お茶でも飲んでく? と銀さんを招き入れてしまう。
バイト先から譲ってもらった賞味期限切れのケーキを仕舞っていると、夕飯こねーのかと言われて、うんと答えればじゃあ俺もここで食べてくと言われた。
冷蔵庫を漁って作った、スパゲティと炒めた野菜を合わせたなんちゃって料理。柄がちぐはぐの皿にそれを入れて、ダンボールの上に乗せる。
「テーブル今度買いに行こうぜ」
べこべこするそれの上に乗った不安定な皿を見ながらそう言われた。
「そうだね。この前お茶こぼしちゃったし必要だよね」
水を含んでさらにベコベコになった一点を見て、必要だなと再認識する。リサイクル屋さんで安いのあったかなぁーなんて、新品を買うことを考えてないあたりが万事屋に毒されている。
温かいスパゲティを啜るとぼやけた味。まぁそんなもんだよなと自分を慰める。スパゲティの野菜をつつきながら伊東さんの顔を思い出す。
伊東鴨太郎……表面上しか知らない私がそう言っていいのか知らないが、とても私に似ている人だと思った。
フェアプレーに則り、自分のルールで行くならば、きっと助けるべきなんだろう。
でも、心の奥底まで手を伸ばさなければ救えない伊東さんの助け方を私は知らない。
『誰もアンタの中に存在しちゃいねェ』まったく持ってその通り。私は物事の表面を撫でてるだけだ。
「銀さん……」
伊東さんを助けてと言おうとしてその言葉を飲み込む。自分に出来ない事をこの人に背負わせてどうするというのだ。代わりに他のことを口にする。
「友達ってどうやってなればいいのかな」
「……お前本当に友達いないんだな。……携帯の登録先も仕事場だけだったりしそうだし」
憐れむ様な目で見つめられた挙句、心を地味に抉ってきた。
「馬鹿にすんな! 総悟とか登録されてるもん」
「逆に言えばそれだけなんだろ? つかアイツと友達なの?」
「禿げろクソ天! ばーかばーかばーか、もう二度と余ったケーキ持っててやるもんか」
「悪かったって。友達少ないのはお前のアイデンティティだもんな、しょうがないよな」
「慰めになってない! そんなアイデンティティいらないし!」
全然悪びれないその態度に、フォークを放り投げて完全にいじけモードになった私。
くそっ……。結構まじめに聞いた私が馬鹿だった。
「本当悪かったって、つーかお前って友達欲しがるタイプだっけ?」
悪かったと繰り返しながらも更に心を抉ってくる。
一人スパゲティを啜る小憎たらしいアンチクショウに向かって隕石降ってこい。
「いいじゃんか私が友達作りたがっても」
いじけてるのが馬鹿らしくなって、再びフォークを取る。冷めたスパゲティが不味さに拍車を掛ける。
「お前が友達ねェ……。まあいいけど、人に心さらけ出さないで友達なんてもん作れる訳がねーだろ。お前の場合守りに走りすぎなんだよ。そういうところだけ自分守ってどうすんだよ」
ぐっと言葉に詰まる……。
強くなりたいな……何を背負い込んでも自分の道を真っ直ぐ歩けるような強さが欲しい。
「……それが無理な時はどうしたらいいかな?」
ヘタレた発言。そりゃ無理だろと鼻で笑われた。
食べ終わった皿を片付けもせず寝転がる。
「豚になるぞ」
「それ牛じゃない? ってか女性に対して失礼だし、それに銀さんだって寝転がってるじゃんか」
「俺は大丈夫なの」
三十路手前のおっさんの癖にどっからくるんだその無意味な自信は。
無性に神楽ちゃんと新八君に会いたくなった。
「万事屋行って皆でケーキ食べたい……」
「ショートケーキあんだろな」
「あるよ」
「じゃあ、けーるとするか」
弱いなぁーとぼやくも心の贅沢を許してしまう。