天国には理想郷がありまして ボツネタ集   作:空飛ぶ鶏゜

19 / 55
天丼は食わずに捨てられる

 真選組屯所前。

 何度来ても嫌な気分が抜けない。

 真選組自体は好きなんだけどなぁー。

 

「こんにちはー」

 

 門の前で、立ち番をしている隊士に声を掛ける。

 

「こんにちは、何か御用ですか?」

 

 私の事を知らないのか、忘れてしまったのか普通に声が返ってきた。

 

「土方さんか近藤さんに用があるんですが、会えます?」

「局長は外出中ですが、副長ならいますよ。少しお待ちください」

 

 しばらく待った後通されたのは、多分土方さんの私室兼、副長室。

 

「こんにちはー」

 

 こちらをチラっと見た後、目の前の書類の山に再度向かう。

 

「こんにちはー」

 

 こちらを見ることもしない。

 

「こ・ん・に・ち・は!!!!」

「うっせー!!!」

 

 耳元で叫んでみたらようやく聞こえたみたいだ。

 まだ諦めずに書類に向かおうとする。

 一応義理で顔だけ出しに来たので、もう帰ってもいい気もした。

 でも、なんか悔しい

 

「耳遠くなりました? 三十路」

「まだ三十路じゃねーよ!! テメーこそ口悪くなってんぞ、クソガキ」

「飼い主の影響ですかねー、まったくクソ天パですねアイツは」

「他人の所為にしてんじゃねェよ、あー、クソッ」

 

 見事に反応してくれた。

 反応してしまったのが悔しかったのか舌打ちをする。

 

「戻ってきたのか」

「はい、つい先日。挨拶が遅れました」

「それは止めろ」

 

 改めて三指を付こうとすると止められた。天丼を止めるとはなんたる横暴。

 

「チェッ……なんかあんまり驚きませんね」

 

 悔し紛れに舌打ちを返す。

 

「ザキの奴から聞いてる」

「あ、お土産ないですよ」

「話がコロコロ変わるな、人の話を聞けよ! B型かオメェは!」

 

 諦めてタバコに火を付ける土方さん。

 ふぅーっと一息着いてこちらをじっと見る。

 なんだろ。

 

「すみません、もう心に決まった人がいるんで、そういうのはちょっと……」

「……なんか変わったな」

「色気出てきました? やっぱり? わかります?」

「まあ、悪い方向じゃねェな」

「ボケ殺し止めて下さい。なんか恥ずかしいじゃないですか」

 

 ククッと笑われた。いや、マジで恥ずかしい。

 

「ねぐらは見つかったか」

「十分過ぎるほどの場所が見つかりました」

 

 それ以上仕事の邪魔をするのもアレだったので、そうそうにお暇する事にした。

 

「総悟の奴には会ってかねェのか」

 

 帰り際掛けられた言葉にドキリとする。

 能面のような顔がちらつく。未だに私は吹っ切れてはいない。

 

「んー。また今度で」

「そうか」

 

 土方さんは短くそれだけいうと再び書類の山に向かい始める。

 それを横目で確認しながら、部屋を出た。

 今度っていつだろうと思いながら、屯所から万事屋への道を歩いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。