土煙が立ち込める。目深に被った帽子の影に隠れ、その表情は読めない。
これは女の意地を掛けた一対一の勝負。
「きーやん! いくアルヨ!」
「おっしゃこい!!」
――カキーン
「たまやー」
「また打たれた!!! こんちくしょー、悔しいアル!!!!」
「じゃねぇえええええ!!!」
手をひさしにして、遠く飛んで行く白い玉を見上げていると、後ろから盛大にツッコまれた。
「お前これで何球目だよ!」
振り返ると、少し小太りな、元かぶき町の帝王よっちゃん。ちなみに今はかぶき町の女王にその座を奪われてしまった。
そんな元帝王が拳を振り上げて怒りを表している。もともとが色白なので、怒ると直ぐ顔が赤くなるのが面白い。
現在、約束通り、神楽ちゃんと一緒に野球中。
「いやいや、そんな事いっても、全力でやらないと神楽ちゃん怒るしね」
「玉探すのも疲れんだよ! 今度はお前探して来いよ!」
ビシッと玉が飛んでいった方向へ指を刺さすよっちゃん。
ちなみに、全力でっていっても本当に全力でやると玉が砕けるので、程々に全力って所だ。それでもうっかりすると砕きそうで怖い。
「しょうがないな~。じゃあ、君代走よろしく~」
ぽんと肩を叩き、悔しそうな神楽ちゃんに手を振り玉を探しに行く。
といっても神楽ちゃんが投げる玉は誰も打てないし、私は私でアレだしね……? 色々取り決めがあって神楽ちゃんと私は攻守合わせて3回だけ代打で出れるピンチヒッター的な役割となっている。子供も中々色々考えるものである。
私を出すタイミング、神楽ちゃんを出すタイミングをそれぞれお互い読み合って、いい勝負を繰り広げている。
今のところ神楽ちゃんと私はイーブン。
「あれ? 銀さんも、もしかして野球しにきた?」
ボールを探しに行くと、いつもの様に着流しから片腕を抜き、気だるげな銀さんが立っていた。
「ちげーよ、俺はアレだよアレ。大人の
濁点を抜けば世界を示す言葉になるのに惜しいと思っていると、銀さんはその足元に転がるボールをほいっと投げてよこす。
「なーんだパチンコですか」
「そんな気の抜けた言い方すんじゃねーよ。れっきとした戦争なんだよ」
それを受け取った私。ここで止めないと新八君が怒るなぁ~と思い、良い方法はないかと策を巡らす。いや、銀さんが怒られるのはいいんだよ自業自得だから。でも銀さんの事だ、上手く問題の論点をすり替え、ここで私が見過ごした事を理由に、私までお説教の巻き添えにしそうで嫌だ。
「銀さんも一発やってかない?」
「テメーみたいなナイチチ相手に誰がやるかよ」
「そっちのやるじゃなくて、玉の方だよ」
「棒だか玉だかしんねーけど、俺は興味ないのよそーいうこと」