バイト先から帰ってくると『おかえり』と声がする。
『ただいま』と返せば、『お疲れ様』と声がする。
「幸せ過ぎて死んじゃいそー」
ソファーの背もたれに背を預けぐっと背伸びをする。
今日の食事当番は神楽ちゃん。
夕食が卵かけごはんというのも寂しい気がしたが、もう慣れた。
卵の割り方、醤油の量アレで意外と細かい。
楽しみに待っている。
今日は新八君は自宅で食べるようでいない。
というか、神楽ちゃんご飯当番の時、夕飯は高確率でいない。
美味しいのに卵かけご飯。
「「「いただきまーす」」」
神楽ちゃんはどこにこれだけの質量を詰め込むかという程よく食べる。
質量保存の法則はこの世界に存在しないのかもしれない。
「神楽ァ、お前さ、そろそろ卵かけごはん以外覚えろよ」
「TKG言うアルよ」
「言い方変えろつってんじゃねーよ! 他にほらあんだろ。キリこいつになんか教えてやれ」
急に話題を振られて慌てて口の中の物を飲み干す。
「え? 私も神楽ちゃんと料理レベル変わんないよ?」
「だからいいんじゃねーか。同じ者同士なんか作れよ。なんかこう上手く行くだろ」
相変わらず銀さん理論は無茶苦茶だ。最後面倒くさくなって投げたし。
TKGは神楽ちゃんのアイデンティティなのに。
おかわりの卵が綺麗に割れたみたいで、やったネとか言ってる神楽ちゃん超可愛い。
「美味しいからいいじゃんTKG」
「そうネ。私三百六十五日TKGでも構わないアルヨ」
「へいへい。そーですね。もう銀さん何も言いません」
色々投げた銀さんが黙って卵かけご飯を食べる。
「神楽も大概だけど、おめーの舌も大概だよな」
「どーいう意味でしょうかー」
銀さんが、嫌そうに卵かけご飯を口に含みながらそんな事を言い出した。
「粗食に耐えうる立派な舌だつってんの」
「そーかなー。十分美味しいと思うけど?」
「どういう食生活してたの今まで」
「んー。粗食生活まっしぐら?」
ジト目でこちらを見つめる銀さん。
まあ、病院食ばっか食べてた私の舌は貧乏舌かもしれない。
なんでも基本美味しく感じられてお得なんですよ。
「ホームレスだったアルヨ。聞いちゃいけないね銀ちゃん。残飯あさったり、腐った飯食ってたアルヨ」
「そういやそうだったな」
神楽ちゃんのフォローが痛いです。そんな生活はしてません。
一口卵かけご飯を含む。
卵を一個しか消費しない私のために、美味しい卵を一生選んでくれる神楽ちゃん。
自分はいっぱい食べるから、一番美味しいのはきーやんに上げるヨという言葉が嬉しい。
だから、私には舟盛りのお刺身より、このTKGの方が美味しいと思うのですよ。