Aperture: Reminiscence - Short Stories   作:Gun PICK

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倉庫作業は楽しい。でも、彼女が見てくる。


Imaginary - 空想

倉庫の仕事は無限に続けられそうだ。

 

運ばれてきた装置やらなんやらをアルファベット順で、空いている棚に収納する作業である。

 

ザ・コーデッツのMr. Sandmanが流れるなか、運搬物の集積所の標識が見えてくる。

 

『技術規格保管セクター』

途方もなく延びるそこは、Aperture scienceの肝臓と呼ばれているらしい。

 

搬入物は日によって大きく変わる。

多い時では、トラム10両分を午前中に仕分け。

あるいは、たった1箱を慎重に運ぶことも。

 

午前8時、倉庫の扉が開く。

 

「今日もよろしくね。相棒」

 

ドアの真正面にそいつの顔があった。

なめるように、私の目をじっと見る。

ピンク色の眼は、私を捉えて離さない。

 

無関心に横を通過して、赤くて塗装の剥げたレバーを持ち上げた。

バチンバチンと音をたてて、明かりは通路奥にかけて順番に点灯していく。

 

「カマキリのメスは、交尾中にオスを食べることがあるって知ってた?」

 

「なんだよ急に。知るわけない」

 

「まぁ、それでね。頭を失っても、交尾を完了するオスもいるんだって」

 

錆び付いた銀色の塊が、キィーキィーと音を立てて二人の前に停車した。

車体の側面には黄色で、核燃料式環状移動型トラムの文字。

 

見たところ、2両分ほどしか運搬されてきていない。

 

車両から貨物用ユニットが切り離される。数秒後、搬入物がレーンに乗って流れてきた。

 

仕分け作業が、始まる。

 

「死んだ人間は、蝶になって会いに来るんだってさ」

 

「蝶?」

 

「あっ、そういえば。虫は嫌いだっけ」

 

「……嫌いだった。今は何ともない」

 

「変わったんだ。あのときと」

 

搬入物に混ざった瓦礫を取り除く。

 

研究室に備え付けられている移送管には、運搬物用と酷似したダストシュートがある。

 

そんなお粗末なデザインのおかげで、手作業で分別を行う事態となっていた。

 

「変えたのは君だろ」

 

視線を向けたが、相手の遥かに熱い眼差しで、すぐに目をそらしてしまう。

 

「しばらく見つめてようよ」

 

「……仕事に戻る。今日は早くあがりたい」

 

「そこは変わらないんだね」

 

球体の胴体を傾けて、目を合わせずに呟く。

背中は、寂しそうに見えた。

 

『次は最終ラインです。安全に配慮して作業を続けましょう』

 

仕分け作業は終盤に差し掛かっていた。

 

搬入口の小型モニターを通して、スキャナーで読み取った物品が映る。

 

思わず、手が止まった。

 

壊れた人格コアの残骸が、コンベアの安全カーテンに引きずられて、二人の前で停止する。

 

「こんなこと、前にもあったでしょ」

 

「……何かやれたかもしれない」

 

残骸は所々焦げ、電子版から微かな煙が昇っている。

 

「怒ってないーー」

 

「ただ、欲しかったの。あなたの時間が」

 

彼女は近づいて、目を合わせる。

 

懐かしい。

 

そのはずだったーー。

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