「はい、今から会議をはじめまーす」
銀さんの声掛けで集められた第x回坂田家家族会議。
あれ? 万事屋会議の方???
どちらにせよ会議なんて開くような事ってなんだろう。
私も? と指を指すと、勿論と返される。
私も万事屋の一員として数えられているのかと思うと、恐れ多い気持ちと、嬉しい気持ちでお尻がモゾモゾしてしまう。
「今日の議題はコチラ」
そう言って、居間の机の上に取り出されたのは、来月の日付が書かれた、食事当番表。
そーいえば、万事屋の食事って当番制だったなと思い出す。
「キリ、お前も万事屋の一員って事で来月からは当番宜しく」
銀さんの声に、背中を冷たい汗がツーと流れる。
「あ、僕この日お通ちゃんのイベントあるからダメですね、あ、こことここも」
「あ、ズルいアル。私もこの日よっちゃんと遊びに行く約束しているアル。あとここは姉御と……」
「オイオイお前ら待てよ、俺だってこの日は月一度のデザートバイキング割引デーだから……」
気がつけばポンポンと日付が埋められてく。
ちょっ、ちょっとまって……。
聞くは一瞬の恥、聞かぬは一生の恥。ちょっと違うけど手を挙げる。
「せんせー」
「あ? センセーはトイレじゃありません」
「んなこと言ってないから! じゃなくて……私! 料理したことありません!」
静まり返る一同。
「オイオイ、18にもなって料理したことないって、最近の学校はどういう教育してんだ?」
「なんでもかんでも学校の所為にしちゃダメネ」
「偉そうに、お前も料理できねーだろうが」
「私だって卵かけご飯作れるアル。バカにすんじゃねーヨ」
「ほ、ほら、あ、姉上だって料理できないですから」
「じゃあ、こいつもアレかダークマター製造機か?」
「全部聞こえてますからー」
抗議しても止まらない、ヒソヒソ会議に少し心が折れそうになる。
悔しくなって、机の上にある、銀、新、神と書かれた紙にキの文字を追加する。
「いいもん、皆の期待に応えて、ビシバシ、ダークマターでも何でも作っちゃうから」
「新八。後のことは任せた。俺来月修行の旅に出るわ」
「ええ!? 銀さんちょっと銀さん!」
「私も、伝説の酢昆布探して旅にでるアル」
「万事屋解散の危機ですかねコレ」
「キリさん!? 他人ごと!? ちょっと! 銀さん荷物まとめないで下さいって。神楽ちゃんも!!」
「もう少し、あ、そーじゃなくてですね……」
「だから……だぁあ! ちげーよ! 貸してみろ」
「キリ、不器用アルなー」
結局はダークマター回避のため、万事屋お料理教室が開催されました。
でもさ、なんで初心者に魚を下ろせとか無理難題させるんだろう……。
三枚に下ろそうとして、包丁の刃が向こうに突き抜けてしまいましたがナニカ?
包丁の先で背骨を感じろとか意味が分かりません。
「なんかハードル高くないこれ?」
「中途半端に出来るのがダメですね。なんかもう少しさせちゃいたくなるんですよねー」
「やったことないつーからどんなレベルかと思ったけど、なんか普通に出来ないレベルだからなー」
「平々凡々アルな」
やったことはなかったけど、ある程度は普通にできた。
まあ……献立を決めてもらって手順を丁寧教えてもらえれば、というレベルだが……。
間違っても包丁を持つ手を包丁で切るとか、切った野菜が爆発するという事はない。
それが仇をなしたのか、レベルを一気にあげようとする面々。
パワーレベリング過ぎます無理です。
「もう少し初心者向けの料理にしません?」
ずたぼろになった魚を前に、提案すると、しゃーねーなと言われ、結局ぶつ切りにして、煮付けになりました。
夕食を囲みながら品評会。
「意外と普通だな」
「まあまあですね」
「新八みたいな味アルな」
「ちょ! それってどういう意味!?」
「言わないと分からないアルか?」
炊事洗濯が得意で、いざという時は男前なショタの味って意味ですか? 新神も好きですよー。ってきっと違う
「いやいやいや、初めて料理した割には十分できてるじゃん! 頑張ったよ私! 少し褒めようよ!」
「期待はずれアルね」
「もう少し突き抜けた感じが欲しかったですね」
「ラスダンでドキドキして宝箱開けたら薬草だったみたいな? 逆にミミックの方が良かったみたいな?」
魚をほぐして一口食べてみる。
美味しいじゃん。手伝ってもらわなかった悲惨な事になってたと思うけど……。
普通なのがそんなにいけないか。こんちくしょー。
「それにしても意外ですね、キリさん何でもできそうなのに」
「買いかぶり過ぎですよ、新八君。キリさんは実は何もできません」
嘘だらけの自分を買いかぶってくれる、純粋な新八君の視線が痛い。
誤魔化す様に、ご飯に魚の煮付けを合わせて食べる。
少し下げた視界に、新八君の綺麗な箸使いが入ってくる。
皆で料理をしていて気付いたことがある。
新八君の手は、まだ丸みの残る、でも骨ばっていて、男の子の手。
銀さんの手は、ゴツゴツと堅く大きく、男の人の手。意外と、爪は丁寧に短く切りそろえられている。
神楽ちゃんの手は、真っ白で、丸みを帯びていて、桃色の爪が可愛い。
私の手は、白魚の様なとまでは行かないが、細い指。形の良い爪は少しお気に入り。
でも一番の違いは、その手にできた刀傷や、火傷跡、タコ、歴戦の爪あと。
私の手にあるのは、ペンだこぐらい。
バレているのだろうか、竹刀だこも、刀傷もないこの手の事を。
何がバレてて何がバレていないんだろう。
「ああ! 神楽! 人のオカズ盗んじゃねー」
「ふふふ、早いもの勝ちアルよ!」
「もー、銀さんも神楽ちゃんも静かにごはん食べれないんですか!?」
「新八君、頂きます」
「え!? ちょっ、キリさんまで!?」
「さっきの仕返しです」
「銀さんや、神楽ちゃんの方が酷かったですよ!?」
「あー、あれだね三倍返しされそうだから新八君で」
「ちょ! ひっどっ!? こうなったら僕も!」
恐怖を誤魔化すように悪ノリしてみれば、ノリの良い新八君が突っ込んでくれる。
きっと大丈夫。そう思えた。