天国には理想郷がありまして ボツネタ集   作:空飛ぶ鶏゜

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へびのあし

 新八君が万事屋に来なくなった。

 シトシトと降り続く雨。

 

「銀さん、新八君何かあった? 風邪?」

「あァ? 知んねェよ。無断欠勤だ。クビにすんぞ……。ったく」

 

 カチャッと白を置く、パタパタと返される黒に、神楽ちゃんの顔が引きつる。

 無断欠勤? あの新八くんが?? いや、神楽ちゃんとオセロやってる場合じゃなくね?

 

「ねェ、銀ちゃん。アネゴもう帰ってこないアルか? アレから一度もウチに帰ってきてないって……なんか修行しているから帰れないって手紙がきたんだって」

 

 盤上の白が原因ではないだろう、曇った表情を浮かべる神楽ちゃん。

 

「花嫁修業。嫁ぐ前に色々勉強しなきゃならねーんだろ。なんせ柳生家っちゃ名家中の名家だからな玉の輿だよ」

 

 肩凝ったといいながら、銀さんが席を離れた隙にパタパタと盤上の白が神楽ちゃんの手によって黒にひっくり返される。

 妙さん、花嫁、柳生家。今日の天気は……雨。

 あーこれは柳生篇か。

 柳生九兵衛――九ちゃんからお妙さんをぶんどるお話。

 最近、バイトで万事屋の仕事一緒にしてなかったからなぁー。

 そう言えば先日、どっかの料亭の屋根直すって言ってたから、あれがバブルス女王の件だったのだろう。

 

「ジャンプ買ってくる」

 

 今週号のジャンプをさっきまで読んでた銀さんがそう言って出て行く。

 

「ちょっと散歩いってくるアル」

 

 雨だから外行きたくないって言ってた神楽ちゃんが出て行った。

 

 私はどうしよ? 窓から朝から降り続ける雨を見る。

 結論を知っている身としてはどうしたら良いのか。

 参加するには人数の問題があるし、大体わざと負けなきゃいけなくなるようなもんに手出しもできない。殺すために生かす、そんなことはしたくない。銀さんがいるんだし、私なんて手出ししなくてもきっと上手に纏めてくれる。わざわざ蝶の羽ばたきを大きくする必要もないだろう。

 頭で考える言い訳のオンパレード。

 けれど……貰った合鍵で戸締まりをして、小ぶりになった雨の中を駆けていく。

 

「可愛い九ちゃんに会いにいこっと」

 

 感情のままに、一歩だけ進めた世界。

 

――ワーワーワー

 

 あちゃー。もう始まってますね。私も天然パーマ流に入りたかったんだけどなぁー。

 メンバーは、近藤さん、土方さん、沖田さん……銀さん、神楽ちゃん、新八君。

 みんな揃ってる、帰ろうか一瞬そんな考えがよぎる。

 

「キリさんまで!」

 

 新八君が振り向きざまに、柳生流の門下生を倒す。

 見つかったらしょうがない。言い訳をしながらその乱闘に加わる。

 神楽ちゃんが、傘で相手を受け、力任せに吹っ飛ばす。銀さんは危なげなく、相変わらずどうやったらそうなるのか分からない動きで相手を翻弄し順調に倒していく。

 私は……どうしよう。手加減とか難しいんだよね。

 

「テメーなに、サボってんだ!」

 

 奪いとった刀で、避けたり受けたりしていたら。

 とうとう土方さんからお叱りがきた。

 

「生理痛が酷くて」

「オィイイ!」

「三十路のおっさんが顔赤らめないで下さい。キモいです」

「まだ三十路じゃねェエエ!」

 

 新八君も顔赤らめてるけど、いいや、可愛いから。

 皆それぞれ、捻くれた言い訳を吐きながら、闘っている。一緒にいたいという思いが伝わってくる。

 お妙さんの人望。愛されてますね。冷たく感じてた雨が温かくなった気がした。

 敵わないと悟ったのか、門下生達が退いていく。

 

「銀さん」

 

 それぞれの言い訳に答えるように、呟かれた新八君の声は少し震えていた。

 

「僕は、姉上が幸せになれるならだれだって構やしないんです。送り出す覚悟はもうできているんだ。泣きながら赤飯炊く覚悟はもう、できてるんだ。……僕は仕方ないでしょ。泣いても……。そりゃ泣きますよ。でも……泣いてる姉上を見送るマネだけは、まっぴら御免こうむります。僕は姉上にはいつも笑っていてほしいんです。それが姉弟でしょ」

 

 雨でごまかせない涙を流しながら悔しそうに言う新八君……。

 ちらりと沖田さんを見る。相変わらずのポーカフェイスでその考えは読めないけれど、人一倍自分勝手な言い訳裏にはミツバさんへの思いが隠されてるのではないかとそう思った。笑った姉上を送り出す。叶わない願いにこの人は何を思うのだろうか。

 

「新八覚えとけよ。俺達ゃ正義の味方でもてめーのネーちゃんの味方でもねェよ。テメーの味方だ」

 

 皆好き勝手言って歩いていく。

 私は……温かい雨が急に冷たく感じるようになった。自分の味方になってもいいのだろうか?

 

 

――ガッシャン

 

 道場のドアを開けた瞬間、卵かけご飯が飛んできた。

 あーあ、神楽ちゃん怒ってる。頭から卵かけご飯被った挙句、沖田さんから排卵日か? と聞かれりゃ怒るよなぁ。

 怒りに任せて投げられた沖田さんが人質に取られた……。

 

「……オラ、獲物捨てな。人質が……」

 

 柳生流四天王が一人、南戸さんの言葉が言い終わるか終わらないかのうちに、一斉に沖田さんに向かって武器を投げ放つ皆。

 真剣含まれてますよー? 躊躇ないなぁー。沖田さんの人望。憎まれてますね。

 私は後が怖くて何も投げれませんでした。

 あ、九ちゃん出てきた。

 凛とした佇まいが似合う、美人さん。

 

 

 

 九ちゃんのルール説明が終わった。

 六対六のサバイバル戦。どちらか一方の大将の皿を割ったら勝ち。

 優勝チームがお妙さんを貰う権利があると。

 人を賞品扱いするのはどうかと思うんだけどな。

 

 相手は、柳生流四天王と九ちゃん、敏木斎――九ちゃんのおじいちゃん。

 でも、こちらは……。

 

「そちらは七名でも構わない! 君達がいくら集まった所で僕らの敵ではないからな!」

「そんな卑怯なマネできるかァアアア!!!」

 

 九ちゃん男前。

 正々堂々が売りの新八君は納得できませんねはい。

 私もその提案は飲めないんだよねコレ。

 

「はいはーい、私、生理痛が酷いのでベンチで控えてます」

「テメーまだそのネタ引きずってんのか!?」

「キリちゃんこんな所きちゃだめじゃないか。腰とか冷やさないように……」

「だからキモいですって、近藤さんも顔赤らめない」

 

 色々言われたけど、結局提案通り私はメンバーから外された。

 わーわーぎゃーぎゃー騒ぐ皆を尻目にいつの間にか姿を消した銀さんを追って、私も姿を消す。

 土方さん大変だよなー。あのメンバーまとめようとするの無理っしょ。

 

「銀さんみーつけた」

 

 母屋から離れた別棟の台所で甘味を探している銀さんを発見した。

 泥棒?

 

「お前何で参加しなかった」

「未来を知ってるからかな? 私が参加したらカンニングみたいなもんでしょ」

 

 こちらを振り向きもせず、がさごそと台所を漁る。

 

「銀さん、未来が見えるって怖いだけじゃなくて、つまらない事も多いね」

「つまんねーんだったら壊しちまえばいいじゃねーか」

「どっかの中二病患者みたいなこと言うねぇ。ま、そーしてもいいんだけど、まだ少し怖い。饅頭発見!」

 

 少し変われた自分。きっと銀さん達のお陰。

 

「お、いーもん見つけてんじゃねェか」

「銀さん、柳生家観光ガイドツアーと饅頭どっちがいい?」

 

 一応最後の慈悲で選択肢を与える。

 以前の私だったらきっと選択肢なんて用意しなかった。

 

「あァ? んなもん饅頭に決まってんだろ」

「ありゃりゃ残念」

 

 しょーがないか……。見つけた饅頭を手渡す。

 

「銀さん、今朝の豆パン腐ってたんだ。本当はそれを銀さんが食べる予定だった」

 

 捨ててしまった豆パン。代わりに食べたオニギリ。

 もぐもぐと貰った饅頭を食べる銀さん。

 

「で、お腹壊してトイレに引きこもる予定だったんだけど……」

 

 慌てて饅頭を吐き出そうとする。

 でも、きっともう遅い。

 

――ギュルルルルッ

 

「テメー!!」

「ハハハハッ、ごめんごめん」

「覚えておけよォオオオ!!!」

「銀さん! そこ右行くとお手洗いあるよー!」

 

 トイレに猛ダッシュする銀さん。

 紙切れトイレの場所もちゃんと案内しておく。

 ……間に合うよね? うんこ漏らした銀さんとか見たくないんだけど。

 気を取り直して次行ってみますかー。

 

 

「お妙さん、こんにちわー」

 

 屋敷の一室でお妙さんを発見した。

 麗しき囚われのお姫様。

 

「あら? 貴方は確か……」

「いつも新八君にお世話になっています。万事屋で働いている黒島キリです」

 

 何度か合ったことはあるけど、面と向かってしゃべるのは実は今回が初めて。

 

「汚い所だけど上がってちょうだい」

「ほんっっとう汚い所ですねぇー」

 

 周りをみると台風でも来たのかと思うぐらいモノが散乱している。

 暴れまくったかなこりゃ……。

 

「新八君が元気ないんで様子見にきちゃいました」

「そう新ちゃんが……」

 

 強がった笑顔じゃなくて、少しうつむいた寂しい笑顔。

 あらら……。どーしましょ。

 

「お妙さん……もし、ですよ? もし過去に戻って過ちを直せるとしたらどうします?」

「どうって、そんなことできないもの。考えるだけ無駄よ」

「強いですね」

「私は全然強くないわ……」

 

 私だったらあーでもないこーでもないって考えるけど、迷いなく答えるお妙さんはとても強い。

 そして自分の弱さも知っている。本当強い人だな。

 九ちゃんが惚れるのも分かっちゃうよ。

 

「そろそろ私行きますね」

「そうね、見つかったら大変よ。気をつけて帰ってね」

「もう少し辛抱してくださいね」

「どういう……?」

 

 さてと、どうすっかなー。

 戸惑うお妙さんを置いてトンと、縁側から外に出る。

 困った時の九ちゃん頼みかな?

 

 

 土方さんと九ちゃんが竹林の中でやり合っている。

 土方さん押されてるなぁー。

 鬼の副長の癖にフェミニストですか。

 いい男ですなぁ。

 ザリッとわざと足音を立てて近づくと、双方気付いた様で一瞬だけこちらに目を向ける。

 

「こんな所でどつき合いとは若いっていいですねー。青姦? 私も加えて3Pのマニアックなプレイに挑戦しませんか?」

「ざけんな。くっ」

「あーあ、フラレちゃったってことで、2Pですね」

 

 軽口を叩くがまったくもって手は止まってくれない。

 私と違って二人共無駄がなくて綺麗な剣筋をしている。

 

「って事で、土方さん少し眠っててくださいね」

 

 間に割り込み両手で双方の木刀を受け止める。

 

「なっ」

「テメーっ……」

 

 土方さんの木刀を受け止めていた手を離し、電撃を打ち込む。

 ずるっと倒れこむ土方さんを受け止め、そっと寝かせる。

 ついでに皿も割っておく。

 これ以上やりあっても怪我が重症化するだけだしね……。

 

「なんのつもりだ」

「少しお話しません?」

 

 切っ先を油断なくこちらへ向ける九ちゃん。

 敵意がないことを示すために両手を上げると、ゆっくり刀を下ろしてくれた。

 

「九ちゃん。もし過去に戻って過ちを直せるとしたらどうします?」

 

 両手は上げたままに、お妙さんに与えた質問を繰り返す。

 

「僕は、僕のやったことを後悔したことはない。だからその質問は無意味だ」

 

 九ちゃんも強い人だ。私が立ち入る事のできない、絆。眼帯に覆われた古傷。

 依頼があれば治そうと思ったのに、万事屋としてなら許される気がしたのになぁ。困った……私は私の味方になれやしないのに。

 

「そーですか……。ありがとうございます。あ、土方さん預かっていきますね」

 

 原作よりはまだマシな状態の土方さんを見つめる。地面と顔面をヤスリがけは少し可哀想だ。

 

「僕も聞いていいか? 君は強い。なんで参加しなかったんだ?」

 

 悔しそうに見つめる目は、強さへの憧憬かな。誤魔化しだらけの私に向けられるその視線は居心地が悪くて、土方さんを抱き起こす事にかこつけて、その目から逃れる。

 

「私なりのルールがあるんですよ。よっこいしょっと。それと私は強くないよ……」

 

 未来を壊す覚悟も、自分の味方になる覚悟も、踏み込む覚悟も、受け入れる覚悟も、何一つ決めきれない、剣筋もクソもない滅茶苦茶な剣。それが私の持ってるもの全てだ。強さなんて一滴も混じる余地はない。強さを手に入れたなんて勘違いだ、未だに私は独りで立つことすらできやしない。

 そんな考えを振り払い、土方さんを抱き上げる。

 お姫様だっこって身長差があると間抜けだね。特に男女逆だと。

 

「あ、私、かぶき町で万事屋やってるので、何かご相談事、ご依頼あれば一度来てください。可愛い女の子のご依頼は格安で承りますよ?」

 

 隙あらば営業もやるなんてなんて気が利く社員なんだろう。

 驚いたような顔をする九ちゃんを後に、土方さんを連れて母屋の方に歩いて行く。

 

 

 

「土方さん!?」

 

 ちょうどいいタイミングみたいだ。

 新八君と泣いているお妙さんがいた。

 心が痛むな。泣かせたい訳じゃないんだけど。

 

「ごめんね、私がやっちゃった」

「何で!?」

 

 心がチクリと痛む。それを無視して言葉を紡ぐ。

 

「そうそう、少し教えてあげるね。九ちゃんは可愛い女の子だからあんまりイジメちゃ駄目だよ?」

「知っていたの?」

「どういうことですか姉上!」

「そういう事だ……」

 

――ザリッ

 

 音がして振り向くと九ちゃんが立っていた。

 

「九ちゃんお帰り」

「オイ、左目ってどういうことだ! それに女って……」

 

 土方さんを縁側に寝かせながらそう言うと、激高した新八君が九ちゃんに突っかかる。

 良かった。どう話を振ろうかと思ってたけど、自分から聞いてくれたみたい。

 

「お妙ちゃん、そんな事をまだ、気にしていたのか。新八君、君はしらないと思うが、幼い頃僕は左目を失ってね。そこにお妙ちゃんも居合わせていたんだ。責任を感じる必要はないといったのに。僕はむしろ感謝している位なんだ。あの時があったから今の僕はある。左目と引き換えに僕は強さを手に入れた」

 

 凛と胸を張り、左目を失った痛みなど感じられない姿。

 本当に強いなぁ。私なんてちょっと責められたぐらいで揺れるのに……。

 新八君今度こそ怒っちゃったよなぁ。一発殴られたら許してくれるかな。

 そう思っていたら、隣から低い声が掛かる。

 

「オイ」

 

 土方さん起きたみたいだ。

 

「起きました?」

「テメーどういうつもりだ」

 

 立ち上がって、木刀を構える土方さん。

 こっちもオコですね。

 先にこちらに殴られておきましょうかね。

 身体制御解いても生きてられるかな? 木刀だしきっと大丈夫……? 本当?

 

「お詫びに、膝枕でもしましょーか?」

「ざけんなよ」

 

 飛びかかってくる

 

『アレは人一倍負けず嫌いだ手ェなんて出したら殺される』

 

 近藤さんの台詞を思い出す。死なないように頑張ろう。

 

――ビュッ

 

 風切り音を立てて迫った木刀は、寸前で止められる。

 

「くそっ……。貸しにしといてやる」

 

 ありゃ……負けず嫌いの前に、フェミニストだったかなこりゃ。

 居心地の悪い物が胸に溜まる。貸しとか借りとかは余り得意じゃない。

 

「キリィイイイ! テメー後で浣腸プレイだからなぁあああ!」

 

 銀さんの声に振り向くと、とんでもない事を言いながら、おじいちゃんとやり合っているのが見えた。

 新八君と九ちゃんも互いに、やり合っているのを見ると四ツ巴戦になりつつある様だ。

 

「いや無理、ってか謝ったじゃん!!」

「ぜってー許さねェ覚えてろよ!!」

「テメェら人が戦ってる間何をやってやがったんだ?」

 

 ふと見ると周りの視線が痛い。

 土方さん、お妙さんそんな目で見ないで下さい。

 違うんです。

 

「貴様らァアアア!! バカ騒ぎは止めろォ!! これ以上柳生家の看板に泥を塗ることは許さん!!」

 

 そんな空気を変えてくれるようにパパ上が門下生をけしかける。

 ナイスパパ上。

 時を同じくして、雪崩れ込んでくる、近藤さん、沖田さん、神楽ちゃん。

 神楽ちゃんのフォローでもしようかな。

 といっても手加減上手くないから余りできないけども……。

 

 横目で、銀さん達の試合を盗み見る。

 本当に綺麗な太刀筋だ。

 おじいちゃんと、九ちゃんはまるで舞を踊っているようで、銀さんも押されてはいるが、なんでそう受けたのか? と思ったら、それが次の動作に繋がっている。

 新八君は基本通りお手本見たいな動きで……。

 

――ゴシャッッ

 

 新八君が吹き飛ばされた。

 

「大将撃沈。これで終わりじゃ」

 

 終わったとばかりのおじいちゃんの態度に、バカにしたような口調で銀さんが語りかける。

 

「バカ言ってんじゃねーよ。じーさんよ……アンタの孫は護りてー護りてー自分の主張ばかりでテメーがいろんな誰かに護られて生きてることすら気付いちゃいねェよ。そんな奴にゃ誰一人護ることなんてできやしねーさ」

 

 銀さんの言葉が耳に痛い。気が付いてるから許してよと、自分を誤魔化す為の言い訳を思い浮かべる。

 誰にも護られたくないんだけど、皆を護りたいのは本当だからさ。

 

――ガシャァアア

 

 九ちゃんが吹き飛ばされる。

 

「新八テメーにはよく見えるだろ護り護られる大事なモンがよ」

 

 それからの一合一合は本当に綺麗で、力強くて……。

 最後に立っていたのは新八君。

 かっこいいなぁと思った。

 

「アンタは結局何しにきたんだ?」

 

 片足を庇うようにして、沖田さんが興味のなさそーな、どうでもいい様なそんな口調で尋ねてくる。

 

「んー。野次馬かな?」

「そうかィ」

 

 結果的にそうなってしまったそれを伝えると、蟻の触覚程しか無かったのであろう興味を失い、「土方さーんおんぶしてくだせェ」と行ってしまった。まんざらでも無さそうな土方さんに、「こりゃぁ楽でいいや。そのまま一生俺の足として働いてくだせェ」と捻くれた事を言って振り落とされそうになっている。きっと沖田さん流の照れ隠し。

 

「オラ、行くぞ」

 

 泣きながら抱き合うお妙さんと九ちゃん。

 もう仕事は終わったとばかりに、ダルそうに声をかけてくる我らリーダー。

 

「お腹減ったね、そろそろ豆パン以外が食べたいなぁ。銀さん」

「居候の分際で我儘いってんじゃねーよ。それよりも浣腸プレイ覚えておけよ」

「嫌だな無理だって」

「浣腸ってどういうことですか!」

「きーやんはカンチョープレイが好きアルか?」

「それ、なんか艦長のコスプレしたプレイに聞こえるね」

「キリさん変なこと言わないで、神楽ちゃんも忘れる!」

 

 九ちゃんを泣きながら抱きしめるお妙さんをチラリと振り返る。

 左目なんてあってもなくてもきっと大丈夫。そう思ったのは誤魔化しか真実か。人の心と秋の空っていうしね、分からなくなった自分の心をそう嘯いて、結局自分を誤魔化した。

 

 近藤さんの結婚式はバイトで行けなかった。

 お妙さんが乗り込んで阻止したみたいだけど、バナナ入刀みてみたかったなぁ。

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