彼方の光ー転生者は割と詰んでる世界を全力で楽しむようですー 作:柊 詩音
今回も付き合って頂けると幸いです。
拝啓両親へ
こちらの世界に来てから一週間ほどが経ちました。
新しい人生はとても充実しそうな予感がしています。
さて、目下最大の問題が出てしまいました。
「なあ、良い加減缶詰生活にも飽きたんだが?」
『生命維持には問題無いはずでは?』
たまに見せてくる上位存在染みた発言やめてほしいんだけどな。
「栄養の偏りはあるだろ。それに、食って言うのは単なる生命維持だけじゃなくて心の栄養補給も兼ねてるんだよ」
『なら、街に行って物資の調達を行えば良いじゃ無いですか』
「アホか。無一文でどうやって買えば良いんだよ」
『???量子テレポートが出来るのですから盗めば良いじゃ無いですか』
人の心ねえのかこいつは…人じゃなかったわ。
『ほら、さっさと行きますよ』
総体は俺の手を取り、いつものアレを行う。
いつまでもこのテレポートは慣れない。
人々で賑わう繁華街。
人類最後の砦、東京では三つの区画に分かれている。
一つ、生存圏確保の為に戦う者
二つ、解放者の支援を目的とした産業区画。
三つ、居住区画。
俺たちは産業区画の第三産業エリアへと足を運んでいた。
さて、目当てのものは果物かな。
肉とか魚、野菜は調理する場所がないから盗っても意味がない。
八百屋に陳列してる物を数個ずつ抜き取って、量子テレポートで基地へ飛ばす。
総体の姿は他の奴には見えない。
こいつが触れた果物が一瞬にして消える。
もちろん、保管できるものも無いので沢山取るわけにはいかない。
側から見たら俺はただウィンドウショッピングをしてるだけ。
……そう思い込まないと、罪悪感で潰れそうだ。
『結構盗りましたし、戻りましょう』
「そうだな「ーーーーーーー!!!!」…ん?」
そろそろ帰還しようとしていた時、向かいの通りで人集りが出来始めていた。
『どうしました?』
「あっちの方が騒がしいな…ここで変に離れたら怪しまれる。様子を見に行くか」
最後に一番値段の高い果物をテレポートさせてから、人の流れに沿って移動する。
「いつまでこんなことしなきゃいけねえんだ!」
大きな広場に出ると、作業着の男がスーツ姿の男を恫喝していた。
「貴方たちモドキの役割は
「てめえ…人様を何だと思ってやがる」
「“労働力”それ以外にありますか?」
今にも殴りかかりそうな勢いでその男は“後ろに倒れていた”。
(何が起きた?)
「はいはーい、治安維持部隊っすよ〜。フタバちゃんありがとう」
「
人混みが二手に分かれ、青髪とピンク髪の女性二人が歩いてくる。
「あれは、Sランクか」
『??あまり強そうには見えませんね』
「おそらく“収束”による高圧縮エネルギー弾ってところか…分子レベルのGエネルギーを圧縮し、指向性を持たせ発射する。実銃もビックリなトンデモ能力者だ」
『早口解説ありがとうございました』
久しぶりの原作知識で興奮しちまった。
切り替えて…フタバはスーツ姿の男をこの場から離れさせようと背中を押している。
一方でアヤは、
「マズイか…?」
じーっとこちらを捕捉している。
『10時の方向、来ますよ』
は?と、口を開ける暇もなく目の前に閃光が迫る。
「ぢぃっ!?」
咄嗟に左腕を出した事で灼かれるような痛みが走る。
『よくガードできましたね?』
「俺もよく…わかんねえよ」
黒い煙が立ち上る腕をダラリと下げフタバを確認する。
そこには余裕そうな笑みを浮かべたメスガキがいた。
「指向性を持たせるのに特定の動作を必要しねえのかよ…化け物が」
「君、登録無いっすよね。何者だ」
こちらには近づこうとしないか。
『これは不利的状況ですね。急ぎ帰還しましょう』
「また会おうか。
そう言い残し、光となって消えた。
謎の男は光となって消えてしまった。
「逃したか…。ごめん、フタバちゃん」
「しょうがないよ〜正直私たち以外の人類って初めて見たかも…それより目は大丈夫そ?」
「心配ないよ。能力は使ってないから」
はへ〜と感心してる彼女の頭を撫でる。
『K-30港で巨大生命体の出現を確認しました。現在、リョウさんが対処に向かっています。以上緊急通信を終了します』
またか…最近の変異体は何かがある。
あの男の事もあるし出来る手は打っておこう。
「仕方ない…私達にできることをやろうか。フタバちゃんはこの通りにある店主の聞き込みをお願い」
「わかったぁ〜。アヤも気をつけてね」
トテトテと走っていく彼女を見送りながら住民の避難指示を開始する。
「貴方達も、最近の変異体はどうもおかしな進化を遂げています。能力の有無に関わらずに人類の生存の為、協力してください」
新入りの彼の心配をしながら、ここを後にした。
透き通るような青い海。
この港に似つかわしくない存在が一つ。
山のような背鰭を持った肉食恐竜。
その皮膚は爛れ、目の焦点が合っていない。
スピノサウルスのようなG変異体だった。
「チェェンジッ!ダイナミック!!」
対するは人類の守護者。
正義の黒鬼。
黒鉄の巨人が降り立った。
「海から攻めて来た変わり種が…焼き魚にしてやるッ!」
ーー駆ける。
最高速度でその拳を叩き込む為に。
だが、奴はそれを待っていたかのように、
“口から高圧の水流を放って来た”。
高出力の水はとてつもない破壊力を持つ。
「ちっ…!?ダイナミックカッタァァァ!!」
だが、巨人の左腕に装着されている刃が変形する。
その大きさは三倍にもなり、真正面から引き裂いた。
再び駆ける。
「ダイナミックスマッシャァァァァ!」
振りかぶった拳が当たる寸前、巨人の身体がブレる。
「なっ…!?」
勢いよく海から現れた黒い魚影が巨人の足に噛みつき、そのまま海中へと引き摺り込んでいく。
凄まじい速度で自分の狩場へと誘導する。
「ダイナミックビームッ!」
危険を察知してか、海の闇へと消えていく。
海底に降り立ち、周囲を警戒する。
「浸水してないのが助かったな…」
機体へのダメージはあまり無い。
だが、酸素も有限。
最悪Gエネルギーの変換により空気を生み出すことも視野に入れなくては。
突如、背後の流れが変わる。
凄まじい速度でこちらに向かってくる感覚。
「来やがったな!ダイナミックカッタァ!」
左腕の刃を伸ばし、迎え討とうとするが…
(…ッ!?鈍い……!)
水の抵抗力により速度が出せず、振り向く前に攻撃を許してしまった。
「ちぃッ…!」
だが、この海中に引き摺り込んだ正体を掴む。
鮫や鯨に似た巨大生物がそこに居た。
「嘗めんなよ…三枚おろしにしてやる!」
一旦距離を取られるとこの暗闇に紛れて見失ってしまう。
(奴のパターンは捉えた。次に来た時がお前の命日だ…!)
再び同じ感覚。
背後からの奇襲と判断し、ギリギリまで反撃を行わない。
(まだ………まだ……)
そのプレッシャーを肌に感じながらも、一瞬の
一際流れが大きくなる。
ゴポゴポと泡立つ音が聞こえる。
(ここだッ!)
「ダイナミックカッタァ!」
振り被らず、刃だけを伸ばし串刺しにする。
……筈だった。
「ッ!?」
上からの奇襲。
先程まで陸地にいたはずのスピノが海面から潜り込んできた。
「ダイナミックビームッ!」
一手遅かった。
頭上に放った光は躱され、伸ばした刃も空を切った。
凄まじい衝撃が襲う。
「がっ…!?」
喰らった損傷が大きく、海底に倒れ伏す。
残存エネルギーも半分程に減少した。
「油断した、まさか2体で攻めてくるなんて」
その時、HUDに何かが表示された。
「danger…?危険アラートって何に対してだ?」
『オペレーターGより、リョウさんに緊急通達!正体不明の高エネルギー反応を検知しました。今すぐ離れてください!』
通信の直後、海面から放たれた光が一閃。
海を割ったその光から現れたのはーーー
「二体一とは下品だな。来いよ、相手になってやる」
竜の頭を胸に付けた、漆黒の機体だった。
やっべえ…大ピンチすぎて、割って入っちまった。
「腕の不調は治ったようですね。稼働時間残り120秒、早めに片付けましょう」
Gエネルギーを受けると何故だかわからないが負傷した部位が癒やされるらしい。
これもしかして、癒やされてるんじゃなくて作り替えられて……いや、今は考えるのはよそう。
「ああ、雑魚相手に手間取るわけにはいかない」
両腕に格納されているドラゴニックブラスターを展開する。
「展開完了。どちらに撃ちますか?」
「推定モササウルス。逃すなよ」
スピーカーのスイッチを入れる。
「こっちのデカブツは任せろ。トカゲの相手はお前がやれ」
「は?…いや、アンタは」
「時間を無駄にできない。任せた」
通信を切り、二本のレーザーを発射させる。
二つの光は海を断ち、真っ直ぐ敵へと迫る。
奴が大口を開けたその瞬間、体内の暗闇へと光は掻き消えていってしまった。
「レーザー消滅。残り稼働時間90秒です」
「雑魚にしてはやるな…砲門を増加し、奴のコースを絞るぞ」
両腕を突き出しドラゴニックブラスターの銃口を変形、各砲門を三つに増加させた。
今までのが収束の砲撃ならば、奴に対抗できるのは拡散の砲撃。
魚を網で捕獲するように、光線で外側から包囲し奴の進路を固定させる。
「出力10%。拡散砲撃発射します」
本来あり得ない事象。
レーザーが放物線を描き敵に向かって放たれた。
奴の動きは直進に限定された。
「接敵と同時にクワルナフデプリヴェーションを使用する」
「わかりました。ライトドラゴニックガントレットを限定解放します」
右手を引き、Gエネルギーを極限まで溜める。
次第に赤熱し、接敵と同時に解放した。
奴に触れた箇所から煙を上げ溶け始める。
重く低い苦悶の声を上げて消滅していった。
「辞世の句にしては平凡だったな」
「戦闘続行不可能。速やかに帰還しますよ」
「もう少し余韻を感じていたかったのだけどな」
左前方のレバーを回し、機体を変形させる。
人型の姿から三ツ首の魔龍へ、巨大な翼を翻し深いの海の底から空へと駆けていく。
「御膳立てはしたんだ。せいぜい踏ん張ってくれよ」
富士へと帰るその魔龍は雲へと消えて行った。
「あいつなんだったんだ…?」
恐るべき速度でこの場を離れた魚野郎と謎のロボット。
だが、これで
「最初と同じになったなトカゲ野郎!」
未だ決めては無い…それなら
「オペレーターGに連絡!岸への方角を教えてくれ」
『オペレーターGよりリョウさんへ。8時の方向に300mです!』
よし来た!
「ダイナミックアンカァァァァー!
指定されたポイントに向かって錨を放つ。
錨が掛かると同時に奴も胴に噛み付いてきた。
「かかったなマヌケぇ!」
錨のチェーンを巻き取り岸へと浮上していく。
「てめえはルアーに掛かった魚も同然!このまま釣り上げてやるぜ!」
勢いよく水面から飛び出し着地する。
「しっかり咥えてろよ!ダイナミックゥゥ…ファイヤァァァァァ!」
腹部から放たれた炎は奴を包み込み灰と化した。
「焼き魚の完成だぜ」
水飛沫を上げ巨大な虹がかかった。
「ふぅ…今回もダメでしたね〜」
暗い部屋の中、モニターを見つめる影が一つ。
クシャポイと、丸めたティッシュを投げ入れる男。
「S-PRSのアプローチは良かったね。デコイとしての役割を果たしてたし、奇襲性能も高かった。S-MRSも得意の海中戦で優位に立ててたし、あのままやれば勝ってただろうね」
そして気になるのは…
「ようやく尻尾を掴めたって感じだね。S-PRDを殺った犯人、ドラゴンタイプのロボットか」
アレが放った必殺技は正気じゃない。
体内にある水分を沸騰させ、瞬時に溶解。
あんなエゲツない武装何食べたら思いつくんだろ。
「それとも、構想の基礎が他にあるのかな…?どちらにしても生物兵器を使う僕の天敵って訳だ」
仕方ない、特攻兵器を作られるのは敵サイドとしてお約束だ。
「データは十分に取れたし、そろそろ次のステージに進めますかね」
不気味な思惑が街を包もうとしていた。
次回の更新日は未定ですが、完走まで頑張ります。