その日、銀時はかぶき町をぷらぷらと歩いていた。
「ちょっと晩のおかずを一品増やしてやろうと思っただけだっつーのに」
生活費として分けておいた金に手をつけたのがまずかったのか、それともここ一週間ばかりまともな仕事をしていないのが悪いのか。キリが聞いたなら両方だと答え、二人と一匹だけつれてファミレスにでも行くのだろう。
アイツ俺には容赦ないからなと、銀時は更にぶちぶちと文句を垂れる。
「アレ、旦那じゃねーですか。今日もプー太郎してんですかィ? いい身分ですが、まったくもって羨ましくねーや」
「出会い頭に何毒吐いてくれちゃってんの?」
黒い隊服を着た毒を撒き散らす男。コレが真選組一番隊隊長ってんだから世も末だと銀時はぼやく。沖田が膨らませたチューインガムがパチンと弾けた。
「ああ、コレ? さっき駄菓子屋でオマケに貰ったんですよ。貰います?」
「んだよ、てめーもプラプラさぼってんじゃねーか、不良警官」
差し出されたガムを「まあ、貰うけど」と口に含みながら銀時も同じようにクチャクチャと噛む。
「旦那、ちょいと付き合って貰えやせんか? どうせ暇でしょう」
「暇って決めつけられるのがものすっっごい癪にさわんだけど……」
「四の五の言ってないで行きやしょうや」
「どこに」
「吉原」
地下へと続くエレベーターに乗る二人。
「不良警官改め、淫行警官にでもなるつもりか? 関心しねぇーよ? 世の中に反抗すんならもっとマシな方法あんじゃねーの?」
「残念ながら、俺ァ、はなっから鎖で繋がれた女にゃ興味ないんでさァ。鎖ってのは、人間のプライド引きずり降ろされて、自ら繋がれにいくから意味があんでさァ」
「真顔で恐ろしい事いうのやめてくれない? 屈折しすぎてドン引きだよ」
チンと音を立てて、エレベーターが最下階についた事を知らせる。開いたそこは――吉原 大門。
――生きては苦界、死しては浄閑寺ってか? 湿っぽいのはあんま……。
銀時の思考はそこで切れた。
「ようこそ旦那様方! 吉原桃源郷へ!」
左右に別れ、門の先に一ダース。立ち並ぶ女達が
「サービス尖らせ過ぎだろォオオ!? マニアック過ぎるわっ!」
着物を改造したようなメイド服の裾がピラピラと揺れていた。絶対領域は十五センチ。
「驚きやしたかィ? おい、そこのお前、ワンと鳴け」
「いやですわ旦那様。あちしは猫でありんすニャン」
「ワンだ」
「わ……ん」
「もっぺんだ」
「わんわん」
「どんなマジック!?」
くいっと沖田にアゴを掴まれた女は、その瞳に睨みつけられ数秒にして、自らワンと鳴き始めた。
「案内頼んだぜ」
「はいですワン!」
頭の上残った猫耳をかなぐり捨て、喜々として遊女は先導を務める。
一瞬置いてかれた銀時だったが、
「アレ、金持ってると思う?」
「まさか」
「でも、お茶ぐらいなら……」
「馬鹿! 自分を安売りしないの!」
「うっせー! てめぇらみてえなアバズレこっちから願い下げだ」
ヒソヒソと交わされる心ない言葉に怒鳴り返す。しかし、冷ややかな遊女等と、当たり散らす男、勝敗は明らかだった。
犬に転身した遊女、沖田、銀時と続く。かつて、張見世が立ち並んでいた通りは、『耳かき、膝枕付き』『なじり屋~微Sから極Sまで~』『添い寝屋』など、いかがわしさに変わりは無いが、その方向性を残念な方向に向けた店が立ち並んでいた。
「こっちですワン!」
だが、案内され辿り着いた先は、そのままの姿を残していた。そびえ建つ牙城。朱色に塗られた柱と、金箔。唯一違うのは開かれた空から差し込む――陽の光。
昼の遊郭に他に客はおらず、吹き抜けの広間に通される。
「
奥から煙管を咥えた女が一人。月詠。
「