天国には理想郷がありまして ボツネタ集   作:空飛ぶ鶏゜

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雨は誰にでも平等に降ってくる

「十八の娘と一つ屋根の下でね、やらしーことしてんじゃねーの」

「手篭めにしてるって噂だよ」

 

 時々聞こえるそんな声。銀さんは無視しろって言うけど、気にならない訳はなくて。

 

「キリさん、暑くないです? 浴衣。姉上のお下がりであれば貰ってきましょうか?」

 

 七分丈のパジャマで寝る私を気遣ってそんなことを言ってくれる新八君。

 

「んー。大丈夫だよ。冷え性なんだ」

「そうですか」

 

 嘘だ暑くて仕方ない。

 でも着物を着慣れてない私が浴衣なんて着たらきっとはだけてしまう。

 『やらしーことしてんじゃねーの』『手篭めにしてる』

 なんで大人って下卑た勘ぐりしか出来ないんだろう。死ねばいいのに。

 

 お風呂だって気をつけて入ってる。

 たまにはスカートだって着てみたい。

 着物だって祭りの時ぐらいは着てみたいなとか思ってる。

 それなのに何も見てくれない。バカな大人。

 

「済みません、買い物行ってもらってもいいですか?」

 

 新八君からのお願いごと。全然問題ない。

 

「はい、よろこんでー」

「未成年が、んな返事してんじゃねーよ」

 

――ペチッ

 

 銀さんに頭を叩かれた。

 

「銀さん、量が多いので一緒に付いて行ってあげて下さい」

「あいよー」

 

 スクーターだと帰り荷物が乗せられないので、歩いて行くことにした。

 

「今日もあっちーなぁー」

「そうですねー」

 

 本当暑くてたまんない。シャツの襟首が纏わりつく。

 

「お前暑くないの?」

「暑いって言ったじゃん。聞こえなかったの?」

 

 暑さで脳みそ溶けたかこの天パ。

 口に出すと倍返しになるので心のなかで呟く。

 最近学習した。口では銀さんに勝てない。

 

「第一ボタンぐらい外せよ、見てるこっちが暑ちーわ」

 

 トントンと自分の首もとを指さして言う。

 

「銀さんもその着流し脱げば? 見てるこっちが暑ちーわ」

 

 肩をトントンと指さしてみる。

 外せるものなら外したいよ。

 タンクトップになりたいぐらいだっつーの。

 

「これはオシャレなんで無理なんですぅ」

「じゃあ、私もオシャレなんで無理なんですぅ」

 

 子供染みた口調を真似する。

 暑いのにますます暑くなるような台詞。

 はぁーもうまじ無駄。

 

 買い物を終えてスーパーから出ると、先ほどまで殺人光線を出していた太陽が雲にやられてお陀仏になってた。

 ざまーみろ。じゃない。

 

「銀さん急ごうか」

「そーだな」

 

 そんな努力もむなしく、あと少しというところで雨に降られました。

 

「あそこの軒下かりるぞ」

「りょーかい」

 

 ダッシュで飛び込んだ軒下。降り続ける雨。

 ついてない。

 不幸中の幸いは、濡れて困るような買い物がなかったことぐらいか。

 

「銀さん持ってて」

 

 買い物袋を一旦銀さんに預ける。

 一人でも持てなくはない量。

 鞄からカーディガンを取り出して羽織る。

 あーもー最悪だー。モワッとして気持ち悪い。

 着合わせだって悪い。

 

「暑くねーの?」

「女の子は体冷やすと良くないからね」

 

 嘘です、暑いですよ。

 荷物を返して貰う。

 二人で空を見上げて天候を伺う。

 

「しばらく止まないかなコレ」

「そうだなー、天気予報晴れつってたんだけどなー」

「結野アナ最近的中率下がった?」

「んなことねーよ」

 

 降り続ける雨、あたりからは人影がなくなり、雨の音だけが響く。

 

「なぁ」

「んー?」

「誰も、んなに気にしてねーぞ」

「何の話ー?」

 

 『やらしーことしてんじゃねーの』『手篭めにしてる』リフレイン。

 

「こっちの話だ」

「そう」

 

 あーあ、早く止まないかな雨。

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