転生者は割と詰んでる世界を全力で楽しむようです。 作:柊 詩音
「おい、何か言うことはあるか?」
「えぇっと、あははは…」
絶賛詰められております。
冷たい床の上での正座は堪えるね…。
「ちっ…てめえがスヤスヤ寝てる間にこっちは大変だったんだぞ」
戦いが終わったあと、気を失った俺はGモービルの自動帰巣機能で運ばれていった。
原因不明の昏睡でメディカルルームに緊急搬送されたらしく、スタッフが頭を抱えていたらしい。
「ご迷惑をおかけしました…そういえば、他のSランクの方は?」
「俺たちの任務は人類の領土拡大だ。でけえロボット騒ぎの為に待機してるわけじゃねえ。てめえを御せるなら本来の任務に戻れるってわけだ」
どかっと椅子に腰掛けPCを操作する。
「てな訳で、あれはなんだ?」
「俺にもさっぱり…ただ声が聴こえて」
「声?」
俺は、あの時起こったことを話した。
「頭が痛くなる話だが、俺からしたら一つ」
「お前は“敵”か?」
一瞬にして周囲の温度が急激に下がったかのような圧が襲う。
これが最強の実力…。
冷や汗がダラダラと流れる中、震える声で答えた。
「俺は、俺の守りたいものの為に戦いたいだけです」
嘘偽りのない本音。
「そうか」
それに対し短く返答した。
……それだけ?
「え…」
「なんだ?不満でもあるのか」
「いや、無いですけど……」
「なら、早速お前の処遇を言い渡す」
「やけに準備が早くないですか!?」
「んなもん、てめえがチンタラ寝てる時に決まったんだよ。今のは単なる確認だ」
「レイカ・タチバナを暫定Sランクと認定する。この際、実戦不足及び力量不足のためリョウ・サカキを巨大兵器運用者としてサポートに就くものとする。」
つまり?
「俺もSランク?」
「馬鹿か、お前は単なる武装だ。タチバナを補助する為のな」
Sランクのいる学校は特別な支援が受けられる。
その分危険な任務に就かなければいけないが。
「詳しい説明はまた後でだ」
彼は立ち上がり入口へと向かっていく。
「あの、一体どこへ?」
「正式な初任務だ。気合い入れろよ?」
「え?」
「これより、東京へ襲いかかる翼竜タイプのG変異体駆除作戦を開始する。さっさとBゲートからデカブツに乗って戦ってこい」
「えぇ…いや、はい!!」
困惑しつつも、アスカさんの指示に従い行動する。
「……お前が使えるってところ、上に見せてやれ」
ゲートを抜けた先に映った光景は、プテラノドンのような変異体がすぐそこまで来ていることだった。
「チェンジ!ダイナミックゥ!!」
周囲のGエネルギーを収束し、漆黒の巨人が誕生する。
「鳥野郎め、撃ち落としてやる!ダイナミックビーム!」
巨人の眼から放たれる二本の光は当たることなく空の闇に消えていった。
「ちぃっ…飛行には飛行だ!ダイナミックウィィィングッ!!」
巨人の背に深緑の翼が生える。
「ジャンプ!」
大地を蹴り上げ、空高く舞う。
星が煌めく夜空の中、火花が散る筈だった。
上空100m程で機体は上昇を止め、みるみる高度が落ちていく。
「なっ…?!」
残存エネルギーが急激に無くなってる!?
「くそっ…!ダイナミックビームッッ!」
なんとか一矢報いようと放つが、あっさりと躱されてしまう。
膝をつき、夜空を見上げる。
翼竜型変異体は依然上空300mの位置から獲物を狙っている。
その時だった、凄まじい暴風が襲う。
機体がミシミシと音を立てて今にもバラバラになりそうだ。
「ぐおおおお…!?」
奴は翼をはためかせることで、竜巻のようなこの風を生み出していた。
耐えきれなくなり、姿勢が崩れる。
その一瞬を見逃さなかった。
急降下。
自身を槍のように獲物を貫く。
それは、巨人の頭に刺さる筈だった。
予想以上にバランスを崩していたためか、その鋭利な嘴は巨人の腹を突き破っていた。
「あ…っぶねぇなぁ!」
ケタケタと人を嘲るような鳴き声が聞こえる。
まるで、お前の力では勝てないとでも言うように。
だが、これはピンチであり最大のチャンスでもある。
奴は今、的に刺さったダーツのような物。
自ら離れることはできない。
「肉団子に変えてやらぁ!ダブルダイナミックスマッシャー!!!」
右腕と左腕が高速回転する。
ガンッ!
「な!?」
本来ならば、肉が潰れる音がした筈だ。
先程まで突き刺さっていたそれは無く、すり潰す筈だった両手同士がぶつかっただけだった。
肉体が溶けた。
これは比喩では無い。
まるで骨や肉が急に無くなったかのような変形だった。
既に後ろでは羽ばたく音が聞こえ始めている。
「なんでもありかよ!?」
振り向いて反撃していたら間に合わない。
音だけを頼りに右腕を射出する。
「ダイナミックパンチッ!」
が、凄まじい暴風が襲う。
「ぐぁぁぁぁっっ!?」
放たれた拳ごと吹き飛ばされる。
やっぱり変だ。
口を突き破っても死なないティラノ。
脳を破壊しても生きてるトリケラ。
そして、身体をまるで液体化したかのようなプテラ。
きっと、黒い何か
かと言ってももう機体はボロボロ。
大技の一つも出せやしない。
「ちっ…万事休すってやつだな」
ポツポツと雨が降り始める。
次第に強くなっていき、まるで嵐のように思えた。
敵は上空300m。
だが、俺が諦めたら誰が先輩達を守る?
アスカさん達か?
Sランクといえどもアレ相手は分が悪い。
ならば、刺し違えてもぶっ飛ばす。
一先ず整理しよう。
攻撃方法は暴風、トドメの突撃。
体勢を崩した時に突っ込んでくるのは確定。
速度だって速いわけじゃ無い。
奴が刺さったと同時に残存エネルギーの全てを使って自爆する。
攻撃のタイミングはこっちに合わせてやる!
巨人が膝をつく。
やっと諦めたかのように見えた。
降りしきる雨の中、翼竜
ざまあみろ。
嘴
目を光らせ狙いを定める。
あんな虫の息の奴を仕留めるのは簡単すぎる。
思わずクケケと喉が鳴る。
自らの最も威力が出る角度、高度、風向きその全てを満たした瞬間を見逃さなかった。
翼を折り畳み、魚雷の様に突き進む。
ー轟ッ!
雷鳴が鳴り響く。
辺りが光で照らされたのと同時、翼竜
「な、何が起きた…?」
雷が鳴ったかと思えば目の前にレーザーの跡。
タイミングを合わせたかのように奴を消し去ってしまった。
雨が止み始める。
レーザーの照射から位置を特定し、空を見上げる。
ーーー雷鳴。
雲の中に何か居る。
ーーー雷鳴。
再び照らし出されたシルエットは。
「……ドラゴン?」
赤い六つの光を灯した三首の竜だった。
ーーー雷鳴。
雷鳴にも似た咆哮をあげると、眩い光の中に消えていった。
それは神の使いか、それとも悪魔の気まぐれか。
全てが終わった今となっては知る由もない。
「今のが出力10%のビームです。如何ですか、お気に召しましたか?」
…やっべえもん作らせちまったぁ。
え、あんだけボコボコにしてたアレを一瞬で消しちゃったんだけど??
「あぁ、文句の一つも無いな」
「では、調整は終わりです。すぐに帰還しますよ」
「ここからが本当の戦いだ」
「誰に言ってるんです?」
おそろしいほどの速度で研究所へ向かう。
やがて、その姿を一瞬にして消した。
「いやぁ…今回も派手にやられたねぇ〜」
薄暗い部屋の中、モニターに映し出された光景に笑みが溢れる。
「S-REXは初回だったから控えめにしたんだけど…S-TCTは良かったね。良い感じに戦えてた」
自分が作成した生物兵器に思いを馳せる。
「しっかし…S-PRDはどうしてああなったのかなぁ?」
キィ…と背もたれに身体を預ける。
「ありゃどーにもダイナミックGの攻撃じゃ無かったね。上からの攻撃だよ?衛生兵器があるわけでも無し。するってえと、ほんとに雷でやられちゃった??」
モニターで再三確認したが得られる情報は変わらない。
「まあ、僕が楽しめればそれで良いんだけどね。さあ次は君たちの番だよ」
モニターの画面が切り替わる。
水の中、ゴポゴポと泡立つその奥で何かが泳いでいる。
「あ〜楽しくなってきた♪君もそう思うでしょ?シキシマゴロウ君」
くるりと椅子を回す。
部屋の隅で蠢く黒いナニか。
「さて、次の調整に向かうとしよう」
軽い足取りで部屋を後にする。
ゴミ箱の中には真新しいティッシュが山積みになっていた。
現在までの???生物兵器一覧
S-REX「???レックス」
全長48m
ティラノサウルス型の生物兵器
???とティラノサウルスの遺伝子情報を組み合わせて生成される。
凄まじい破壊力を持つ顎が特徴。
初戦ということもあって控えめの性能をしている。
体内から高熱の炎を放出することができる。(未使用)
S-TCT「???タクト」
全長52m
トリケラトプス型の生物兵器
???とトリケラトプスの遺伝子情報を組み合わせて生成される。
鋭い角による突進で並大抵のものなら一瞬で破壊できる。
頭についているフリルは盾にもなり、ありとあらゆる方向からのレーザー兵器を反射する。
2本の大きな角に電気を纏わせることで突き刺した相手を感電させる。(未使用)
S-PRD「???パラド」
全長34m
プテラノドン型の生物兵器
???とプテラノドンの遺伝子情報を組み合わせて生成される。
羽ばたくことによって暴風を生み出したり、自身を槍のように変形させて突撃する。
戦闘描写はすんなり書けたのですが難産でした。
次回も頑張りますのでお付き合い頂けると幸いです。