヒューは――さっきの男の子はわたしの幼馴染なんだけど、彼はわたしのことを小さい時からイオラって呼ぶの。ハリエット・リリー・イオランテ・ポッター、それがわたしの本名なの」
ロニーは怒ったような、同情するような顔でハティを見てそれ以上何も言わなかった。
やがて新入生たちはマクゴナガル教授が開け放った大広間へと続く二重扉の中へと入った。大広間に入ると、新入生の誰からともなく感嘆の溜息漏れた。
「すごい……」
既に席についている在校生の視線がこちらに集中していたのでハティは僅かに緊張していたが、すぐに大広間の美しさで吹き飛んでしまった。頭上に天井はなく天鵞絨のような黒い空が広がっている、点々とダイヤモンドのように瞬いているは星であると気付いた時ハティはそれが今まで見ていた夜空だと気付いた。実際の空が浮かんでいるが不思議と夜風の冷たさはなく、大広間全体は暖かい。
「本当の空が見えるように魔法がかけられているんだよ。〈ホグワーツの歴史〉に書いてあった」
ハーミスが誰かにそう説明しているのが聞こえた。そこに天井があるなどとてもではないが信じられない。大広間の天井そのものを吹き抜けにしているのかと錯覚を受けるほど、頭上に広がる空は本物に見える。その下には何千もの蝋燭が空中に浮かび、四つの長テーブルを煌々と照らしている。テーブルには既に各寮それぞれの生徒たちが着席しており、卓上には黄金に輝く空のゴブレットと皿が置いてあった。そして上座にはもう一つ横向けに長テーブルが設置されており、まるでレオナルド・ダヴィンチの最後の晩餐のようにずらりと教員らしき大人たちが座っている。そしてイエス・キリストが座るべき中央の黄金の玉座には、眼鏡をかけたまるでサンタクロースのように髪と髭の長い枯れ木の様な老人が座っていた。
いかにも老賢者といった風貌で、ハティは緊張も忘れて「ゲームに出てくるお助けキャラみたい」と興味深く眺めていると、てきぱきとマクゴナガル教授が新入生の前に四本脚のスツールを運び出してきて、その上に襤褸のような古いとんがり帽子を恭しく載せた。それまで上級生たちは新入生を眺めてこそこそと品評会をしていたが、一様に口を噤んで帽子に視線を注いだ。
すると帽子の生地がわずかに波打ち、つばの縁の切れ目がまるで石のように開いて歌いだした。それは自身が新入生の組み分け儀式を担う神聖なとんがり帽子だと謳うものであった。
ハティは上級生たちが帽子に向かって拍手喝采するさまを眺めながら、果たして本当にグリフィンドールでいいのだろうかとぼんやりと思った。両親がグリフィンドールだったので当然のようにグリフィンドールが最良の寮だと信じて「グリフィンドールに入る」と豪語したはいいものの、他の寮も捨てがたいと未練が込み上げてきた。ホグワーツ急行でテリー・ブートが「レイヴンクローには学問の徒たる特権と秘密がある」と興味を示していたし、スリザリンはロニーやネヴィルの話を聞く限り人脈形成に非常に役に立つに違いない。実際にルシウス・マルフォイは魔法界で確固たる地位を築いているようだ。ハティの中にも社会的に成功し、ダーズリー一家を見返してやりたいという強い思いがあったので、これは非常に魅力的だった。そしてハッフルパフは、ホグワーツ急行で出会った優しい上級生や同級生が多くきっと穏やかな学校生活が送れることだろう。
「あたしたち、ただ帽子を被ればよかったんだ。フレッドの奴、組み分けの儀式はトロールとの決闘だなんて言ってたんだよ。あいつ、出会ったらぶん殴ってやる」
怒りで顔を真っ赤にしてグリフィンドールの席を睥睨しているロニーに、ハティは苦笑いをした。
すぐにマクゴナガル教授が羊皮紙の巻紙を手に前に進み出た。
「アルファベット順で名前を呼ばれた者から順番に帽子を被って椅子に座り、組み分けの選定を受けてください」
Aから始まるアルファベット順に順番に名前が呼ばれ始める。名誉ある一人目は「アボット・ハンナ!」という呼名に転がるようにスツールに向かって駆けて行った。彼女は顔が隠れるまで深く組み分け帽子を被ると、一瞬の沈黙ののちに「ハッフルパフ!」と帽子が叫び、大きな拍手のもとハッフルパフのテーブルに出迎えられた。席を立った女の上級生がハンナと握手を交わし、彼女を席へと誘導した。
「アリアネル、ジャスパー!」
一瞬の沈黙。
「スリザリン!」
それからも次々と組み分けの儀式は続いたが、帽子の選定は生徒によってそれぞれ必要な時間が異なるようであった。マンディ・ブロックルファーストは選定に少しばかりの時間をかけてレイヴンクローに迎えられたが、レイブンクローに入寮するのだと豪語していたテリー・ブートは即座に「レイヴンクロー!」と選定を終えて笑顔でレイヴンクローのテーブルに吸い込まれて行った。
「ダンクワース、ルビー!」
長い沈黙。
「スリザリン!」
並んだ新入生が一人、また一人と減っていく中、そばで黙って組み分けされていく生徒を見ていたヒューがおもむろに口を開いた。
「なあ、グリフィンドールは無理かもしれない」
「え、どうして?」
「俺は父さんの息子だけど、俺自身には騎士道も勇気もない。ただの臆病者なんだ。だから、母さんの言葉にしたがってイルヴァモーニーに逃げようとしたしな。これからもきっとそうなんだろうなって思う、何か嫌なことがあったら逃げるんだ。きっと俺に
自嘲するようにヒューが微笑んだ。
ヒューの父親はイングランド貴族の伯爵と呼ばれる人物だ。上流階級に生まれついた父親と美貌だけが取り柄の母親が父親を誑かして生まれたのが中途半端な自分なのだと以前にヒュー本人の口から聞いたことがある。まるで自分の存在を自虐しているかのような口ぶりに、ハティはその時ヒューの苦悩を一瞬垣間見た気がした。家族に対して一種の疎外感や自罰性を抱えているヒューだからこそ、ダーズリー家で居場所のなかったハティと仲良くなれたのかもしれないとハティは思った。だけど、ハティは思うのだ。ヒューはは決して臆病などではないと。
ハティはヒューの手をこっそり握った。ヒューがゆっくりとハティの手を握り返す。その手は緊張で震え、汗ばんでいた。
「ヒューは臆病じゃないよ。さっき、マルフォイから助けてくれたでしょう」
「でも結局、マルフォイを蹴散らしたのはアクラムだ」
「関係ないよ。最初に庇ってくれたのは、ヒュー。ヒューが強い人じゃないと出来ないことだよ。ねえ、魔法の呪文覚えてる?」
「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス?」
ヒューはおかしそうに少し笑って囁いた。
幼い頃、二人が決めた元気と勇気の出る魔法の呪文である。辛いとき悲しいとき、この呪文を唱えるとたとえ学校でダリアに虐められて友達がいなくても、一人ではないと思えた。だから、これはきっとこの先どんな魔法を学んだとしても二人にとって最強の魔法の呪文なのだ。
「ヒューなら大丈夫だよ。たとえグリフィンドールじゃなくても、一緒の寮じゃなくてもいい。ヒューなら立派にやっていけるよ。だって、わたしは世界で一番ヒューの味方で、ヒューも世界で一番わたしの味方だもの」
「……そうだな」
ヒューは安堵の滲んだ顔でくしゃりと笑った
「フィールディング、ヒュー!」
ヒューがよばれ、堂々と優雅な所作で椅子へと歩いていく。
何人かの生徒がそうであったように、ヒューも組み分けには少しばかり時間がかかった。自分のことでもないのにハティはやきもきしながらヒューの組み分けを見守っていた。ややって、ヒューがちらりとこちらを見た気がした。直後。
「レイヴンクロー!」
歓声と拍手に迎えられて、ヒューはほっとしたように肩を落として壇上から降りた。レイヴンクローのテーブルにゆっくりと歩いていき、ジェットブラックの髪をした長身の男子上級生に出迎えられていた。
なんとなくヒューがグリフィンドール以外になるかもしれない。という予感があったハティは動揺はなかったが、落胆した。それまで自分がどの寮に入るだろうか、という高揚感を抱いていたがすっかり気が抜けてしまってハーミス・グレンジャーが意気揚々とスツールに向かい、とんがり帽子を頭上に掲げるのをハティはぼんやりとみていた。
ハーミス・グレンジャーの選定にはかなりの時間を要した。それまで組み分けに時間のかかる新入生はいたが、ハーミスの場合は一向に帽子が寮を告げる様子もなく次第に上級生の席が騒然とし始めた。ハーミスが帽子を被り四分ほど過ぎた頃レイヴンクローの席から「
しかし、しばらくもしないうちに帽子はぱっくりと大きく口を開いて宣言した。
「グリフィンドール!」
歓声に紛れて隣でロニーが呻いたのがハティには聞こえた。
奇矯なところはあるが、悪い少年ではないとハティはさほど気にしなかった。
Pの順番がやってくるといよいよハティの手には緊張で汗が滲み始めた。はじめに「プセット、プリシラ」が呼ばれ栗色の髪に夢見るようなダークブルーの瞳の彼女は静かにスツールへと座った。一瞬の沈黙の後、帽子が「グリフィンドール!」と叫び、彼女は安堵したように微笑んでグリフィンドールの席へと消えた。
次に呼ばれたのは「ポップルウェル、フィリパ」という少女であった。驚いたことに彼女はパンジー・パーキンソンと同乗していた黄色いドレスの少女であった。ローブに着替えたためか、彼女は惜しげもなく結い上げていた亜麻色の髪を白いリボンでハーフアップにしており髪を揺らしながら待ちきれないという様子で小走りでスツールに飛び乗った。フィリパ・ポップルウェルはプリシラ・プセットほどすんなりと選定は終わらなかった。かなりの時間を要したので焦れたようにフィリパが体を揺らし両手で帽子を揺すり始めると、組み分け帽子は観念したようにぱっかりと口を開いて叫んだ。
「グリフィンドール!」
フィリパな満面の笑みを浮かべて、グリフィンドールに駆けていった。
先にスリザリンに組み分けされていたジャスパー・アリアネルという少年がスリザリンの席で絶望したように顔を両手で覆って頭を振るのが見えた。一方のフィリパは生き生きとしてグリフィンドールの寮生たちを見まわし、笑いかけていた。そしてついに――。
「ポッター、ハリエット」
その名前が呼ばれると大広間は水を打ったように静まり返った。学生だけでなく教授たちも含む大広間中の視線が自分に注がれているような気がして、ハティは自分の口元が強張るのがわかった。マクゴナガル教授はきっちりと口を噤んでいたが「あのハリエット・ポッターなの?」という囁きや、ハティをよく見ようと席から腰を浮かしている学生の姿を見咎めるように厳しい視線を注いでいた。ハティはそれらの視線や声から逃れるように足早にスツールに腰掛け、マクゴナガル教授が被せてくれるとんがり帽子を受け入れた。
次の瞬間、ハティは帽子の内側の闇を見ていた。凄く静かだ、大広間のハティに対する囁きがまるでシャットアウトされたように何も聞こえない。一体、この帽子はどうやって子どもたちを選定するのだろう。あれこれ考えていると「ウーム……」と耳もとで悩むような低い声が聞こえた。
え? 帽子って寮の名前以外も喋れるの? 生きているの?
「喋るとも、私が生きているという認識の上で語るならば十世紀にも及ぶだろう」
即座に返ってきた声に、ハティは仰天して椅子から転げ落ちそうになった。
帽子を被るまでハティはつぎはぎだらけのとんがり帽子が、子どもたちの適正を確認し最良の寮に振り分ける心理テストの機械みたいなものだと考えていた。それが意思を持っていて、生きているなんて。
「十世紀も? どうやって。もしかして、あなたは伝説の魔法使いの帽子とか?」
「これほどの時間が経てば伝説といっていいだろうね。そうだとも、私はかつて西より来たりしゴドリック・グリフィンドールがゴドリック・グリフィスと呼ばれた頃から被っていた帽子だ。私はグリフィンドールが生前、四人の偉大な魔女と魔法使いの知識・人格・思想をコピーし生まれた一つの命である。ゆえに私はサラザール・スリザリンのように
「それは、わたしが”生き残った女の子”であることを指している? わたしは別に何も悩んでいないし、グリフィンドールに入るってもう決めてるの」
「でも心の奥底では君は迷っている。君の中には、強い野望があって、優れた人間として自分の能力を皆に証明し、大成したいという欲望がある。陰惨な境遇の中でも、周囲を見返すための反骨精神と、目的のためならば手段を厭わぬ冷徹な決断力がある。君が本来の自分を受け入れるというのならば、偉大な魔女としての未来が拓けるだろう」
「本来の自分……」
ハティは唇を震わせた。
本来の自分は帽子の言う通り、かなりの野心家だ。ダーズリー家で使用人同然の扱いを受けながら、いつかは社会的にダーズリー一家を見返して懲らしめてやる。という一心で勉強に打ち込んでいた。リビングに飾られたブロンドの家族写真を目に入れるたびに、彼らに復讐することばかり考えていた。
しかし、マクゴナガルやハグリッドと出会ってハティはそんな自分を忘れてしまっても良いのではないかと思い始めていた。二人の優しさに触れて、ダーズリー家で生活する中で自分がいかに他人との触れあいに飢えていたのか知った。だから、あの時の冷たい自分には戻りたくなかった。
それに、ダーズリー家にいた時は己の闇と向き合わざるを得ない不安の日々ばかりだった。そんな日々から逃れるように同じ夢を何度も見た。夜の闇の中を轟音を立ててバイクが駆ける。ハティは誰かの腕の中に抱かれていた。頭上から震える声が「大丈夫だ、俺が守ってやるから。お前だけは俺が守るから。いつか必ず迎えにいくから」と囁く。ハティは必死に目を凝らして、声の主を見上げる。その誰かは煌々とした満月に照らされて、ハティを見下ろした――夢は必ずそこで醒める。最初の頃は、自分自身に愕然とした。夢の中とはいえ、誰かが自分を助けに来てくれるなんて荒唐無稽な願望を見るなんて。自分は結局、誰かが助けてくれるのを期待する弱い人間だったのだ。助けなんてくるわけがないのに。残酷な現実に、ハティは一人ひそかに自分を憐れみ、涙をした。ダーズリー家で涙を零したのは、その時だけだ。
だから、ハティは本来の自分がどんな人間なのか知っている。
「わたし、知ってるよ。ダーズリー家でたった一人黒髪で、頭が良くて、可愛くて、ずる賢くて、完全無欠のハリエット・ポッターは確かに一人のわたし。でもね、本当は毎日が辛くて苦しくて夢を見た後に泣いてる女の子がいた。夢の中だけはわたしだけの世界で誰にも邪魔をされなかったし、弱いところを晒しても誰にも踏みつけられなかったから正直でいられた。本当はね、わたしは弱くて、臆病な子どもなの」
「そうだろうとも。君は本当は怒りと憎しみを抱えて邁進する自分はあまり好きではないのだろう。このまま進めば、心が凍ってしまうのを、君は本能的に知っている。冷徹で冷静な魔女である君がスリザリンに進んだならば、偉大なる名声を手に入れるだろうが、君の柔らかな部分は置き去りになってしまう。でも、君はこれから先も進み続けなければいけない。選び続けなければならない。苦しみも痛みも君にだけ与えられた運命も、全てが生きていることそのものへの祝福だ――さあ、ハリエット・ポッター。君の前には三つの道が用意されている。偉大なる名声、無限の叡智、騎士の如き栄誉。君は何を選ぶ?」
「グリフィンドールに行きたい……わたし、ハリエット・ポッターは善い魔女だと呼ばれるような大人になりたい。偉大な名声も、無限の叡智もいらない、その代わりにわたしのパパとママだった人と同じようにグリフィンドールで真っ当な魔女になりたい」
十年間、ハティの額に呪いのごとき疵を刻んだ人物は姿を現すことはなかった。それはペチュニアの言う通り、彼女の血によってハティとダーズリー家が守られていたかもしれないし、ヴォルデモート卿が破滅したからなのかもしれない。
しかし、ハリエット・ポッターとして生きていればいずれデス・イーターの残党によって不条理や不合理に見舞われることもあるだろう。その時に、ハティは今までのように誰かの庇護を待つ弱い子どもとして誰かの助けを待つような人間でありたくない。
勿論、ハティの中には助けを求めるか弱い自分もいる。その自分を切り捨てて冷徹な魔女として死の鎌を振り下ろすのではなく、輝く杖を携えた善き魔女になりたい。
「本当にそれでいいのかね? 君はきっとスリザリンに行っても目的を遂げることができる。それでも?」
「スリザリンに行けばわたしは冷徹な魔女として、デスイーターの親族の子どもたちをあらゆる手を尽くして破滅させる。勿論、手段は問わないし慈悲の欠片も与えない。社会的にも精神的にも破滅させて死を望むほどに生きていることを後悔するほど追い込んでやるわ。そして、アズカバンにぶち込むの。わたしはね、スリザリンで生活すれば、きっとそういうことに躊躇しない人間になると思う。だけど、グリフィンドールに入ったら弱い人の味方だった両親のように、誰かの助けになれるような強い魔女になりたいんだ」
「スリザリンとグリフィンドールはコインの裏と表のようなもの。スリザリンに強い適性を示す君がそう望むのも道理ではあるだろう。ゴドリック・グリフィンドールはかつて魔法使いの子どもたちを庇護し、力を与える為に剣を携え西の荒野からやってきた。新たな善き魔女の誕生を、彼はきっと祝福するだろう。グリフィンドール!」
帽子は高らかに叫んだ。帽子が引っ張られる感触がして、視界が光で溢れる。一瞬、目がくらんでまぶしさに目を細めているとハティは大広間が今日で一番の割れんばかりの歓声と拍手喝采に包まれていることに気付いた。口元が緩んで仕方がない。ハティはここ最近で最も晴れやかな気持ちでスツールから降りた。
教授、やりました! わたしグリフィンドールになりましたよ! ハティは満面の笑みでくるりとマクゴナガル教授を振り向いた。その時、ハティはマクゴナガル教授が小さく笑いかけてくれると思っていた。しかし、教授は青白い顔で唖然とハティを見ていた。ハティはその時になって帽子との会話がテレパシーではなく口から零れていたことに気付いた。
あ、ヤバイ。死んだ――ハティはこめかみからたらりと冷や汗が流れるのがわかった。
感想、お気に入りありがとうございました。